タイトルの通り今回は冥界でのお話です。
オリジナルの設定を加えます。矛盾点があるかもしれませんがご了承ください。
少し懐かしい記憶を思い出す。
ただ1度だけの奇妙な体験。辺りは薄暗く、何も無い。地面は真っ黒で何処なのかが分からない。目の前には―白髪の、俺と同じくらいの少年が。暫く見つめていると、こちらを見返し―
また別の記憶を思い出す。そこにはとある2人の墓がある。1人の名前は雨風に少しずつ削られているが、まだ読み取る事が出来る。もう1つは、まるで最初から無かったかのように。
今日は高校の入学式。その報告がてら、2人を参ることにした。2人の死は、もう揺るがないだろう。
ふと、母親の名前を思い出そうとするが……。
「……。」ガバッ
俺は目が覚めた。とりあえず、自分の腹部をさする。
……あれほどの穴を開けられていたはずだが。傷の痕はどこにもなく塞がっているみたいだ。
辺りを見渡す。そこは紅魔館では無い光景が広がっていた。足元には薄暗い暗闇が広がる。床の色が黒色でどのような物質なのか検討がつかない。
目の前を見ると――そこには石段と灯が。
前方以外は常闇である。……どうやらその階段を登ってみるしかないようだ。
最近、似たような夢を見たことがあるような気がする。はて、どのような内容だったか―
俺は、とりあえず前へ進む。初めて幻想郷に連れてこられた時もそうであったが、前進すればきっとどこかにつくだろう。
疑問なのは、レミリアの吸血の時とは違い、傷跡が治っていた事。そして、紅魔館以外の場所にいる事。加えて、先程から妙に記憶が冴えている。吸血で倒れた際には事を思い出すのに時間がかかっていたけど。
以上の事を踏まえて考えると―俺は死んだのか?
幻想郷なんてものもあるなら、死後の世界なんてものもありそうだ。天国や地獄だって、人間が生み出した『幻想』なのだから。うーん、どうなんだろう?
……などと冷静に考えている場合か!? 自分が死んだっていうのに。死にそうな経験を繰り返して、そのような耐性でもついたのか? 嫌な慣れだなあ……。
仮に、俺が死んだとしたら……『天国』と『地獄』。どちらに落とされるのだろうか。今までの生活で犯した罪って何があったか―。
考えながら登っているうちに、階段の終わりに辿り着いた。目の前には大きな屋敷らしきものが広がっている。
昔の時代劇などに出てきそうな木造建築。そして目の前には門がある。普通なら閉まっている……はずだが。それは何故か開いており、中が覗ける状態になっていた。
今の状況を掴んでいない俺としては、ここで誰かと会っておきたい。
「すみません。誰かいませんか?」
門の向こう先にとりあえず声をかける。……反応が無いようだ。ここは廃墟かな?
どうしようもなく、門の前で暫く座っていたら、俺の周りに白いふわふわした物が浮いて近付いてきた。
触ってみるととても冷たい。触られた白い物体は俺にびっくりしたのか、また奥へ戻ってしまった。
初めて見たものだったので、俺は不思議そうに見つめていた。形はある程度一定を保っているが、動く度に微妙に変形し続けているのがまた不思議。
「どちらさまでしょうか?」
「!」
突然の声に俺は少し驚いた。その声の主は門のすぐ前で立っていた。その少女は緑色基調の服を着ている。頭には黒いカチューシャらしきものが。小柄ながらもその腰には日本刀らしきものを備えている。重くないのかな?
「はじめまして。藤村大樹と申します。実は意識を失っていて……、気がついたらここに居たんです。」
「ああ。冥界に迷い込んだ亡霊さんですか。どうぞこちらへお入りください。案内しますよ。」
冥界? そういえば、冥界も死後の世界だっけ。
「亡霊って……。俺の事?」
「はい。他の亡霊の方々も最初は自覚が無いものですよ。」
この娘の言う事が本当なら、俺は既に死んでいる状態という事になる。
やっぱりあの怪我を負ってケロッと生きていたなどと、そんな上手い話は無かったか……。
「俺は死んでいたのか……。それなら、何故俺という存在の意識が残っているんだ? 」
「そういう事も含めて後で説明しますよ。丁度今日は閻魔様もいらしていますし。」
「閻魔様って……。あの地獄の?」
何故冥界に? 閻魔様って、確か地獄の管理人みたいな役割じゃなかったか?
「はい。貴方が想像する通りだと思いますよ。」
巫女、吸血鬼、魔法使い、悪魔の次は閻魔様である。
うーんこの。思い返すと数奇な出会いだなあ。
「あら妖夢? お客様かしら?」
案内されて数分後、ようやく人がいる部屋に到着した。どうやら外見以上に、豪華なお屋敷のようだ。
「はい。幽々子様。どうやら亡霊が冥界に迷い込んでいたので連れてきました。」
「ご苦労様。2人とも座っていいのよ? 」
座敷の部屋に案内され個室に入ると2人の少女が。
今更だけど、男性があまり居ないのが気にかかる。
先程妖夢さんと会話していた幽々子さんという人物は赤髪というよりかはピンク色の髪に青い服を来ている。身長は紫よりほんの少し低いと行ったところか。
もう1人は緑髪に特徴のある帽子を着けている。見た目の雰囲気がいかにも閻魔らしい。
「でも妖夢。その殿方は死んでいないわよ?」
えっ。
「ええっ!? 生きたまま人間が冥界に?」
「珍しいですがありえます。身体が仮死状態になると精神だけが、一時的に冥界に迷い込む事があるのです。」
「そうなのですか、映姫様。」
「えーっと……。つまり俺はまだ死んでいないということですか?」
映姫様という人物の言うことが正しければ、俺は肉体を持たない精神状態っていうことか。傷が治っているのは、元々そんな傷が無いからか。つまり、『肉体の傷が精神状態に反映されない』というのなら、まだ納得がいく。
「そうですよ。はじめまして、藤村大樹さん。今、貴方はおそらく紅魔館の治療部屋にでも寝ているでしょう。」
「何で俺の名前を? それに状態まで。」
レミリアの件もそうだけど、俺ってそんなに有名人なのか? 俺の個人情報の漏洩先は何処なのか。
「そうですね……。あ、私は四季映姫・ヤマザナドゥ。幻想郷の閻魔です。」
「私は西行寺幽々子。冥界の管理人よ。」
「私はここ『白玉楼』の庭師を務める魂魄妖夢です。」
「藤村大樹です。……ご迷惑をお掛けして申し訳ないです。」
軽く自己紹介をしてから、3人から事情を聞く。
どうやらここは冥界と言う場所らしい。死後の裁判で転生の判決が出た場合ここで暫く待機する場所だという。
何故俺が冥界に迷い込んだのか、そもそも今の俺には肉体がなく精神だけが残っているのか?
その部分を説明すると、俺精神の入れ物(肉体)はちょっとした瀕死状態らしい。その為、肉体と精神の接続が弱まり、少し離れたここに迷い込んだと言う。
分かりやすく例えると、『幽体離脱』に近いという。
映姫様が言うには、肉体の方は回復傾向にあるとのこと。1日程経てば、精神が肉体に引っ張られて元に戻るらしい。
「まだ死んでなくて良かったですよ。」
いやぁー、ホントに。
「良かったですね大樹さん!」
「それにしても凄い生命力ね。普通なら冥界に迷い込む距離なら精神と肉体の繋がりが切れるものだけれど。」
さらっと恐ろしいことを幽々子さんが言う。
「彼は天狗ですからね。『半人半妖』のね。」
名前がバレている時点でだいたい察した。
「映姫様ってやっぱりあの鏡持っているのですか? というより、俺の個人情報流出しすぎですよ。」
『あの鏡』と言うのは浄玻璃の鏡の事だ。死者の生前の行いを映し出し、それでもなお嘘をつく亡者の舌を抜くという。
「貴方は外の世界では『死んだ』のですよ。幻想郷に住むと言うことは世界から存在が忘れられる。というより、消されたのです。閻魔が死人の過去を見る事はごく普通の事ですよ? 」
そ、そんな扱いになるのか……。ん?
「消される? 俺は幻想郷に住み着いたから外の世界では名前すら忘れ去られてしまうっていうのは知ってたけど……。」
「紫はいい加減ですから仕方ありません。」
ため息をつく映姫様。……何故その情報が紫さんから聞いたと分かるのか。ちょっと怖い。
俺は3人からこの世界の事について詳しく教えて貰った。これには、外の世界出身として驚きが隠せない。
まずこの地球には『抑止力』たるものがあるらしい。その抑止力は地球上の生物全ての保存の為に力を使っていた。だが、いつの日からかだろうか―人間以外は保護しなくなってしまったらしい。
幻想郷が生まれたのにもこの話は少し関係がある。人間意外の大多数の種の1つ、『妖怪』に対して、抑止力が働かなくなった為、人間と妖怪のパワーバランスが崩れた。その時――約500年程前。妖怪の賢者の能力である『境界を操る程度の能力』などを使い幻想郷を生み出した。幻想郷の元の土地だけを別の『抑止力』を置くように設計する。俺が驚いた事は、幻想郷を生み出した『賢者』は紫さん以外にも居ること。
その結果、幻想郷の抑止力は人間も含めて妖怪や人外達も守る力を持つものになった。どう作ったかは不明だという。映姫様達の予測では抑止力の境界を少し弄って、範囲を変えてしまったとか。当然、地球からすれば『幻想郷』は異物の一種。地球の抑止力は、人間を守る為、幻想郷を壊すのではなく、存在そのものを隠してしまった。なぜかと言うと、幻想郷にも人間は住んでいるから―。
外の世界で幻想郷は無いものと扱われるのはがこれが原因だと言う。
次に幻想郷は空想上の世界とされている為、似たようなもの――地獄、天界、魔界、地底などと隣接している。
そして『抑止力』は自ら手を下すことは滅多に無く、大体は『代行者』が行うという。
幻想郷の代行者は今の所3人。それぞれ行政、立法、司法を意味するらしい。
まず行政からだが、俺には意外であった。それは妖怪の賢者と名高い、あの紫さんだったから。幻想郷の運営……主に結界の管理などは主に彼女の役割だとか。
立法からもまた意外な人物である。あの博麗の巫女、霊夢が……。主に異変解決の際、彼女には抑止力から力を与えられるらしい。その時の霊夢は正しく『幻想郷最強』だという。
最後に司法からだが、今まさに俺と会話している映姫様だという。地獄の者なのに幻想郷の抑止を司る理由の1つとしては、幻想郷に司法という概念が無いからという。『すべて受け入れる』幻想郷には無縁か……。
元々地蔵から閻魔に転職したらしい。地獄でも、閻魔は抑止力が定める善悪に従って判決を決めるらしい。彼女にはついでの感覚で代行者の任が与えられた。
ここまでがこの幻想郷を語る上で重要な『抑止力』。無論、外の世界ではそんな存在誰も知らないだろう。
「……以上がこの世界についてですね。ですから幻想郷には悪魔も天人も、神様だって居られるのです。」
「現実とは思えないな……。」
そこがまさに幻想郷らしい。
「まあまあ。普通の半人半怪の貴方には深く関わらない事よ~。」
幽々子さんの言うことは最もだ。こんな地球規模の話は俺は2度と関わらないだろうし、まず関わりたくない。
「じ、実は私もよく分かっていませんでした…。」
俺には本当の事だと思えなかった。映姫様と幽々子さんは仕事の話を再開するらしく、俺と妖夢は暇なので別の場所の話をした。
「大樹さん! 体色が薄くなってませんか!?」
どれ位経ったかわからないけど、何故か俺の体が透明になってきている。
「本当だ! 」
と言いながらも、ゆっくり茶を飲む。博麗神社の緑茶も美味しかったが、ここの緑茶もコクがあってなかなか。
「あらあら。肉体が貴方を引っ張っているわねえ。」
つまり、俺は肉体の方へ戻るわけか。
「思った以上に回復が速いですね。」
「えっと……。皆さん今日はありがとうございました。出来ればまた会いましょう。」
「はい。またお喋りしましょう。」
「いつでもおいで~。」
冥界にはできるだけ行きたくないなあ。まあ、生身で行けるなら話は別だけど。
「ええ、またお会いしましょう。」
それぞれが言葉を残し、俺は冥界から姿を消した。
また会えるのは、実はそう遠くない未来かもしれない。
ここまでお読みくださってありがとうございました自分の文章力ではなかなか伝えられないです……。
かなりオリジナル要素入れてみました。いつか使う日が来るといいのですが。
書き忘れていましたがこの話で登場するオリキャラの名前は実際人物、団体には一切関係ありません。
……今更で申し訳ないです。
今回は文字数多いので誤字脱字が目立つと思います。ご了承ください。
次回未定です。更新も不定期です。
誤字のご指摘がありました。
訂正させて頂きました。