天狗の幻想入り   作:ジャジャジャジャーン

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長い冬から時季外れの春。その春も初夏に向けてすぐに終わりを迎えた。
そんな中主人公、藤村大樹はとある魔法使いから宴会に誘われる。


第21話 醒めない夢(R)

「大樹も博麗神社での宴会、来るだろ?」

 

「うーん。寺子屋の授業が終わってからでも行こうかな。じゃ、そういう事で。」

 

「絶対来いよな!」

 

寺子屋で昼休みの休憩をしていた頃に魔理沙が突然俺の元へ訪れた。どうやら宴会のお誘いらしい。

異変解決後の宴会には誘われて参加した事はある。この前の紅魔館の一件の異変の頃の。が、何もない時に誘われるのは初めてであった。

見た目は10代の半ば頃であろう少女に宴会に誘われるとは。幻想郷は今日も平常運転らしい。

 

 

 

「あら。あんた本当に来たのね?」

 

「……誘われたから顔は出そうと。」

 

何かと霊夢と会うのは久しぶりであった。最近は寺子屋で授業、休みはほぼ紅魔館通いの身であった為だ。

博麗神社は相変わらず哀愁漂う雰囲気であった。参拝者が全然来てないみたいだけどね。

 

「見ない顔ね。初めまして。」

 

霊夢の隣にはいかにも真面目そうな人が立っていた。金髪のショートのお人形さんみたいな見た目である。

 

「あ、初めまして。藤村大樹です。」

 

「やっぱり貴方が噂の。」

 

えー俺って噂になるほどの変わり者と見られているのかなあ。内心に呟く。

周りを見てみると派手な巫女に怪しい魔法使い、メイド、吸血鬼に幽霊に亡霊。絶対他の面子の方が変わっているだろうになあ。

 

「おー! 来たか大樹! 早速だが呑め!」

 

「そんなに急かさなくても今日は呑むよ。」グビッ

 

魔理沙達はもう既に呑んでいるらしい。本当に幻想郷の変わり者たちは酒が大好きだ。紅魔館ではワインもあった所を見ると、どうやら日本酒以外でも呑むらしい。

どっから手に入れているのか不思議である。

……ちなみに俺は酒は呑めるが好きではないがな。言いたい事は俺は変わっていない一般人だということだ。

 

「あら大樹。珍しくここの宴会に参加してるのね?」

 

「こんにちは。」

 

「こんにちは。今日は珍しく誘われたんだ。」

 

紅魔館組も予想通りに参加していた。予想外なのはパチュリーが珍しく外に出ていた事か。

 

「大樹さんお久しぶりですね! こんな宴会で再び会えるとは思っていませんでしたよ。」

 

「あらあら。珍しいわねえ。」

 

「2人ともお久しぶりです。というか冥界から幻想郷に来れるものなのか?」

 

神社の奥の方には懐かしい2人がいた。以前フランドールに殺されかけた時に迷い込んだ冥界で世話になったあの2人がここに居るとは。

 

「幻想郷と冥界は近いのよ~。」

 

今結構とんでもない事を言ったような……。

今日はどうやら閻魔様は来ていないようだ。

 

「あんたこいつらとも知り合いだったの? 異変の首謀者と親しいなんて怪しいわね。」

 

「えええっ! そんな事はないだろ!」

 

霊夢が突然つっかかってきた。

 

「大樹さんはたまたま冥界に迷い込んでいただけで異変とは関係ありません。」

 

「成程、そういう事か?」

 

「「?」」

 

霊夢と妖夢が首を傾げた。俺は何故他人からこうも疑われるのかがやっと納得できた。

俺は多分……ここに居る変わり者と仲良くつるんでいるから仲間だと思われていたのか。

 

「そろそろ宴会を始めるぜ!こっちに来い!」

 

魔理沙の一言で、今日の参加者は全員集まる。男女比率は凄いことになっているがここまで来たので気にしたら負けだと思っている。

この宴会に参加してもおかしくない人達で来ていないのはあの新聞記者に閻魔様に紫さんくらいだろうか。

 

「それじゃあ、乾杯!」

 

皆がそれぞれ酒を呑み始めた。俺は酒を用意していなかったが博麗神社には呑みきれない量の酒が置いてある。何故こんなにあるのか。

 

 

 

宴会は時間が経つにつれてどんどん盛り上がってきた。最初は雑談程度であったが今は妖夢渾身(?)の一発芸を肴に酒を進めているところだ。

 

「そういえば。あんた弾幕ごっこできたっけ?」

 

霊夢がまた突然変なことを聞き始めた。

 

「うーん。妖精や森に住んでいる弱い妖怪を追い払う程度ならなんとか。」

 

 

「ふーん。」グビッ

 

博麗神社や紅魔館に行く時にたまに妖精や妖怪に攻撃を受ける時がある。今ではは最近身につけた『土』属性魔法の一つである盾を作ってなんとか防御できるようにはなった。それを見ると妖精などは大抵諦めたのかどっかへ行ってくれる。妖怪は攻めてくるので仕方なく迎撃している。どうやっているかと言うと、魔法で銃を作って妖力で形成した玉で発砲する。これが俺の弾幕戦術だ。

俺は魔法を扱う為の創造力が足りないらしい。なので銃や盾などイメージしやすい物を錬成している。

錬成すると言っても素材は自分の霊力である。どのようにして金属に変化しているのか仕組みはまだ分かっていない。

 

「あんたが弾幕ごっこしている所見た事無いわー。暇だし見たいわねー。」

 

「そんな棒読みで言われても。……俺はこの中じゃあ最弱だからやりたくないよ。」

 

「良いじゃない。」

 

良くない。それはつまり俺に死ねと言っているものだ。

 

「争いは好きじゃ無いんだ。」

 

「男らしくないわね。」

 

その通りでございます。ここのメンバーの数人には男気で勝てる気がしませんよ。

 

「大樹が今から弾幕ごっこするらしいわよ。」

 

遠目で見ていたのか、レミリアが霊夢の手助けするみたいに嘘をつく。

 

「おおー! こっちに来いよ大樹!」

 

魔理沙の耳に届いたが最後、他のメンバーも皆俺の方を向く。な、なんなんだ……。

 

「レミリア! 何て事してくれるんだ!」

 

「……一応私が少し教えたのだから負けたらどうなるか分かってるわね?」

 

この事態の急変の原因であるレミリアは俺にそう語って笑いかける。どうやら血がお望みのようだ。

 

「血が欲しいならそう言ってくれよ。」

 

「何の事やら。」

 

もう何を言っても無駄らしい。

 

「……。もういい。行ってくる。どうせなら一泡吹かせてやる!」

 

俺はやけくそ気味に魔理沙に呼ばれた方へ向かう。

そこには完全に酔っ払った妖夢が剣を握っていた。

 

「何なんですか皆さん! 私の舞をネタにして!」

 

あの優しい妖夢が酒に完全に呑まれている。

 

「かっこよかったわよ~」

 

「……まさかあの酔っ払いと戦えと?」

 

いやいや、危ないだろ。……当然、俺がね。

 

「酔っ払っても剣の腕前は相当のものよ?」

 

俺は酔っ払いの妖夢を見下した訳では無い。普通なら少し手を緩めてくれそうな妖夢も今の状態を見れば全力で捻り潰されそうだ。やべえ、勝てる気がしない。

 

「あ〜? 大樹さんが相手ですか? いいでしょう! 気晴らしがてら、一戦交えましょう。」スチャッ

 

とんだ八つ当たりだなあ。

 

「ちょっと妖夢!? 頼むから手加減よろしく頼みますよ!?」

 

そんなやり取りをしている間に全員がこちらへやってきた。少しは俺の身を案じて止めようという気持ちは無いものだろうが。

 

「問答無用!」サッ

 

「! 来る……!」

 

妖夢は間合いを詰めてくる。どうやら弾幕ではなく剣技で攻めてくるとみたいだ。突然の妖夢の接近に対して、すぐに距離を置こうとしたが間に合わず、妖夢はすぐ目の前まで迫り切りかかってきた。1振り2振りと刃を振る。俺はタイミング良く、あるいは運が良かったのか華麗に躱す。酔っ払っていたのが幸いしたのか、妖夢は素人のような剣の振りだった。寺子屋の先生の戦闘力舐めるな。

 

そう俺が余裕振っていた時、妖夢はそこをつくのが狙いだったのか、急に鋭い剣技が襲いかかる。

 

「油断しましたね大樹さん。一本もらいます!」

 

しまった。完全に気を緩めていた。

 

「なんだとぉっ!」

 

体を動かし躱そうと試みるが、どうやら手遅れであったようだ。剣はもう俺の顔の直前だ。

 

(やられる……っ)

 

そう諦めかけてた瞬間

 

――俺の感覚は十倍以上に拡張されたかのように、視界の映像が遅くなる。目の前の剣はスローモーションの様にゆっくり降り掛かってくる。俺はなりふり構わず逃げようと体に指示を送ると周りの遅さに比べて普段通りに動く。……なんだこれは?

どういう訳かわからないが大樹はこのチャンスを使ってなんとかあの一撃を躱す。

 

「!? 瞬間移動でもしたのですか!?」

 

躱した瞬間、先程までゆっくり動いていた妖夢がいつも通りに戻っている。

 

「た、助かった~。」

 

妖夢を含め見ていた観客は全員驚いていた。どう動いても躱せるはずがない太刀を俺が避けていたからだ。

 

「とにかくもう1度行きますよ!」

 

暫くポカンとしていた妖夢は気を引き締めて俺に攻めかかる。だがその時には既に遅く、俺は油断せず魔法で複数の銃を錬成して構えていた。その銃の1つは俺が手で持ち、それ以外は大樹の周りを浮いていた。

 

「時すでに遅し。これで終わらせる!」スチャッ

 

あの回避から防戦一方だった俺にも攻撃のチャンスが。俺の一声で銃は一斉に発砲した。これに反応した妖夢は数弾は剣で弾いたのだが……一発肩に被弾した。

 

「しまった……?」バタッ

 

肩に直撃したすぐその後に妖夢は倒れてしまった。俺の銃は肉体的には何ら殺傷能力は無い。だが被弾した者の気を乱すことができる。その為か妖夢は気絶したのだろう。ここの仕組みについては俺は1つもわかっていない。まあ、使えるなら何でも良いや。

 

「はぁ……。一気に疲れてしまった。」

 

緊張が一気に解け、どっと疲労感が俺の身体中を襲う。

 

「酔っ払いとはいえよく妖夢相手に接近戦で勝てたな! 凄いぜ!」

 

褒められても嬉しく無いのだが……。

 

「流石は私の教え子ね。その恩恵を感じるのなら私に血を献上しなさい。」

 

「……。」

 

「伊達に天狗じゃないって事ね。」

 

「あの魔法はパチュリー様が?」

 

「……。ええ。」

 

「あらあら~。妖夢がやられちゃったわ。」

 

皆がそれぞれに騒ぎ出す。そもそもこんなに茶番に巻き込まれた俺や妖夢を心配しない辺りが安定している。

それとレミリアはやはり血が欲しかっただけのようだ。

 

それにしても、さっきのあの感覚は何だったのだろうか。あれは今までで初めての経験だ。たまたま……なのかな? 死にそうな時に潜在能力が発揮されるとか、そう言う感じかな?

 

 

 

「申し訳ないです大樹さん。酔ってていまいち記憶が無いのですが……。」

 

妖夢はすぐに意識を取り戻していた。……既に宴会は終わっており片付けに入っていたけど。

 

「妖夢は悪くないし酔っ払い相手に気絶させたのは俺だから悪いのは俺だよ。最も、こんな事をさせた周りの奴らが悪いんだよ。」

 

「そこ2人! 口を動かす前にちゃんと片付けろよ~!」

 

妖夢と愚痴を少し零しながら、今日の宴会の片付けをしていた。散らかしていたのは大体魔理沙だがなあ。

 

「それにしても今日は何の宴会だ?」

 

そういえばまだ聞いていなかった。人里には異変の情報が無かったので、今回は規模が小さかったのかな?

 

「花見らしいですよ。」

 

花見?確かにまだ多少花は咲いてはいたが……。この宴会では雑談と一発芸しかやってなかったよなあ?

 

明日は寺子屋の仕事があるので俺は早めに切り上げた。こうして大樹の忙しい花見の宴会は終わったはずなのだが……。

 

 

 

寺子屋での授業は今日はなく、久しぶりに隆希と2人で人里の居酒屋で飲みに行っていた。隆希は相変わらず脳天気なやつだ。もう人里に来て暫く経ち、俺はすっかり幻想郷に馴染んでしまった。

 

「おーい!」

 

そこにいきなり魔理沙が来た。何故俺が居る居酒屋が分かるのか。それについ2日前にあったばかりだけど、何かあったのだろうか。

 

「明日、宴会やるからな。大樹も来るだろ?」

 

 

 




ここまででお読みくださってありがとうございます。
次回更新は日曜日です。
最後の隆希が誰か分からない方は7話へ。久しぶりの登場でした。

こちらの事情で更新が延期するかもです。ご了承ください。
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