天狗の幻想入り   作:ジャジャジャジャーン

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博麗神社で行われた大規模な宴会の2日後、藤村大樹はまた宴会に誘われる。



第22話 妖霧

「良いよなぁ大樹は。あんな可愛い娘達から宴会なんかに誘われて。俺も紅魔館行きたいよ。」

 

隆希はそんな事を隣で言い出した。だいぶ呑んでいるせいか、酔って口が軽くなっている。

 

「確かに見た目は可憐だけど…。」

 

ついこの前の宴会の面子を思い浮かべる。黙ってさえいれば可愛いと確かに思える。だがな……。俺は喋っている途中で酒を飲みまた口を開ける。

 

「……紅魔館には行かない方が良い。何しろあそこのお嬢さまに血を吸われると死にかけるからなあ。」

 

「ああ~。あの手首の怪我か。あれは酷かったよなあ。自殺ものだったからな。」

 

これまでに記していないが、紅魔館を初めて訪れた後に人里へ帰った時、里の皆には随分心配させてしまった。それに加えてあの手首の傷を見せたら騒がれたなあ。

 

「あの時の心配そうな慧音さん、初めて見たぞ。大樹も男なんだからあんまり迷惑かけるなよ。」

 

そう言って隆希は大樹の肩を叩く。

 

「ああ。あの時はすまないと思っていたよ。」

 

「その話ついでに思い出した。大樹が寺子屋の仕事を初めてサボった時のさ。青ざめた大樹相手に慧音さんの頭突き。あれは面白かったなあ。」

 

「おいおい。そんな恥ずかしい話を居酒屋で持ってくるなよ。」

 

などと他愛ない会話をしながら数少ない男友達と飲んでこの日は終わりを迎えた。

……一応誘われたものだから、明日行ってみるかあ。

 

 

 

「あら。あんたが1番最初に来るなんて。」

 

博麗神社に向かうと霊夢1人だけ居た。。今日は仕事が速く終わったものなので一番着だったらしい。

 

「やあ。今日は用事が早めに切り上げられたものだからね。自室も暇だし。」

 

「ふーん。ま、茶の間で暫くゆっくりしなさい。」

 

そう言って霊夢は俺を茶の間に招き、お茶を出した。

普段博麗神社へ来た時に誰かしらここでくつろいでいるのを見ていた。それにしても茶がうまい。

 

「……ところで霊夢。こんなに短い期間で宴会を開くのは珍しく無いのか?」

 

少しした後、霊夢にこんな事を聞いてみた。

 

「確かに珍しいわね。私も初めてね。」

 

「これは異変じゃないのか?」

 

俺はそう尋ねる。外の世界の常識に囚われすぎているだけかもしれないが、3日後に少女達が集まって酒を楽しむ光景は明らかに異変レベルの事件である。

 

「異変じゃないわ。私の感が異変と感じ取っていないから。」

 

「そんなので良いのか?」

 

ここ幻想郷の秩序を守る妖怪退治の専門家のである博麗の巫女が、まさかこんなフィーリングで物事を判断しているとは。

 

「良いのよ。外れた事も無いし。」

 

そしてこの自信である。

 

「……。ところで、さっきから感じる不穏な妖気。これが原因じゃないのか? 前回の時は無かったけど。」

 

先程から普段の博麗神社には無い妖気を俺は感じ取っていた。

 

「あんた妙な所は敏感ね。けどあの程度は問題じゃないわ。どうせ宴会を羨ましがる妖怪が来てるだけでしょう。」

 

などと霊夢は流す。実際そこまでその妖気からは危険を感じない。そんなものなのか。

 

「私は準備してくるから。宴会までまだ時間があるからゆっくりしといて良いわよ。」

 

「手伝うよ。」

 

「気持ちだけ貰っておくわ。それじゃ。」スタッ

 

霊夢はどうやら宴会の準備をするらしい。暫くして霊夢が何処かへ行ったのを確認した後、茶の間から出る。

俺はあの妖気の元へ向かう。そこは思っより近くすぐに着いた。神社周辺の木々の中にそれを感じる。

妖気の感じ方からすると元はここで間違いない様だが……どうにも視認する事が出来ない。

妖気は普通妖怪から感じ取る事ができる。当然その妖怪を見ることもできる。だが今回のはどうやら本体が見えてこない。やはり勘違いであったのか……。

 

「あらら。まさか私に気づくのがまさか貴方だったなんて。意外ね。」

 

突然、どこからか声が聞こえてきた。びっくりしてすぐに辺りを見渡すが……誰もそこにはいない。

 

「!! この妖気の主か。どこに居るんだ。」

 

「ん? 貴方の目の前よ。」

 

声の主はそう答える。半信半疑で正面を向くとそこには

――特徴的な大きな角を持つ少女がそこで座っていた。

 

「……。単刀直入に聞くけど。この宴会は君が何かしら手を加えているのか?」

 

紅魔館の経験もあったのか、いきなり目の前に知らない少女が出てきても冷静さを保つことができた。いやぁ、嫌な慣れだなあ……。

 

「何でそう思ったの?」

 

その少女は手に持つ瓢箪……そこから水か何かを飲みながら問い返した。

 

「えっと。俺は異変解決のプロでも何でも無いけれど、まず前回の宴会では感じ取れなかった妖気がある事。それにこの宴会の間隔は異常である事。何よりその妖気の正体が君らしいと言う事。」

 

目の前の少女は少し満足気な顔を浮かべる。

 

「私の名前は伊吹萃香。これからは君じゃなくて萃香とでも呼んでね。」

 

「ああ。よろしく萃香。俺の名前は……。」

 

先の言葉を突然遮られる。

 

「私は知ってるわ。藤村大樹。外の世界から幻想郷に住み着いた人間。でも人間じゃない。そうでしょ?」

 

突然萃香と名乗った少女は俺の事について語り出す。

……俺の情報がなぜ彼女に漏れているのか。

 

「……もしかして。紫さんの知り合いか?」

 

「よく分かったわね! 紫とは昔からの友達よ。」

 

理由は何となく察してはいた。……そろそろ紫さんとは1度話をした方が良いのかもな。

 

「……。萃香はその、どうしてたくさん宴会を開くの? それに萃香自身参加していないし。」

 

「今年の春って遅かったじゃない。花見が出来なくて寂しかったのよ。それに私は初めから宴会に参加しているわ。貴方達が気づかなかっただけよ。」

 

こんな事にまで春雪異変の影響が。う~む、異常気象の影響力は大きい。

それに気づかなかっただけとは……。それはもはや宴会に参加すると言えるのだろか。

 

「気づかない……。それは萃香の能力なのか?」

 

「そうよ。私の『密と疎を操る程度の能力』のほんの一部分だけ。この妖気……妖霧になったり、宴会の為に人を萃めたりいたわ。」

 

萃香は淡々と語り出す。異変かどうかはさておき、自分の犯行の種明かしを次々していく。

 

「私からも質問いいかしら?」

 

「? 別にいいけど。」

 

先程まで楽しそうに今回の事態を語っていた萃香は急に真剣な表情で大樹を見つめる。

 

「貴方は鴉天狗よね? それも人間とのハーフときた。」

 

うおっ、そこまでバレているのか。

 

「ああ、合っているよ。」

 

「それに無自覚ではあるものの天狗の力を使い始めている。まあ半人前レベルだけど。」

 

「天狗の力って……。この前の宴会のあれの事か?」

 

俺は改まって萃香に聞き直す。この前のとは妖夢と戦った時のあの感覚である。周りの動きが急に遅くなり、自分だけがいつも通り動けるたあの感覚。周りの人達からは瞬間移動だと言われていたが……。

 

「それは違う。私が言っているのは貴方、空を飛べるでしょ、っていう事よ。」

 

それはてっきり人間も出来るものかと。霊夢や魔理沙は人間だけど空を飛んでいるからなあ。

 

「違うってどういう……。」

 

萃香は少し呆れた様にしながら語り出す。

 

「あれは貴方の能力じゃないかな。天狗にそんな能力を持っている知り合いもいないし。私の『密と疎を操る程度の能力』みたいなものかもね。」

 

俺は暫くポカンとしていた。自分にもそんな凄そうな能力を持ち合わせていた事に驚いていた。

 

「……。と、というか天狗の知り合いが居るって。萃香は天狗……では無さそうだし。何者なんだ?」

 

流石にあの角を持つ天狗なんて聞いたことがない。あの立派な角を持つ妖怪と思いつくものは数少ないが……。

 

「多分貴方の想像通りよ。私は鬼よ。」

 

そう言って萃香はドヤ顔を決める。

 

「鬼か……。吸血鬼は居たけど純粋な日本の鬼も幻想郷に居たんだなあ。」

 

「吸血鬼と鬼は別物よ。」

 

そうキッパリと言って萃香はまた瓢箪の水を飲む。

……先程からの酒の匂い、どうやらその瓢箪の中身は酒であるようだ。

 

「それで……。貴方はこれからどうするの? 正直に言うとあの頭の堅い天狗連中が人間とのハーフを放置するとは思えないけれど。」

 

「……そんなものなのか?」

 

人間と妖怪のハーフはそんなに少ないものなのか? 神様と人間のハーフはよく聞くけど。

 

「そんなものよ。私は天狗とは長い付き合いだからよく知っているわ。貴方の存在は多分天狗の恥だと捉えているんじゃないかな。」

 

「天狗ってそんなに人間を見下すのか?」

 

あまりの言われ様に俺は皮肉で返す。

 

「ええ。天狗は弱いものには目もくれず、鬼のような強い存在には頭ぺこぺこよ。そんなずる賢い奴らばっかりいるもの。仕方ないわ。」

 

「……。そっか。」

 

その話を聞いて俺は暫く下を見つめていた。そのすぐ後にまた萃香の方に顔を向ける。

 

「でも……。俺は最初は偶然でここに来たけど、今は幻想郷の暮らしが好きになった。当然周りの奴らも。まあ、もう少し静かにして欲しいけど……。」

 

俺は息を整えてから、言葉を続ける。

 

「俺は自分の意思で生きる。例え存在が認められまいが関係無い。俺が天狗なのか人間なのかは気にしないよ。……出来れば、穏便に事が運べば良いけどね。」

 

「お! いい事言うじゃん!」バンバン

 

萃香は突然立ち上がり、大樹の肩を叩く……が、身長差があったのか背中を叩いた。

 

「それじゃあ、俺はそろそろ皆の所へ行くよ。」

 

「そうかい。それで、この事は他に人に種明かしするのかい?」

 

「そんな事しないよ。それに本当の事を言ったって皆に怪しまれて袋叩きに合うだけさ。」

 

安易に想像出来る。あの宴会の面子では恐らく最下層であろう俺が何を言っても信用されないと思う。

 

「確かにそうなりそうね。」

 

萃香はそんな事を想像したのか、大笑いする。

 

「今日は話に付き合ってくれてありがとう。じゃあね萃香。また会おう。」

 

俺は自然に手を差し出していた。

 

「次は一緒に呑もう。今回は呑めなかったからねえ。」

 

握手を交わす。

 

「分かった。」

 

そう良いながら俺は霧から足を遠ざける。

きっと他の皆も気づくだろう。今日が終われば次からの宴会の誘いを断ろう。

 

……この後神社の森から出てきた俺を怪しんだ魔理沙に弾幕ごっこを仕掛けられた。

奮戦はしたがマスタースパークという反則級(俺視点の)技で完全敗北した。あっつぅ……。

 

 




ここまでお読みくださってありがとうございます。
今回も誤字脱字等があるかも知れません。あらかじめご了承ください。

次回更新は日曜日ですが前触れなく延期する場合があります。すみません。
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