天狗の幻想入り   作:ジャジャジャジャーン

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竹林の中で気絶していた主人公、藤村大樹は気がつくと何処かの病院らしいベットで寝ていた。


第24話 永遠亭

 

あのうさ耳の少女が声を聞いた後、大樹が寝ていた部屋の出入り口から別の人が来たみたいだ。

 

「あらあら。もう意識を取り戻したの? 普通ならもう少し時間はかかるのだけれど。」

 

そう言いながら大樹の寝ていたベットに近づく。見たことがない青と赤の服装が特徴的だ。頭の帽子には赤色の十字のマークが。恐らくここの病院の院長だろうか。

 

「えーっと……。おはようございます…?」

 

「はい、おはよう。意識はしっかりしているようね。」

 

院長らしい女性は近くにあった椅子に座る。うさ耳の少女は何処かへ行ったようだ。

 

「いきなりですけど、ここは何処ですか? あまり今の現状を把握してなくて。」

 

確か大樹は夜をやり過ごす為に竹林で仮眠を取っていた。その時にレミリアに声をかけられて起きた途端に吸血された。それで暫く気を失っていたのは分かるが、この病院らしい場所に居た記憶は無かった。

 

「貴方はここ『永遠亭』の前で倒れていたらしいの。さっきここに居た優曇華が見つけて運んできたのよ。」

 

話を聞く限り、どうやら気絶している時に誰かがここまで運んできたらしい。

 

「そうですか……。あ、俺の名前は藤村大樹。わざわざ面倒見てくれてありがとうございます。」

 

「私は八意永琳。こちらとしても怪我人は見過ごせないから、気にしなくていいのよ。」

 

「と言うことはやっぱりここは病院ですか?」

 

「……。病院では無いわ。ここは『永遠亭』よ。私達は、ここで隠れ住んでいるのよ。」

 

永琳は少し間を開けてからそう口にした。どうやら訳ありらしい。

 

「隠れ住むって……。誰から隠れているんです?」

 

そう尋ねると永琳は少し怖い表情をした。

 

「そうね……。『月の都』の人達からよ。」

 

「……月に人が住んでいたのか。」

 

「あら。驚かないのね? もしかして月に関して詳しかったりするのかしら?」

 

「そうじゃないです。もう慣れたと言いますか……。」

 

そもそも幻想郷と言う場所自体がファンタジー要素満載である。月に人が住んでいてもおかしくない。

……月には発達した文明があるというのも、空想上ではよくある設置だが果たして。

 

「そう? 変わった人なのね。」

 

「そうですか? 満月をおかしくした永琳さんに言われても……。」

 

「満月? 何の事かしら?」

 

永琳は少し笑いながらそう応える。……あの月の異変の首謀者だと判断した理由を『怪しげな見た目』だと言うのを隠して返さなければ。

 

「『月の都』の人間から隠れている、と言うことからそういえば今日は月がおかしかった事を思い出したんですよ。それにその首謀者はこの前に倒れた場所の竹林に居るって聞きました。」

 

「ここが貴方が倒れた竹林とは限らないわよ?」

 

「そこはあまり確証が無いけれど、多分俺が気絶したから時間があんまり経ってないと思います。……これはその、気を失ってからの今までの感覚からですけど。それにあの竹林で1つも建物を見たことがないから、ここかなあと。」

 

大樹が訪れた村から少し離れた竹林は、暫く歩いても人の気配や、建造物は何一つ無かった。

 

「いきなりすみません。少し気になったもので。」

 

「いいのよ。貴方の予想通り、月をおかしくしたのは私なのだから。」

 

自分で疑っておきながらその返答に大樹は驚いた。まさか異変の首謀者と会うなんて。

 

「……理由も聞いていいですか。」

 

「ええ。ただもう少ししたら別のお客さんが来るかも知れないから、それまででいいかしら。」

 

「はい、構いません。むしろお願いします。」

 

恐らく『別のお客さん』とは異変解決に動いている連中であろう。霊夢は当然だろうが、レミリアと咲夜も多分それに該当しているのだろう。

 

「まず、私達は元々『月の都』で住んでいたの。だけどある日に大罪を犯してここ幻想郷に逃げてきたの。」

 

「私達って事は、あのうさぎの娘の事ですか?」

 

「いいえ。優曇華も確かに月出身だけど。ここ『永遠亭』のお姫様の事よ。多分貴方もよく知っているわ。」

 

俺が、よく知る? ……今まで幻想郷でであった人でおよそ『お姫様』が似合う人(妖怪)は居ないような……。

 

「俺が、よく知っている……?」

 

「貴方、外の世界の人間でしょ? 服装で分かるわ。外の世界なら誰でも聞いた事がある物語に出ているわ。」

 

なるほど。『幻想郷』だけに物語の空想上――幻想上の人物も居るというのか。……本当に何でもありである。

 

「それで話を続けるけど……。さっきも言ったけど優曇華は私とは違って――月から逃げてきたの。何でも月に人が進行してきたらしいの。……そう昔じゃないのだけれど、貴方は何か知っているかしら?」

 

「うーん。……月面着陸ならアポロ11号がありますね。月の表面に人類が初めて立ったと話題になったらしいです。俺はまだ生まれていなかったもので詳しくは分かりませんけど……。」

 

月に攻撃したという事実は無いはずだが、人はよく月行こうとしている。その中でも月面着陸をしたアポロ11号は特に有名で、生まれた前の話ながらも大樹は知っていた。

 

「そう。話を戻すけど、優曇華は月から追い出された訳ではないの。『月の都』の連中は今夜に連れ戻そうとしたから、幻想郷を月から侵入不可能にしたの。」

 

分かりやすくまとめると、永琳とここの『お姫様』は月から追放され、優曇華は月から不本意で逃げ出して、共に幻想郷に辿り着いた。そして『月の都』は優曇華だけを今夜回収しに来るという。だから、月をいじって幻想郷に来させないようにした、と。

やることが無茶苦茶である。

 

「でも安心して。あの月は『偽の月』よ。今日が終われば、月は元に戻すわよ。」

 

何のことかはわからないが、どうやらこの異変は1夜限りで、明日以降に影響は無いという。

 

「そうか。それじゃあ、俺はおいとまするか。異変解決しに来たわけでは無いから。」

 

「残念だけど、今さっき『永遠亭』にちょっとした術をかけたから、暫く外へ出れないの。」

 

……もしここで霊夢やレミリア達に会ってしまったら、怪しまれて退治されてしまうかも。大樹はそんな気がして心が震えた。

 

「朝まで待つしか無いようですね。」

 

「そうねえ。……それなら、暫く『お姫様』の相手をしてくれないかしら。最近暇にしているから、話し相手になってくれると嬉しいわ。」

 

「安全ならば別に構いませんよ。争いに巻き込まれるのだけは嫌ですから。」

 

先程から会話で出てきた『お姫様』の相手をして欲しいと言う。弾幕ごっこではボコボコにされる未来しか見えないので、幾分楽だ。

 

「そう。それじゃあ、宜しくね。」

 

「あっ……。その『お姫様』っていきなり吸血とかはして来ませんよね?」

 

初めてレミリアと会ったことを急に思い出し、念のため大樹は質問してみた。

 

「そんな事しないわよ。安心して。」

 

永琳はそう笑いながら、大樹に返す。

 

「ただいま戻りました師匠〜。全部の廊下に術をかけるのはしんどいですよ〜。」

 

最初に居たあのうさ耳の妖怪(仮)が戻ってきた。……月の兎、いかにも安直であるなあ。

 

「ちょうどよかったわ優曇華。その人間を『お姫様』の所まで連れて行ってあげて。」

 

「……いいんですか? もしかしたらここに向かってきている連中の仲間かも知れませんよ。」

 

どうやら優曇華は大樹の事を警戒しているらしい。兎って確か、警戒心が強かったのかな。

 

「大丈夫よ。その人は本当のお客様よ。それに、ここに連れてきたのは貴女よ?」

 

「……分かりました。それじゃあ貴方、私に着いてきて。くれぐれも迷わないように。」

 

そう言いながら歩き出した。

 

「ごめんなさい。うちの優曇華ったら、知らない人には冷たいの。それも人間相手なら尚更ね。」

 

「はぁ。まあ、分かりました。」

 

そう会話していると優曇華は戻ってきた。

 

「……何ヒソヒソ話しているの? 本当に置いていくわよ?」

 

うわぁ。先程の優曇華と永琳の会話とは全然違う雰囲気であった。いきなり嫌いオーラ全開だ。

 

「ああ、ごめん。今行く。」

 

行ってらっしゃい、と永琳は見送りながら大樹は早足で優曇華の後をついていく。

 

「……そこの人間。お師匠様には敬語で、何で私にはタメ口なの? これでも一応貴方の命の恩人よ。」

 

優曇華は歩きながら、いきなり大樹にそう問う。

……決してあの状態で放置しても死ぬことは無かったが、言ってはいけない気がした。

 

「あー、その優曇華の服装は、俺が少し前に居た外の世界でいうところの高校生の制服なんだ。一応俺も元高校生だから、同級生の意識があるんだ。」

 

「……ふーん。よく分からないけど、命の恩人に感謝の言葉も無いのね。地球の人間はつくづく無礼者ね。」

 

どうやら優曇華は大樹の話の内容をいまいち理解できなかったらしい。

 

……それにしても、言い過ぎじゃないか。

 




ここまでお読みくださってありがとうございます。

次回更新は日曜日です。

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