天狗の幻想入り   作:ジャジャジャジャーン

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結局、永遠亭の人達が起こした異変は無事に解決した。幻想郷にいつも通り朝を迎えた。森の木々は徐々に紅葉が進み、皆紅葉狩りを楽しむ。


第27話 決着

 

「……ふぅー、疲れた。」

 

今日も紅魔館で魔法の練習。人里の紅葉狩りイベントに誘わ、実はは参加したかった。が、先にこちらに誘われていたので断った。子供の頃はテレビで紅葉を楽しむ人達に何が楽しいのか首を捻ったものだが、今はその楽しさが分かる気がする。

 

「お疲れ様。上達が速いのね。」

 

隣でパチュリーが本を読んでいた筈だけど……。どうやら俺の練習を見ていてくれたようだ。

 

「『土』属性は結構使えるようになったな。」

 

「……貴方、『土』属性魔法に関しては天性の才能があるのかもね。」

 

おおお、まじか!

 

「本当ですか!?」

 

「普通なら『土』属性魔法で物を錬成する時は、対象の物質の構造をよく理解する必要があるの。貴方は、イメージできたら錬成できるみたい。これは大きい才能の1つね。」

 

確かに俺は魔法で武器を作る時、現実に無いものもできる。半自動カメラとかね。

 

「そうだったのか。てっきり、『土』属性魔法はそんな感じで使うものかと。」

 

「まあ、それ以外の属性はまるで使えないみたいだけど。適正が無いから恐らく頑張っても無駄ね。」

 

パチュリーさんに弱い所をつかれた。今まで『土』属性魔法ばかり使っていたのは単に得意というだけでなく、他の属性魔法が使えないというのが大きな要因だ。

 

「でも火属性魔法使いたいな〜。」

 

土よりは火の方がかっこいいし。

 

「全属性を中途半端に使えるよりかは、1つの属性を極めた方が強いわよ。」

 

「パチュリーさんは全部使えるし、とても強いじゃないですか。」

 

「私は生まれながらの魔法使い。貴方みたいに副業じゃないんだから当然よ。」

 

前も聞いたことがあるが、魔法使いが種族というのはどういう事なのか。あの魔理沙は人間らしいけど。

 

 

 

「魔法の練習は終わったのかしら?」

 

暫くすると、レミリアが図書館に来ていた。

 

「ああ、ついさっきね。」

 

「それじゃあ、話の続きを聞かせて。」

 

そういえば、今日ここに来た時に少しレミリアに話をしていたっけ。

 

「ええと、どこまで話していたっけ。」

 

「大樹が霊夢にボコられた所かしらね。」

 

事実ではあるけど、男として情けない気がする。相手が強すぎるだけだけどね。

 

「それじゃあ、俺が気絶してからの話かな。」

 

そうして俺は『永夜異変』について語る。

 

 

 

 

「……また知らない天井、ではないか。」

 

やられてからどれ程時間が経っただろうか。俺は霊夢のスペルカードを直撃して意識を失っていたらしい。目を開けた瞬間に広がる景色は、既に永遠亭で見ていた景色だった。

 

「本当にタフなのね、人間のくせに。」

 

いきなり声がしたもので、俺はビクッと体を震わす。目をやると近くに優曇華が居た。

 

「びっくりさせるなよ。」

 

「恩人に対して無礼だと思わない?」

 

まだ俺が敬語を使わないことにを根に持っているみたいだ。その服装、見た目から完全に年下にしか見えないからなあ……。

 

「……ごめんなさい。」

 

「まぁいいわ。そんな事より、例のお客様が人間を連れてこいと。さぁ、行くわよ。」

 

「例の……? ああ、霊夢と紫さんか。」

 

「そう、そんな名前だったわ。分かったなら、さっさと立ちなさい。置いていくわよ?」

 

優曇華が無理やり俺の体を起こそうとする。いやはや、ケガ人を何だと思っているのか。そう言っても本当に置いてかれそうなので、渋々後ろをついて歩く。

 

 

「姫様、お師匠様。連れてきましたよ。」

 

そう言いながら、優曇華が襖を開ける。そこには、永琳さん、輝夜さん、それに霊夢と紫さんも座っていた。

 

「あらあら、ご苦労様優曇華。貴女も中に入っていらっしゃい。」

 

この和室の一室はかなり広い。置いてある机も大きく、6人居ても窮屈では無かった。

 

「それで、何故俺を呼んだのですか?」

 

今回の異変に関して俺は首を突っ込んでしまったのは確かだ。でもこの面子の中では明らかに場違い感だった。

 

「あんたに聞きたい事があるのよ。」

 

そう声をかけたのは霊夢だった。もう怒ってはいないようだ。

 

「今回の一件で永遠亭をどうするかについて、一応貴方の意見を聞いてみようかなと。」

 

紫さんが少し怖い笑みを表しながら喋る。

 

「どういうことです?」

 

「永遠亭をこのまま幻想郷から追い出すのか、将又別の処置をとるか。」

 

えっ、追い出しちゃうの?

 

「……お師匠、どういうことですか?」

 

その紫さんの一言を聞いて、優曇華は永琳さんに質問する。……何やら複雑になってきたみたいだ。

 

「簡単に説明すると、今回の異変は度が過ぎた。今までの異変が可愛いくらいにね。」

 

霊夢が代表して説明し始める。度が過ぎたと言うなら、今回よりも春雪異変の方が重大だと思うけど。

 

「兎に角、私は追い出しには反対なの。今まで幻想郷は『全て受け入れる』態度だったから。紫は追い出したいらしいけど、どうせつまらまい別の事情が絡んでいるんでしょうね。」

 

霊夢は紫さんの方を睨んだ。紫さんは扇で仰ぎながら、無言を返事とした。

 

「それで、あんたにも一応聞いておこうかなと。」

 

紫さんの『別の事情』は少し気になるが、今はそれどころじゃない。もしここで名案が浮かばないと最悪永遠亭の人達が追放されてしまうかもしれない。

 

「すみません、姫様、お師匠……。」

 

少し考えていると、優曇華が永琳さんと輝夜さんに泣きついていた。そういえば、今回の異変は優曇華を回収する月に住む人々を阻止する為に起こしたんだっけ。

 

「いいのよイナバ。私は久しぶりの来客で充分楽しませて貰ったわ。」

 

「気にする必要はないわ。また別の所を探せばいいのよ。」

 

2人はそれぞれ優曇華を慰める。それを聞いた優曇華はもっと泣き出してしまったが。

 

何とかして彼女達を幻想郷に留める為には―

 

 

 

「……。それなら、薬屋として永遠亭を使ったらどうでしょうか。」

 

「どういう事かしら?」

 

咄嗟に思いついていたことを、すぐに口に滑らせてしまったようだ。紫さんに説明を求められる。

 

「今の人里は永遠亭みたいな医療関係の施設が少ないんです。もしここを病院として活用できるのならば、きっと人里の皆も大歓迎の筈です。」

 

後付けのように理由を添える。実際、人里には病院の様な施設がない。ここ永遠亭はある程度ベッドも揃っている。ただ、人里から少し遠いのと、元々ここまでどう来るのか俺は知らない。そういう意味では少し難色が残るのだが。

 

「貴方にしてはなかなかいい案ね。病院として活動するのなら、隠れないということね?」

 

紫さんは永琳さんの方を向いて尋ねる。

 

「……そうなるわね。」

 

「そうねえ。私も別に絶対追い出したという訳では無いし、人里と交流を持つのなら賛成ね。」

 

紫さんも賛同してくれたみたいだ。とりあえず、これで永遠亭は幻想郷に留まれる筈だ。

 

「話は終わった? 私はもう帰らせてもらうわよ。どうせ異変の後はウチの境内で盛大な宴会でもするんでしょうし。」

 

異変の時の霊夢はとても忙しそうだ。普段に関してはノーコメント。訪れると、だいたい家に居るからなあ。

 

「それじゃあ永琳、術を解いてここを病院としましょう。」

 

輝夜さんがそう言い、永琳さんはこの部屋から移動した。優曇華はまだ輝夜さんに泣きついている。

 

「私達は帰るけど、貴方も速いうちに戻りなさい。あの半獣が心配しているわよ。」

 

紫さんの言う『半獣』とは誰だろうか。

 

「分かりました。」

 

こうして『永夜異変』は幕を閉じた。数時間も経てば、明日はいつも通りの朝を迎えることができるだろう。

 

 

 

「今日はありがとう。1度ならず2度までも助けてくれて。」

 

霊夢と紫さんが帰り、一段落ついた所で俺は帰ろうとする。体の傷は全て永琳さんに治してもらった。あの人の薬はよく効く。というか、服用してからみるみる傷が癒えていくのは怖い所だけれど。

 

「いえいえ、人里側としても永遠亭の様な病院は歓迎だと思いますよ。それに、輝夜さん達が幻想郷から追い出されるのは悲しいですから。」

 

「結構嬉しい事を言ってくれるわね。……そうねえ。それじゃあ、報酬を与えましょう。」

 

輝夜さんが自慢げにそう言うと、予め準備していたかのように永琳さんが奥から何やら高そうな壺を持ってきた。……あれはいいものだ。

 

「姫様を、我々を助けてくださったほんのお礼です。」

 

高そうな壺を受け取り、暫く角度を変えて柄を見ていたが、中に何か入っているみたいだ。

 

「中には蓬莱の薬が入っているわ。」

 

ホウライノクスリ…初めて聞く。

 

「どんな効果があるんですか?」

 

「飲んだら不老不死になれるわ。」

 

……………………………えっ。

 

「それって禁忌なんじゃ。」

 

「確かに月では禁忌として扱われているけど、幻想郷では何ら問題視されていないわ。」

 

外の世界でもしこんなものがあれば、たちまち大混乱に陥りそうだけど。

 

―誰だって『死』は怖いから、きっと取り合いになるだろう。

 

 

 

 

「折角ですけど、蓬莱の薬は俺にはいりません。」

 

意外な返答だったのか、2人は不思議そうな顔をする。

 

「貴方は『死』が怖くないの?」

 

「確かに『死』は怖いですよ。でもそれと同じようなに怖いものを、俺は知っていますから。」

 

自分の命の終わりが怖くない人間など決していないだろう。俺が半分鴉天狗だとしても、きっとどの妖怪も怖いだろう。

 

「誰かに先立たれる事。親しい人達を見送る事が、どんなに悲しく恐ろしいものかは俺は知っています。だから蓬莱の薬はお返しします。」

 

そう言って俺は持っている壺を永琳さんに返す。

 

「本当にいいのね? 」

 

輝夜さんは改めて聞き直す。俺は何も言わずただ頷く。

 

「珍しい人間もいたものだわ。あの巫女もそうだけど、貴方もね。」

 

「20年も生きていない俺がこんな事言うのもあれですけどね。それに俺は人間と天狗の間で生まれた子なんです。多分年齢も人間に比べれば長くなりそうですし。」

 

妖怪だったのか、と驚く輝夜さんと永琳さん。その2人を後にして、俺は永遠亭を離れる。

 

 

 

「……まさか、あんたが人間じゃなくて妖怪だったなんて。それなら人間離れしたあの回復も合点がいくわ。」

 

帰宅する為には迷いの竹林を出なければならない。1人では出れないので、優曇華に出口を案内してもらっている。

 

「優曇華も今日はありがとう。」

 

優曇華はとても満足そうにする。嫌味を言えば優曇華が永遠亭に運ばなかったら、俺は今回の異変に関わらなくて済んでいただろうけどね。まあ、貴重な経験もした訳だから気にしないでおこう。

 

「私からも感謝するわ。一応あんたのおかげで、まだあの2人とここで生活できるようになったから。」

 

出口に着いた時、優曇華が恥ずかしそうにそう言う。どういたしまして、と答えると調子に乗るな、と言われてしまった。

 

 

 

「ふぅーん。そんな事があったのね。」

 

レミリアが他人事の様な感想を言う。

 

「レミリアが俺を吸血して気絶させた事が今回俺が異変に関わった大元の原因だと思うけど。」

 

さぁ、とレミリアはしらける。ふざけるな、と言いたいところだが彼女と争っても恐らく俺がメインディッシュとなるだけなので辞めておこう。

 

「それに……君は『不老不死』に興味無いのね。」

 

ほんの合間に、珍しくレミリアが寂しげな顔を浮かべる。レミリアは不老不死が欲しいのかな。

 

「ああ。独りぼっちは悲しいからなあ。」

 

俺も少し感傷に浸る。当時の俺は親が居なくなった現実を受け入れられなかったっけ……。

 

「そうね。私も独りぼっちは嫌ね。」

 

レミリアはそう言った後、紅茶に口をつける。普段はあまり飲まないのに。

 

「……今日は帰るね。明日は仕事だから。」

 

俺は椅子から立ち、出入口の扉を開ける。

 

「それじゃあ、また今度ね。」

 

いつもと違う雰囲気のレミリアに戸惑いながら、俺は図書館を出る。

 

 

 

「こんにちは、大樹さん。」

 

「っ!?」

 

帰りの廊下を歩いていると、咲夜さんが突然現れた。相変わらず不意に喋りかけるのでびっくりする。

 

「なんだ、咲夜さんですか。」

 

現れた咲夜さんの顔はいつもとは違っていた。なんかこう……寂しそうだ。主人共々、今日は何かあったのか? 喧嘩ではなさそうだけど。

 

「……私は『不老不死』が欲しいです。人間の私がお嬢様といつまでもお仕えできませんから。」

 

「……。」

 

そうだったのか。レミリアとの会話から彼女はおよそ500年以上は生きている事になる。それは人間にはとても生きる事ができない年月。

 

「と言うか、咲夜さんは人間だったんですか。」

 

「あら、言ってませんでしたっけ?」

 

咲夜さんはあまり自分の事を話さない。紅魔館には妖怪か妖精しか居ないものだと思っていた。それに咲夜さんは瞬間移動みたいなのも出来るしなあ。

 

「帰りを止めてしまって申し訳ありません。また紅魔館へいらしてくださいね。」

 

咲夜さんにそう見送られながら俺は人里へ戻る。

外には朝日が昇っており、その日差しが紅魔館の前の湖を綺麗に輝かせていた。

 




ここまでお読み下さってありがとうございます。
主人公の魔法属性を土に変更しました。先の話の展開を考えた上でこちらの方が良いのかなと思いついた次第です。申し訳ありません。

次回も更新不定期とさせていただきます。
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