天狗の幻想入り   作:ジャジャジャジャーン

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永夜異変から半年と少しが経ち、大樹は幻想郷の春を2度迎えた。だが、今年も春も異常性が見られる。それも去年とは真逆の。


第29話 60年の境目

「いやしかし、今年の春は鮮やかですなあ。」

 

「まるで去年の分まで咲いているとしか思えませんぞ。華やかだから問題無いじゃけどな。」

 

偶然通りかかった団子屋で座っていた2人の老人の会話が聞こえてきた。確かに、今年の桜は素晴らしい鮮やかさであった。桜だけではなく草原に咲く野花達もだ。

 

だが、それ故の異常が今起きている。それも植物の生態的には致命的な事が。

 

 

 

異変に気づいたのは2日前くらいだった。その日は霖之助さんと魔法の森から出てすぐの原っぱに向かっていた。というのも、香霖堂から掘り出したヘリコプターのラジコンを2人で何とか修復、改善して、電気の代わりに魔力を使って動かすようにすることが出来た。早速遊ぶ為に、見晴らしの良い場所に移動していたわけだ。

 

目的地へ到達すると、植物達が花を大量に咲かせており、それは凄い綺麗であった。花に関しては全く詳しく無いのでどれが何の種類かまではあまり分からなかった。

見たことある奴が咲いているな〜。……おっ、あれは確かオオイヌノフグリだっけか? 小学生の理科の教科書に載っていたっけ。それにあそこには……向日葵?

 

「霖之助さん、幻想郷では向日葵は春に咲くのか? 」

 

「いいや。向日葵は夏に咲くけど……。」

 

霖之助さんもその向日葵を見て驚く。数はそんなに多くはないが、その背丈の為周りからは目立っている。

 

「……そうだ。過去に1度だけ、今と同じ事が起きた事がある。」

 

先程まで何かを思い出そうとする素振りを霖之助さんがポツリと呟いた。

 

「あれは確か……うん、ちょうど60年前だったかな。早春に咲かないはずの花が大量に開花した事がある。それに今回と同じように花の咲いている量も例年と比べても異常だった。あの時は偶然かと思ったけど、異変の可能性は十分にあるね。」

 

 

 

そう、今回の異常性は単に花が多いだけではない。この時期に咲くはずが無い花が咲いている件が問題だ。……まあ、また霊夢が解決してくれるだろうから心配はしていないけど。

因みに、ラジコンは見事に動いた。ああいう玩具には童心を擽られる。また次回も霖之助さんと2人でどんどん玩具などの電化製品を復活させるつもりだ。ああいうモノづくりというか、機械を弄るのは楽しい。

 

「見て見て、大樹!」

 

「ん? どうしたんだフランドール?」

 

「ちゃんと飛んだよ! しかもちゃんと操作できるよ!」

 

先程の団子屋を通り過ぎた後、紅魔館を訪ねた。フランドールに例のラジコンをプレゼントしに来た。最初はよく解らず微妙な反応をされたが、今では使い方が分かり、だいぶ楽しんでもらえているようだ。

 

「おお、まだ数分しか経ってないのに。慣れるのが速いな。」

 

「外の世界にはこんな玩具がいっぱいあるの?」

 

「ああ。それにもっと多くの種類もある。また修復できたら渡すよ。」

 

フランドールは嬉しそうにラジコンのヘリコプターを操作しながら図書館を走り回る。室内向きでは無いけど、ここの図書館は横にも縦にも広い。障害物もあまり無いからきっと存分に楽しめるだろう。

 

「それで、私への貢ぎ物は?」

 

背筋が凍るような声でレミリアが囁いた。いきなり後ろから来るのは困る。ここのメイド長含めて。

 

「……無い。」

 

レミリアは見た目はフランドールと変わらない。だけど、あの性格でラジコンをプレゼントした所で喜ぶのかどうか。

 

「……。まあいいわ。あんなに嬉しそうなフランを見れただけで、よしとするわ。」

 

「それは良かった。」

 

初対面と比べてフランドールはだいぶ変わったなあ。今日も玩具よりかサンドバッグの方が喜ぶのかなー、などと考えていた。

 

「そういえば、咲夜さんは?」

 

レミリアが自分でティーカップを持ってきてから気づく。というか、咲夜さんは神出鬼没で紅魔館で一番会ってない人だからなあ。

 

「何だか異変がどうこうで外に出かけたわ。」

 

「異変って、やっぱりあの花の事か?」

 

「ええ、そうみたい。今回は誰かが動かなくても勝手に収集が付くと思うけどね。」

 

「それはどういう……?」

 

少し引っかかる事を言い出すレミリア。

 

「知りたいのなら、大樹自身が調べてみたら? きっと、想定外のことも聞けるかもしれないわよ?」

 

全てを見通しているかのようにレミリアは語る。

彼女の能力の為か、異変の本質を知っているのか? それに、『想定外の事』?

兎に角、気になるので一旦帰宅して身支度する事にした。帰路から幻想郷の山々を見下ろすと、沢山の花によって色づいていた。異変である事に変わりはないが、綺麗な景色を見れるのは悪くないな、と思った。

 

 

 

「久しぶりですね、藤村大樹さん。冥界であった時以来ですね。」

 

人里に入る為に通らなければならない門の前には、あの閻魔様が立っていた。

 

「あ、お久しぶりです。映姫様。」

 

「突然ですみませんが、今日は貴方に話をしに来ました。少しお時間を頂いても?」

 

「ええ、全然構いませんよ。それで、話と言うのは?」

 

「単刀直入にですが、貴方には戦う為に必要な『力』と『覚悟』はありますか?」

 

……映姫様って、こんな熱血キャラだったのか? 真顔でそんな事を言われても。

 

「戦うって…。一体、何の為にです?」

 

「無論、貴方自身の目的の為ですよ。」

 

「……別に母親と会うだけで、何も争いを起こすようなことにはならないと思いますが。」

 

この際何故彼女が、俺が幻想郷に来た目的を知っている風なのかはもう突っ込まない。閻魔は神だから、きっと何でもお見通しなのだろう。

 

「いいえ、幻想郷に争いは付き物です。その目的を成すには、必ず争いを強いられます。先程言った2つが無いなら、目的を諦めた方が賢明です。」

 

「……『幻想郷に争いは付き物』ですか。」

 

「それも、弾幕ごっこの様な生温いものじゃありません。文字通りの殺し合いですけど。」

 

「えっ。でも、霊夢が弾幕ごっこを制定してからは殺し合いは起きなくなったんじゃ……。」

 

「確かにその通りです。彼女の画期的なアイデアで、殺し合いは圧倒的に減りました。しかし、力のある妖怪、取り分け男性はそうではないのです。男女の違いだからとは言いませんが、強さと華やかさを求める弾幕ごっこに男性は興に乗らない傾向が多いのです。」

 

あれ、弾幕ごっこは男やらないのか。確かに、今までで弾幕ごっこをした事がある相手といえば妖精と霊夢と紫さん。いずれも女性だったな。と言うより、男の妖怪なんて霖之助さん以外知らないからなあ。

 

「兎に角、すぐでは無いはずですが、後数年の内に必ずその時は来ます。その時までに、貴方は強くなる必要があります。」

 

「は、はぁ……。」

 

「貴方はこれから一週間に必ず1回は白玉楼へ向かいなさい。そこで、あの半人半霊の庭師から剣術を学びなさい。それが貴方の積むべき善行です。」

 

なんだが話が大きくなってきた。白玉楼と言えば、1度瀕死状態の時に行ったことがある冥界のお屋敷だ。

 

「妖夢から剣術を教われと?」

 

「はい。既に話はつけてあります。彼女も快く承諾していました。」

 

宴会で1度だけ体験した妖夢の剣技は凄かった。皆は半人前だと馬鹿にしていたけど。

 

「何はともあれ、分かりました。わざわざ手配して下さって、ありがとうございます。」

 

それから、映姫様から冥界への行き方を教えて貰った。場所がまさか幻想郷の上空だとは思いもしなかった。宴会の時に冥界のあの2人が気軽に来ていたのも頷ける。

 

 

 

「貴方は、何故自分の母親が幻想郷から出たのを知っていますか?」

 

別れ際に、映姫様がポツリと呟く。

 

「……考えた事も無かったです。」

 

母親の謎の原点、そもそも何故幻想郷からわざわざ外の世界へ出たのか? 名前すら思い出せない状態なので、あまり気にしていなかった。

 

「それに、幻想郷に戻ってきた理由も不自然ですよね。紫から聞いた話だと『力を失って結界に取り込まれた』らしいのですが、あれは誤魔化していますね。きっと、別の理由があるはずですが……。」

 

映姫様はそう言いながら深く考え込む。

 

「謎は貴方自身にもあります。貴方は天狗としての能力、空を飛ぶ事は出来ますよね?」

 

「ええ。最初は霊夢の様に人間でも飛べるものだと思ってましたけど、別の人から天狗の能力だと言われました。」

 

「それともう1つ、貴方には能力がありますよね?」

 

「一応ありますけど、何の能力か分かりません。特別な力だとは言われましたけど。」

 

1度経験した事がある、あの感覚。萃香が言うには、俺の特殊能力―萃香の霧の能力と同じ部類だと言われたが。自分では瞬間移動能力だと思っている。

 

「兎に角、貴方はその複数の謎を解かねばなりません。そして、その方法は1つ。」

 

「母親と会う、ですね。」

 

「ええ、よく分かってますね。貴方なら、きっと成し遂げられるでしょう。その為には毎日の鍛錬を怠らないことです。いいですね?」

 

最後の最後まで念を押され、映姫様は帰っていった。

 

 

 

―『その時』までは、思っていたよりあまり時間が無かった。運命は刻々と迫ってきていた。

 

 

 

 




ここまでお読み下さってありがとうございます。

次回更新は未定です。
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