雪風が艦隊から離れる少し前。
駆逐艦雪風 艦橋
?1「艦長、旗艦大和から、指令です。『探知した潜水艦を追跡せよ。』とのことです。こちらからは先制攻撃はするなとも言ってます。」
?2「うん、分かったよシロちゃん。」
シロちゃんと呼ばれた副長 宗谷 ましろ(むねたに ましろ)二等海佐(26)は眉間にシワを寄せて自分を呼んだ艦長 岬 明乃 (みさき あけの)二等海佐(26)に注意する。
ましろ「艦長…せめて任務中は副長と呼んでください。これでは他のクルーに示しが着きません。」
艦長の岬と副長の宗谷は秋山参謀と同期で、岬は知人をニックネームで呼ぶクセがあった。
岬「え~、でもそっちのほうが呼びやすいよ。シロちゃんは真面目過ぎるからこれくらいが丁度良いと思うよ?」
ましろ「そういう問題では…いえ、いいです。とにかく先制攻撃は許可されてませんが即応体制はしておいた方が良いと思います。」
そう言ってましろは話の内容を強引に本来の任務へ戻した。
岬もそうだねと返事を返し、マイクを手にした。
岬「艦長より乗組員へ、本艦はこれより不明潜水艦の追跡に入ります。総員戦闘配置!第2戦速、取舵いっぱーい!」
?3「取舵いっぱーい!」
操舵手の知床 鈴(しれとこ りん)一等海尉(26)が復唱し、舵を切る。
艦体が僅かに傾き、不明潜水艦のいる方向へ艦首をむけ増速した。
岬(なんだろう…この胸がざわつく感じ…なんだか嫌な予感がする…)
宗谷「艦長?どうされました?」
岬「あっ…何でもないよ、シロちゃん。」
何時の間にか険しい顔つきになっていたのか宗谷が声をかけるが岬は気のせいだと思いその不安を押し殺したのであった。
海面下200メートル
聴音手「敵艦隊から駆逐艦1隻が分離、本艦の方へ向かって来ます!」
副長「急速潜航!「待て…」しかし艦長!」
副長が回避行動を指示しようとしたところを艦長の森 英学(サム ヨンハク)上佐が待ったをかける。
森「ここで回避行動にでればそれこそ向こうの餌食だ…。分離した敵艦の距離が10キロメートルになったら知らせろ…。」
聴音手「了解。」
副長「艦長、どうなさるおつもりですか?」
森「ちょうど良い機会だ…本艦の能力を奴等に見せつけやろうと思ってな…」
森の発した言葉に副長は一瞬目を見開き、驚きの表情となるがすぐに反対の意見を口にする。
副長「艦長、それは危険過ぎます。分離した駆逐艦1隻だけならば本艦の能力でも十分に圧倒出来るでしょう…しかし、向こうは艦隊です。此方が魚雷を撃ち尽くす前に向こうの対潜魚雷が本艦を捕らえます!」
森「別に敵艦隊全てを相手にするつもりは無い。接近してきている艦と大物1隻。これだけを目標にする。」
副長「し、しかし…」
森「副長の言いたいことは分かる…だが、だからこそやる価値がある…」
森の静かに、それでも確固たる口調に副長は遂に折れ、了解と返事を返した。
森「水雷、アクティブソナーを作動させてから魚雷発射までどれくらいかかる?」
水雷長「1分も掛かりません。お約束します!」
水雷長がそう豪語するが、実際にそれができるだけの技量と能力が、この艦と乗組員には備わっていた。
森「よし、敵艦の距離が8キロメートルになったらアクティブソナーを作動。敵艦へ魚雷を二発撃つ。勝負はそこからだ!」
駆逐艦雪風 CIC
雪風水測員、万里小路 楓(まりこうじ かえで)三等海尉は乗艦が目標に近づいている間も、不明潜水艦の解析を試みていた。
彼女は音紋を最初に聞いたときから、この音に聞き覚えがあったのだ。
万里小路「これではない…、これでもありませんわ…。」
水測員「三尉、やはり思い違いでは…北朝鮮の保有してる潜水艦はどれも調べ尽くしましたし、同盟国の中国が保有してる潜水艦のものとも一致しませんでしたし…」
部下の水測員がなげやり気味に言い放つ。
万里小路「思い違いでも、聞き間違えでもありませんわ。この音は確かに聞き覚えがあります。必ず該当する潜水艦があるはずです。」
万里小路の耳のよさは海軍の中では有名だった。
潜水艦の推測員とも勝負しても負けないと言われているほどなのだ。
万里小路「もう一度調べ直して見ますわ。其方は目標の監視をお願いします。」
水測員「了解。」
そして再びデータの音源を調べ直して行く。
万里小路(北朝鮮と中国海軍の潜水艦のどれとも一致しない…現役の艦艇ではない…ルーツはどちらも旧ソ連海軍…もしや!)
万里小路が該当潜水艦のデータを見つけるのと部下の水測員からの報告が重なったのはまさにその時にであった。
水測員「敵潜水艦よりアクティブソナー検知!続いて魚雷発射管注水音!」
敵潜水艦のピンガーが雪風を捕らえたのだ。
お嬢様口調は難しいですね…