ノーネーム・ノーライフ~ゲーマー兄妹は箱庭で神話を紡ぐそうですよ?~   作:アウトサイド

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第二話「ゲーマー兄妹は現実を前に笑うようですよ?」

「や、やだなぁ、御二方。そんなに睨まれては、黒ウサギは怖くて死んでしまいますよ? ええ、ウサギとは古来よりストレスに弱い生き物。そ、こ、で! ここはこのステフを生贄にして、穏便にお話をいたしましょう!」

「ちょっ、黒ウサギ!? なんでわたくしを生贄に捧げるんですの!? 生贄というなら、“月の兎”であるあなたの方が適役でしょう!?」

 

 空と十六夜の言葉に茂みから現れたのは、バニーガールなうさ耳少女と飛鳥を東洋のお嬢様とするなら、西洋の貴族のような少女だった。

 ……出てきたとたん、空と十六夜を無視して漫才を繰り広げているが、なかなかにかみ合っていない。具体的には、こいつら絶対お互いにいじられキャラ、ツッコミキャラであるはずのくせに、セルフで漫才繰り広げてるよというところだ。

 

「あ、あの、そのような冷めた目で見られるとさすがの黒ウサギも凹んでしまうといいますか……」

「冷静に考えてみろ。俺と空は上空から湖に叩き落されてずぶ濡れ。そのうえでこんな下手クソな漫才を見せられてんだぞ? いいかお前ら、漫才をやるならツッコミとボケ。つまりは、弄るやつと弄られるやつを分けろ! よし、空、どうする?」

「ふっ、愚問だな。当然、俺たちがやるべき行動は決まっている! 十六夜、いくぞ!」

「へ、御二方? なぜ、そんな好奇心旺盛な捕食者のような目をして、黒ウサギに近寄っているので? ちょ、ちょっと黒ウサギは、用事を思い出したのでこれにて――ひぎゅ!」

 

 空と十六夜がやったのは単純なこと。黒ウサギと呼ばれる少女の頭の上についているウサ耳、それを握っただけだった。ただし、そこに両者には明確な差があった。タッチ系エロゲや動物を愛でるゲームをこなしてきた空は、あくまで愛玩動物を愛でるように左を。対し、あくまで好奇心に身を任せる十六夜は、少々乱暴な手つきで黒ウサギの右耳を握っていた。

 

「ちょっ、いきなり黒ウサギの繊細な耳に触れるとはどういう思考ですか!? あ、その特に左のお方はその、あ、その触り方は、くぅっ、か、感じすぎちゃいますのでぇっ!」

「好奇心によって突き動かされた結果だ。諦めて受け入れな。ていうか空、お前が触る度にこいつ、すっげぇびくんびくんしてんだけど……?」

「ふっふっふっ、くるしゅうない。正直、リアルでの実践経験はないが、それでも相手の反応を見ながらやるのがコツだ」

「ふむ、こんな感じか?」

「いや、あの、もう黒ウサギの顔が女性として見せられないレベルのトロけかたをしているようなのですが……?」

「おっ、じゃあ、代わりになるか?」

「思う存分、好きなだけ愛でてあげてください」

「ス、ステフ!? う、裏切りものぉぉぉ!」

 

 ひにゃぁぁぁぁぁぁっ!?

 

 

 

 

 ――――――…………

 

 

 

「う、うぅ……にぃ、しろ、忘れてた……?」

「すまんっ! いや、ていうかまさかそこまで愛でられるとは……そこの二人、やりすぎは嫌われるぞ?」

「そ、れ、を!? 二人でこの黒ウサギの耳を弄って遊んでいたあなた様がおっしゃいますか!? ていうか、話を聞いていただくまでにこれほど時間がかかるとは思いませんでした!」

「はいはい、わかったからいい加減説明を始めてくれよ」

「うー、理不尽でございます。ステフ、傷心の黒ウサギの代わりに説明をお願いします~」

 

 そして、黒ウサギはそのまま体育座りの状態に移行し、いじけてしまった。ステフと呼ばれた少女は、それを見てため息を吐きながら説明を始めた。

 

「では、改めて定型文、テンプレでご挨拶させていただきますわ。皆様方、ようこそ異世界“箱庭”へ。わたくしたちは、お三方に……あれ? 二人ほど多いような……? ねぇ、黒ウサギ。わたくしたちが招待したギフト所持者って、三人ではなかったんですの?」

「あー、その件なんだがな、こっちで少し確認とれたわ」

「……白、にぃ……手紙、もらってない。メールで来た」

「では、別の誰かに召喚された? いえ、それならそうとその人物は現れないのはおかしな話ですし……」

「おいおい、初っ端からそこで躓くなよ。この際だ、空たちのことは後回しにしてこの場所について説明してくれ」

 

 ナチュラルに後回しされることが決まった二人だったが、意外にも気にしていなかった。二人は覚えている。この世界に召喚される寸前、声をかけてきたあの“少年”のことを。何よりも、その目を見ていた。これからゲームでもするかのような期待と幸福を語るような、ゲーマーの目を。

 もし、兄妹二人をこの世界に呼んだのが、あの少年だというなら多少の異論は飲み込んでやるさ。『 』にゲーマーとしてゲームを挑んできたんだ。それも、強引に世界のすべてを掛け金(Bet)させる形で。

 

 だったら、それ相応に、それ以上に、この世界を楽しませてもらおうじゃねぇか。

 

「わかりましたわ。では、この箱庭についてご説明させていただきます。まず、わたくしの名前はステファニー・ドーラ。そちらでいじけているのが、黒ウサギになります。ここ箱庭では、様々な修羅神仏や悪魔、星から与えられた恩恵。通称ギフトを利用したゲームを行うためのステージになりますの……あの、黒ウサギ? さすがにそろそろあなた立ち上がらないと、ただの弄られキャラで終わりますわよ?」

 

 いい加減、いつまでも体育座りでのの字を書いている黒ウサギが邪魔くさい……訂正。かわいそうに思えたのか、ステフは黒ウサギに話を促した。

 

「うぅ……いつからなんですか? いつから、同じ弄られキャラ属性を持つ黒ウサギとステフにこんな差が……?」

「あなたの場合、その……すでに恰好からして面白いせいじゃないかしら?」

「同意」

「間違いないな」

「同じく、異論なし」

「仕方、ない」

「ウワァァァァァン! やっぱり、全部白夜叉様のせいじゃないですかぁぁあ!」

 

 黒ウサギは泣き崩れた。

 

「ちょっ、せっかく説明が再開されようとしていたのに、なんでそんなこと言うんですの!?」

「うーん、ほらあれよ。かわいい子ほどいじめたくなるっていう……」

「あなた方は小学五年生ですの!? ああもう! このままじゃ説明が終わらないので、巻きでいきますわよ、巻きで!」

 

 その後の黒ウサギを慰めつつのステフの説明はこうだ。

 

 ・“箱庭”には、様々な修羅神仏のような超上的な存在がいる。それらが主催者となり、ギフトゲームが開催されている。

 ・ギフトゲームは文字通り、ギフトと呼ばれる特殊な能力を用い、競い合うもの。

 ・ギフトゲームは金品、土地、利権、名誉、人材など様々な物をチップに行われ、勝者は賭けられたチップを全て手に入れられる。

 ・“箱庭”にも法はあるが、ギフトゲームに関してはその適応外となり、参加するからには全て自己責任になってしまう。

 ・で、そのギフトゲームに参加するためには、特定の集団「コミュニティ」に参加する必要がある。

 

「ふむ」

 

 ここまでの説明を聞いたうえでの空の感想はこうだ。

 

(えっ、俺らギフトとか持ってないんですが?)

 

 これは勇者が装備を忘れたとかそういうレベルの話ではない。そもそもゲーム自体に参加する資格がないということだ。いや、最悪ギフト抜きで参加をすればいいということになるのだが……。

 

「ハァー、ホント、リアルなんざクソゲーだっつーの……」

「にぃ、大丈夫?」

「白、とりあえず俺らがやることは決まったな」

「うん」

「まず、俺らは否が応でもステフたちのコミュニティに所属する。少なくとも、あいつらのコミュニティの現状を()()()()()、そこは問題ないはずだ。で、その先で何らかのギフトを手に入れるしかない。何、チュートリアルだと思えば、まだ俺らでもなんとかなるはず」

「でも、問題は、そのあと」

「ああ、弱小コミュニティだと思われるあいつらのコミュニティで、俺たちは不敗であること。なぁ、白」

「にぃ」

「「ちょっとは楽しめそうじゃん」」

 

 兄妹は笑った。現実というクソゲーを前に、この『箱庭』という広大なゲーム板の上であまりにもちっぽけな存在のまま傲慢不遜に笑ったのだ。

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