サザエ=サン   作:サンシタ

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◆更新◆
今回もサザエさんアトモスフィアは欠片も無い、すまんな、本当にすまん





#5 ダディ・イズ・マム・バイ・インベンション

AM01:30

オムラ・ホームテック本社に戻る車中、スティーブンスは今後の戦略の立て直しを謀っていた、モーティマーを追い落とし自分がオムラのトップに立つ試みは会長であるアルベルト・オムラが健在な限り不可能である。

 

 

それ以前に現在の自分の地位さえ危うくなってきた、オムラ・インダストリ本社から技術を不正に入手した事、そしてモーティマーの失脚を目論見、社の内外で工作していた事が会長に感づかれたのだ。

 

 

技術の流出云々は正直さほど気にはしていない、なにしろ工業分野においてオムラと他社の技術格差は圧倒的であり、サンプル一台を入手した所で技術の解析と量産体制を確立した時点でその技術は陳腐化し、オムラは更なる技術を創造する、会長の懸念は杞憂というものだろう。

 

 

だが不興を買ったのは事実であり、かくなる上は会長から指摘された案件を速やかに解決し、会長の怒りを鎮めるより他に無い、まずは一台だけ売れたタマゴ割り機の回収だ、可能ならば購入者も物理的に排除した方が良いだろう、……プロジェクト担当者も。

 

 

IRC端末を操作し顧客対応室に購入者への対応を指示した、車は深夜の工業地帯を走り続ける。

 

 

…………

 

オムラ・ホームテック本社

 

 

同、オスモウ会議室

 

 

草木も眠るウシミツアワー、会議室にてタマゴ割り機プロジェクメンバー、販売チーム・リーダー、スズキは全自動ケジメ装置をセットされ同僚達とスティーブンスの帰りを待っていた。

周囲をグルリと取り囲む同僚達は「ダイジョブダッテ!」「そのうちイイコトモもアルヨ」などと口々に励ますが、正直気休めにもなっていないようだ。

 

 

「アイエエエ……アイエエエ…」スズキは憔悴しきった様子で左腕に装着されたケジメ装置を眺めた、機体に輝くオムラのロゴ、単分子構造の刃先がキラリと光る、彼はケジメを怖れている訳では無かった、社会人として自身の失態を我が身を以て償う、それは当然の事だと理解はしていた。

 

 

彼が憔悴していた理由は、この会社での自分の未来が閉ざされたという絶望感からである、他の会社ならばケジメを行えば失態は(ゆる)される、ケジメを行った人間に対し寛大に対応することが奥ゆかしい振る舞いとされ、その為ケジメの痕跡があるカチグミサラリマンや高級官僚は実際珍しくなく、闇黒メガコーポと呼ばれる巨大企業とて例外ではない。

 

 

だが……だがこの会社は……スティーブンス社長は違った、この会社ではケジメされたサラリマンは例外無く出世コースからドロップアウトする、そしてそれは実に狡猾かつ邪悪な方法で行われる。

 

 

ケジメされたサラリマンは新たな部署に転属される、そこでの待遇は……給料や勤務時間は変わらないが業務内容が今までの物とまるで違うのだ!

 

 

窓の無い部屋で小学生にも出来るような簡単な作業を一日中行わせる、その間、外出はもちろん、一切の私語も禁止される。

 

 

社内の人間はこの部屋を『カンオケ・ルーム』と呼び怖れる、技術や知識、経験を徹底的に傷付け、踏みにじり 、嘲笑し、侮蔑する、いわば魂の屠殺場とでも言うべき魔窟であるからだ。

 

 

結果『カンオケ・ルーム』に転属された社員は自主的に退職へ追いやられてしまう、なんと邪悪なる闇黒社員管理か!

 

 

そんな最中、会議室のスピーカーから「社長のお帰りドスエ、お迎えをするドスエ」人工マイコ音声が響く。

 

 

その声に反応してその場のスタッフ達が姿勢を正して整列し、スティーブンスの到着を待つ、スズキもケジメ装置をぶら下げたまま整列に加わる。

 

 

ババァーン!乱暴にドアが開け放たれスティーブンスが入室する、「「「「お疲れ様でした!スティーブンス社長!」」」」一糸乱れぬオジギとアイサツ!そんな社員達を意に介さずスティーブンスは開口一番言い放った。

 

 

「スズキ=サン、ケジメは中止だ!」

 

 

「アッアイエッ?!」呆けた調子で返答するスズキ、事態の急展開に理解が追い付かないのだろう。

 

 

「分からんのか?いいか?ケジメは中止と言ったんだ」スティーブンスはゆっくりと丁寧にスズキに語りかける。

 

 

「ケジメ……中止……中止?!」「そうだ、中止だ」ようやく事態を理解出来たスズキにスティーブンスは頷く。

 

 

「アッ……アハハッ……ヨカ…ヨカッタ……」全身から力が抜けその場に崩れ落ちる、((おお、ブッダよ、ありがとうございます、ありがとうございます………))スズキのニューロンに歓喜と安堵、感謝といった感情が満ち、目から涙が零れ落ちる。

 

 

スティーブンスはそんなスズキの様子を意に介さず言葉を続ける、「スズキ=サン、君はセプクだ」「アッアババババーッ!」スズキは余りの事態の急変ぶりにニューロンが耐えきれず、しめやかに失禁し、失神した。

 

 

失神したスズキの前にクローンヤクザが一台の機械を転がしてきた、金色の車輪がついた漆黒の土台に、背もたれの様に金色の十字架めいた柱が立っている、オブツダンめいたその機械はザワついたアトモスフィアを会議室内に漂わせている。

 

 

「彼にはこの全自動セプク装置のモニターをやって貰う」スティーブンスは平然と口にする、会議室がザワめいた、クローンヤクザがスズキの体を抱えた。

 

 

「今回の全自動タマゴ割り機は残念な結果だったが、我々はこの教訓を生かし、更なる前進を続ける」会議室がザワめいた、クローンヤクザがスズキの体をセプク装置に載せた。

 

 

「我々の挑戦は一回や二回の失敗で挫折する様な軽い物ではない、この失敗は次の躍進の為の大いなる助走なのだ!」会議室ザワめいた、クローンヤクザがスズキの体を拘束具にセットした。

 

 

「準備はどうだ?」スティーブンスはクローンヤクザに問う、「セットが終わりました」「問題アリマセン」口々に答えるクローンヤクザ。

 

 

スティーブンスは満足げに頷くと機械の始動を指示した。

 

 

グォーン、グォーン、エンジンが回転速度を上げ、ベアリングやギアが高速回転する、シリンダーはせわしなく上下運動!機体各部にセットされたLEDボンボリが神秘的な光を放つ。

 

 

機体から人工マイコ音声が大音量で「セプクしますドスエ」「セプクしますドスエ」の高らかに声をあげる。

 

 

そんな最中「……ウッ…ウーン…」スズキが意識を取り戻した、機械の駆動音と耳もとで(わめ)く人工マイコ音声で目を覚ましたのだろう。

 

 

「アイエッ?!拘束?拘束ナンデ?!」錯乱状態のスズキ、彼は再びしめやかに失禁した。

 

 

「ナンデってこれからセプクするから当然だろ」呆れた様子で答えるスティーブンス、彼はクローンヤクザに合図を送った、クローンヤクザは「ハラキリ」と表記されたスイッチを押す。

 

 

「モハヤコレマデー!」人工マイコ音声が叫ぶと腕の拘束具からドスダガーめいた刃物が飛び出し腹部にその刃をあてがった。

 

 

「ヤメテー!ヤメテー!ヤメテー!」絶叫するスズキ、だがセプク装置は「イヤーッ!」無慈悲に彼の腹部を引き裂いた。

 

 

「アバーッ!アババババ!」断末魔の叫びをあげ、しばらく痙攣していたスズキだったが、しばらくして動きが止まった、人工マイコ音声からは「心肺の停止を確認しましたドスエ」

 

 

機体からは厳かなBGMが流れ、カスミガセキ教区のアークボンズ、タダオ大僧正のナムアミダブツの声。

 

 

((………………これは……))聖人の殉教を思わせる荘厳さにスティーブンスは((………これは売れる!!))新製品の成功を確信する。

 

 

大満足で機体を見つめるスティーブンス、そんな中、彼のIRC端末に受信、顧客対応室からである、端末を手に取り報告を受けたスティーブンスだがその報告は信じがたいものだった。

 

 

「顧客対応班が…全滅だと?!」

 

 

#6ダディ・イズ・マム・バイ・インベンションに続く




◆感◆閲覧ありがとうございます、次回も良かったら見てやってください◆謝◆

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