パッションリップが可愛かったので   作:マスターBT

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サブタイ通りです。
今回のストーリーが過った瞬間に思い付いたものをそのまま、形にしたものなので色々突っ込まれるかもしれませんが、そこは優しい御心で許してください。


あ、Twitter始めました。
読者の皆様との交流の場的な感じで利用したいので、興味のある人はマスターBTで検索してください。


後日談という名の下のご都合展開

「マス……起きて……マスター……起きてください」

 

ゆさゆさと優しく、揺らされながら声をかけられる。

その声も心地よくさらに眠気を誘われる。

 

「もぅ!起きないと酷いことしますよ!」

 

どうやら声の主は限界が来た様だ。

この時点で俺の意識は起きているが、この人物が言う酷い事が気になり狸寝入りを続ける。

 

「グゥ…」

 

「起きないんですね…わかりました。えい!」

 

ペシっと優しく顔が叩かれる。

 

「ふっふふ」

 

そのくすぐったさに思わず笑ってしまう。

薄っすらと目を開けるとパッションリップが顔を赤くしてプルプルしていた。

 

「あーー、おはよう。リップ」

 

「う〜、起きてたんですねマスター。恥ずかしい思いをしたじゃないですかー」

 

人間と何ら変わらない手で顔を隠してうずくまるパッションリップ。

それを見て、俺はあの聖杯戦争は本物だったと自覚する。

 

「…人になれて嬉しいか?リップ」

 

「はい。諦めていた夢をマスターが叶えてくれて、こ、こうして一緒に居られるんですから」

 

そう言うリップの左手には指輪がある。

俺が贈ったものだ。

今の様な生活を送る様になったのは、電子の海から一年後まで遡る。

 

 

 

 

 

 

〜一年前〜

 

藤丸達がレイシフトをして、特異点を解決している時にそれは起きた。

突如として冬木に出現した特異点。人理には何の影響も与えないのだが、確認された魔力が異常に高いのだ。

原因を解明する筈の藤丸は不在。他の魔術師達も召喚されたサーヴァントとの不和により参加できない。

白羽の矢が俺に立つのは必然だった。

 

「パッションリップ。準備は良いか?」

 

「はい。いつでも大丈夫です!」

 

コフィンに乗り込み、冬木の特異点にレイシフトする。

しかし、この特異点の異常さは他の特異点の比ではなかった。

 

「……俺は何をしていたんだ?」

 

レイシフトしたのは学校。

しかもそこの制服も身に纏っている。

だが、俺がそこにいる理由が何一つ思い出せなかったのだ。

後でダヴィンチから聞いた話では、俺の反応が確認できなくなったらしい。

一緒に来た筈のパッションリップもおらず、俺は偽りの記憶にある家へと戻った。

 

「何だ?このあざ?」

 

パッションリップとの大切な記憶すらこの時の俺は忘れていた。

だが、この特異点を生み出した存在には俺という異物は認識できたのだろう。

その日の夜。俺はランサー、クー・フーリンに襲われた。

 

「くそっ!」

 

必死に逃げた。

存在を知らない筈の魔術を使っていただろう。

恐ろしく身体が軽かった事を覚えている。

家の近く、俺が秘密基地の様な感覚で使っていた古びた教会にたどり着く。

 

「よく逃げるな坊主」

 

しかし、死は目の前まで迫っていた。

俺が運命に嫌われていればこのまま死んでいただろう。

しかし、俺は自分の半身とも呼べる存在をこの時思い出した。

 

「来てくれ!パッションリップ」

 

右手の令呪が熱を持つ。

そして、彼女は俺の願いに応えてくれた。

 

「やっと呼んでくれましたね!マスター」

 

パッションリップがその大きな爪をクー・フーリンに振り下ろす。

不意打ちに驚き、クー・フーリンは回避できず吹き飛ばされる。

 

「チッ、サーヴァントを召喚したか。…あん?帰れだと?随分と勝手なマスターだな」

 

クー・フーリンが教会の窓を突き破り逃げた。

俺はこの後、パッションリップと話したがお互いカルデアの事は覚えていなかった。

いや、正確にはカルデアに関する事が靄にかかった様な状態だった。

取り敢えず、聖杯戦争という事は分かり俺たちは戦い抜いた。

最後に戦ったのは、マリスビリー・アニムスフィアとソロモン王だった。

正直、勝てたのは奇跡だった。

ソロモン王が、パッションリップの言った『人間になりたい』という願いに動きを止めなければ勝っていたのは彼らだっただろう。

そして、聖杯が姿を現わす。それと同時に魔神柱が現れ、俺たちの記憶が戻った。

 

『私は人王ゲーティアの残り滓。

魔神柱達の残留思念の様なものだ』

 

「…ゲーティア。藤丸が言っていたラスボスか」

 

『そうだ。此度の特異点は、あの無能の王がソロモン王が人になった聖杯戦争。

それを辿ることで何か判るのではないかと考え起こしたものだ。

結果は、貴様に阻まれはしたもののやはり、感情を手に入れたばかりの私ではよく分からなかった』

 

魔神柱達は藤丸達に敗れ、各々の目的を達成するために特異点を作った。

このゲーティアと名乗る残り滓もその一つだろう。

だけど、分からない事がある。ゲーティアはあの戦いで消滅したのではなかったのか?

 

『その疑問に答えよう。

私は残り滓。この聖杯戦争が終結すれば感情を理解しようが消滅するだけのものに過ぎない。

だから人理にも影響を与えない。しかし、私という存在を賭け万能と謳われた聖杯を再現し、特異点を生み出した。

その為だ。人理に影響を与えないのに魔力が高いのはな』

 

心を読み取るのか。楽でいい。

それならもう一つ聞く。

お前はゲーティアの残り滓となってまで人というものを知りたかったのか?

いや、違うな。人になりたかったのか?

 

『……フハハッ!あの人間ではなく貴様に勘付かれるか。

そうだ、私はソロモン王と同じく人に憧れた。人になりたいと願いを持った。

しかし、それは不可能だ。私は魔神柱、ソロモン王とは違い人の要素など持たぬモノ。

ならば奴が願いを叶えた戦争を忠実に再現すれば、人の気持ちを擬似的に理解できると考えた!』

 

そうか。

だから、お前は同じ願いを持つパッションリップの言葉に動きを止めたのか。

 

『フッ。バレていたか』

 

嫌でも気付くだろうさ。

お前にとって良く知る人間というのはソロモン王だろ?

なら、その姿を真似るのが一番楽だろう。

 

『……パッションリップよ。此処に聖杯がある。

この聖杯は万能には少し足りない。しかし、人間になりたいという願いは確実に叶えられる。

何故ならこの聖杯戦争は人ではないものが人になった聖杯戦争を模したもの。

その一点において、この聖杯は他を凌駕するだろう。さて、君は何を願う?

私が消える前に願いを言え。私の消滅と同時にこの特異点は崩れてなくなる』

 

「マスター…」

 

パッションリップが不安そうに俺の顔を見る。

人になりたいという願いはあるのだろう。

しかし、その事で俺が自分を捨てないか心配なのだろうか。

 

「好きに願いを言うんだパッションリップ。

俺はお前と共に歩めれば何でも良い。

人になろうが、サーヴァントのままだろうが俺はパッションリップのマスターである事に変わりはない」

 

頭を撫で優しく言う。

きっと俺の記憶が戻っているという事は、カルデアのみんなはこれを観測できているのだろう。

実際、できていた。この時、魔術師連中が五月蝿かったがダヴィンチと藤丸達が黙らせてくれたらしい。

 

「……分かりました。ゲーティアさん。

私は聖杯に人間になりたいと願います」

 

その答えに何処か嬉しそうに口角を上げたゲーティア。

彼が聖杯を掲げると聖杯が光り輝き、同時にパッションリップが光に包まれる。

光が収まると、パッションリップの特徴的な腕は人と何ら変わりないものになっていた。

 

「これが……」

 

嬉しそうに笑いながら涙を浮かべるパッションリップ。

その光景に見惚れていると特異点の崩壊が始まる。

 

『私も限界だ。

残りの力で貴様らをカルデアに送り返そう。』

 

「随分と優しいなゲーティア」

 

『消えゆく私が見たいものを見せてくれた礼だ。

早くしろ人間。パッションリップと腕を組め』

 

ゲーティアの言葉に従い、パッションリップと腕を組む。

パッションリップの顔はとても嬉しそうで可愛らしかった。

 

『さらばだ。人間、結末は望んだものではないが良いものだった』

 

最後にゲーティアに言っておかなければならない事が頭をよぎり、消えゆくゲーティアに声をかけた。

 

「あんたは魔神柱と言ったが、かなり人間らしいぞ。

そしてありがとう。リップの願いを叶えてくれて」

 

そう言った直後に俺の意識は途切れる。

 

『……ふっ。焔火白夜。

ありがとう』

 

意識が途切れる瞬間にそう聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「マスター?大丈夫ですか?」

 

過去の回想に意識を飛ばしていたらリップに心配をかけたようだ。

今の俺たちはダヴィンチが何かしたのか、一般人と何ら変わらない生活を送っている。

偶にカルデアに召集される以外は普通だ。

 

「ああ。今の様になった時の事を思い出してな」

 

「…マスターは私の選択をどう思っていますか?」

 

「良いんじゃないか?少なくとも、俺はいずれお前の願いを叶えてやるつもりだったし。

それが予定よりかなり早かったってだけだ」

 

俺の言葉に無言で抱きついてくるリップ。

こういう時は無言で頭を撫でる。

だいたい、リップが感情の処理に間に合わなくなった時にやる行動だからだ。

 

「……マスター。ううん、白夜さん」

 

「何だ?」

 

「私は貴方に出逢えて良かったです。

幸せ過ぎてどうにかなってしまいそうです。

ですから、この先も貴方の隣をずっとずっと歩かせてください。ずっとずっと手を握っててください」

 

顔を上げるリップにキスをする。

 

「勿論だ。俺はこの先どんな未来が待っていようとも、リップの隣を歩き続ける。

リップの手を握り続けよう」

 

そう答えて笑う。

俺は彼女の為に生きる。

死が二人を別つともこの気持ちは変わらない。

 

 

少女は人となり英霊の力を失った。

しかし、その代わりに大切な愛を手に入れた。

 

少年は電子の海で身体を失った。

しかし、彼は大切な愛を見つけた。

 

彼/彼女は幸せを謳歌し、その人生を桜色に鮮やかにしたのだった。

 

 

 

〜完〜




今回の話は色々可笑しいと思いますが、許してください。
これで白夜とリップの物語は終わりです。
予想以上の評価におどろきました。
こんな設定がふわふわしたものをお気に入りにしてくださりありがとうございます。

挨拶は此処までとして、この話を読んでくれた方が少しでも幸せな気持ちになってくれた事を祈りながら後書きを終わりたいと思います。

感想・批判お待ちしています。
ついでにTwitterも待ってます。
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