色々考えながら書いたけど、不安だ。
「……危なくなるまで好きにやらせて欲しいって言うからいつでも援護できるように準備していたけど、流石に予想外すぎるよランサー。それにまさかギルガメッシュまでいるなんて」
もう一人のアーサー王を見つけた自分達はまず接触する前にどうするかを考えた。
その時、ランサーがいつもの調子で『悪いが私の好きにやらせて欲しい』と言うので了承する代わりに幾つかして欲しい事を頼んだ。
まず最初に相手が聖杯にどんな願いを望んでいるのかを尋ねて欲しいこと。これは相手の目的を知るためだ。
次は遠見の魔術での監視と、小型の無線を持たせて会話を盗聴する許可。魔術だと感知されるかもしれないので一応念のためだ。
最後にこっちがヤバイと判断したら勝手に動くこと。またこちらに動いて欲しい時は何かしらの合図を送って欲しいこと。
「だったんだけど。まさか『マスター準備を』だけで終わらせるとは思わなかった。たぶん、戦闘の準備でいいんだろうけど」
ランサーの言葉と黒騎士、たぶんバーサーカーへの突撃する姿を見てそう判断した自分は、慌てて彼女達がやってくる終点と思しき砂浜のポイントに魔術で転移し、急ごしらえの人払いの結界を展開させる。
「――っ!?」
結界を張り終えた瞬間、嫌な予感がしてその場から思いっきりダイブするように飛び退く。
「うおおおおおおおお?!」
後ろを駆け抜けたランサーの衝撃の余波を受けて軽く吹き飛ばされながら、なんとか空中で体勢を立て直して着地する。
視線を上げてランサーが駆け抜けた方を見ると、ランサーがラムレイを急停止させ、先端に居たバーサーカーがそのまま軽く吹き飛ばされるが、倒れることは無く剣を盾にするように構えた体勢で立っていた。見れば黒い霧の様なものも完全に消えていた。
どうやらあの剣でランサーの槍を防いだみたいだな。あの一瞬でそんな事ができるなんて。そしてあれがあのサーヴァントの宝具で間違いないだろう。そうじゃないとあの武器の強度に説明が付かない。
「良い働きですマスター」
「ん。ありがとう」
隣にやって来たランサーからの労いに苦笑を浮かべながら答え、とりあえずランサーが突撃して抉れた道へと振り返る。
運良く、いや、これはランサーが狙ったのかな。被害は人が居ない建物だけみたいだし……あとは教会とか魔術協会の人がなんとかしてくれるだろう。
『お前等自重しろ!!』
と、事後処理する裏方さん達の悲痛な叫びが聞こえた気がしたが無視して視線を前に戻す。
「で、あれって? 見た感じバーサーカーだけど……わざわざ連れて来た理由は?」
「確証は無かった。しかし私の感が、あれは円卓の誰かだと言っている気がしたのです。だが、あの『剣』を見て何者かを確信しました。悪いがマスターよ。今しばらく私の戦いに付き合って貰います」
「うん、了解」
特に拒否する理由も無いのでそう返すと、ランサーは少しだけ口元に笑みを浮かべたあと、その表情を引き締める。
そして槍を横に突き刺し、全身から相手を威圧するようにオーラを放つ。その姿と気迫は紛れも無く、一国の王が持つ威厳に満ちていた。
「――湖の騎士よ。面を晒す許可を与える」
湖の騎士、と言うことは目の前のサーヴァントは……。
一言。ランサーのただその一言を聴いた瞬間、目の前のバーサーカーが動きを止める。
そして兜の部分の魔力を開放してその顔を露見させる。
「……Ar……thur……Arrrrrrthurrrrrrrrr!!」
晒された顔は狂気化のせいか憎悪に歪み、目は血走っていた。とてもではないが逸話の『最高の騎士』とは思えない風貌である。
だが確かに聞こえた。彼の口から放たれた『
「愚かしいな。お前のその苦悩に気付かず、見過ごしたのはいったいどんな『私』だったのか。だがよい。その嘆きは私が聞き届けよう。マスター援護を。私には彼の騎士の言葉を聴く義務と責務がある。故に宝具でぶっぱはできない。ラムレイから降りますので、私が彼を確実に刺せるようにしてください」
……ん?
「え? ランサーは一緒に戦わないの!?」
「私の槍術は突刺一本。故にラムレイの『
戦闘方針『真っ直ぐ行ってぶっ刺す』だけ決めてそれ以外を丸投げされたぞ!?
とりあえずなんだ、ステータスで負けているからランサーに《Code:
ランサーに魔術を掛けた瞬間、湖の騎士ことランスロットが雄叫びと共にこちらに突貫してくる。
「ラムレイ突撃!」
「ラムレイ。マスターの指示に従いなさい」
ラムレイに《Code:
命令を受けたラムレイは一切の躊躇も無くランスロット目掛けて駆け出した。
ラムレイの忠誠心に感心しながらすぐに次の一手の準備を行う。サーヴァントの戦闘は高速戦、常に思考を動かし行動を止めてはならない。
「ランサー、いつでも行ける用意を!」
自分の指示を受けたランサーは腰を落とし、駆け出す姿勢をとって槍を腰の辺りに構える。
こちらが準備している間にもラムレイとランスロットの距離が縮まりそして、ラムレイの額当てとランスロットの黒い剣、宝具であろう彼の愛剣であるアロンダイトが激突する。
次の瞬間、まるでガラスが砕けるような衝撃音が響くと共にアロンダイトを持っていたランスロットの腕が弾かれて彼の体勢がわずかに崩れる。
ラムレイに施した付加した能力は『一度だけあらゆる攻撃を防ぐ』というもの。それによってラムレイへの攻撃は弾かれて無事だったわけだ。
「そのまま噛みつけ!」
「ブルルル!!」
こちらの指示を受けたラムレイが口を開き勢い良くアロンダイトを持つランスロットの腕に噛み付く。
「Arrrrrr!」
ランスロットが空いている方の手を手刀の形にする。
させない!
魔力消費ど外視で最短で物質化制御を行う。
《
二小節の詠唱完了と同時に右手に一本の鎖が巻き付き、短剣が付いた二つの先端がランスロット目掛けて勢い良く走り、片方はラムレイに突き刺さる前に手刀に巻き付いて締め付け、もう片方はラムレイが噛み付いている方に巻き付つき、そのままラムレイの胴体に巻き付ける。
地の鎖。
かつて自らのサーヴァントだったギルガメッシュが使っていた『天の鎖』を改良して作った拘束具、それが『地の鎖』だ。
天の鎖には二つの特性がある。
一つは所有者の意のままに動くという特性。
もう一つは神性の高い者にはその力を封じ更に拘束力を高めるという特性。
地の鎖は天の鎖の二つの特性の内、二つ目を無くしただけの物だ。
だが素早く意のままに動く鎖と言うのはそれだけでも十分拘束具としては脅威であり破格の性能である事に間違いはない。
さらに《
アーチャーが用いていた共通詠唱にならって自分も戦闘用に作っておいた詠唱を唱えると同時に、ズンと自分の身体が『重く』なって腰が落ち、砂浜に足がめり込む。これで少しでも安定させる!
「引けラムレイ!」
「ブルル!」
「――っ!?」
ラムレイがランスロットを開放し、自分とは反対の方へと体を向けて走る体勢を取る。こちらも力一杯鎖を引き戻す。
ラムレイと自分に引っ張られる形となったランスロットは両手が大きく開かれ、その胴体が露になる。
「――っラン――!」
「良い働きでした二人とも」
自分が呼びかけるよりも早く、先程までのフルプレートから魔力節約モードの半裸の姿になったランサーが、高密度の魔力を帯びて紫色の雷光を発するロンゴミニアドを突き出してランスロット目掛けて翔る。
その速度と姿から、魔力のほとんどをロンゴミニアドと魔力放出に回したに違いない。
ランサーも分かっていたってことか。
今もまだランスロットがここにいるのはただの偶然に過ぎない。
次の瞬間にはマスターの令呪によって呼び戻されてしまうかもしれない。故にランサーは最短距離を最速でつめる為に捨て身の一撃を放ったのだ。
目の前の騎士を確実に倒す為に。
そしてついにランサーとランスロットはぶつかり――二人の周りで激しい光と砂が舞い上がった。
ランサーが久しぶりのオルタ節を発動し、とりあえずそれに答える万能白野、そして命令されれば平然と突っ込むラムレイがまさに忠臣のイケ馬!
と言う訳で決着は次回! そして雁夜おじさんの安否も次回!
あと、ランスロットさんが弱く感じるのは原作と違ってスキルを活かせてないせい。というか速攻以外で正面から彼を倒すのは色々とキビシイ。
『白野の魔術解説』↓
『コード・スタート』
士郎はほぼ全ての魔術の詠唱をトレース・オンに統一したように白野が戦闘の隙を少しでも減らす為に作った統一詠唱。これで文字数の多いコードも発動しやすくなった。