岸波白野の転生物語【Fate/編】   作:雷鳥

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サブイベントが教会からのキャスター討伐依頼。
メインイベントはアサシン。



【アサシンの答え】

 下山した自分は冬木市の新都にある冬木教会付近まで車で向かい、近くのコインパーキングに泊め、その近くの人通りの少ない路地裏に保険として転移用の術式を施してから改めて教会へと向かう。

 

 教会の門を潜り敷地を進んでいると、教会入口付近に姿形は違うが見知った相手を発見した。

 自分が相手に向かって意図的に視線を向けると、霊体化していた『彼女』は驚いたような仕草をし、次の瞬間には殺気を放つ。

 

 ここで戦う気は無いし、そうだな……こちらの事情を説明しようか。同盟を提案している訳だしすぐに殺される事は無いだろう。

 

 使い魔の反応がいくつかあるがどれも位置的に声までは聞き取れないだろうと判断し、傍を通り抜ける際に出来る限り声を抑えてアサシンに語り掛ける。

 

「これから聖杯について監督役に訊くつもりだけど一緒に聞くかい……アサシン」

 

 後ろで髪を一纏めにしたポニーテールの女性アサシンは、しばらくこちらの真意を測るかのように探っていたが、しばらくして結論が出たのか頷いて答えた。

 

「じゃあ何を聞いても姿は出さないでね」

 

 彼女から殺気が消えるのを確認する。一応背後を注意しつつ教会の扉に近付き開ける。

 

「……何か御用かね?」

 

 礼拝堂の祭壇の前で年のわりに引き締まった体格の白髪の神父が出迎える。あの人が今回の監督役の人物だろう。

 礼拝堂の真ん中辺りで立ち止まって令呪を見せる。

 

「――っ。まさかマスター自らやって来るとは。それも若い……」

 

「中立である相手には礼を尽くすさ。訊きたい事もあるしね」

 

 一つ、二つ……三つか。ほぼ半分の陣営がここに使い魔を放った事になるな。

 

 教会の外にも数匹感じたが、教会内にも使い魔の魔力の反応があった。やはり他の陣営は馬鹿正直に教会には来なかったようだ。

 

 まぁ普通は罠の可能性を考えて来たりはしないよねぇ。

 それでも情報戦で遅れている自分としては命のリスクがあろうとも、色々と知れるチャンスは物にしたかった。

 

「掛けないのかね?」

 

 座らずにいるこちらに対して神父がそう促してくるが、自分は首を横に振って断る。立っていた方がすぐに動けるからね。

 

「それで、自分が最後ですか?」

 

「……まぁいいだろう。これ以上は集まらんだろうしな」

 

 そう言って神父は一度咳払いしてから祭壇の前に立つ。

 

「知っている者もいるかもしれんが、私の名は言峰璃正。今回の冬木の聖杯戦争の監督役を務めさせて貰っている。今回集まって貰ったのは聖杯戦争を継続する上で解決しなければならない火急の問題が発生した為である」

 

 璃正はそれから具体的な理由を語った。

 なんでも街で騒がれている殺人鬼がどういう手を使ったのかサーヴァントを呼び出し、そのサーヴァントと共に魔術を用いて毎晩子供を誘拐しているのだとか。

 

「サーヴァントのクラスはこちらの情報網にてキャスターと断定された。神秘の秘匿の為にもこれ以上のキャスターとそのマスターの凶行を見逃す訳には行かないと判断し、各マスターは一時各陣営への攻撃を止めて協力し合ってキャスターを討伐して欲しい」

 

 サーヴァントにはサーヴァントが基本だが、そう簡単に協力するはずがない。みんな聖杯を求めているのだから最悪共闘中にキャスターごと一緒に協力者に殺される可能性もある。

 そんな事を考えていると璃正は突然片方の袖を捲くってこちらに見せる。

 

 おいおいなんだよあの令呪の数は!?

 

 彼の腕にはなんと十画はありそうな令呪が刻まれていた。

 

「これは今まで聖杯戦争で使用されずに聖杯に返還された令呪、我々は予備令呪と呼んでいる。そしてキャスター討伐に貢献した陣営全てにこの予備令呪から令呪を一画、贈呈する事を監督役として約束しよう」

 

 なるほど。この方法なら確かに協力する者は現れるな。

 

 令呪の数が一つ違うだけで戦局はかなり変わる。

 そしてそれを協力し合えば全員に分配されるとなれば争うよりも協力した方が得だろう。

 

「以上が今回の召集の案件だが、何か質問はあるかね? もっとも喋れる者限定だが」

 

 そう言って璃正は使い魔へ皮肉めいた発言と笑みを浮かべた後にこちらへと振り返る。

 

「君はどうかね?」

 

「召集の件に関しては把握した。ただ聖杯戦争について幾つか把握しておきたい事がある。よろしいか?」

 

 璃正は顎に手を当てて少し考えてから首を縦に振った。

 

「いいだろう。聖杯戦争についての説明をするのも我々の役目だ。それで、何が知りたいのかね?」

 

「その前に、監督役であるあなたは『中立』の立場でいいんですよね?」

 

「ああもちろん」

 

 ……う~ん自分の直感が怪しいと囁く。実際アサシンが教会に居たことを考えると少なくともアサシンのマスターと関係を持っているはずだ。

 しかし証拠も無いしあまり時間をかけてると他のマスターが教会にくるかもしれないので早々に次の質問へと移る。

 

「では聖杯戦争に勝利した者が願いを叶えられる権利を得るとあるが……その願いの行使はサーヴァント単体でも可能ですか?」

 

「質問の意図が理解できないが、それはサーヴァントがマスターを裏切って単体で聖杯を手に入れた場合、という仮定でいいのかね?」

 

「ええ、それで構いません」

 

 こちらの質問に璃正は背後に手を回し、何かを考えるようにしばし黙考すると顔を上げた。

 

「まあいいだろう。まず結論だが、願いの権利はマスターである魔術師にある。つまりサーヴァント単体で願いを叶えるのは不可能だ。これは御三家ならば全員が知っている情報である」

 

 傍で答えを聞いてるアサシンがわずかに反応を示すがこちらの願い通りに姿を現さずにいてくれている。

 

「……なるほど。サーヴァントは所詮使い魔と言うわけか。つまりサーヴァントが願いを叶えようと思ったら勝ち残ったマスターに願いを叶えて貰うしかないわけだ」

 

 随分と酷い仕打ちもあったもんだ。

 イラだちを覚えながらもそれを表情に出さないようにぐっと堪える。

 

「情報提供感謝します。それともう一つ、第三回までの聖杯戦争で聖杯が現れた場所を教えて欲しいのです。それくらいの情報なら問題ないでしょう?」

 

 璃正はやはりまた思案するように黙ってから口を開いた。

 

「ふむ。第一次は柳洞寺、二次は現遠坂邸がある場所、三次はこの教会にて聖杯を呼び出す儀式があったと記録には残っている」

 

 ……随分とあちこちで儀式をしているな。と言うことは聖杯は毎回用意されている。と言うことか?

 

 この教会が龍脈の収束地点の一つなのは訪れた際に知る事が出来た。遠坂邸も魔術師は龍脈の収束点に拠点を構える者が多いから分かる。

 

 しかし柳洞寺にはまだ行っていないな。それも第一回となれば意味がある場所に違いない。あとで行くとしよう。

 

「今の内容で一つ疑問が。随分と聖杯の出現場所が異なるが、聖杯は毎回誰かが用意しているので?」

 

「聖杯の器は毎回アインツベルンが用意する事になっている」

 

「それは今、監督役であるあなたが預かっているので?」

 

「いいや私は持っていない。私は第三回にも監督役として参加したが基本聖杯となる器はアインツベルン陣営が所持する事になっている」

 

 となると一度アインツベルンを調べる必要があるのか。まあいい、まずはアサシンの問題だな。

 現状で確認したい事はし終えたか。

 

「それでは自分はこれで。他のマスターに狙われるのも嫌ですしね。あ、もちろん監督役は自分が安全に出て行くまで使い魔を見張ってくれますよね? 共闘する訳ですし」

 

 一言お礼を伝え頭を下げてからニッコリと笑顔でそう璃正に要求する。

 璃正はやれやれと言いた気な表情をさせて軽い溜息は吐いてから『彼が出て行くまで使い魔が出て行くことを禁しする』と言ってくれた。

 

 流石は話が分かる!

 なんて喜ぶことは出来ない。なんせ外にも使い魔はいるのだから。

 

「アサシン、死角に入り次第移動する。信じて付いて来てくれるかい?」

 

 教会の外に出てから来た時と同じように小声でアサシンに問いかけると、彼女は同じように頷き自分の後ろを付いて来る。

 

 使い魔が自分の後を追っているのを感じながら、教会を出てすぐに建物の死角へと向かい到着した瞬間に転移でその場をすぐに離れる。もちろんアサシンも連れて行く。

 

「さて……短距離転移のポイントを作っておいて良かった」

 

 一瞬の光の後に、自分達は来る前に施しておいた車を止めたパーキング近くの人気の無い路地裏に立っていた。

 アサシンの反応を見ると、とくに驚いた様子は無い。もしかしたらランスロットの一戦で自分の転移を見られていたのかもしれない。

 

「どうだった? 良い情報を手に入れられたと思うんだけど」

 

 人払いの結界を張ってから声をかけると、女性のアサシンが実体化する。

 

「ええ、我々にとってとても重要な情報でした。しかし解せない。何故我々にあんな話を聞かせたのです?」

 

「昨晩の男のアサシンから聞いているかもしれないけど、自分はアサシンに仲間になって欲しいと思っている。だから一緒に聞いて貰ったんだよ。それじゃあ今晩、良い返事を期待してるね」

 

「いえ、それには及びません」

 

 そう答えた女性のアサシンの周りに他の男性や女性の複数のアサシンが突然現れる。

 

 ……くるか。

 

 現れたアサシン全員を警戒しながら両手と令呪に魔力を込める。が、そんな自分の行動は杞憂に終わった。

 

「あの話を聞いていた我々の判断で貴方と組むことにします」

 

「そ、そうか。なら良かった」

 

 意外と早く決断したな。もしかしてあまりマスターと上手く行っていなかったのかな?

 

 それでも当初の予定通りにアサシンがこちらに付いてくれるなら色々とやれる事が増えて助かるのは間違いない。

 

「それじゃあアサシン、まずは情報が欲しい。移動しつつ君が手に入れた聖杯戦争や君のマスター関係の情報、他のサーヴァントの情報を教えてくれるかな?」

 

「分かりました。まず私のマスターですが名前は言峰綺礼と言います」

 

 ……何故だろう。初回からいきなり頭を抱えそうな情報を叩き込まれたんだが。まさかマジカル☆八極拳のオリジナルじゃないよな?

 




『サーヴァント単体では願いは叶えられない』という設定は自分が原作読んで感じたオリジナルの設定です。
御三家はサーヴァントの願いを叶える気が無いし叶えられても困るから多分無理だろうということでこの設定にしました。
と言う訳でそんな話を聞かされたら自分は使い捨てだと知っているアサシンが裏切るのは当然と言う訳ですよ(愉悦)
そして白野も頭を抱えるマジカル☆八極拳の使い手。しかもこの時代の彼の強さは倍どころじゃ済まされない模様。因みに魔術無しで奴と戦うと普通に白野が殺されて終わりです。
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