原作二夜目がスタート。
冬木市郊外の私有地の森にひっそりと佇むアインツベルンが保有するアインツベルン城。
その城の一室に夕食を終えたセイバー陣営全員が集まって作戦会議を開いていた。
「アイリの報告、そして昨晩の爆破からどうやって生き残ったのかは解らないが、協会に訪れた使い魔の数からケイネスの生存が確定。更に教会での岸波白野の問答によって我々が聖杯の器を所持している事も露見した。これらの情報から今夜から数日中に最低でもキャスターとケイネス、最悪ランサーの三組の襲撃があると見て間違いないだろう」
切嗣が時臣陣営を外したのは彼の性格が理由だ。
まず御三家の一人である時臣は元々アインツベルンが聖杯を用意するのは知っているはずなので、それを理由に攻めてくる可能性は低く、更にキャスターとケイネスの情報を知らない筈だと切嗣は思っており、攻めて来る可能性は低いと判断した。もちろん言峰綺礼は例外として。
「令呪は魅力的だがキャスターの魔術がどんなものなのか解らない以上、交戦は避けるべき。そしてケイネスが来るのならば好都合だ。彼の性格なら間違いなく一騎打ちを挑んで来るはずだ。そこを僕が
「待ってくださいキリツグ。聞けばキャスターとそのマスターは無関係な人間を殺している殺人鬼、ここは他のマスター達と協力してまずはキャスターを討つべきです!」
切嗣に詰め寄り彼の作戦に異議を申し立てるセイバー。
しかし切嗣はそれを無視する。それどころか心の中では呆れと落胆の気持ちが以前より一層強くなっていた。
(ケイネスは兎も角セイバーのせいで僕らは今、ランサーとキャスターの二体のサーヴァントに狙われる状況になってしまった。しかもあの言峰綺礼も昨晩の行動から完全に僕を敵として狙って来ている……こんな四面楚歌の状態だというのにこの騎士様はまだ正々堂々などと言っているのか……アーサー王を呼んだのはやはり間違いだったのかもしれないな)
心に思っても切嗣はそれを口にしない。と言うよりも彼は端からセイバーが自分の言葉を聞き入れないと判断しているため、そもそも会話すら殆どまともに取り合わない始末だ。
セイバーはセイバーでそんな切嗣の態度にどんどん苛立ちを募らせ続けていた。
そんな二人の仲の悪さに色々と苦労しているアイリスフィールは『また始まった』とばかりに軽く溜息を吐いてセイバーの代わりに質問する。
「でも切嗣、ケイネスへの勝算はあるの? 彼はあのビル爆破を生き残った程の実力者なのよ。それと、もしもキャスターとライダーが同時に現れたらどうするの?」
「そうだね。確かにケイネスの力量を甘く見ていた。だけどねアイリ、僕はライダーを倒すよりもケイネスの方が何倍も倒しやすいと思っているんだ。そしてその為には彼の目を僕に向け続ける必要がある。だから単独で戦う必要があるんだよ。それにキャスターとライダーが同時に現れるなら好都合だ。キャスターはセイバーにご執心だ。その場合はキャスターにライダーの相手をさせつつセイバーの宝具でいっきに二体のサーヴァントを倒す事も可能かもしれない」
セイバーが『それはあまりにも卑怯です!』と口にしようとするが、それをアイリスフィールに手で制させてしまう。
「それじゃあもう一つ、もしもランサーまでやってきたらどうするの?」
「その時は全力で逃げるさ。四つ巴で戦っても戦果なんて得られない。最悪全員が疲弊した所を更に別の陣営に狙われかねない。そういう最悪の場合を想定してアイリには侵入者とは別方向に逃げて欲しいのさ」
(確かに切嗣の言うとおり、私達の状況は厳しい。このままだとキャスターの前に私達が包囲されて負けてしまうかもしれない)
それだけは絶対に許されない。アイリスフィールにもまた、なんとしても勝ちたい理由があるのだ。
夫である切嗣の恒久平和と言う願いと、自分と夫との間に生まれ、自分が失敗した場合次の聖杯の器にされてしまう愛しい娘、イリヤスフィールの為に。
アイリスフィールはセイバーへと申し訳なさそうな表情をしながら振り返る。
「……だそうよセイバー。悪いけど私も今回は切嗣の作戦で行くべきだと思うわ。正直この作戦は貴女がどれだけライダーやキャスターを足止めできるかにかかっているの。お願いセイバー、私達を守って頂戴」
「……分かりました」
アイリスフィールの真摯な願いに、セイバーは未だ納得行かない表情をさせながらも頷き了承する。
そんな二人のやり取りを切嗣は横目に一瞥し、改めてテーブルに広げた周囲の地図を舞弥と一緒に見ながら、逃走ルートの確認を行っている最中――アイリフィールの張った結界に反応が有った。
切嗣達が作戦を立てていたその最中、三組の襲撃者がアインツベルン城へと向かって森を進んでいた。
「いいかライダーよ。衛宮切嗣は私一人で戦う。貴様はその間セイバーの相手をせよ」
「やる気があるのは結構だがなぁ。そんなに熱くなっては足元をすくわれかねんぞ? トラップの一つや二つで大げさな奴よ」
昨晩の事を思い出したのかケイネスの額に青筋が浮かび、その目を強く細めてライダーを睨み付けた。
「たかがだと? あれは私が施した中でも最高の結界だった! だというのに奴はそれを同じ魔術ではなくあろう事かビルごと爆破するなどと言うおよそ魔術師として最低最悪な方法で破壊したのだ! 同じ魔術師として私は奴を許す訳にはいかん!」
叫ぶように喋るケイネスに、ライダーはやれやれ。と呆れたように首を横に振る。
昨晩、埠頭の戦闘を終えたケイネスとライダーは寝泊りしているホテルへと戻った。
そこで婚約者であり、ライダーに魔力供給を行っているソラウを交えて反省会を行っていた所にホテル全体に火災報知機のサイレンが鳴り響いた。
それを聞いたケイネスは何者かが自分達を倒す為にやって来たといち早く気付いた。
そして心配するソラウに対して自分がいかに凄い結界を貸しきったフロアに張り巡らせたのかを自慢気な顔で語って聞かせ優雅にワインを飲もうとした瞬間に――ホテルが爆破されて倒壊した。
ケイネスは咄嗟に魔術を発動して自らの身とソラウを守る事に成功したが、その卑怯な手段と面子を潰された事に腹を立てていた。
因みに切嗣が最初にケイネスを狙ったのはライダーの戦車が空を飛べて厄介なのと、生き残った中では一番倒しやすそうだった為である。
そんなケイネス達からいくらか離れた場所を、まるで半漁人の様な顔をしたローブを纏った男、キャスターが瘴気の香を纏わせ、手に魔道書を抱きながら『子供達』と共に森を進んでいた。
「あぁもうすぐです我が聖処女ジャンヌ。貴女様の忠臣であるこのジルめが、必ずや憎くき神の呪縛から貴女を解き放って見せましょうぞ!」
そしてキャスター、ライダーが侵入したルートとは別の反対側から森に進入しようと一人の男、言峰綺礼が静かにしかし素早く駆けていた。
(アサシンの情報では既にライダーとキャスターは森に進入を開始している。私の予測が正しければ衛宮切嗣は間違いなく城でケイネスを迎え撃つはず。昨晩相手した女程度ならば問題は無い。このまま城を目指す)
「アサシン、衛宮切嗣の位置情報は常に教えろ」
「はっ。お任せくださいマスター」
綺礼の速度に合わせて走りながら現れたアサシンが恭しく頭を下げ、消える。
今、アインツベルン城を舞台に聖杯戦争の第二幕が開こうとしていた。
そして多くの陣営が注目する第二幕その舞台裏でもまた、一つの陣営が動いていた。
次回は大乱闘している皆さんを無視して我が道を行く白野陣営の話。
たぶん原作添いの戦闘はこの二夜目が最後かな(多分)