「そうか。アサシンが……」
『申し訳ありません』
時臣は教会からの連絡を受けて溜息を吐くが、その際に小さく『ウッ』と呻く。ここ最近で荒れてきた胃がキリキリと音を立てて時臣を容赦なく攻撃してきたのだ。
胃への攻撃が収まってから時臣は改めて溜息を吐く。
「いや、まさかこれほど早くアサシンが裏切るとはこちらも想定していなかった。君一人の落ち度という訳ではない。それよりもアサシンの新しいマスターはランサーのマスター、岸波白野で間違いないんだね?」
『ライダー、セイバー陣営へ手助けする素振りは無く、キャスター、バーサーカーが脱落。それとこちらの知らぬ魔道具の使用に、聖杯を求めているという点を考慮すると、聖杯を求めていないランサーのマスターである岸波白野を新たなマスターとした可能性がもっとも高いと推察しました』
(やれやれ、厄介なことだ)
綺礼からの情報に時臣は眉間に皺を寄せながら頭の中で今後の戦略を練る。
(アサシンが本格的に裏切ったとなれば、かなりまずい事になる。彼等はこの屋敷の警備と監視も行っていた。何処に何が有り、何処にどういった仕掛けが有るのかはほぼ間違いなく把握されているに違いない)
時臣は自らの絶対安全圏だと思っていた堅牢の城が、今では穴だらけの欠陥住宅に成り下ったような不安と喪失感を味わっていた。
「とりあえず綺礼、アサシンの報復があるかもしれないから君は明日の日が出ている内に身支度を整えて県外に脱出するべきだろう。いくら武術の達人である君でも、片手を無くしていては問題だ」
『分かりました我が師』
時臣はそこで連絡を切る。
「随分と舞台が動いているな時臣」
「王……」
いつの間に居たのか、ワインの入ったグラスを持ったアーチャーが入口付近の壁に寄りかかったまま時臣を愉快そうな表情で見据えていた。
「ああ責めるつもりは無い。この我もあの暗殺者が裏切るとすればもう少し後だと読んでいた。はてさて、いったい誰に何を言われたのか。見当はついているのか時臣?」
「……私と綺礼の予想ですが、恐らくランサーのマスターである岸波白野に唆されたのだと思われます。思えば教会で聖杯について尋ねたのもアサシンへ聖杯の情報を与える為だったのかもしれません」
恭しく頭を垂れながら己の推測を語る時臣に対してアーチャーは『なるほどな』と言ってからワインを呷る。
「ではまずはその岸波白野という男を明日にでも見に行って見るとしよう。この我の読みを外させたのだ。些か興味が湧いた。貴様はどうする時臣? いつまでも引き篭もってばかりではいられまい」
アーチャーがまるで時臣を量るかのように問いかけ、時臣はなんと答えるか慎重に、冷静に頭の中で考えてから、答えた。
「夜が明け次第、情報の収集を行い、しかる後に動きます」
時臣の答えは『静観』であった。
むろんそれは悪くは無い。いまだ戦場にはセイバーとライダーの陣営がおり、更にはアサシンが敵になった以上は迂闊に外出行動を取れば暗殺されかねない。
時臣の策は、正に十人中八人が考え、実行するであろう『安定』した策である。
その時臣の答えにアーチャーはただ一言『そうか』と言ってワインを一気に飲み下してから姿を消した。
(……これで良かったのだろうか)
アーチャーへの返答が正しかったのかどうか、時臣は己に自問自答しながら、やはり眠れぬ夜を過ごした。
(やはりつまらぬ男であるな)
時臣との問答を終え、そう評価を下したアーチャーは時臣に落胆の感情を抱きながら教会のある人物の元へと向かっていた。
目的の人物が居る部屋に霊体化したまま侵入する。
部屋に居たのは言峰綺礼。彼は治療を終えた左手に包帯を巻き、片手の状態で荷造りをしていた。
「ほう。エミヤキリツグへ問い掛けるのは止めたのか綺礼?」
「ギルガメッシュ……」
唐突に現れたアーチャーに、しかし何度も同じ事をされて来た綺礼は動じる事無くいつものように冷めた目線を英雄王へと向ける。
「もやは此度の戦争で私がすべき事は無くなった。師だけではなく父からも逃げるように言われてしまった。もはや私にできる事は無い」
「随分と聞き分けの良い。今日まで己が目的の為に単独行動していた者とは思えぬ言葉よ」
アーチャーがソファーに寝転がりながら挑発するが、綺礼はそれに応ずる事無く淡々と返す。
「……先刻までは私もマスターの一人だった。単独行動も情報収集の一環と言う言い訳が出来たが、これからはそうはいかない。逆に私が邪魔な存在ならばあの師は私を排除するだろう。私はまだ死ぬ訳にはいかない」
「ふむ。つまり貴様がもう一度サーヴァントを従えたマスターとなれば、今一度己の問いの答えを得る為に行動を起こす。と言うことでいいのだな?」
ギルガメッシュの言葉に綺礼は眉を顰め訝し気な表情を向ける。
「何を言うのかと思えば。見ての通り私は既に令呪を失っている」
「ほぉう。では綺礼、貴様のその『右手』に浮かんでいるのはいったいなんだと言うのだ?」
アーチャーが切断された左手を見せる綺礼の反対側の右手を見詰めながら綺礼に伝える。綺礼は何を言っているんだと言いた気な視線を向けながら自らの右手へと視線を向ける。
「――馬鹿な」
そこには確かに『令呪』本体があった。
「良かったな綺礼。どうやら聖杯はお前に答えを探せと言っているようだぞ」
楽しそうに笑みを浮かべるアーチャーに、令呪の存在に困惑する綺礼。そんな綺礼にアーチャーが尋ねる。
「これで出歩く理由は出来たな。さあ綺礼、お前はどう動く?」
「私は……」
しばしの考えの後に答えた綺礼の言葉に、アーチャーは満足そうに凶悪な笑みを浮かべた。
遠坂陣営に動きがある頃、ライダー陣営にもまた動きがあった。
切嗣によって撃退されたケイネスを救ったライダーは、そのままソラウが見付けておいた廃ビルへと向かい、そこで簡易ではあるが魔術と救命キットでケイネスの治療を行っていた。
「――ガハッ」
ケイネスが気付くとまず飛び込んできたのは歪な廃ビルの天上だった。
「ケイネス!?」
「……ソラウ? 私は……っ!?」
婚約者であるソラウの声のした方に顔を向けようとして出来ないどころか首から上以外何も感じない事に気付いたケイネスが言葉を失う。
「……いったい、私の身に何が起きたのだ?」
「うむ。それは余が聞かせてやろう」
己を覗き込むように現れたライダーは彼にしては珍しく神妙な面持ちをし、そして何があったのかを語った。
ケイネスの言われたとおりにセイバーを足止めしたこと。
もしもの場合にとケイネスの傍に愛馬を監視に付けていたこと。
そしてケイネスは切嗣に敗北し、間一髪でブケファラスに助けられ一命は取り留めたが、なんらかの魔術によって魔術回路の破損と全身麻痺になってしまったこと。
「魔術回路の破損に全身麻痺だと!?」
ライダーから語られた己の身体の状態に、ケイネスは信じられないという表情で叫んだ。
「うむ。治療したソラウの見解では、お主は特殊な弾丸を受けた事で魔術回路が暴走し、貴様の神経を内側からズタズタに引き裂いたのではないか、という事だそうだ」
「私も頑張って治癒魔術を施してみたけど、なんとか喋れる程にしか治療できなかったわ」
二人の言葉にケイネスはこの世の終わりといった表情をさせ、人生で初めて絶望と言う感情を味わっていた。
(アーチボルト家始まって以来の天才である私が魔術を使えない? ロードエルメロイと謳われた私が取るに足らない傭兵風情に敗北した? ありえない。認めない。こんな、こんなことが起こる筈などないのだ!)
しかしどれだけケイネスが憤ろうとも、その身体はぴくりとも動かず逆にその事がケイネスから怒りを奪い、逆に絶望がより深く圧し掛かる。
「……終わりだ。私は……」
ケイネスの人生は正に魔術一筋。
それも仕方ない。彼は魔術の名家の生まれであり、魔術に関して比類無き才を持っていた。
才を生かすのは生きる者にとって間違いではない。
だがそれは同時にそれを失えば何も無くなってしまうと言うこと。
ケイネスの脳裏には己の一族であるアーチボルト家から、己が勤めている時計塔から、そして婚約者であるソラウから、敗北者の烙印と共に追放され、見放される未来の自身の姿が浮かんでいた。
「いやいや、まだ終わっておらんだろうマスター」
そんなケイネスに、ライダーは何を馬鹿なと言いた気な表情で口を開いた。
「ライダー?」
「ようは聖杯を手に入れて身体を治して貰えばよい。そうだろう?」
「そ、そうだ、それだ! 聖杯さえ手に入ればまだ、まだ私は――」
「おう! ではソラウを戦場に連れて行くが問題ないな?」
「「――え?」」
ライダーの言葉に、意味が分からずにソラウとケイネスの二人から呟きが漏れる。
「当然であろう? 余に単独行動のスキルは無い。つまりある程度近くに居て貰わねば余は万全に戦うことができぬ。そしてケイネスが戦場に出れぬ以上、魔力を供給しているソラウが出るのが道理ではないか」
「い、いや待て。確かにそうだが……」
(ソラウが戦場に? あの卑怯者がいる場所に向かわせる?)
ケイネスの脳裏に今度はキリツグの銃弾で打ち抜かれて絶命するソラウの姿が過ぎる。
「だ、ダメだ! あんな奴のいる所にソラウを行かせる訳には行かない!」
「では諦めるか? 今諦めれば、お主の言う魔術師の誇りも、一族の威厳も、これまで積み上げた栄華も、お主は失う事になるのだぞ?」
ライダーは真剣な表情ではっきりとケイネスへと問いかける。その顔は正に古の王のそれであり、ソラウも口を挟むことは出来なかった。
「がっぐ――ああああああ!!」
ケイネスは目を閉じ、まるで己の葛藤を表すかのように叫び声を上げた。
そして全ての息を吐き切り、荒い呼吸を繰り貸したケイネスが……ライダーを目をまっすぐに見据えて答えた。
「――諦める」
「ほう? 何を?」
「だから諦めると言ったのだ! 私の名誉も! 栄光も! 功績も! そんなモノよりも私は――」
そこまで叫ぶように喋ったケイネスは涙を流しながら答えた。
「――私は……ソラウが大事なのだ」
「……ケイネス」
「うむ。だがケイネス、この女はお前をそこまで好いてはおらんだろう。態度を見れば分かる。不満も無いが心から愛している訳ではない、といった所か。どうだソラウ、んん?」
「そ、それは……」
ライダーの言葉にソラウが戸惑うように視線を彷徨わせる。何故ならライダーの言葉はまさに図星であり、少なくともソラウはケイネスとの恋愛で自らの心が震えた事は一度も無かった。悲しい事だが二人の関係はケイネスの片思いでしかないのだ。
「――知っている。そんなこと……」
ケイネスは悲しい表情でソラウの気持ちが自分に向いていない事を知っていた事を告げた。
「だが、好きなんだ。初めて見た時から、私はずっと彼女を愛しているんだ。ああそうだライダー、お前には感謝する。先程の質問で、私は、私にとって一番大事な物が何かを理解した」
ケイネスはそこで一度口を閉じ、そして万感の想いを込めて告げた。
「私にとって一番大切なのは、ソラウが幸せに生きている事だ。例えそれが……私が傍にいなくても」
「誰かがソラウを幸せにして、悔しいと思わぬのか?」
「悔しくないかだと? 悔しいさ! 私が、私が彼女を幸せにするはずだったのだ! 私が、彼女の笑顔の隣に立つはずだった! だがもう無理だ。私は……私自身の手でそれを放棄したのだ」
(ああ、なぜもっと早くにこの事に気付けなかったのか。気づけていれば、こんな野蛮で危ない戦いになんて参加しなかった)
しかし時は戻らない。愛した女性を幸せにするには、自分はあまりにも多くを失い過ぎたと、ケイネスは後悔に泣き続ける。
「――だそうだ。ソラウよ、貴様……果報者だな」
ライダーはケイネスに向けてまるで成長した我が子か教え子に向けるような誇らしく、慈愛に満ちた表情でケイネスを見下ろしながらソラウへと語る。
「人間の本質は今際の際でこそ露見する。つまりこの男は己の全てよりもお前の人生が大切だと言ってのけたのだ。男でもここまで言える者はそうは居らん。さて、後はお前がどう答えるかだ。婚約を破棄にしてケイネスと別れるか、それともケイネスと共に生きるのか。一世一代の男の告白、逃げることは許さん。この征服王の前で返答せよ。ああ安心せい。例えお前がこの男を振っても余は何もせん」
ライダーの真剣な表情、普段のソラウならまず先に畏怖の感情が浮かぶが、今のソラウにそれはない。
何故なら彼女の心は今、目の前の男へ初めて湧いた『震える想い』と、それに準じた答えを述べようとしている自分自身に呆れているからだ。
(でもしょうがないわよね――だって)
「……本当に、しょうがない人」
(あの涙が、言葉が、『愛おしいと』思ったのだから)
ソラウは優しくケイネスの頬に触れながら、苦笑を浮かべる。
「けれど、さっきの言葉と涙は、私の心を驚くほど震わせたわ。だからもしも、そんな日々がこれからも続くというのなら……私は貴方を支えて行くわ」
ケイネスを見詰めながら、ソラウは初めて恥ずかしそうに微笑みを浮かべながら答えた。
「おお、おおおソラウ、ソラウゥゥ」
ケイネスの悔し涙はいつの間にか生まれて初めての嬉し涙へと変わっていた。彼は今日、多くの物を失った代わりにもっとも得たい人の想いを勝ち取ったのだ。
その姿にライダーは大声を上げて笑った。
「はーははは! 良かったなケイネスよ! お主は今日、戦士として負け、魔術師としても死んだ! だが人間として、男として勝った! うむうむ、お主らの成長、余もまた嬉しい!」
ライダーの祝福の言葉にケイネスとソラウが視線を向ける。
「だ、だがライダーよ。結局これからどうするのだ? ソラウが戦場に出ない以上、私が」
「そんな事は私が許しません。ケイネスはもう戦えない。私とてソフィアリ家の魔術師です。戦場に立つくらいできるわ」
お互いに気力が満ちているのか私が私がと言い争いを始めたのを見て、ライダーが口を挟む。
「まあ待て待て。実は一つ試して欲しい事がある。のうケイネスよ。令呪とはサーヴァントに対して色々な効果を及ぼす物、という認識でよいのだな?」
「あ、ああ。そのはずだ」
「では余に単独行動のスキルを付与できぬか?」
「っ!? た、確かに試して見る価値はある。私が命令で『単独行動を許可する』と言えば……ライダーよ。令呪を持って命じる――『単独での行動を許可する』」
ケイネスの言葉と共に令呪の一画が失われる。
「どうだ?」
「……成功だ。ライダーのスキルに最低ランクだが『単独行動』が追加されている。とりあえずこれで離れても行動は可能だ」
「ははは! やはり何事も試してみる物だな。ではこれからは余一人で戦う故、お主らは身を潜めておくがいい」
ライダーがマントを靡かせながら翻り戦車を召喚して跨る。
「ま、待てライダー、令呪を持って命ずる――『魔力を万全にせよ!』」
ケイネスが令呪で命ずると今日まで消費していたライダーの魔力が全快する。
「おお、餞別とは粋な事をするではないかマスター」
「……ライダー、いやイスカンダル王」
改まって己の真名を呼ぶケイネスに、ライダーは訝しげな表情を向ける。
「すまなかった。私が未熟なせいで、貴方を戦場に一人で送ることになってしまった」
それはケイネスが始めて行った心からの謝罪であった。
今まで謝る姿を見た事が無いソラウは驚き、ライダーもまた意外だと言いた気に驚いていた。
「だが、私に多くの事を悟る切っ掛けをくれた貴方を、今度こそ支えたい。だから、どうか我々の元に戻ってきてくれ、我が王よ」
ケイネスの尊敬と敬愛の視線を受けたライダーは、その視線に応える様にいつもの見る者を安心させる笑みを浮かべ堂々と宣言した。
「応とも我がマスター、いや、今決めた! お主等はこの現世においての余の初めての我が民とする! お主等民を置いて王は滅びぬ! 必ずやこの戦争を征服し、聖杯を持って凱旋する事を誓おうではないか!」
腰の剣を抜き、高らかに掲げて宣言する征服王イスカンダルの姿に、ケイネスとソラウは知らぬ間に涙を流していた。それはあまりにも偉大過ぎる偉人への、無意識の敬意の表れだったのかもしれない。
「では参ろうか!」
「ブホオオオオオオン!!」
ライダーの意気込みに応えるように二頭の牡牛が嘶き、廃ビルの穴を抜けて空へを駆け上がる。
「我が王よ……どうか御武運を」
ソラウに身体を起こして貰って空を上がっていったライダーを、二人はその姿が消えるまで見送り続けた。
ライダーが一人戦車を走らせているその頃、セイバー陣営でも大きな動きがあった。
「拠点を移す」
戦闘を終えたセイバー達はもう一度集合し、今後の話し合いを行っていた。
「言峰綺礼の負傷は朗報だが同時にアサシンの裏切りで今後アサシンがどう動くのか分からなくなった。このままこの城を拠点にするのは危険と判断して明日にでも別の場所に移動を行う」
「移動するのはいいけど、どこに行くの?」
「こんな時の為に既に別の拠点の手配はしておいた。僕と舞弥はすぐに街に戻って準備を開始する」
「……少しいいでしょうか切嗣」
切嗣の説明が一段落した所でセイバーが口を開く。切嗣は視線だけを向け、セイバーもいい加減慣れたのか返答されないのを気にせずに自分の考えを喋る。
「その新しい拠点は、私の宝具を使っても問題ない場所なのでしょうか?」
「セイバー、どういうこと?」
セイバーの意図が読めずにアイリスフィールが質問する。
「ライダーのマスターが瀕死と言うことはもし次にライダーが訪れれば間違いなく彼の王は宝具を使うでしょう。それにランサーの宝具は間違いなく私の宝具に匹敵する。そうなると私もまた宝具で応戦せざるを得なくなる」
「確かに宝具同士が激突するならいくらか威力を相殺できるかもしれないけど、外した場合は被害がかなり拡大するわね。その辺りはどうなの切嗣?」
「今度移す場所は広めの民家だ。まぁ住宅街よりは周りの家の数は少ないが、宝具による被害は出るかもしれない。正直な話をするならアイリ、君を隠す為に用意した拠点だからね。それと僕達が戻る前に敵が来たらセイバーの宝具の使用も許可する。なんとか凌いでくれ。なんならそのまま倒してくれてもいい。戦い方は……セイバーに任せる」
切嗣の初めての『任せる』という言葉にセイバーとアイリスフィールは驚きと戸惑いの表情を浮かべ、その間に切嗣は『今は時間が惜しい』と言って舞弥を連れて出て行く。
廊下を歩く二人は、部屋からしばらく離れると切嗣が舞弥にだけ追加の説明を始める。
「舞弥、拠点の準備が出来たらアイリだけを連れて移動してくれ」
「セイバーは?」
「ここに残す。現状の予測から、岸波白野の陣営以外はサーヴァントとマスターは別行動をしていると言っていい。ならば両面から攻める。セイバーがやってきたサーヴァントを倒してもいいし、セイバーが相手している内にマスターをこちらが狙撃してもいい」
城を出た切嗣は懐からタバコを取り出しゆっくりと紫煙をくゆらせる。
「もはや戦局も終盤だ。正々堂々と戦って時間をかけてくれた方が助かるし、アイリを連れ出しやすい」
(つまりセイバーは今まで同様に囮、と言う訳ですね)
切嗣の説明に舞弥も納得し、そのまま二人は車に乗って街へを向かった。
そして聖杯戦争二日目の夜は過ぎ、全てが決着する三日目がやって来る。
タイトルをネタで『ケイネス最初で最後の勇姿』にするか『時臣の新たな持病(胃痛)』にするかで悩んだ(笑)
三日目で終わると書いたけど……へたしたらもう一日増えるかも。
そしてようやく終盤……まだ展開に悩んでるんですよねぇ。