岸波白野の転生物語【Fate/編】   作:雷鳥

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すまないが色々修正は後日……眠い。


【聖杯問答サーヴァント編 前編】

 白野が宣戦布告をした時刻から時は少し遡り、ギルガメッシュ主催によるマスター達による問答が行われていた頃、別の場所でもまた問答が行われていた。

 

 白野達と別れたライダーとランサーはそのままアインツベルン城へと向かいそして……征服王が盛大に城門を戦車で薙ぎ払って突入した。

 

「――まぁらしいと言えばらしい、ですね」

 

 その様子を驚きつつもあの征服王ならこのくらいはやらかすなと納得しつつ、ランサーはゆっくりと開いた穴からラムレイと共に突入する。

 

「無茶苦茶だな貴様は」

 

「はーははどうせやるなら派手に行かんとな!」

 

「――っライダーにランサーだと!?」

 

 門の破壊音を聞きつけて武装して現れたセイバーは階段の上から現れた二体のサーヴァントに驚きと焦りを覚える。

 

(まさかランサーとライダーが同時にやってくるなんて。いや、あの様子から察するに同盟を結んだのか?)

 

 敵意も無く横に並ぶ二体を見たセイバーが一息に階段を飛び降りて改めて剣を構える。

 

「おっと! 待て待てセイバー! 余はまだ戦う気はない!」

 

「その言葉を信じるとでも。それに……」

 

 セイバーがランサーに視線を向ける。

 

「……ふう。どうやらこの征服王は決闘の前に貴様と語らいたいらしい。私はその見届け人としてやってきたまで。今のところ貴様と戦う気はない」

 

 セイバーの視線に答えるようにランサーが簡潔に事情を説明すると、幸いとばかりにライダーも口を開いた。

 

「その通りだセイバー。マスターの敗戦はサーヴァントである余が雪ぐが道理。だがただ戦うというのはあまりにも勿体無い。そこで戦の前に共に語ろうと言う訳だ。ほれ、この通り酒も持って来た故、存分に語ろうではないか!」

 

 豪快に笑って宣言する征服王に、セイバーはどうしたものかと悩む。

 

(確かに戦の前にそういった事をする場合もあるが……それよりも何故もう一人の私はそれを受けたのかだ)

 

「……ランサー、貴様はその征服王の提案を受け入れたのか?」

 

「ああ。正直征服王はどうでもいいが、貴様の話には興味がある。故にマスターの許可を得て単独でここに来たというわけです」

 

「……いいだろう。ただし、話し合いはここでして貰う。ここから一歩でも出て行くならその時は、剣を抜く」

 

 ランサーの答えにセイバーもまたランサーの話を聞いてみたいという思いが芽生え、構えていた剣を降ろす。

 

「ううむ。もっと良い場所で語らいたかったが、まあ仕方ない」

 

 ライダーが酒樽を抱えながら戦車から降りて戦車を消し、ホールの真ん中まで進んで腰を下ろす。

 

「……アイリスフィール。私の傍に」

 

 セイバーが二階に声を掛けると、様子を伺っていたアイリスフィールが慄きながらも現れ、セイバーの傍に駆け寄る。

 

「セイバー……」

 

「大丈夫です。貴女は何があっても私が護ります」

 

 セイバーとアイリスフィールはライダーの対面に座り、ランサーもラムレイから降りて進み、中立を意味する為か二人の中間の座る。

 

 三人が三角形の様に座り終えるのを見届けたライダーが酒樽の蓋を破壊して柄杓で直接掬って一気に飲み干す。

 

「ん~日本酒という酒は初めて飲んだが中々美味い。さあ、お主等も」

 

 ライダーが柄杓を向け、セイバーがまず応えてそれを受け取り酒を飲み、次にセイバーがランサーへ向け、ランサーは兜を消してから受け取って飲み干す。

 

「よし。これで余達は同じ酒を酌み交わした仲である。ただ一度の機会だ存分に語るとしよう!」

 

「そうですか。ではライダー、ずっとあなたに尋ねようと思っていた事を尋ねましょう」

 

「おう。なんでも訊くがよい」

 

 柄杓を受け取ったライダーは一人でどんどん酒を呷って行く。

 

「あなたの聖杯に望む願いとはなんですか?」

 

「余の願いか? うむ、余の願いは……先の戦いで傷付いた我がマスターの傷の治癒と……その、受肉だ」

 

「受肉。ということはライダー、貴様は肉体を得てもう一度この世を生きる。と言うのか?」

 

「おう。余の本当の願いは世界征服。しかし聖杯なんぞにそんな事を叶えられてもこれっぽっちも価値が無い! 故に、余は新た得た肉体で、命で、今度こそ天地の全てを制覇し尽くして見せるのだ!」

 

 高らかに宣言するライダーに、アイリスフィールの心が少しだけザワついた。

 

(聖杯によって世界を変える事に価値は無い……いいえそんな事は無いわ。だって切嗣はその為に、それしか無いからこそ、聖杯を求めているのだから。それにしても、これがカリスマという力なのかしら。恐ろしいわね)

 

 あまりにも自信に満ちたライダーの宣言に自分達の願いが正しいのかと思ってしまったアイリスフィールはすぐにゆらいだ心を引き締め直すと同時に、目の前の王のカリスマ性に畏怖を感じざるを得なかった。

 

「さて、余が応えたのだ。ランサー、お主はどうなのだ?」

 

「私とマスターに叶えたい願いなど無い」

 

「なんと。お主のマスターもか? では何故聖杯戦争に参加している?」

 

「聖杯戦争を終わらせ、今後一切行わせない為だ」

 

 無表情で簡潔に告げながらランサーが鋭い視線をアイリスフィールに向ける。

 彼女の視線を受けたアイリスフィールはその視線に恐怖して身体を震わせる。

 しかしランサーはとくに何も言わずそのまま視線を前に戻す。

 

「我がマスターはその為だけに今日まで令呪を持ち続け、そしてこの戦場に赴いたのだ」

 

「それが……岸波白野の望みであり、令呪を持ち続けた理由……」

 

 以前キリツグが言っていた疑問の答えがランサーから告げられ、アイリスフィールがその答えに動揺する。彼女は岸波白野がどんな目にあったのかを知っている。知っているからこそ、どうしてその結論に到ったのかが気になったが、それを口にする前にランサーが話題を進めてしまう。

 

「さて、私の話はこれで終わりだ。次は貴様だセイバー、私に言ったようにライダーに教えてやるがいい。貴様の望みを」

 

 ランサーが含みの有る言い方でセイバーへと話を振る。それを受けたセイバーは眉を僅かに顰めながらもはっきりと答えた。

 

「貴女になんと言われようと私の願いは変わらない。私の願い、それは祖国を救済することだ。そして我が故国であるブリテンの滅びの運命を変えてみせる」

 

 セイバーの変わらぬ願いにライダーはなんと言ったものかと頭を掻く。

 

「……あ~セイバーよ。運命を変えるというのはつまり、過去の歴史を覆す。という意味か?」

 

「そうだ。聖杯が真に奇跡すら起こす願望機であるのなら、私の願いは叶えられるはずだ」

 

 セイバーのライダーへの返答を聞いたランサーが溜息を吐き、ライダーは先程まで楽しげだった表情を引き締め真剣な表情でセイバーへと向き直る。

 

「セイバーよ。一応確認するが、そのブリテンとか言う国が滅んだのは貴様の時代の話であろう。貴様の治世であったのだろう?」

 

「そうだ。だからこそ私は王としてあの結末を許せず悔やむのだ。あの結末を変えたいと願うのだ」

 

「……理解しているのかセイバー、いや騎士王。貴様が言った今の言葉は、己に付き従った全ての者を侮辱するものだと言う事を」

 

「なっ――」

 

「当然であろう。貴様は王として先頭に立ち、民を先導し、国の指針となった。そんな貴様に付き従った者達がいた。であるならば、貴様は自らが招いた結果を受け入れなればならん。違うか、騎士王よ?」

 

「馬鹿な。王が滅びを受け入れていいはずが無い! 否、むしろ私を信じて付いて来てくれた者達がいるからこそ、王である私が滅びを容認していいはずが無い」

 

「いいや受け入れ容認するのが王だ」

 

「っ!?」

 

 セイバーは立ち上がり叫ぶようにライダーの言葉を否定するが、すぐさまそのライダーに即座に否定されて息を呑む。

 

「王は結果を受け入れねばならん。それが例え己が思い描いた物でなくてもだ。それが全ての王に課せられた最初にして最後の責務だ。その責務を果たせぬ者を暗君と呼ぶ。そして余はそんな者を王とは認めぬ」

 

 ライダーの言葉にセイバーはなんとか言い返そうと頭を働かせる。だが、浮かぶ言葉の全てが論破される未来しか思い描けず口が閉じる。

 

「それでも、それでも私はっ!」

 

 歯を食いしばり何かに耐えるセイバーのその姿に、ランサーは無言のまま目を閉じ、ライダーはやれやれと言い感じに首を振る。

 

「……やれやれこれだけ言っても認めぬか。であらば仕方なし。ここからは力を持って証明するしかあるまい」

 

 ライダーは残りの酒を一気に煽ると空の酒樽を投げ捨て城門の入口へと戻る。

 それを見届けたセイバーはすぐに立ち上がってアイリスフィールを抱えて階段まで跳び、剣を構える。

 そしてランサーは……ラムレイに跨り宙へと上がる。

 それを見届けたライダーは一度頷き、腰に携えた剣を抜き、高らかに宣言した。

 

「では行くぞセイバー! 我が宝具を持ってして貴様に王の在り方を示そうではないか!」

 

 それを見届けたライダーは一度頷き、腰に携えた剣を抜き、高らかに宣言した。

 

 そして――世界が塗り替えられた。

 

 地面はどこまでも続く砂漠となり天井には晴れ渡った青空となり空気はまさに熱砂独特の熱を帯びる。

 

「これは固有結界!? そんなライダークラスがこんな魔術を!?」

 

 固有結界。

 

 術者の心象風景によって世界を一時的に塗りつぶす結界を展開する魔術。

 現代では魔法に最も近い魔術の一つであり、協会では魔術の到達点の一つに定められながら禁呪の一つとされている。現代の魔術師に使用者が居れば間違いなく封印指定に属する魔術である。

 そして固有結界の能力は使用者によって違う。

 

 世界が変わると同時にライダーの背後に次々と『戦士』達がその姿を現して行く。その数はもはや目視で数えるのも馬鹿らしくなるほどであり、既にライダーの背後の砂漠はその大勢の兵隊のせいで覗くことすら出来ない。

 

 そして全ての兵が出揃ったのを認識したライダーは傍に現れた愛馬のブケファラスに跨ると、両手を高らかに挙げて声を張り上げる。

 

「これこそが我が王道の答え! 肉体は滅び、その魂は英霊として「世界」に召し上げられ、それでもなお余に忠義する伝説の勇者たち。時空を超えて我が召喚に応じる永遠の朋友たち。彼らとの絆こそ我が至宝! イスカンダルたる余が誇る最強宝具『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)』なり!!」

 

 固有結界『王の軍勢』。

 その能力を簡潔に言えばイスカンダルの嘗ての臣下達をサーヴァントとして現界させるというもの。中にはイスカンダル以上の能力を持つ英霊もいるが、イスカンダルの限界として彼等の宝具までは再現できず能力も落ちているしクラス等も保有していない。あくまでも今の彼等は『王に仕える戦士』なのだ。

 そしてライダーのこの固有結界は彼一人で維持している訳ではなく、この場に居る兵全員で維持している。それはつまり、ここにいる全ての者が『同じ心象風景を抱いている』という証明に他ならない。

 

 この固有結界は王と戦士が互いに強い絆で結ばれなければ到れない極地。

 後に暴君と恐れ罵られた一人の王は、しかし戦場に赴く戦士達にとってはまさに、太陽のように眩しく、熱く、死した後でも決して色褪せる事無く、焦がれ魅入られる存在であった。

 

「さあセイバーよ! 余は己の王道を示した! 己が王道が正しいと思うのならば貴様も示すがいい! 行くぞ勇者達よ!」

 

「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」

 

 蹂躙の波が走る。

 

 標的たる騎士王は……今だその『聖剣(理想)』を示せずにいた。

 

「――馬鹿者が」

 

 その騎士王の姿に、堪らずもう一人の暴君が愛馬を走らせた。

 




と言うわけで原作よりかなり短くなりました。
……いやね。最初はもっとセイバーとアイリがランサーに白野の生い立ちとかでボロクソに言われる展開だったんだけど……そんな精神状態で戦ったら普通にライダー勝っちゃうだろって事で短く、しかもかなりやりとりがマイルドな展開になった……モヤモヤするが許してくれ。これ以上は多分悩んでもっと酷くなると思ったんだ。
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