今回でギルガメッシュVS白野のラストです。
いや~長かった。
二つに分かれていた物が一つに戻り、思考が統一される。
ああ、ここまでやって届かないのか。
そりゃそうか。相手はサーヴァントだ。人間がここまで出来ただけでも凄い事じゃないか。
ああそうだな。ここまでやった。
身を削った。
心も砕いた。
命も燃やした。
そしてようやく辿り着いた。
『死線の内側』に。
さあ……あとはただ、耐えるだけだ。
意識が、肉体が、覚醒する。
同時に『二人が払った代償』が、全身を駆け巡る。
喪失感と激痛が身体を駆け巡って意識が混濁する。
それでも……やるべき事は覚えている。
『転移』
『覚えている座標』にとにかく跳ぶ。
同時に右手に封の解けた剣を、左手に銀の筒を掴み、同じく左手に身に付けた牙が付いた御守りの力を起動させて光る刀身が出現するのを確認して下から上に振るう。
陽炎のように歪んだ視界の中、振り抜かれた光る刀身が『何かを斬りとばす』。
振り上げた動作に身体が悲鳴を上げて崩れ落ちそうになる。
我慢しろ……それだけが……自分の武器なんだから。
体勢が崩れる前に重心を前に、残された最後の力で妙にはっきりと視認できる目の前の『黄金に輝く塊』目掛けて右手の剣を突き出した状態で一歩を踏み込む。
自分の持ち物の名前さえ思い出せない。
だた、この右手の武器、これが『決め手』だった事だけは覚えている。
届くかどうかなんて分からずに突き出したその一撃。
避けようと思えば避けれるだろうその一撃は――あっさりとその塊を貫いた。
「――まったく最後まで魅せてくれるものよ。認めよう。白野、我が
どこかで聞いたような声が、とても嬉しい事を言ってくれた気がする。だから頭が痛いけど、頑張って思い出さないと。そして感謝を伝えないと。
「……ありがとう……ギル……ガ…」
今度こそ力だ抜けて倒れる。
だけど硬い地面にぶつかる事はなく、身体が何かに吸い込まれる。視界に捕らえたのは黒い何か。
ああヤバイ。これはヤバイ。
身体が拒否している。
魂が拒絶している。
急げ急げと感覚が急き立てる。
何を急いでいるのかを考える前に、それを口にする。
『命ずる。受肉せよ』
手に感じていた何かが沢山消えた。
ああだがこれでいい。これで『繋がり』は消えた。
思い出せない大切な仲間は、きっとこれで大丈夫だろう。
そして……自分は黒い何かに飲まれ、肉体と魂は消滅した。
◆
アーチャーの目の前で二人の白野が光となって消えた。
人間がここまでやれた。それだけでも賞賛すべきだろうとアーチャーは考える。しかし同時に、残念だと思う気持ちを拭えないでいた。
(もう少し意外な物を見せてくれると思ったのだがな)
罅割れた黄金の劇場を見渡し、しかしそこでアーチャーはある事に気付く。
(なぜまだ結界が維持されている? いや、そもそも何故人間の白野の身体が消え――っ)
アーチャーは疑問の答えに辿り着く前に襲い掛かった予感に従って咄嗟に体を捻る。
先程までアーチャーが立っていた場所を光の一閃が通り過ぎ、彼の天の鎖を持つ左腕が切断される。
「転移!?」
振り返ったアーチャーの前に今にも倒れそうな程疲弊した青い顔の白野がいつの間にか立っていた。
(切断面からの出血が無い。電力を利用したレーザーブレードという奴か!)
白野の左腕の牙の御守り、『雷獣の爪』による放電現象と手に持った武器の形状から瞬時にそれがどういう武器なのかを悟る。
白野が左手に持つ武器、彼等が生きる現代より遥か未来の世界で生まれる『科学によって造られた光の剣』。
その名は『フォトンブレード』。
魔力で無い以上、肉体の耐魔力は意味を成さない。更には物理ではなく『高熱』による熱断であるため、生物にとってはその射程の短さを除けば脅威の切断能力を誇る。
もちろんサーヴァントの武具ならば魔力で強度を上げれば防ぐ事も可能だが、アーチャーはその防具である鎧を失っていた。故に、その一撃を防ぐ事が出来なかった。
アーチャーはフォトンブレードの性能の推測を終えると、すぐに白野が持つ右手の武器へと視線を移し、その目蓋を大きく開く。
(あれはダメだ。あれは『神殺し』の呪いが込めれらた宝剣! あれは我の様な神性を持つ物への特効を有する!)
今迄で封をされていて気付かなかったかつて神代の時代の日ノ本に存在した宝剣。
神々が鍛えた武器を『欠け』さる程の強度を持ち、更に神獣の体内で血肉によって精製されたが故の強い対神性を持つ。
もちろん本来の宝剣は神造武装、故に流石のムーンセルでも再現には到れない。到れないが、その特性は完璧に再現されている。
その宝剣は現代ではこう呼ばれている――『天叢雲剣』と。
「――――!!」
白野が声にならない叫びを上げて飛び掛るような一歩を踏む出し、右手の剣を突き出す。
それはただ崩れそうになるのを相手にぶつかって耐えようとするかのような無様な飛びつき。
アーチャーは冷静に見抜く。この一撃を回避してしまえば白野はそのまま地面に倒れて起き上がる事は無いと。
故にアーチャーの本能が、一歩下がろうとする。
そう下がろうとした。
それを、アーチャーは自らの意思で持って捻じ伏せ、その場に留まる。
「……はっ。確かにここで退けば『我の負け』か」
たかが一歩。
しかしその一歩を下げた瞬間に、王者として、裁定する者として、強者としてアーチャーは敗北する。むしろそのような逃げの一手で勝とうものなら彼の矜持は地に落ちる。
(それをこの相手に行う? 今もまだ我に全力で挑む相手に?)
「論外だ。それだけは出来ぬ」
もしもアーチャー自身に明確な目的があったなら、その合理的な思考の元、彼は後退しただろう。
だが幸運にもこの時の彼には優先すべき目的は無かった。
結果、アーチャーはその場を動かず、その剣の一撃を甘んじて受ける。
「っ!?」
アーチャーの霊核、その急所を的確に貫いた致命傷の一撃。
もはやその傷を治す事はできないだろう。
しかしアーチャーにはまだ単独行動のスキルによって、残った魔力で白野を殺す事も可能だった。
だがアーチャーは白野を殺さず、笑みを浮かべて彼を称えた。
「――まったく最後まで魅せてくれるものよ。認めよう。白野、我が
アーチャ-の賞賛の言葉を受けた白野は、その疲れか顔をほんの少しだけ嬉しそうに綻ばせる。
「……ありがとう……ギル……ガ…」
感謝を述べる途中で、白野はついに力を使い果たしたのか、そのまま地面に崩れ落ちる。
それを慌ててアーチャーが支えようとした瞬間――それは現れた。
白野の真下に黒い渦のような空間の歪みが発生して彼を飲み込む。
「馬鹿な、これは聖杯、それにこの気配は――っ白野よ手を伸ばせ!」
慌ててアーチャーが手を伸ばすも、白野にその力は残っていないのか、白野が小さく何かを呟くと同時に彼の手にあった令呪の全てが消え、それを最後に白野は黒い渦に飲まれて完全に消えてしまう。
「おのれ、おのれおのれおのれおのれぇぇええ!! たかが『悪意』の分際で! この我の戦いの余韻を邪魔し、更にこの我の物に手を出した事、決して許さぬぞ!」
残された
と言う訳で、白野がアレに拉致られました。
そしてようやくギルガメッシュとの戦闘も終了。
うん、ゲームに出てくる礼装を沢山使えたし満足!
あと天叢雲剣の神性への特効は原点の精製(オロチの体内で出来た)を理由にしました。実際作品次第では魔剣や呪い扱いの作品もあるしね。
フォトンブレードはまんまSFやロボに出てくるアレです。ライトセイ(これ以上はいけない)
次回はランサーサイドです。
さあ、また戦闘回だよぉ(戦慄)
でもたぶんこっちよりはすぐに終わると思う。二人の会話がメインだし。