岸波白野の転生物語【Fate/編】   作:雷鳥

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と言うわけでサーヴァント召喚回。
さあ誰が出てくるのかな。



【サーヴァント召喚】

「……ん?」

 

 目が覚めた。気付けば辺りはすっかり夜になっていた。

 

「んあぁっふぅ」

 

 寝袋から這い出て身体を伸ばす。いやー野宿にも慣れてしまった自分が悲しんだか逞しいんだか。

 

「さて……ついにその時が来ちゃったはいいが……触媒、無いんだよねぇ」

 

 聖杯戦争の開催地である冬木に着いて今日までの二週間。街を散策してキャンプ道具等を揃え、霊脈が豊富な山に篭って召喚の準備をせっせと行っていた訳だが、肝心のサーヴァントを呼び出す触媒が手元には無かった。

 

「……まぁいいか。触媒なんて無くても呼べる訳だし。確か自分と似たタイプのサーヴァントが呼ばれるんだよな」

 

 ツテで手に入れた冬木の聖杯戦争の内容が記された資料の中身を思い出す。

 

 まず冬木の聖杯戦争と月の聖杯戦争の類似点は参加資格である令呪を持つ魔術師をマスターと呼び、そのマスターを護る為に使い魔としてサーヴァントと呼ばれる古の英雄を召喚し使役することができる。

 

 次にマスターにはサーヴァントへの命令権でもある令呪が三画与えらる。

 令呪の命令権は絶対であり、サーヴァントは令呪による命令には逆らえない。ただし精神的なものやおおざっぱな命令に関しては効果が薄い。

 

 サーヴァントにはセイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの七つのクラスが存在する。その名が示すようにセイバーは剣の英霊、ランサーは槍の英霊と言った感じに分けられる。

 もっとも生前共に戦ったアーチャーやギルガメッシュのように例外は存在する訳だが。あいつらメイン武装が双剣と四次元ポケットだからなぁ。本格派の弓兵さん達が怒らないかが心配だ。

 

 最後にもっとも大事な類似点は、聖杯は最後に生き残った者にだけ与えられるということ。

 

 同じ、または似通った部分は以上であとは違っている。

 

 まず月のマスターの数は百以上で戦闘はある程度ルールが敷かれた決闘方式だったが、冬木ではマスターの数は七人で戦闘はなんでも有りのバトルロワイアル。

 

 令呪が無くなってもそれはあくまでサーヴァントへの命令権を失うだけで敗北扱いにはならない。もっとも、令呪が無くなるという事は己のサーヴァントにも殺されてしまう場合もあるが、その点は信頼関係を築ければ問題ないだろう。

 

 サーヴァントも七つのクラスから一体ずつ呼ばれて同種のクラスは存在しない。そしてサーヴァントにはクラススキルと呼ばれる特異な能力が与えられる。

 

 それとサーヴァント召喚に触媒がある場合は、本人の相性よりも触媒とされた物との由縁が優先される。

 触媒を用意せずに呼ぶと召喚者であるマスターに近しいサーヴァントが呼ばれる。何を参考にされるかは明記されていなかったが、まぁ性格とか使う魔術とかその辺りだろう。

 

 とりあえず今得ている情報はこんな所かな。はっきり言って冬木の聖杯戦争の方が色々と物騒でしょうがない。

 

「……さてと、準備しますかねぇ」

 

 野生動物を捌く時に手に入れた血で魔方陣を描く。

 

「走れソリよ~風の様に~月海原を~パドルパドル~♪」

 

 耳に残った時期外れのクリスマスソングを口ずさみながら準備を進め、そして終わる。

 

 召喚時間までまだ余裕があるのでカップメンで腹を満たす。ビバインスタント。ビバレトルト。日本の食品技術は明るい!

 

「まともに食事できるって幸せ」

 

 少年兵時代も傭兵時代も戦闘中はかなりひもじかったからなぁ。

 

 遅めの夕食を終え、周囲の魔力の満ち具合、そして自分の魔力が完全回復したのを感じて立ち上がり、用意しておいた魔方陣の前に立つ。

 

「……あ、詠唱しないといけないんだっけ?」

 

 資料にはそう書いてあった。月の聖杯戦争ではムーンセルが勝手に選ぶかサーヴァントが自発的に選定するから忘れかけていた。

 

「えっと……よし思い出した」

 

 改めて魔方陣の前に立ってその手を魔方陣へと翳す。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公――」

 

 果たしてどんなサーヴァントが現れるのか。

 

「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ――」

 

 紅の舞踏服を着た皇帝だろうか。

 

「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する――」

 

 それとも赤い外套を纏った正義の味方だろうか。

 

「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に――」

 

 まさか化生になった女神だろうか。

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者――」

 

 大穴で傍若無人な英雄の王か竜のお嬢様か。

 

「汝三大の言霊を纏う七天――」

 

 懐かしい顔ぶれを思い出しながら目蓋を一度閉じ、そして……目蓋を開けると同時に最後の一文を唱える。

 

「抑止の輪より来たれ天秤の守り手よ!」

 

 淡く光っていた魔方陣がいっきに輝き身体から魔力が奪われる。

 

 そして魔方陣から光が溢れ、土煙が舞う。

 

 咄嗟に腕で目元を覆い隠す。

 

 さて、一体何が――

 

「ヒヒーーン!!」

 

 ――呼ばれたんだ?

 

 唐突な馬の嘶きに腕を下げる……あらやだ黒くて逞しいおみ足。

 

 目の前には黒くて太い足、そこから視線を上げればそこには黒い胴体に白い鍬を取り付けられ……深紫色の具足?

 

「どこを見ている」

 

 冷たくも透き通るような声が頭上から響いて視線を更に上げる。

 

「あ……」

 

 そこには……やはりどこか冷たい印象を受けながらも、決して消えることの無い星の輝きを宿したような美しい金色の瞳をした女性が無表情のままこちらを見下ろしていた。

 

「問おう。貴方が私のマスターか?」

 

 その言葉に、自分は頷き答える。

 

「ああ。自分が貴女のマスターだ」

 

 そう答えると彼女は短く『そうか』と答えて乗っていた馬を伏せさせて下馬する。

 

「えっと、貴女のクラスはもしかしてライダーか?」

 

「いいえ。私はランサーのクラスだマスターよ」

 

「あ、そうなんだ。この子、たぶんランサーの愛馬だよね? その子も一緒だからてっきりライダーかと思ったよ」

 

 しかしよくよく考えれば馬上の戦闘では槍を使うものだ。となると彼女は馬上での槍捌きで有名になった英霊だろうか?

 

「ああ。この子は私の愛馬のラムレイ」

 

 ……ぬ? 今聞き捨てなら無い事を言われた気がした。

 

「え? ラムレイって確かアーサー王が乗っていた馬の一つじゃ」

 

「ほう、博識だなマスターよ」

 

 ランサーは改めてといった具合に持っていた槍を地面に突き立てこちらへと向き直る。

 

「ランサー、アルトリア。召喚に応じ参上した。我が愛馬は雷雲を呑むように、我が槍はあらゆる城壁を打ち破る。貴方の道行きを阻むもの、全てを打ち砕こう」

 

「ブフォオオオオオン!!」

 

 ランサーの言葉に同意するように傍に控えていたラムレイがひときは大きな声で天へと嘶く。

 

 その二人から感じるまさに英傑の気迫に圧倒されながら、そんな相手が先に名乗りを上げてくれた事への感謝の念を持ってこちらも答える。

 

「貴女のマスターの岸波白野だ。貴女に見限られないように全力を尽くすつもりだ。どうか共にこの戦争を走り抜いて欲しい」

 

 そう言って右手を差し出す。ランサーは自分が差し出した右手と一度だけこちらを伺ったあとに、差し出した手を握ってくれた。

 

「その言葉、期待するとしましょう。それでマスター、これからどうしますか?」

 

「まずはお互いにできる事や役割の話し合いをしよう。あとは拠点をどうするかだね。一応街に一番近いこの山を拠点にしようかと思ってる。街に拠点を持つと周りに被害が出るだろうしね」

 

「心得ました。では今は武装を解除しても?」

 

「ちょっと待って。《Code:遠見(Far_vision)》」

 

 そう言ってランサーに待って貰って遠見の魔術を使って周囲を観察する。

 

 先程まで暗くてよく見えなかった視界がいっきにクリアになり遠くまで見渡せるようになる。

 

 とりあえず視界内には誰も居ない。浄眼にも魂の感知無し。自分の直感にも反応は無いから大丈夫かな。

 

「周囲には誰も居ないし、何も感じないから大丈夫だと思う」

 

「そうですか。先程の魔術、見たことの無い系統ですがそれがマスターの魔術ですか?」

 

「ん? ああ、そうだよ。後で詳しく話すよ。それでランサー、武装を解除するってもしかしてラムレイやその鎧のこと?」

 

「ラムレイは消しません。この鎧は私の魔力で出来ていますので解除した方が魔力消費を抑えられるのです」

 

「そっか。じゃあ武装を解除してくれていいよ」

 

「分かりました」

 

 そう言ってランサーが武装を解除した瞬間……なんかすんごいのが飛び込んできた。

 

 え? なんでそんなレオタードの腹部を円形に切り取ったようなタイツみたいな服着てるの!? 内股や脇もなんで同じく露出してるの!? つーか胸でかい下乳見えちゃってるよ!?

 

 先程までのガッチガチなフルプレートから一変して露出過多となったその姿に内心でツッコミを入れる。鎧なんて肩と腕、腰周り、膝下にしか存在しない。果たしてもうこれは鎧と言っていいのかすら疑問である。

 

 はっ! まさかこの人……セイバーと同じ趣味の人か!!

 

 見れば胸もでかいしスタイルもいいと共通点も多い、きっと自分に自信があるのだろう。

 

 アーサー王まさかの露出趣味だったとは……なるほどガウェインの異常な忠誠心の答えはこれだったのか!

 

「あ~えっと、ランサー、それがいわゆる通常モードみたいなものなのか?」

 

「ええ。必要最低限の部位だけを護る為の形態です」

 

 護れてない! 護れてないよランサー!?

 

 彼女の言葉にどうしても突っ込みを入れたいが、さすがにまだ知り合って初日で『露出狂か!』なんて言う訳には行かないので、なんとか口に出すのを我慢する。

 

「そっか……その、生きてた時もその格好だったの?」

 

「まさかありえません。私は男と偽って過ごしていたのですよマスター」

 

 何を馬鹿な事をと、ちょっと呆れたような表情で答えるランサーは、当時の事を思い出したのか眉を顰め始めた。

 

「しかも剣を手放し常に槍に持ち替えたせいで、身体、特に何故か胸の成長が著しく、お陰で私は常に胸に、こちらで言う晒のような布を巻き、大き目のフルプレートを着用し続ける破目になったのです。このフルプレートがさらに厄介であり、サイズの違いを埋める為に鉄の厚さが増していて重いわ暑いわで動くのも大変でした。そのせいで戦場では常に馬に乗っていましたね。遅いと言った奴は厳罰に処してやったのも今となっては良き思い出です」

 

 ……そんなに大変だったんだ。

 

 饒舌に過去の苦労を語り続けるランサーを眺めながら、とりあえず想像してた理由ではなかったので心の中で安堵の溜息をついた。

 

 良かった。どうやら別に露出好きという訳じゃないのか。まぁセイバーの紅い稲妻にくらべればまだ耐えられるから、うん。自分が気にしなければいいだけだな。

 

 流石に会って早々にツッコミを入れるのもアレなのでこの件は胸に仕舞いこんでさっさと話題を逸らすことにする。

 

「とりあえずご飯にしようか。と言っても、王様だったランサーからするとちょっとアレな食事かもしれないけど」

 

「食事ですか。頂きましょう」

 

 ……なんか目に怪しい光が宿った気がするが、きっと気のせいだろう。

 

 そう思いキャンプ用のガスコンロに火を点して大き目の鍋に水を入れて沸騰するのを待つ。

 

 お湯が湧くまでの間にカップ麺とお茶のパックも用意する。お湯が勿体無いから一緒に使うのだ。まぁ食器なんてないから割り箸とプラスチックのコップだけど。

 

「それは?」

 

「こっちはカップ麺。乾燥した具と味の付いた粉末が一緒に入ってる。こっちはティーバッグっていうこのバッグの中に茶葉が入っているんだ。両方ともお湯を注いで食べたり飲んだりするものだね」

 

 無表情だがどこか興味津々と言った感じの雰囲気を放ちながら聞いてくるランサーに色々説明する。

 何味が良いか聞いたら全部でと言われたのにはちょっと驚いたが、まぁ二人、いやラムレイも少しは食べられるかもしれないから三人で分ければすぐに無くなるだろうと思い、カップ麺を塩、味噌、醤油を出す。

 

「……まだですかマスター?」

 

「まだ沸いてないからねぇ」

 

「……ラムレイ」

 

 ランサーが呼ぶとラムレイが立ち上がって彼女の背後で身体を横にして伏せ、ランサーはそんなラムレイに背中を預けて膝を立てた所謂体育座りでそわそらとお湯が沸くのを待つ……なんか物凄く可愛い。

 

 しばらくそのまま二人で鍋を眺めていると、お湯が沸騰する。

 

「マスター!」

 

「はいはい」

 

 カップ麺の蓋を途中まで開け、そこにお湯を注いぎ、三つ全ての蓋を塞ぐように近くに週刊誌を上において熱が逃げないようにする。

 

「こうして、蓋を押さえたら後は三分待つだけだね」

 

「三分ですか……お湯をもっと入れたり火に掛ければもっと早くできるのでは?」

 

「いやお湯を適量以上入れると味が凄く薄くなるし、火になんて掛けたらカップが燃えちゃって食べられなくなるよ。とりあえず……お茶でも飲んで待とう」

 

 残ったお湯をコップに注いでパックで緑茶と紅茶を作る。今回は大盤振る舞いだ。

 

「とりあえず緑茶と紅茶を入れたから、好きな方を飲んでいいよ」

 

 パックは取り出してまた使う為に空いているカップに移す。

 

「……ずず。ふむ、これが緑茶ですか。そしてこちらが紅茶……っ! たったこれだけでこれほどの味が!?」

 

 なんか軽いショックを受けているランサー。そのまま紅茶の方を飲み続けたので緑茶の方は自分が一応ことわりを入れてから頂く。

 

「おかわりですマスター」

 

「あ、うん」

 

 鍋のお湯はポットタイプの魔法瓶に移しておいたので取っ手を持ってパックを入れてお湯を注ぐ。味が丁度いい具合に出た所でランサーに手渡す。

 

「そうそう。パックも普通のお茶と同じで使うほど味が薄くなるから、それはちょっと了承して欲しい」

 

「そうですか。覚えておきましょう」

 

 なんか言っておかないと延々とおかわりを要求されそうだったので忠告すると、ランサーはお茶を飲みながら頷く。

 

 さて、そろそろいいか。

 

 時計を見ると三分と少し経っていたので雑誌を退かす。

 

「はいランサー、先に食べていいよ。好きな味があったら教えて。あ、お箸って使える?」

 

「問題ありません。聖杯からこの世界の一般常識と行動は問題なく行えるようにされていますので」

 

 なら大丈夫か。

 

 とりあえずスーパーで買った百本入りの割り箸の袋から一つを取り出してランサーに渡す。

 

 そしてランサーは三つのカップ麺を一口ずつ食べる。

 

「……ふむどれも捨てがたいですが、この味噌はこってりしていて美味しいです」

 

「そっか。じゃあラムレイと自分は残りの――」

 

「何を言っているのですマスター、全て私が頂きます」

 

 え?

 

「ラムレイはそもそも私の魔力で成り立っています。私が食べて魔力を得る=ラムレイの為なのです。そして先程マスターは私に『先に食べて良いと』言った。ならばこれらは全て私の食事です」

 

「なん……だと……!?」

 

 冗談。いやランサーの眼はマジだ。現に真顔で既に味噌をスープも含めて完食して既に醤油に取り掛かっている。しかも気付けば塩のカップ麺を自身の脇に移動させていた。

 

 ラムレイに視線を向ける。するとラムレイはまるでどこか達観したような表情と共に目蓋を閉じて首を伏せた。愛馬としてランサーの傍にいた彼女のその仕草から悟る。

 

 あっ。これなに言っても駄目なやつだ、と。

 

 仕方ない。自分の分はお湯が再度沸いたらだな。

 

 お鍋のお湯が無くなりそうだったので、残りでもう一度お茶を淹れてペットボトルの水を鍋に移す。

 

「ずるるるるるるるるるる……もっきゅもっきゅ」

 

 やだ、何その咀嚼の効果音、可愛い。

 

 ランサーはカップラーメンに夢中で気付いていないのか真顔である。

 

「ずるるるる……もっきゅもっきゅ」

 

 ……これは気付かない振りをしよう。自分の為に!

 

 ランサーの愛らしい仕草を横目に堪能しながらお湯が沸くのを待つ。

 

「……ふう。さて、おかわりの前にマスターに訊かなければいけないことがありました」

 

「……なに?」

 

 そうか、おかわりする気なのか……水と食料が持つだろうか。

 

 そんな懐事情の心配をしながらとりあえずランサーの横に腰を下ろして尋ね返す。

 

「マスターが聖杯で叶えたい願いとは何ですか?」

 

 ああ、まぁそうだよな。サーヴァントとしては気になるよな。

 

「特に無いよ。強いて言えば自分は聖杯の破壊が目的だしね」

 

「聖杯の破壊が目的? それはまた何故?」

 

「だって死人が出てるじゃん」

 

「……まぁ、確かに四回目ともなれば少なくない数の人間が死んでいるでしょうね」

 

 そう。かつて聖杯戦争を体験した者として、そして令呪のせいで両親を死なせてしまった者として、それが許せない。

 

「戦う決意をした者が死ぬのはいい。だが、関係無い人達がとばっちりで死ぬのは許せない。だから破壊する。こんな馬鹿げた戦争が二度と起きないように」

 

 それこそが令呪が浮かび、そのせいで不幸になりながらも、今日まで所持し続けた動機だ。

 むろん両親を生き返らせて人生をやり直したいと思ったこともある。

 しかしそう思う度に一つの疑念が浮かぶ。

 

『自分がいたのでは両親がまた何かに巻き込まれるのではないか?』

 

 結局両親が死んだのは転生者と言う特異な存在である自分のせいだ。

 ならば両親を蘇らせ、自分と言う存在を消した世界を作ればいいのでは?

 そう考えたこともあった。だが……それはどうしても嫌だった。

 

 自分は、愛されていたから。

 身を挺して自分を魔術師から護ってくれた両親を知っているから。

 だがらそれを否定し、無かったことにするのが嫌だった。

 

 だから結局行き着いたのは二度と自分のような者が生まれない様にする為に聖杯を破壊すると言う望みだった。

 

 まぁ問題はその聖杯が何所にあるか、もしくは誰であるか、だ。

 

 聖杯とはただの呼称でしかなく、実際に杯であるとは限らない。

 願望器は土地その物かもしれないし、一人の人物である可能性だってある。自分の場合なんて月である。その為今回の聖杯を早期に発見する事が自分の目的達成にしなければならない事の一つだ。

 

「なるほど。しかしそんな事がもし成功したとしても、少なくともこの聖杯戦争を創り上げた魔術師達から命を狙われ続けるのでは? 知らない者の為にあなたがそこまでする必要があると?」

 

「あ~確かに今の言い方だとそう捉えるか。でもねランサー、自分は今までも、そして今回の聖杯戦争も、別に誰かの為に戦う訳じゃない。ただ自分がそう言った事が許せないから戦うんだ。言っちゃえば自己満足なんだよ。その自己満足の結果が偶々他人の為になっているだけなんだ」

 

 結局のところ岸波白野は我慢の出来ない人間なのだ。

 

 考える前に行動する。損得よりも感情を優先する。そんな単純感情馬鹿な人間。それが自分なのだ。

 

「……そうですか。マスター、あなたは随分と不器用なのですね」

 

 ランサーの言葉に『否定できないな』と苦笑まじりに答える。するとランサーはすぐに『ですが』と続けた。

 

「私は嫌いではない。今の答えのお陰で、私は貴方の事が少しだけ好きになれた」

 

 そう言ってランサーは無表情だった表情を少しだけ和らげて小さく微笑む。その仕草が外見とは裏腹に愛らしくて、少しだけドキっとした。

 

「あ、そ、そう? なら話した甲斐があったよ、ははは!」

 

 照れ隠しに少し大きな声で笑って答えるが、少しだけ顔が赤くなっているかもしれないと顔を鍋に移したその時、ある事に気付いてランサーに尋ねた。

 

「そうだ。ランサーは何か聖杯で叶えたい願いとかあるのか? 別に願いを叶えた後に壊すのでもいいし、自分が叶えれる物なら令呪の魔力を使って叶えてもいいよ?」

 

 令呪には膨大な魔力が蓄えられている。その魔力を行使すればある程度の事は叶えられるはずだ。

 

「いえ、私は聖杯で叶えたい願いなどありません。私はあの結末を受け入れているし、そこに到るまでの道程に悔いも無い。故に私は貴方のその願いの為に障害となる壁を破壊するだけです。そうでしょうラムレイ」

 

「ヒヒン」

 

 ランサーの言葉にラムレイが肯定するように短く啼いて答える。

 

「そっか。まぁ何かあったら言ってくれ。自分が出来る範囲でランサーの要望には答えるよ」

 

「そうですか。では鍋のお湯が沸騰したようですし、別の味のカップ麺を所望します」

 

「……とりあえず自分の分を作ったらね。流石にお腹空いたから」

 

 結局この後更にうどんや蕎麦、カップ焼きそばも要求されてとりあえず一種類ずつ全部食い尽くされた挙句、『では要望として明日からは十人前でお願いします』と言って、ランサーとラムレイは霊体化して消えた。

 

 ……余計な事を言った気がする!?

 




と言うわけでサーヴァントはFGOに出ているランサーオルタさんでした!
EXシリーズから誰かくる事を期待していた方はごめんなさい。

実は当初はキャス狐を召喚し、キャス狐が魔術師である事を利用して更に赤皇様をライダーで召喚するという展開でした。
が、実はこの設定に近い作品がすでに存在し、道程は兎も角オチがほぼ完全に似ちゃっていたのでボツになりました。

当初はまんまオルタを予定していてオルタで検索したら、なんとランサーオルタさんがいるという事を知って調べた結果、こっちの方がお話的に合うと判断してFGOプレイしてないにも関わらず登場させました(私ガラケーなのでプレイ出来んのです)


今回の能力説明↓

『コードキャスト』

簡易術式の一つであり、殆どの魔術を『一小節』で発動可能にするというチート術式。
ただしそれには予めその魔術の『コード』を作っておく必要がある。
白野が基本的に使っているコードキャストは修得型であり、そちらに特化し過ぎた為に白野は通常の手段で魔術の行使ができず、いちいちコードとして作り直さないといけない。(魔力を通す物であれば使用は可能)

白野は転生を繰り返して研鑽を経てコードキャストの固定化、魔力量による威力調整の設定等が可能になり、もう一つの魔術である物質化制御と合わせる事で原作にあったような『礼装』や『消耗品』の製作が可能となった。
もちろん品物によってはそれ相応の時間と魔力が必要である。
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