岸波白野の転生物語【Fate/編】   作:雷鳥

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はい。今回でほぼ主要人物の殆どが出揃います。
そしてリストラされた原作マスターは……この方です!



【聖杯戦争初戦】

 上空から迫る強い魔力に気付いたランサーはラムレイの攻撃の軌道をセイバーから大きく逸らし、同じく気付いたセイバーもランサーとは反対側に向けて大きく飛び退くことでその魔力の落下地点から距離を取る。

 

 二人の距離が離れると同時に黒い影の塊が落下し、大きな破壊音が上がる。

 

「ハーハハハ! その勝負、この征服王が一時預かる。双方、武器を納めよ!」

 

 落下の衝撃で舞う土煙を勢い良く払い除けながら現れたのは巨大な体躯の二頭の雄牛が引く中世時代の戦車。

 そしてその戦車に乗るのは毛皮の紅のマントを羽織った筋肉質な褐色肌の巨漢の男だった。

 

「征服王ですって?」

 

 戦況を見守っていたアイリスフィールの呟きに、自らを征服王と名乗った男は大きく頷いた。

 

「いかにも。我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争においてはライダーのクラスを得て現界した」

 

 本来、聖杯戦争ではサーヴァントは自らの真名を隠してクラスで呼ぶのが当たり前である。何故なら正体を知られる事は己が有しているスキルや宝具がどういったものなのかを予測され、対策を取られてしまうからだ。

 

 特に宝具の看破は切り札がバレると言っても過言ではない。

 しかし目の前のイスカンダル、ライダーはそれを隠さずに曝け出した。その行動にその場にいた誰もが沈黙する中、馬車から金髪をオールバックにした男、彼のマスターであるケイネスが現れる。

 

「いったいどういうつもりだライダー!? いきなり戦場のど真ん中に着地し、更には己の真名すら宣言するなど! 貴様はこの戦いがどういうものなのか解っていっぎゃあはん!?」

 

 ケイネスが青筋を浮かべながらライダーに掴みかかろうとした瞬間、ライダーにデコピンを食らって戦車の端に吹き飛ぶ。

 

「ええい相変わらず人間の小さき男よ。貴様も男児ならば戦場では堂々とせんか。で、ああなんであったか……そうそう、余が現れた理由であったな」

 

 己のマスターにデコピンかましながら蓄え整えられた立派な顎鬚を軽く撫でたあと、不適な笑顔を浮かべたライダーが両手を挙げる。

 

「余がお主達の戦いを止めたのは他でもない。余から一つ提案があるからである」

 

「提案? いったいどういった内容です」

 

 ランサーを警戒したままセイバーが尋ねると、ライダーは『その前に。』と前置きする。

 

「いい加減他の者達も姿を見せたらどうだ! 今宵、ここはまさに英雄集う場所である! この場に現れぬというのならそれは英雄に在らず!」

 

(これはまた随分と派手な、しかし上手い挑発ですね)

 

 セイバーを警戒しながら今も続けて行われているライダーの挑発的な演説を聞くランサーは、目の前の征服王が見た目通りのただの脳筋ではないと悟り、警戒レベルを上げる。

 

 しばらくしてライダーの演説が終わると同時に、一体のサーヴァントが彼等の傍の街灯の上にその姿を現す。

 

「この(おれ)を差し置いて王を名乗るとは。不敬が過ぎるぞ」

 

 現れた黄金の鎧を纏った遠坂時臣のサーヴァント、アーチャーとして現界したギルガメッシュが、不愉快そうな表情をさせながら眼下の全ての者達を見下ろす。

 

「うむ。中々どおして面白いのが現れたな。どうやら他に英雄は居ないようだのう。では改めて余が現れた理由を説明しよう!」

 

 ライダーのその言葉に表れた全員が集中する。

 そしてライダーは不適な笑みを浮かべながら高らかに叫んだ。

 

「お主等全員、余に聖杯を譲らんか? もしも提案を受け入れるのなら、お主等には余と共に肉体を受肉した後、世界を征服する偉業の共をする名誉を与えようではないか!」

 

「断る」

 

「断ります」

 

「最後の言葉はそれでよいな」

 

 即断即決で拒絶されたライダーは笑顔を曇らせ、むむむと唸る。

 

「むうぅダメか? 報酬は弾むぞ?」

 

 親指と人差し指で輪を作って見せるライダーに三人のサーヴァントだけではなく彼等を近くで監視していた殆どの者が呆れるか冷めた表情でライダーを見詰める。

 

「あんな男に世界は一度征服されかけたのか……」

 

(だがまぁ……これはチャンスでもあるか)

 

「舞弥、そっちからライダーのマスターは狙えるか?」

 

『問題ありません』

 

 切嗣は彼のマスターであるケイネスが現れたその時から彼を狙撃する為に自分よりも狙撃ポイントに近かった舞弥にポイントまで移動させていた。

 舞弥は切嗣に返答しながら、ライフルを構え、ライダーのデコピンをくらって無言で不機嫌そうに様子を伺うケイネスに照準を合わせる。

 

『いつでもどうぞ』

 

(あそこからならアサシンに視認されない。()るなら今しかない)

 

 切嗣がそう判断して舞弥に合図を送ろうとして――言葉を飲み込む。

 

(なんだと……)

 

 切嗣が言葉を飲んだ理由、それは戦場に新たなサーヴァントが現れたからに他ならない。

 

 突如としてアーチャーの傍に現れたのは、全身黒尽くめのフルプレートの甲冑に、更に黒い靄のような物を放ち続ける異様なサーヴァントだった。

 

 突然の新たなサーヴァントの襲来に、ランサーとセイバーは更に緊張を高めて警戒し、ライダーは面白そうな笑顔を浮かべる。傍のケイネスは焦りライダーに詰め寄るがやはりデコピンで黙らされた。

 

 現れた黒騎士のサーヴァントはそのままアーチャーへと視線を向ける。

 

「この俺に不快な視線を向けるな狂犬」

 

 一言発すると同時にアーチャーの背後の空間に円状の歪みが幾つか発生し、そこから形状の違う剣がまるで弾丸のように二本発射された。

 

 高速で放たれた剣が黒騎士に当たり爆発した。その光景を切嗣は一度見ていた。そう、アサシンがやられた時とまったく同じ展開だったのだ。

 

 しかし、同じ展開だからと言って――結果まで同じとは限らない。

 

(馬鹿な……)

 

 土煙の向こうから現れたのはいつの間にか剣を手に持った無傷の黒騎士だった。

 

 人間である切嗣達には何が起きたのかは解らなかったが、サーヴァント達には見えていた。

 黒騎士が剣が放たれるとその場で屈み、飛んできた最初の一本の剣の柄を掴み、あとから飛んできた剣を叩き落すという卓越した技術を。

 

 その卓越した戦闘センスに、ライダーは感心しする。

 

「ほう。見た所あやつはバーサーカー。にも拘らずあの動きとは、どうやらかなりの腕前の武人と見た」

 

 ライダーの読み通り、黒騎士のクラスはバーサーカー。しかしバーサーカーのクラスはクラススキルとして『狂化』を得ることになっている。

 

 『狂化』はサーヴァントのステータスを大きく上昇させる代わりに『理性が失われる』『一部の能力が劣化、または使用不能になる』『魔力消費量が膨大になる』『ランクが高いとマスターの命令を聞かない』などのデメリットが多数存在するリスキーなスキルである。

 

 その為、本来バーサーカーはテクニカルな戦い方よりもパワーに物を言わせた戦い方が基本である。

 

 だからこそライダーはバーサーカーが只者ではないと判断し、その性格から自らの軍勢に欲しいという欲求が生まれる。

 

「う~むしかし対話が成り立つかどうか。おいマスター、あやつのステータスの詳細を教えよ」

 

「くっ、都合の良い時だけマスター呼ばわりしおって……むう」

 

「おうどうした? 余はお前の魔術の腕だけは認めておるのだから早う答えんか」

 

「わ、分かっている! だ、だが見えんのだ。あのサーヴァントのステータスが。き、きっと奴のスキルに違いない。そうでなければこの私が看破できないはずがない!」

 

 ライダーの言葉にケイネスが焦った表情で早口に答える。

 本来マスターにはサーヴァントのステータスを大雑把なランクとして看破する能力が与えられる。しかしそれが目の前のバーサーカーには通用しなかった。

 

 そしてそんなライダーとケイネスのやり取りの間も、バーサーカーとアーチャーの戦いは続いていた。

 アーチャーはバーサーカーが自らの宝物に触れ、更に己の物のように振るうその行動に怒りを覚え、更に多数の武器を先程と同じように発射して行く。

 

 剣、槍、斧、短剣、戦槍、大剣等々いったいどれだけ貯めていたのかと言うほどの多種多様な武器が放たれるが、それをバーサーカーは悉く弾き、かわして行く。

 

 セイバーがあることに気付き驚愕する。

 

(あのサーヴァント、初めて触れた筈の相手の武器をまるで己の獲物の様に使いこなしている!)

 

 バーサーカーは剣だけではなく斧も槍すらもまるで己の慣れ親しんだ武器のように巧みに操り、飛来する武器群を迎撃して行った。

 

(なんて奴だ。奴は間違いなくバーサーカーのクラスのサーヴァント。つまり狂化され、理性が殆ど無い状態のはず。それなのにあそこまで戦えるなんて。くそ、ライダーのマスターを殺すチャンスが潰された)

 

 既に戦場は迂闊に動けるような状態ではなく。そこのことでケイネスを殺す機会を逸した切嗣が顔を顰める。そしてついにアーチャーとバーサーカーの攻防に変化が訪れる。

 

 バーサーカーが手に持った剣を放ち、街灯を断つことでアーチャーを地面へと落とす。

 

 地面に着地したアーチャーは肩を震わせ、その赤い瞳に殺気を宿してバーサーカーへと向ける。

 

「……天に仰ぎ見るこの我を地に立たせるなど、無礼が過ぎるぞ狂犬!」

 

 アーチャーが怒りの声を上げると同時に今迄背後にだけ展開していた空間の歪みがバーサーカーをドーム状に包むように展開される。

 

(あれは360度の展開が可能なのか。見れて良かった)

 

 切嗣がスコープ越しに息を呑む。それ程に、アーチャーの技、『王の財宝(ゲートオブバビロン)』は脅威だった。

 

 『王の財宝』。アーチャーであるギルガメッシュは、かつてこの世の全ての財を集めたという逸話が存在し、それが昇華された能力。

 その能力は破格であり、人類が過去未来において作り上げた物の原点が自動的に彼の宝物、つまり白野と同じ己の概念空間に収集される。その空間の規模はまさに地球規模であり、彼自身も宝物庫の数を完全には把握できないほどであった。

 むろんその財の中には宝具レベルの武具がごろごろと存在し、それを自らの意思で自由自在に出し入れでき、今回のように発射することも可能となれば、例えサーヴァントであろうと簡単には打ち破る事は出来ない。

 

(あのサーヴァントは要注意だ。できれば更に手を晒してくれると助かるんだが)

 

 切嗣が期待を込めてアーチャーを注視する。しかし残念ながらそう上手くは行かず、アーチャーはその場から唐突に姿を消してしまう。

 

「どう思う舞弥」

 

『恐らく令呪によって強制的に呼び戻されたのかと』

 

「ああ、僕も同意見だ」

 

 これだけ大規模に戦っていれば他のマスターによる監視もあっただろう。そして遠坂時臣がこれ以上の情報漏洩を恐れて己のサーヴァントを呼び戻した。というのが切嗣達の予想だった。

 

 突然のアーチャーの撤退に、残された者達がお互いを警戒したまま、緊迫した空気が流れる。

 そんな中、セイバーは視線を感じてそちらに振り返る。

 セイバーが振り返った瞬間――その視線の主であるバーサーカーが雄叫びを上げてセイバーに向かって突撃を開始する。

 

「A――urrrrrrッ!!」

 

「なっ!?」

 

 突然の出来事にセイバーはランサーに向けていた剣を向けて迎撃体勢を取る。

 

 しかしそんな二人が交わるよりも先に――それは駆けた。

 

「枷を更に一つ。雷鳴の如く駆けよ――ラムレイ」

 

 一陣の紫電がバーサーカーを飲み込みコンテナ群を突き破り海岸へと突き抜けて行った。

 

「……ランサー、貴女は……」

 

 雷光を放ちながら目の前を通り過ぎていったもう一人の自分。

 自分と戦っていた時よりも速く鋭いその一撃が己の傍を駆け抜けて行く一瞬、セイバーは辛うじて捕らえていた。 

 兜越しに見えた瞳が――『王』としての決意の眼差しをしていたのを。

 




はい、と言うわけでウェイバー君がマスター候補から脱落しました。
うん、色々展開を考えると原作より不幸になりそうなので荷物を受け取らなかった世界線という事でお願いします。
あと他の理由としては令呪の分配的にウェイバー君がビリから二番目だろうというのもあります。
さて、バトルはまだまだ続く。次回はバーサーカー戦です今度は白野も出るよ!

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