個人的に原作でも凄い好きなあの部活動がついに登場!
「はてさて、弁慶はどこかねぇ」
放課後の決闘も今日で二日目。通算二百人を相手にした。
運良くというか実力のある相手とはまだ戦っていない。
いや、生徒会長は強かったか。あの溜め技の隙を突かなかったら危なかった。
因みに義経はオレの倍の人数をこなしている。その間残りの二人は一度も戦っていない。
正直そろそろ弁慶と与一にも色々やって貰わなければ義経の体力がもたない。
義経の事もあるが、ヒュームさんやマープルも、この現状が続くようなら二人には強制参加を申し付けるしかないと言っていたので、自分が二人を説得をするからそれまでは待って欲しい事を伝えた。
そして今は学校に残っている弁慶を探してる。与一は早々に帰ったため、後で電話連絡するつもりだ。
義経の方は清楚姉さんに協力して貰って、二人で放課後一緒に過ごす約束をさせて、決闘を早めに切り上げさせた。
「さて、気で探った感じだと、この部屋だが」
弁慶の気配を辿って訪れた部屋の扉の上には、第二茶道室と書かれていた。
室内から感じる気配は見知った三人、というかあの二人と一緒とは意外だな。
「失礼しまーす」
「その声はユウ兄?」
部屋に入ると弁慶と大和と宇佐美先生が寝転がって中央の竹輪をつまんでいた。
「……何してるんだ?」
正直よく分からない状況なので、とりあえず部屋のドアを閉めて三人に近寄って尋ねる。
「何もしてないよ。なんせここは『だらけ部』の部室だからね」
「だらけ部? 良くそんな部活の申請が通ったね」
三人の傍に腰を下ろしながら、本当に何でも有りだなこの学校と呆れる。
「いやユウ、そんな部活無いから、非公式だから」
「なんだ」
大和が寝転がったままは失礼と思ったのか、座り直してここについて説明してくれた。
元々は大和と宇佐美先生の二人であまり使われないこの部屋を休憩室みたいに使っていたらしい。そこに弁慶が加わって自称だらけ部の誕生、と言う訳だ。
「うん、まあ休憩できる場所は必要だよね」
「おっ。意外に話せるなぁ鉄。先生、お前は努力家タイプっぽいから、むしろ注意してくるかと思ったぜ」
「いや、自分は結構自由人ですよ。好きな事しつつ苦手な事をちょっとやってる感じです」
こちらの言葉に宇佐美先生が、なるほど。と頷いて笑った。
「で、どうしてユウ兄がここに?」
弁慶も他の二人が身体を起こしたためか、伏せていた体勢から起き上がる。
「そうそう。なあ弁慶、そろそろ生徒の相手をしてやってくれないか? 誰でもいいって連中は自分と義経で片付けておくから。お前とどうしても戦いたいって連中だけでも頼む」
「う~ん気分が乗ったらで」
弁慶がだるそうに呟く。
なんかいつも以上にだらけているな。余程ここの居心地がいいのだろう。
「はあ……ならお前の申し込みの相手も頼み込んでなんとかこっちに回して貰うが、構わないか?」
「私としては楽できるからいいけど、ユウ兄はいいの?」
「良い悪いじゃなくて、仕方ないんだよ。義経がオーバーワーク気味だ。これ以上は体調を悪くする。自分が相手するしかない」
自分に負けた奴が義経に、義経に負けた奴が自分に挑んでと言いうループ状態の現状のせいで、放課後は常に決闘している状態だ。
自分はある程度の人数で止めるが、義経は真面目な性格のせいでいつも体力ギリギリまで戦ってしまう。そのせいで義経が休む暇が無い。そのため昨日、クラウディオさんにある条件の追加をお願いした。
『クローン組への挑戦は一人一月に一回まで』
と言うのがこちらが頼んだ追加条件だ。
そもそも連日挑んでくる奴もいたが、一日二日で強くなれる訳が無い。可能なら勝つために鍛えてから挑んで欲しい。というもっともらしい理由を掲げて周りの大人を納得させた。
本音は放課後くらい好きに遊びたいし、義経達も遊ばせてあげたいからだ。
できればこの機会に義経達には深い付き合いの友人の一人でも作って欲しい。その為には自由な時間が必要だ。
本音の部分を省いて、新しい条件と義経の現状を弁慶に伝えると、弁慶は少し申し訳無さそうな顔をした。
「……そっか。それじゃあ行かないわけにはいかないね」
弁慶が呟く。
「お、武蔵坊さんチの弁慶ちゃんにしては珍しい」
宇佐美先生がからかうように呟くと、弁慶は溜息を吐きつつ答えた。
「主に負担をかけ過ぎるわけにはいかないからね。それにユウ兄が一月に一回って条件を提示してくれたから、働くのは月数回で済む」
「ま、別にここの出入りを規制する訳じゃないんだ。やることやって、全力でだらけるといいさ」
憂鬱そうな表情の弁慶の頭を撫でて元気付ける。
「そうだね。んじゃ明日は決闘に応じるって伝えておいて」
「ん、了解。あっ。それとな弁慶、こっちを向け」
「ん?」
弁慶の頭から手を放し、彼女の口の端についたお弁当を摘んで自分の口に運ぶ。
「寝転がって食べるな。とは言わないけど、口元には注意な。まあそういう少し抜けている所も、弁慶の魅力だけどさ」
そう言って、いつものように弁慶の頭を軽く撫でてから立ち上がり、部室を出て行った。
◆
「……くぅ、不意打ちとは卑怯な」
弁慶は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「……あいつ夜の商売にでも就いた方がいいんじゃないか?」
「流石一級フラグ建築士。モテモテで羨ましい」
「いや、直江も人の事言えないだろ。お前らのそのフェロモン、おじさんにも分けて欲しいぜ」
呆れたような感心したような表情で、大和と巨人は優季の去ったドアと、恥かしさのあまり悶えている弁慶とを交互に見詰めた。
「まったく。ああやって不意を突くから、あちこちでフラグ建築するんだ」
弁慶は竹輪を口に運んで川神水の入った杯を呷る。
「なんならおじさん、弁慶の恋を応援してやろうか? もちろんコレを弾むならいくらでもセッティングするぜ?」
巨人は手の平を上にして親指と人差し指で輪を作って弁慶に見せる。所謂『金』の要求であるである。
「ノーサンキュウ、地道に行くよ。どちらにしろユウ兄自身が誰かに惚れるってことは無いだろうし」
「そう? 結構姉さんやユキには積極的な気がするけど」
「ユウ兄の態度を見るに、私達と同じ『大切な家族や友人レベル』だろうから大丈夫じゃないかな?」
なるほど。と大和も納得して頷く。
「そんな悠長で大丈夫かねぇ? ああいうタイプは仲の良い子に告白されたらそのまま流されてゴールって事が多いぜ。なあ直江?」
「なんでそこで俺に話題を振るのさヒゲ先生」
お前も同じタイプだからだよ。と、視線で答えて巨人は肩を竦める。
「と、ところで! 優季って、島では弁慶達とどんな感じで過ごしていたんだ?」
矛先が自分に向きかけた大和は、恋愛話そのものから話を遠ざける。
「ん? 私達と過ごしていた時のユウ兄?」
「そもそもお前ら揃って兄貴呼びなのも先生気になってたんだよねぇ。その辺り詳しく」
「ん~まあ今と変わらないよ。気付いたらいつも私達の傍にいて、今回みたいに自分から損な役回りしていて、怒る時に怒ってくれて、褒めて欲しい時に褒めてくれて、まあそんな風に過ごしている内に私達の兄ってポジションに落ち着いた感じかな」
弁慶は懐かしむように少し遠くを見詰めて川神水を一口飲んだ後、大和へと問いかける。
「私としてはこっちにいた頃のユウ兄が気になるね。実際どうだったのさ?」
「う~ん、弁慶の内容と一緒だよ。なんだかんだで頼りになって、みんなで楽しむことを第一に考えていたかな。多分こっちに残ったままならファミリーのサブリーダーや相談役ってポジションに就いていたと思う」
弁慶に分けて貰った川神水を飲みながら、大和が当時の事を思い出して笑う。
「やっぱ鉄は年の割りにどこか達観してんなぁ。こりゃ落とすの大変かもな弁慶」
巨人も川神水を飲みつつ苦笑する。
「はぁ~。今度ちょっとアダルティな映画でも借りて来て、また一緒に観るかな」
弁慶がなんとはなしに呟いた言葉に、大和と巨人が怪訝な表情をする。
「えっ、またって何? 二人って一緒に映画とか見る仲なの?」
「あ、義経達も一緒か?」
「いや、私の部屋で二人でよく観るよ。ユウ兄が作ったツマミを食しつつ川神水を飲み、ユウ兄の膝枕で頭を撫でられつつ観賞するのが私のジャスティス」
更に爆弾発言を事も無げに晒す弁慶に、大和と巨人はなんとも言えない顔をして腕を組んだ。
「……そんな男として辛抱たまらないシチュで手を出さないとか」
「……いっそ今日は普通に観よう。とか意外性で攻めるのは?」
「無理! 大和はヤドカリが目の前にいるのに観賞を我慢できるのか! ヒゲ先生は目の前に水着の小島先生がいるのに口説くのを我慢できるのか!」
「「ははは無理!」」
自分が欲望に忠実な人間である事を再確認した三人は、いい笑顔で川神水を同時に呷った。
と言うわけで弁慶と優季の日常が軽く暴露された回でした。
あと原作でもだらけ部の三人の仲の良さが好きだったので、可能な限り再現してみましたが、如何でしょうか?
この作品ではそれぞれ想い人が違うので、多分ずっとこんな感じでだらけて行くと思います。
基本弁慶の相談相手はこの二人になります。