一応予定としては今回と次回は説得と改善編みたいな内容です。
強化後誰かと闘わせたいけど……その辺は未定。
「よ、三人とも!」
練習中の三人に近寄って声を掛ける。
「あ、ユウ!」
「お兄ちゃん!」
「あらユウ君、用事はもういいの?」
「うん、ありがとう清楚姉さん」
清楚姉さんにお礼を言いながら彼女の隣にやって来ると、まるで子犬のように一子と義経も寄ってきた。何この可愛い生き物、癒される。
「ねえねえユウ、ユウは努力してお姉様を倒せるくらいにまで強くなったんだよね?」
「う、うん。まあ努力はしているから間違ってはいないか」
なんか微妙に変な言い回しだったような気がしないでもないが、とりあえず頷いておいた。
「どんな事をしてたの!」
「ちょっ。待て待て一子、何故そんなに食い気味に訊いて来るんだ? 何かあったのか?」
困った表情を浮かべて一子に落ち着くように頼むと、一子はごめんと謝るも、すぐに真剣な目でこちらを見据えた。
「でも私、もっと強くなりたいの。川神院の師範代になるために!」
「……あそこの師範代って、お前それがどれだけ大変か分かっているのか?」
武の総本山の一つである川神院。そこの師範代といえば総代の次に偉い地位である。
師範代は総代の補佐と門下の武道家達の面倒も見る必要がある。
身体能力、格闘技術、精神的な強さと、求められるものが多い役職だ。
その為その職に就けるのは一握りの存在のみと言われている。
まあ全部以前ヒュームさんから聞いた情報なんだけどね。
「大変なのは分かっているわ。でも、私はお姉様のように眩しくてカッコイイ強い人になるって決めたの。それにお姉様が総代になるなら、できれば妹の私が補佐をしたい」
一子の強い意志の宿った瞳を見て、自分も彼女が本気だと悟る。
……本気なんだな。なら、自分も出来る限り答えよう。
「……分かった。ならまずは一子の事を教えてくれ。疑問に思ったことはその都度聞いていくから答えてくれ。それを踏まえた上で、アドバイスする。義経と清楚姉さんも聞いてあげてくれ。アドバイスをあげられる人間は多い方がいい」
「うん、もちろんだ」
「私はあまりそっち方面は得意じゃないけど、それで良ければ」
「あ、ありがとうみんな!」
四人で芝生に座ってまずは一子の話を聞く。
問答を終え、出した結論は一つ。
「今のままなら絶対無理」
「き、きっぱり言われた!」
真顔で一子に伝えると、彼女はへこんで俯いてしまう。
「当たり前だ。真剣な悩みならこっちも真剣に答える。で、それを踏まえた上で言うが、一子はもう回数をこなす努力はしなくていい。むしろそのせいで身体が常に疲れているような状態だ。それじゃあ弱くて当然だ」
「で、でも回数をこなさないと強くはなれないよ」
一子はこちらの言葉をちゃんと理解しようとせずに反論する。
う~んどうしようか、言葉で言っても納得してくれないだろうし……仕方ない。
「一子、自分と戦え。そうすれば少しはさっきの言葉の意味も理解できるだろう」
立ち上がって構える。
「望むところよ!」
一子が嬉々として自分の前に立つ。やれやれ完全に武士娘になっちゃって。
「一子、全力で来い。こちらは最初からは強化はしない」
「え? なんで?」
「こい」
有無を言わさずに一子を睨み付けて構える。
「っ!?」
殺気を受けた一子が、それ以上は何も言わずに真剣な表情で構える。ただし一子が得意な薙刀が無いためお互いに素手だ。
こっちは既に集中を終えている。一子は荒い呼吸を落ち着かせ集中を終えると、すぐにこちらに向かってきた。
集中に時間が掛かり過ぎているな。
「川神流蠍打ち!」
一子の拳が人体の急所に向かって飛んでくるが、それを身体を横にそらして避け、すれ違い様に一子の前に出た足を払って一子を倒す。
「くっ!?」
前のめりに倒れかけた一子は勢いを利用して地面に手を着き、腕の動きだけで大きく頭上に飛び上がり、落下の勢いを乗せて踵落としを放つ。
「ふっ!」
その踵落としを避けながら踏み込み、落下中の一子の脇腹に掌底を叩き込む。
ただし今回は気を纏っただけのただの打撃だ。衝撃はあるだろうが気を一緒に叩き込んでいるわけではないから威力は落ちている。
「あぐっ!?」
なんとか着地した一子が、僅かによろめく。そんな一子を追撃せずに自分の間合いで彼女の様子を伺う。
耐久は見た目どおりか。
「ゲホ、まだまだこれから!」
起き上がっり叫ぶ一子に向かって、まず通常状態で一足一倒を放つ。
「はやっ!」
一子はそれを辛うじて横に飛んで回避する。
やっぱり、通常時の身体能力では一子が上か。そして『見てから避けれる』辺り、一子はやっぱり動き出しの動作が迅い。
これまでの情報を元に一子の力量と情報をあらかた集め終えた。
終わりにする。
一瞬で肉体を二倍強化して、右足を軸にして左足を滑らせて一子の正面を向き……一足一倒を放つ。
「っ――!?」
気による衝撃波無しとはいえ、先程より速い高速の一撃を受けた一子は、吹き飛ばされて地面を数回バウンドする。
本来なら衝撃波を体内全てに伝わらせるからあそこまで吹き飛ばないんだが、今回は一子に分からせるためだから手加減して衝撃を抑えた。
「あっぐうう」
「はい、終了」
強化を解いて手を打ち鳴らし、一子に戦いの終了を告げて近寄る。
「ま、まだ私は戦えるわ」
一子は苦しげな表情で起き上がっている途中で、こちらを見上げた。
「全力だったら初手で終わっている。その事実は、最後の一撃を受けたお前が一番良く分かっているはずだろ?」
「っ!?」
一子が悔しそうに顔を歪める。
「……うっし。じゃあ物理的に強さを解かって貰ったところで……次は精神的に分からせてやろう」
「へ?」
一子は意味が分からないといった顔で再度俯かせていた顔を上げる。
「今のはこちらの実力を分からせて、話を聞きやすくさせるための戦いでもあったのさ。安心しろ一子、時間をかけてお前が負けた理由を話してやる。幸い義経もいるしな」
「な、なんでそこで義経の名前が!?」
「義経も前に似たような事があったろ? 実際の体験話って、ためになるよね」
朗らかに笑いなら義経を見詰めると、義経は顔を赤くして『止めて!』と擦り寄ってきた。可愛い。
「あ、お姉ちゃんもちょっと興味ある」
「そんな清楚さんまで!?」
「よし、じゃあみんな土手に座って話し合うとしよう」
「か、一子さんの話をしていたはずなのに、義経が巻き込まれている!?」
「あはは……」
リアクション豊かな義経を見て、一子が苦笑する。うん、やっぱりこの二人は似ている。
「まあ笑っていられるのも今の内だ一子、お前の努力に対する考え、とりあえず一回バギッと折ってやる」
自分お言葉に一子は引き攣った笑みのまま顔を青褪めた。
Q:川神院の人が話をちゃんと聞いてくれません。どうすればいいでしょうか?
A:肉体言語でまず実力を示しましょう。
と言うわけでまずは一子に負けてもらいました。
あと一子と義経は原作でも良いコンビなので、今後もコンビとして活躍させたい。あと二人とも可愛い。(妹キャラ的意味で)