エメの過去   作:フリッカ・ウィスタリア

5 / 9
高二の春、エメの通う高校に転校してきた蒼
しかし、その顔は何処か優れないようで…
~~次元の壁~~
この話からは蒼視点で話が進んでいきます


蒼とエメ

皆さんこんにちは、私は時雨 蒼(しぐれ あおい)…って、私は誰に話しかけてるんだろう。ボッチ歴長過ぎて妄想内でしゃべる癖が付いちゃったかな…

まあいいや、今日は4月7日、私の転校日初日

蒼「はぁ…転校したはいいけど、友達できる気がしない…」

周りの人はみんなニコニコして活気に満ち溢れているのに、対照的に私の周りの空間はどんよりしていた

蒼「(まあ、中学時代の同級生が居ないだけでもまだ気が楽か…)」

一般的な高校生なら、中学時代の友達が一緒の高校に居た方がいいという人は多いだろう

しかし、私は違った。理由は簡単だ

私は中学校時代と前の学校で…イジメにあっていた

とは言っても、家を引っ越した訳では無い

だから、わざわざ家から遠く、中学時代の同級生はまず居ないであろうこの学校に転校したのだ

とにかく、自分がどのクラスなのかを確認しようと思い、職員室へ行った

蒼「失礼します。今日からここに転校してきました。時雨 蒼です」

担任「あぁ、貴女が時雨さんね、私は担任の飯島 千郷(いいじま ちさと)よ」

担任に案内されて2年3組に来た

担任「ここが貴女の教室よ」

そう言いながら担任は扉を開けた

担任「はーい、今年は転校生が居るわよー。静かにしなさーい」

担任がそう言うと、教室の生徒は黙って席に着いた

担任「それじゃあ、自己紹介お願い」

蒼「はい、えっと…父の仕事の関係で転校してきました。時雨 蒼です。一年間よろしくお願いします」

担任「蒼さんの席は二列目の一番後ろね」

蒼「分かりました」

返事をして、担任に指示された席に座った

担任「蒼さんはこっちの事はあんまり詳しくないから、皆協力してあげてねー」

渡辺「センセー、そういうのいいから早く終わらせてよー」

担任「もー…まあいいわ、1時間目は自己紹介よー。蒼さんは繰り返しになるけどよろしくね。じゃあ、出席番号1番の相生さんからお願いね」

担任にそう言われ、1番前に座っている相生という生徒が立ち上がり、自己紹介をしていった

そして、順番はまわって私の隣の席の人の番になった

エメ「エメラルド・マーティンです。好きな物は豆乳と神話、趣味はアイロンビーズです。よろしくお願いします」

エメの乙女チックな内容の自己紹介に、生徒の数名がくすくすと笑い声をこぼしていた

その後も順調に自己紹介は進み、私の番になった

蒼「時雨 蒼です。好きな物は辛い物全般と子供、趣味はアニメ鑑賞です。一年間よろしくお願いします」

私が自己紹介を終えて周りを眺めてみると、他の人の自己紹介と違い、シーンとしていた。何となく考えている事は予想が付く

蒼「(どうせキモいとか、オタクかよとか思ってるんでしょうね)」

ボッチの被害妄想と言えばそれまでな考えが頭を巡った

とりあえず、自己紹介が終わったので自分の席に座って他の人の自己紹介を聞いていたが、途中から眠たくなってしまい、ラスト5人くらいの記憶が無かった

 

昼休み

蒼「ふわぁぁ…(眠い…寝よ…)」

特に話す子もいないので昼休みは文字通り昼寝をしようとした

すると、ウトウトし始めた頃に誰かが話しかけてきた

井上「えっと…蒼ちゃんだっけ?アニメ好きなんだっけ?」

蒼「?…そうだよ(この子は確か…井上さんだったかな?)」

井上「蒼ちゃんはどんなアニメ見てるの?」

もしかして、井上さんもアニメ好きなんだろうか

蒼「『ごちうさ』とか…『らき☆すた』とか見てるよ」

井上「ご、ごめん…ちょっとわかんない…」

蒼「あぁ、そうなの。残念」

私が知ってる中では比較的有名なアニメなんだけどなぁ…

エメ「何の話をしてるの?」

すると、隣の席のエメラルドが豆乳片手に話に入ってきた

井上「蒼ちゃんがどんなアニメ見るのかって話をしてたのよ。でも、私には分からなくて…」

エメ「へぇ…何て名前のアニメなの?」

蒼「『ごちうさ』と『らき☆すた』よ」

エメ「らき☆すたって方はわかんないけど、ごちうさならちょっとわかるよ。確か兎を飼ってるカフェの話でしょ?」

蒼「ええ、そうね」

井上「(この二人の話がさっぱり分からない…他の子の所に行こう)」

そう思い、井上はそっとその場から立ち去った

さっきの口ぶりから察するに、画像か何かで見たレベルなんだろう

エメ「ところで、蒼ちゃんって神話に興味ない?」

蒼「神話?…あんまり…かな」

エメ「そっか、残念!」

それにしても明るい子だなぁ…この子

自分の興味のある物なのに、あんまり興味ないって言われてニコニコできる心の広さは、少しばかり羨ましかった

蒼「そう言えば、私の事は別に呼び捨てでいいよ。というか、そっちの方が良いな」

エメ「分かった。じゃあ蒼って呼ぶね。私もエメラルドだと長いし、エメでいいよ」

蒼「分かった、そう呼ぶね」

そんなこんなで午後の授業も終わり、私は電車に揺られていた

蒼「(この学校なら、うまくやっていけるかな…)」

今日同級生と喋っている感じでは、特に問題はなさそうで、少しほっとしていた

自分の降りる駅に着いたので、電車からでると

???「あれ?蒼?」

誰かに自分の名前を呼ばれた

エメ「蒼、家はこっちの方なの?」

蒼「あっ、エメ。うん、私の家はこの辺なんだ」

エメ「奇遇だね、私もこの辺なんだ」

という事は、近所に住んでるのかな?

蒼「(あれ?でも、マーティンなんて名前ここらで聞いた事あったかな…)」

そんなことを考えながら二人で歩いているうちに、我が家についた

蒼「私の家ここだから。また明日ね」

エメ「ええ、また明日」

そう言って、エメと別れた

 

時雨家

蒼「母さんただいまー」

しかし、母からの返答はない

蒼「新しい高校はいい雰囲気だったよ。うまくやっていけるかも」

それだけ言うと、私は夕飯を作り食卓と仏壇に置いた

仏壇には、母の写真が立ててある

蒼「母さん、毎日父さんは夜中まで働いて私を別の高校に転校させてくれたよ」

仏壇に向かい独り言を言う私だったが、夕飯が冷めると思い、夕飯を食べることにした

うちの家は、俗にいう父子家庭だ。今の一部始終を聞いていれば分かると思うが、両親は離婚したのではなく、母が若くして亡くなったのだ

そんな家の事情を持ってるので、中学時代はよくいじめられ、軽い鬱になっていた

しかし、片親でも必死に頑張っている父にそんな事、相談できるわけも無く、中学時代は過ぎた

そのまま高校に上がったものの、うちの地域は周りに高校が少なく、結構な確率で中学の同級生と同じ学校になるので、中学時代いじめてきていた奴と一緒になってしまった

最初の方こそ地味な嫌がらせに留まっていた(幸い、金銭の要求は一度もされなかった)が、内容はどんどんエスカレートしていき、1年の最後の方で、私のイジメが父さんにバレてしまい、今の学校へ転校してきたのだ

まあ、過ぎた事は考えても無駄だと割り切って食器を片づけ、風呂に入って、さっさと寝た

 

数日後

学校に行ってみると、机の引き出しに何かが入っていた

蒼「ん?何だろこれ…手紙?」

中を開けてみると、一つの紙が入っていた

『昼休み、体育館裏に来てください』

蒼「(なにこれ?すっごい怪しいラブレターみたい…)」

なんだかよくわからないが、昼休みに体育館裏で用件を言いたい様なので、行くことにした

 

昼休み

蒼「体育館裏ってここ…よね」

体育館の入口の反対側を体育館裏と言うならここで合っているはずである

少し待つと、誰かがやってきた

渡辺「えぇ!?まじで来てるよ!バカじゃん!」

開口一番それはどうなのだろう…

蒼「えっと、何か用なの?」

森「んー、まあ、そうだね」

何やらいやらしい笑みを浮かべた後、彼女は口を開いた

森「あんた、前いた高校って茨木西条高校でしょ?」

私は少し驚いた。確かに私が前いた高校は茨木西条高校だ。しかし、そのことは誰にも言ってない

蒼「それがどうしたの?」

渡辺「いやさ?私らそこにダチいるんだよねー。で、そのダチがいつも蒼イジるの楽しいって言ってたんだよ」

なるほど、何となく呼び出した理由が分かった

要はストレスの捌け口になるおもちゃが来たから遊ぼうってわけだ

蒼「へぇ…それで?」

渡辺「ダチばっか楽しんでんのズリィからよ、私らも楽しませてもらいたいんだわ。てことで、さっそくサンドバックになってくんね?あっ、拒否権ねぇから」

やっぱりか…私はいじめられる運命からは逃れられないのかって程いじめられるな…

無駄だとは分かってるが、一応逃げようとした

森「ちょっと待ちなよ!」

しかし、運動神経が悪いのですぐ捕まってしまった

蒼「離して!」

渡辺「うるせぇな…おとなしく私らに遊ばれてろよ!」

抵抗したのが気にくわなかったのか、お腹を殴られた

蒼「痛っ…」

鳩尾には入らなかったものの、その場に突っ伏してしまった

森「ほら、まだまだ昼休みは長いよー?」

喧嘩でこちらがまず勝つ事は無いと分かっているのか、余裕の表情を浮かべる二人

それに対し、私は転校数日でイジメを受けていることに落胆した

???「やめたげなよ」

不意に、誰かの声がした

渡辺「あ゛ぁ゛?」

突然の乱入者に対し威嚇する渡辺

エメ「蒼、嫌がってるじゃん」

渡辺「なんだよエメ、お前に関係ないだろ?」

エメ「関係なくないよ。蒼とは友達だもん」

森「じゃあ何?あんたが私らの相手してくれんの?」

つまり、エメが私の代わりをしろという事だろう

蒼「エメ!気にしなくていいから!」

エメ「蒼、大丈夫だから」

蒼「(私のせいでエメがいじめられちゃう…)」

エメ「私が二人の相手をすれば蒼はいじめられないの?」

渡辺「私は誰だっていいさ。ストレス発散出来りゃな!」

エメ「そう…なら、相手になるよ」

エメは全く怖がっている様子が無かった

森「へぇ、いい根性ね。それじゃ一発」

森はエメに近付くと、あいさつ代わりといった具合に一発エメの頬を殴った

エメ「…?もういいの?」

しかし、エメは笑顔のまま立ち上がった

渡辺「んなわけねぇだろー…が!」

次はお腹に蹴りを入れた

エメ「さすがに、お腹は痛いわね」

明らかに蹴りは鳩尾に入っていた。なのに、エメは全然怯む様子はない

森「な、何こいつ…ぜんぜん効いてないじゃない…」

エメ「もうおわり?じゃあ、次はこっちからね」

そう言ってエメは森の腕を掴んで後ろ手に固めた

森「痛い痛い痛い!」

渡辺「な!?約束と違うじゃねぇか!」

エメ「何が約束と違うの?私は『相手をしろ』とは言われたけど、『抵抗するな』とは言われてないよ?」

エメは意地悪く言った

渡辺「そ、そんなの言われなくたって分かんだろが!」

エメ「いやーごめんねー、私バカだからさー。それで…まだやる?」

エメは終始笑顔であったが、今この瞬間は目が全く笑っていなかった

渡辺「チッ…森、行こう」

その言葉を降参と受け取ったエメは、森の腕を離した

エメ「蒼ちゃん、大丈夫?どこか痛くない?」

蒼「う、うん、大丈夫。少しお腹を殴られただけだから…それより、エメの方こそ大丈夫なの?」

エメ「全然平気。私は結構頑丈だし」

そう答えたエメは見栄を張ってるのではなく、本当にケロッとしていた

蒼「あんな無茶して…でも、ありがとう。助かったよ」

エメ「でも、蒼も嫌なら嫌ってちゃんと言わないと、ああいう人は分かってくれないよ?」

蒼「それが言えたら…苦労しないよ…」

エメはそれくらいズバッと言えるかもしれないけど、私はそんな事怖くてよく言えない

そんな事を思っていると、それを察してくれたのか

エメ「じゃあ…護身術でも教えようか?」

蒼「護身術?」

エメ「うん。護身術がある程度できれば、逃げるくらいは出来ると思うし」

蒼「なるほど…確かに人目に付く所にさえ逃げれれば相手も手を出しにくいもんね」

エメ「そうね、今はもう時間が無いから無理だけど、放課後とかなら時間あるし、家においでよ」

なんか、流れで家にお呼ばれしてしまった

その後教室に戻ると、渡辺と森がこちらをチラッと見たが、エメと目が合うとすぐに目を逸らした

 

放課後

蒼「エメの家ってうちの近所とは聞いたけど、何処なの?」

私の家の目の前でふと、エメに質問した

エメ「私の家は、そこの角を曲がって3軒目だよ」

蒼「(角を曲がって3軒目?そんなに近くなら一度くらい名前を見た事ありそうなんだけどなぁ…)」

そんな事を思いながらエメについて行くと、エメは『篠原』という表札の家のドアの鍵を開けて中に入って行った

蒼「え?エメの家ってここ?」

エメ「え?そうだよ?」

蒼「表札に篠原って書いてたんだけど…」

エメ「ああ、実は私、養子なんだ。だから表札の名前は養親の苗字」

結構重大な事をさらっと言ってのけるエメに蒼は驚かされた

その時、蒼はある事を思い出した

蒼「あれ?でもこの家の夫婦って…」

エメ「うん。義父さんは3年前、義母さんは去年亡くなったわ。だからこの家に住んでるのは私一人だけよ」

蒼「ご、ごめん…」

エメ「いや、いいよ。1人なのはもう慣れたし。それより、今日来た理由はそんな話をする為じゃないでしょ?」

蒼「そうだね」

エメ「そう言えば、護身術を教える前に言っておかないといけないことがあるんだった」

蒼「言っておかないといけないこと?何?」

エメ「護身術はあくまで身を護る術であって、喧嘩をする為にあるんじゃないって事。護身術は闘うためじゃなくて、逃げるために使う事。つまり、やられたからやり返すなんてことは考えちゃだめだよ。約束して」

エメのその言葉には、何か戒めの様な物が含まれているように感じた

蒼「りょ、了解。約束するよ」

その後、腕を掴まれた時や羽交い絞めにされた時の対処法を教えてもらい、その日は帰る事にした

 

To Be Continued




蒼はエメのおかげでいじめっ子達を追い払うことができた
しかし、蒼に対する嫌がらせは一件だけに留まる事は無かった
次回『父親』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。