エメの過去   作:フリッカ・ウィスタリア

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あの一件から数日、いじめっ子二人からの嫌がらせは無かったが、いじめっ子二人はかなりストレスが溜まっているようで…


父親

次の日

流石に昨日の今日なのであの二人は私に何もしてこなかったが、授業中の態度を見ている限り、かなりストレスが溜まっているようだ

蒼「(うわっ…なんかすっごいこっちを睨んでくるんだけど…)」

別に私はあの二人に何もした記憶はない。寧ろされていた方だ

おそらく、中学や高校1年の間は周りにバレないようにしていたのだろうが、私の件で教師や周りの生徒に薄々感付かれてしまって、やりづらくなってしまったのだろう

逆恨みも甚だしいな…

このまま何事も無く卒業できるといいけど…

 

さらに数日後

朝学校に行ってみると、私の机が無残な事になっていた

蒼「(最近大人しかったから、完全に油断してたわ...)」

机はカッターか何かで切った跡が無数についてあり、落書きもたくさんしてあった

蒼「(こんな事するのは小中学生までだと思ってたけど、高校でもある所はあるのね)」

あの二人の方を見ると、なにやらニヤニヤしていた。やっぱりあの二人か…

どうやら今回は肉体的ないじめではなく、精神的ないじめのようだ

大方、いい気になってんじゃねえよとか言いたいんだろう

だが、正直言うとこの手の嫌がらせでよかったと思っている私が居た

蒼「(別にこれ位なら勉強するのに支障ないし)」

殴られたり、蹴られたりするのは病院などが絡んできて勉強に支障をきたすし、何より痛いのでいやだが、落書きをされてようが、机に傷があろうが下敷きを敷くなりなんなりで、どうとでも対処できるので、私としては数倍マシだった

そう結論付けて私は何でもないかのように席に座り、読書に耽った

相手は私が強がってると思ったのか、私の所に来た

森「うわー、これはひどいね。誰がこんな事したんだろーねー?」

蒼「さあ?別にどうでも良いわ」

渡辺「強がるなって!悲しんだろ?」

蒼「いや別に…この状態でも勉強に支障ないし」

森「でもさー」

蒼「でももへったくれもないわ。この程度の事で傷付かないわよ。放っといて」

渡辺「なっ!?お前、調子に乗りやがって!」

私は別に昨日エメに護身術を教えてもらったから強気になってるのではない。ここで二人を暴れさせれれば、場合によっては数日間この二人と顔を合わせずにいられると考えたからだ

その時、エメが登校してきた

すると、あの二人は自分の席に帰って行った

エメ「蒼おはよ…って、なにこれ…机が傷と落書きだらけじゃない!」

蒼「あぁエメおはよー、誰がやったか知らないけど、勉強に支障ないし、事を荒立てないでいいよ。というより、面倒だから荒立てないでほしいな」

エメ「ほ、本当に大丈夫?辛かったらちゃんと相談してね?」

蒼「うん。ありがとう。でも、本当に大丈夫だから」

この程度の事なら中学時代にされ尽くしていたため、さして悲しいとも嫌とも思えなくなっていた。本来はそんな事あってはならないのだけど、いい経験だったのかもしれない

まあ、どちらにせよこのままでは先生に見つかって話を追及されても面倒なため、相手を庇う訳では無いが机の落書きは消し、傷は絵の具を塗ってパッと見では分かりにくいように誤魔化した

途中からエメも作業を手伝ってくれて作業はすぐ終わった

蒼「エメ、手伝ってくれてありがとうね」

エメ「これくらい何てことないよ。友達なんだし、もっと頼ってくれていいんだよ?」

蒼「ありがとう、私1人で抱えきれなくなったら頼らせてもらうね。でも、自分でできることは自分でしたいから」

エメ「蒼は大人だねぇ…」

蒼「私は大人なんかじゃないよ。ただ他人を信じきれていないだけ…」

エメ「じゃあ、早いとこ蒼に何でも頼れる人にならなきゃね!」

蒼「私の事ばっかで自分の事を犠牲にしちゃダメだよ?」

エメ「大丈夫だよ。私はもう失う物なんてないし」

そう言うエメは、少しさびしそうな雰囲気があった

その日も今朝の1件以外は特に変わった事も無く、放課後となった

蒼「エメが助けてくれた日から、あの2人は私に目立ったちょっかいは出してこないわ。良かったよ」

エメ「このまま卒業まで何も無いといいけどね。でも、油断して人気のない所とか行ったら、また何かしてくるかもしれないし、気をつけないとね」

蒼「そうね。気をつけるわ。じゃあ、また明日」

エメ「うん、また明日ねー」

 

時雨家

蒼「ただいまー(まあ、誰もいないんだけどね)」

いつもの如く帰宅早々、夕飯の準備を始める蒼だったが、途中で家電話がなっている事に気が付き、料理を中断した

蒼「こんな時間に誰だろ?父さんかな?」

とりあえず応答しないとと思い、家電話をとった

蒼「はい、時雨です」

男「そちらは時雨 幸人(しぐれ ゆきと)さんのお宅ですか?」

時雨幸人は私の父の名だ

しかし、相手の男性の声にさっぱり覚えがない

蒼「えっと、そうですけど...何か御用ですか?」

その次に相手が言ってきた事に私は耳を疑った

男「幸人さんが、倒れられました」

蒼「えっ!?父が倒れた!?なにか事故に巻き込まれたんですか!?」

男「いえ、はっきりとはいえませんが、おそらく過労だと思われます。今、私達が茨木西条病院に搬送中ですので、貴女もこちらにいらしてください」

蒼「わ、分かりました!今そちらに向かいます!」

私は手早く火元の確認と戸締りを確認し、自転車に飛び乗って茨木西条病院まで急いだ

 

茨木西条病院

蒼「あの!時雨幸人の病室はどこですか!?」

受付「少しお待ちください。時雨幸人さんは…302号室ですね」

蒼「ありがとうございます!」

蒼はお礼を言うと、さっさと302号室へと急いだ

 

302号室

蒼「父さん!!」

蒼が病室に入ると、医者と看護師が待っていた

医者「親族の方ですか?」

蒼「は、はい。幸人の娘の蒼です。その…父の状況は…」

医者「率直に言うと、かなり危険な状況です。異常な過労と精神的な緊迫でかなり衰弱されていて…」

蒼「父は…助かるんでしょうか?」

医者「私たちも最善を尽くしますが…断言はできません。最悪の事態も覚悟されているほうが良いです」

蒼「そんな…」

看護師「今からお父様を集中治療室に運んで治療に入ります。貴女は外で待機していてください」

蒼「…わかりました」

看護師に連れられ、待合室のソファに座り、父さんの治療が終わるのを待った

 

1時間後

医者が待合室にから入ってきたのを見つけるなり、私は医者に詰め寄った

蒼「あの…父は…」

医者「すみません…手は尽くしたんですが…」

医者は最後まで言葉を言いきらなかったが、口に出された内容から察しはつく

蒼「父は…亡くなったんですか?」

医者「…はい…残念ながら…」

蒼「そう…ですか…」

その時、私の中に渦巻いていた思いは目の前の医者に対する怒りや父の死に対する絶望などではなかった

蒼「(私の…所為だ…)」

私の中に渦巻いていた感情は、自分に対する自責の念だった

前の学校を転校したいなんて言わなければ、嫌がらせに対してもっと我慢強くなっていれば…いや、そもそも中学時代にちゃんと相手に言い返せるだけの勇気があったら…

次から次へと後悔の感情が浮かんできた

しかし、今更過去のことを嘆いても遅い

蒼「父は…今どこにいるんですか?」

医者「お父様は、先ほど霊安室に運びました」

蒼「父に会わせてもらうことはできますか?」

医者「普通ならだめなのですが…まあ、親族の方ですし大丈夫ですよ」

その後、父さんとの別れを済ませ、必要な手続きを済ませ、私は家に帰ったが、夕食を食べるような元気は湧いてこず、お風呂にも入らないままベッドに倒れこんだ

しかし、その日はいろんな思いが一つ浮かんでは消え、また一つ浮かんでは消えを繰り返し、全く寝付けず朝になってしまった

蒼「朝になっちゃった…学校に連絡しないと…」

一睡もしていない事により酷くフラつく足取りで学校へ電話を掛けた

 

学校

担任「えーっと、今日は蒼さんが欠席ってことは聞いてるけど、他に欠席者はいない?」

そう言いながら担任は教室を見渡し、他に遅刻欠席者がいないことを確認すると教室を出て行った

エメ「(蒼が欠席?昨日は別に元気だったし…どうしたんだろ)」

エメの記憶している限りでは最近あった嫌がらせと言ったら机の落書きくらいで、蒼自身も特に気にしている感じはなかった為、深くは追及しなかった

エメ「(私に隠してただけで、実は結構傷ついてたのかな…)」

おそらくは自分の考えすぎだとは思ったが、エメは一応のため帰りに蒼の家に寄る事にした

 

放課後

エメは時雨家の前に来ていた

ピンポーン

インターホンを鳴らして待っていると、応答があった

蒼「はい。あれ?エメどうしたの?あっ、ちょっと待って、今開けるから」

少し待つと、家のドアが開き、蒼が出てきた

蒼「どうしたのエメ?何か家に用?」

エメ「用っていうか、今日学校休んでたから具合でも悪いのかなって」

蒼「ああ、大丈夫だよ。どこも悪くしてないよ」

エメ「その割には顔色悪いし、いつもより元気ないよ。何かあったなら話してくれないかな?話したくないならそれでもいいしさ」

蒼「…わかった。でも、ここじゃなんだから上がっていってよ」

蒼に促されてエメは蒼の家の中に入っていった

 

時雨家

エメ「それで、何があったの?」

蒼「実は…昨日の夜、父さんが死んじゃったの…」

蒼はそう言いながら涙ぐみ始めた

エメ「お父さんが!?ってことは、今日休んだのって…」

蒼「うん。お葬式とか、いろいろ手続きしないといけないし、昨日から眠れなくて学校行ける状況じゃなさそうだったから朝に電話を入れておいたの」

エメ「そうだったの…つらいこと思い出させてごめんね…」

蒼「いや、寧ろ誰かに話を聞いてもらいたかったから、ありがたいよ」

エメ「それなら良かったけど…私で良ければ悩みに乗るから遠慮なく言ってね?」

蒼「ありがとう…エメ」

エメ「そういえば、蒼はこれからどうするの?親戚の家に居候するの?」

蒼「それは私も考えてたんだけど、よく考えたら父さんは一人っ子だし、母さんの方の叔父さんは外国にいるし、お爺ちゃん達はみんな介護が必要な状況だから頼れそうにないのよ」

エメ「そうなんだ…あっ、そうだ。一つ提案なんだけど」

蒼「どうしたの?」

エメ「私か蒼がどっちかの家で同居しない?そうすればお互い何かあったら支えあえるし」

蒼「私とエメが同居?」

エメ「うん。前にも言ったけど、私は元々養親と三人で暮らしてた家に一人で暮らしてるから、部屋は有り余ってるし、蒼がこの家に居たいって言うなら私がこっちに来ることもできるよ。もちろん無理にとは言わないけど」

蒼「…エメがいいなら…いいアイデアかもしれない」

実を言うと、エメ同様私の家も三人で暮らす事を想定して家を買った為、父が生きていた時点で既に部屋がいくつか物置状態で空いていたのだ

エメ「もちろん大丈夫だよ!それで、どっちの家で同居する?」

蒼「じゃあ…私の家でいい?」

エメ「了解!じゃあさっそく必要な物を持ってくるね!」

蒼「うん。わかったわ」

蒼の返事を聞くか聞かないかといううちにエメは時雨家を飛び出し、数分後荷物を持って戻ってきた

蒼「は、早いね…」

エメ「まあ、元から私の物なんてほとんど無いからね」

それはそれでどうなんだろうか…

エメ「まあでも、これで私も今日から蒼の家族なんだし、辛い事があったら何でも言ってね?お父さんの事は残念だけど、蒼は一人じゃないってこと、覚えておいてね?」

蒼「…うん。ありがとう…ほんとに助かるよ」

その言葉を言い終えないうちに再び涙が溢れてきて視界が歪んだ

エメ「よしよし…辛いよね…嫌な事を全部吐き出しなよ」

正直言うと、出会ってそんなに長い付き合いな訳でもないのにエメは何でこんなに私の事を気遣ってくれるのか分からなかったが、今はそのやさしさに甘えさせてもらう事にした

その後、嫌な事を全て吐き出したため少し気が楽になったので、二人で夕飯を作って(エメはとても料理が上手だった)一緒に食べ、お風呂に入ってから私の部屋にエメは布団を広げ、一緒の部屋で寝た

 

次の日

エメ「蒼、今日は学校に行くの?」

蒼「うん、昨日で手続きは全部終わったし、親族が集まれる状況じゃないからお葬式は無しで、ちょうど明日が土曜日だから明日父さんを火葬するつもりだから今日は休まなくても大丈夫だよ」

エメ「それもだけど、気持ちの整理はついたの?」

蒼「うん、エメが昨日来てくれたおかげで、だいぶ気持ちの整理が出来たから大丈夫だよ」

エメ「そう…それなら良かった」

少し不安げな顔をしていたエメだったが、蒼の返答を聞いて少し安心したのか笑顔になった

蒼「じゃあ、学校行こうか」

エメ「そうだね。今日一日終れば休日だし、がんばろー!」

エメに引っ張られ、私は足早に学校へ登校していった

 

To Be Continued




自分が転校したいなどと言った事で父が仕事で無理をして倒れてしまったと考えた蒼は自責の念に駆られていたが、エメの慰めによってどうにか気持ちは落ち着いたようだ
次回『未知との遭遇』
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