Fate/Zero Son of Sparda 作:K-15
セイバーとランサーの対決、サーヴァントにおける3大騎士である2人の戦いに割り込むなど相当な策略があって然るべき。
だが突如として現れた男は刀1本握るのみ。その他の武器や道具は見当たらず、マスターのサポートさえも感じられない。
男はまるで視覚と聴覚の機能が欠損しているのか、2人など素知らぬ顔で堂々とアイリスフィールに向かって歩いて行く。
瞬間、刃と刃が交わり甲高い音が響く。
「まさかとは思うが、目が見えぬ訳ではあるまいな。バーサーカー?」
「セイバーか」
「ランサーとの勝負を邪魔建てしない所を見ると、まだ狂化してはいないようだな。だが、ここまで自我を持つバーサーカーなど」
「言いたい事はそれだけか?」
「なに?」
「面倒だ。2人まとめて相手をしてやる」
抜いた刀を構えるバージルにセイバーは警戒し、ランサーも苦笑すると彼女の隣に並んだ。
「バーサーカー、俺の聞き間違いか? 2人まとめて相手をする、確かそう聞こえたが?」
「ランサー、貴様では相手にならん」
空気が震える、轟音が広がる。
ランサーの槍とバージルの刀、互いの刃がぶつかり合い衝撃波を生んだ。ぶつかり合う殺意の波動、先に動くのはランサー。
2本持つ槍での連続攻撃。右の長槍でリーチを保ちつつ攻撃を仕掛け、僅かな隙を左の短槍で突く。
今までもこうして敵を討ち取ってきたが、簡単に負けるバージルではない。
鞘を使い攻撃をいなしつつ、刀で神速の斬撃を放つ。
「クッ!? 貴様、本当にバーサーカーか? 狂化せずにこの強さ、セイバーで召喚されてもおかしくはない」
「敵と語る舌は持たん。遊びは終わりだ。早々に片を付ける」
「俺との戦いを遊びときたか。言うな、バーサーカー。ならばこちらも全力を出させて貰う」
ランサーの宝具である黄色い槍、ゲイ・ボウにより受けたキズは決して癒える事はない。ゲイ・ボウを破壊する、もしくはランサーを倒すまで。
セイバーもこのゲイ・ボウの特性を知らなかったせいで左手に一撃を受けてしまった。もはや左手は戦いに使えない。
バージルもその事に気が付いていなかった。けれどもランサーを倒せるだけの技を彼は持っている。
ジリジリとにじり寄るランサーだが、不意に別方向から何かが飛んで来た。
「これは?」
瞬時に回避するランサーは先程飛んで来た物体に視線を向ける。アスファルトに突き刺さるそれは青く発光する短剣。バージルの魔力により形成された幻影剣。
「武器はその刀だけではないと言うことか。良いだろう、来い! 貴様のその首、我がゲイ・ジャルグで討ち取って見せよう!」
「調子に乗るなよ」
幻影剣は1本だけではない。次に現れた時には8本もの幻影剣がバージルを囲うようにして現れた。切っ先を外に向け、時計回りに回転するそれは攻撃と同時に防御にも使える。
「ほぅ、物は使いようか。だがこちらのセリフだ、バーサーカー。この程度で――」
瞬きはしていない。目の前からバージルの姿が消える。危険を察知するランサーはすぐにその場から飛び退いた。
刹那、斬撃が空気を切断する。
「早い!?」
「フンッ!」
現れたバージルは更に刀を振り下ろす。長槍の柄で攻撃を受けるランサーはこの戦いに勝機を得ようと相手の能力を観察した。
(奴の青い剣、厄介な代物ではあるがゲイ・ジャルグの前には無力。アレは奴の魔力により形成された剣。ならば勝機はある!)
距離を離すランサーは長槍での攻撃に切り替える。ゲイ・ジャルグならば魔力を打ち消して攻撃を当てる事ができ、幻影剣よりも更に外側からの突きならば優位を保ったままダメージを与えられると考えた。
だがバージルは甘くない。
「言った筈だ。貴様では相手にならん」
「なっ!?」
別方向から幻影剣が更に飛んで来る。そしてバージルの神速の一撃。動きを止めでもしたらその瞬間に骨ごと斬り裂かれる。
リーチがあるとは言え2メートル程、飛来して来る幻影剣の前では役に立たない。
「消え失せろッ!」
「この程度で!」
幻影剣を回避しながらバージルに一撃を食らわそうと槍を振るランサー。切っ先はバージルの周囲を回転する幻影剣を突き抜けて胴体に迫るが、左手の鞘でこれをいなす。
「どうした、バーサーカー? あれだけ大口を叩いたが、俺はまだキズひとつ負ってないぞ」
「ほざけ。セイバーの相手もある。次で決めるぞ」
バージルも仕掛けた。刀を鞘へ戻し、姿勢を低くしてランサー目掛けて駆け抜ける。
「この構えは……」
「死ねッ!」
疾走、バージルの姿がまたも視界から消えた。
息を呑むランサーは長槍で防御の構えを作るが、その時には既に遅すぎる。
カチンと、刀を鞘に戻す音が背後から聞こえた。バージルの様子を注意深く見ていたセイバーは、あまりの速さに思わず息を呑む。
「あのバーサーカー、居合斬りをしたのか?」
「セイバーには見えたの? 私には何がなんだか」
「狂化せずにあの強さ……バーサーカーは相当な脅威になるのは間違いない。ランサーをあれだけ挑発したのも、口先だけではないようです」
「でも、ランサーにダメージは通ってないみたい。これならまだ戦いは――」
マスターであるアイリスフィールの目に映るような技ではない。セイバーの目でもどうにか捉える事ができたレベル。
ランサーに振り返るバージルだが、その表情は険しくまだ殺意の波動を解いていない。
「チッ、浅かったか」
「バーサーカー、貴様の剣の腕。確かに認めよう……」
同時にランサーも相手に向かって振り返る。だがその胸元は数刻前とは違い自らの血で汚れていた。それもキズは1つではない。無数の斬りキズが胸と腹部を斬り裂いている。
「よもやここまでやれる手練とは思わなかった。セイバーだけでなくバーサーカーまで……戦いに割り込んで来るような輩と侮りが一片たりともなかったとは言えない。非礼を詫びよう」
「これから殺す相手に詫びなど必要ない」
「騎士道を重んじる俺のやり方は不服か? ならばバーサーカー、貴様は何の為に剣の腕を磨く?」
「力だ。俺が求めるのは力のみ」
「それは武を志す者ならば当然と言えよう。だが貴様はそれだけの力を自らの為だけに使うのは? 忠を尽くす主君の為ではないのか?」
「愚問だな。忠義など何の役にも立たん。必要なのは絶対的な力のみ。そうでなくては――」
風を纏う斬撃が、語るバーサーカーに襲い来る。
瞬時に鞘から刀を抜くバージルはその一撃を受け止めると力と力ばぶつかり合い衝撃波が走った。ギリギリと刃が悲鳴を上げ、鍔迫り合いをする相手は左手を負傷するセイバー。
「バーサーカー、貴様はランサーの騎士道を侮辱するか?」
「だったら俺に勝ってみせろ。だがセイバー、片手が使えない貴様が俺に勝てる理由など……ない!」
「舐めるなッ!」
1度剣を引き、互いに呼吸を整える。わずか数秒、それだけあれば充分。互いに必殺の一撃を与えるべく集中し、セイバーが動いた。
握る剣を見えなくするインビジブルエア。その風の鞘を開放させ瞬時に加速、風はセイバーを突き動かし放たれる一撃も重くなる。
「ストライク・エアッ!」
「これは……」
刃と刃がぶつかり合う。セイバーの放つ一撃はバージルの握る閻魔刀を弾き飛ばす。そしてバージルに向けられる剣は体を斬り裂くべく迫る。
だが、セイバーの体も背後に吹き飛ばされた。
バージルの体はタンカーにぶつかり、セイバーの体もアスファルトを引き剥がしながらようやく止まる。
魔力で形成された鎧のお陰でダメージは負ってないが、自らの体に何をされたのか。
「セイバー!? 急いで治癒を――」
「心配はいりません、アイリスフィール。ですがあの男、一体何を……」
セイバーにダメージがなかったようにバージルにもダメージはない。
潰れたタンカーから出てくるバージルの腹部には確かに剣で斬られたキズがあるが、流れる血は既に止まっている。その表情も平然としており、戦闘不能とは程遠い。
必殺の一撃が相殺された。セイバーとアイリスフィールは視界に入れたバージルの格好が変わっている事に気が付く。
両手足に装着された光る籠手と具足。
「サーヴァントの宝具は決して1つとは限らない。あの刀だけでなく、もう1つ持っているのね」
「白兵戦で私やランサーと対等に戦える技……面白い!」
バージルが装着するのはベオウルフ。上級悪魔でさえフルチャージされたベオウルフの一撃をまともに喰らえば死滅する。
咄嗟の判断で装備を切り替えたバージルだがフルチャージするまでの時間はなく、どうにかダメージを抑えるのが限界だった。
ベオウルフを戻すバージルはボロボロになったアスファルトに突き刺さる閻魔刀を回収する。
「俺にベオウルフまで使わせるとは……英霊と言うのも中々やるな」
「見くびらないで貰おうか、バーサーカー。私とてセイバーのクラスで召喚された身。そうでなくとも騎士として武を磨いてきた。簡単に勝てるなどと思うな」
再び剣を構えるセイバー。この戦いを遠目から見ていたマスターである雁夜は、念波を飛ばしバージルと意思を疎通する。
(どうするバージル? このままで勝てるのか? なんだったら令呪を使って狂化を――)
(必要ない。黙って見ていろ)
バーサーカーのスキル、狂化。理性を失う代わりにステータスを大きく上昇させる狂化だが、バージルは使う気など毛頭ない。
それだけ元のステータスが高い事もあるが、雁夜がまだ使ってない事にはもう1つ理由がある。
普通ならそんな事をしなくても良い。だが、事バージルに限っては令呪を1つ消費しなければならなかった。
故にまだ狂化は使っていない、使えない。遠坂 時詠を倒すまで、聖杯を確実に自分が手にするまで。
「うらららららららッ!」
「何だ?」
激しい落雷と轟音、怒号はこの場に居る者全てを引き付けた。
突如として空から現れたのは2頭の神牛が引くチャリオットに乗る巨漢。
「双方、共に剣を引け! 此度の戦い、余が預からせて貰う! 余の名はイスカンダル! 此度はライダーのクラスで召喚された」
1日しか行けませんでしたがマチアソビ楽しかったです。
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