Fate/Zero Son of Sparda 作:K-15
この長かった聖杯戦争も、いよいよ終わりの時が近づいている。脱落したのはアサシン、キャスター、ランサー。奇しくも王の名乗る4人が生き残った
そしてここで、王の勝者が決まる。
対峙するのは英雄王と征服王。けれども決着はあっけないもの。汗1つ流さずにアーチャーはライダーの息の根を止めた。
残る王は3人。
「終わったか……」
「フフッ、お前も来るか。魔王よ」
英雄王の前に現れる次なる王は魔王。
バージルが2本の剣を持って現れた。左手にはいつも使っている閻魔刀を、背中には見慣れない西洋剣を。
「征服王は我の前に敗れた。それでもまだ挑むか、魔王よ?」
「当然だ。おい、ライダーのマスター。死にたくなければこの場から離れろ。お前を気にしながら戦ってなどやれんぞ?」
「バーサーカー? わ、わかった」
サーヴァント、征服王イスカンダルはもう居ない。最後までその勇姿を見守ったウェイバーだが、ここから先は彼らの戦い。
戦いに巻き込まれないように、振り向きもせず決戦の場から走り出す。
英雄王と魔王、2人の鋭い視線が激しく混じり合う。
「見慣れない剣を持っているな? その刀と良い、何故、我の知らない宝具を持っている?」
「知りたかったら俺に勝ってみせろ。そうすれはこの刀はお前の物だ」
「ほざくか」
アーチャーを挑発するバージル。緊張は一気に高まり、バージルは最後の切り札を使う。
(雁夜、令呪を使え)
(バージル……狂化を使うのか?)
(いいや、違うな。雁夜、お前にも見せてやる)
離れた位置からバージルの戦いを見守るつもりでいた雁夜。その右手に刻まれた令呪の1画が赤く発光する。
マスターである雁夜の意思に反応して、サーヴァントであるバージルに力を与えた。
「アーチャー、死の覚悟はできたか? 今こそ見せてやる。これが真のスパーダの力。神をも超える悪魔の力だ!」
バージルの体から膨大な魔力が溢れる。尋常ではない爆発的な魔力。
空気が淀み、地面が揺れる。
バージルが持つ秘めたる力。スパーダの血族が持つ最強の力。悪魔の力が今、解き放たれた。
「ほぅ、その姿……魔人か……」
バージルの姿が変わる。それはまさに悪魔と呼ぶに相応しい。
爬虫類の鱗のように変化した全身の皮膚、鋭い爪と牙、その眼光に睨まれれば普通の人間では立つ事もできないだろう。
「行くぞ……」
「来い、魔人よ! 魔を倒すのは英雄の役目! 貴様のその力もまた、我の伝説に刻んでやる!」
左手には閻魔刀、右手には西洋剣であるフォースエッジを握り、悪魔は駆け抜ける。
神速の斬撃は威力を増し空間すらも断絶する必殺の一撃。
ゲート・オブ・バビロンから無数の宝具を放出するアーチャーだが、閻魔刀から放たれる斬撃が全てを撃ち落とす。
「この程度か、英雄王?」
「我を愚弄するか? 魔は英雄に倒される定めにある!」
更に撃ち込まれる無数の宝具。右から左から、四方八方から。
剣が飛ぶ、槍が撃ち込まれる。
無限とも思える程の武器を宝物庫から出し続けるアーチャー。
「無駄だ! 全ての力を出し切ってみせろ、英雄王!」
全ての宝具を閻魔刀とフォースエッジによる斬撃で弾き飛ばすバージルに、それでもアーチャーは笑みを崩さない。
「中々に楽しませてくれるな。だが勝つのは我だ。言ったであろう? 貴様は俺の新たな伝説に刻むと」
「終わらせてやろう、貴様の伝説を。スパーダの力の前にひれ伏せ!」
宝物庫にはまだまだ宝具が用意されている。アーチャーの背後から現れる無数の宝具、それらは一斉にバージルに向かって発射された。
だが悪魔の力を開放したバージルにただ宝具をぶつけるだけの攻撃など無力。閻魔刀を引き抜き神速の居合い斬りを見せるバージルは空間ごと宝具を斬り刻む。
邪魔な宝具は失くなった。本体のアーチャーに向かって距離を詰めようとするバージル。だが宝物庫にはまだまだ武器が残っている。
次々と放たれる宝具を閻魔刀で斬り払い、右手のフォースエッジからは漆黒の魔力を飛ばす。
「この程度で! 邪魔だ!」
止めどなく飛んで来る宝具の雨。
今のバージルに防ぎ切る事は容易だが、いつまで経ってもアーチャーに近づく事ができない。
フォースエッジを構え魔力を流すバージルは空中に向かって剣を投げた。
回転したまま宙に浮くフォースエッジは飛来する宝具を引き寄せ、そのまま明後日の方向に弾き飛ばす。一時の間ではあるが邪魔な宝具は飛んで来ない。
瞬きもせぬ内に近づく。
今のアーチャーは丸腰で剣の1つすら握っていない。
鞘から抜かれた閻魔刀。
バージルは大きく振り上げてアーチャーを袈裟斬り。
その一振りだけで空間を分断させるだけの威力。斬られれば死ぬ。
だが、閻魔刀の切っ先はもう少しの所で止められてしまった。
「どうした魔人? 全ての力を出し切ってみせろ? まぁ、天の鎖を引きちぎれるものならな」
突如として空間から現れた鎖はバージルの体を絡め取り動きを止めた。その鎖は神をも律する対神兵装、並大抵の力では鎖の拘束を打ち破る事などできない。
閻魔刀の刃はアーチャーまであと数ミリにまで迫っているのに、バージルは押すも引くもできなかった。
「呆気ないものよ。さぁ魔人よ、ここで死ね……」
宝物庫から1本の聖剣を取り出す。その切っ先を心臓へ突き立てようとするアーチャーだが、バージルはまだこの状況を打開できる魔具を持っている。
両手、両足に装備されたベオウルフ。拘束された右腕が光り魔力をフルチャージさせる。
「死ぬのは貴様だ」
現界までチャージされた魔力が右腕を黒く包む。放たれた一撃は鎖を一瞬で引きちぎり、悪魔を死滅させるだけの攻撃がアーチャーに迫る。
「なにっ!?」
寸前の所で後退するアーチャーはバージルの一撃を回避した。けれども開放できたのは右腕だけ。バージルは更に左腕にも魔力をチャージさせ、絡め取る鎖を容易く引きちぎった。
「フンッ!」
「天の鎖が破れるなどと……神をも律する鎖が……」
両足の鎖も引きちぎりバージルの体は再び自由になる。両手に剣を握る魔人はゆっくりと、アーチャーへ歩を進めた。
「甘いな、英雄王。俺は神をも超える……悪魔だ。それより良いのか? 英雄王ともあろう男が悪魔を前にして後ずさりなどと」
「ッ!? この我が……魔人を相手に後退するだと……もう容赦はせんぞ! 貴様のその体、肉片1つ残さん!」
彼が持つ最強宝具が遂に具現化する。乖離剣。
無銘にして最強の剣。剣というより円柱状の刀身を持つ突撃槍のような形状の異形の剣だ。
ギルガメッシュの意思に反応して刀身が回転する。
「この一撃を持って貴様を冥府ごと消滅させてやろう! 刮目しろ、そして滅びの時だ。英雄王の前にひれ伏せ、魔人よ! エヌマ・エリシュ!」
天を、地を、世界を斬り裂く究極の一撃。全てを飲み込み葬り去るエヌマ・エリシュは、ただ1人の魔人に目掛けて放たれた。
だがギルガメッシュは忘れている。この魔人は神をも超える存在。
閻魔刀を構えるバージルは自身の魔力を爆発させ、こちらも最終奥義を放つ。
「垣間見ろ、英雄王。これがスパーダの力……神をも超える絶対的な力だ!」
広範囲に次元を断つ斬撃。闇を切り裂き食らい尽くす。
バージルの斬撃は究極の一撃をも分断してゆく。これこそがスパーダの血統が持つ力。
まるで時が止まったように、エヌマ・エリシュが一瞬とまった。
「我のエアを持ってしてもあの魔人を仕留めきれんとは」
力と力の勝負はバージルに軍配が上がった。それでも無傷と言う訳にはいかない。全身の青い鱗からは止めどなく血が溢れる。
最強の力を持つ魔人が、今や立っているのがやっとだ。
「グゥッ! ハァ、ハァ……」
「だが相殺はできなかったようだな。貴様はエアを抜くに値する相手であったぞ。魔人よ」
「ハァ……ハァ……英雄なら……ここで死ぬ事はない」
「そうだな。魔の物は倒される定めにある、そう言った筈だ」
「フフフッ……そうか……」
「最後に貴様の名を聞いておこう。魔人……いや、魔王よ」
「バージル……」
「魔王バージル、我の新たな伝説に刻まれよ!」
満身創痍の体でエヌマ・エリシュを防ぎ切るだけの斬撃はもう出せない。けれどもバージルにはもう1つの剣が残っている。父から受け継いだもう1つの剣。
右腕を大きく掲げるアーチャー。バージルは立つことさえできなくなり片膝を付く。
それを見るアーチャーは口元に笑みを浮かべた。
「なッ!?」
腕がちぎれ飛ぶ。血が吹き出る。
けれどもその手に握られているのは乖離剣。
声を上げたのはアーチャーだった。
「貴様は――」
「油断したか? 勝ったと思い込んだのがミスだったな」
バージルが右手に握るのはフォースエッジ。
飛来する宝具を一時的に防ぐ為に投げたフォースエッジがバージルの意思に答え手元に戻って来た。そして剣は回転したままアーチャーの右腕を切断していく。
「お前の伝説もここで終わりだ」
「ふざけるな! 我がこんな所で――」
残る片手で宝物庫から剣を引き抜く。が、技量の勝負でアーチャーが勝てる道理はなかった。
一撃必殺の斬撃。
閻魔刀を静かに、ゆっくり鞘に戻すバージル。決着は付いた。
「この我が魔人に……いや、魔王か」
「英雄王よ、安らかに眠れ」
「フフフッ、まだ世界は貴様の物にはならんぞ? まだ騎士王が残っている。愛を知らぬ騎士王に、愛を求める魔王、か」
「セイバーも俺が倒す。聖杯は俺が手に入れる」
万能の願望気たる聖杯。
それを手にする者は誰なのか……
一気にストーリーが飛んで申し訳ありません。
ギルガメッシュ自身の戦闘能力はサーヴァントとして見たらそこまで高くありませんので戦闘は大味になってしまいました。
ご意見、ご感想お待ちしております。