We, the Divided   作:Гарри

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02.「夜の女王」

 五十鈴は静かに興奮していた。彼女にとって、天城は深海棲艦との血みどろの戦いを終わらせた立役者の一人である。より具体的に言えば、戦争が終わってから艦娘になった戦後組にとって、戦中に命がけで海を守っていた彼女たち戦中組は、誰であろうと英雄そのものだった。その英雄から、五十鈴たちに仕事が任された。それも、万が一に備えての護衛だとか、いるかどうかも分からない敵を警戒してのパトロールではなく、明確に存在する危険に対処する、という仕事だ。ただ戦争に間に合わなかった為に、何かと半人前扱いされ軽く見られてきた自分たちを認めてくれた、と五十鈴は感じていた。

 

 だが、戦後組で経験不足ではあるものの、五十鈴は無能ではない。相手は自分たちが英雄と信じていた先任艦娘だということや、それ以外に分かっていることがほぼ皆無であると聞いた彼女は、提督たちが警戒艦隊に何を期待しているのかをきちんと把握していた。あくまで自分たちは試金石、問題の解決までは求められていない、と。そのことを知っても、またしても蔑ろにされた、などと憤るほど五十鈴は傲慢ではなかった。そんなことよりも、自分たちの報告がこれからこの大問題に対処していく上での最も基本的な、最初の情報として扱われるのだということを思うと、むしろ自分でも危険だと思うほど強烈に自尊心が満たされるのを感じるのだった。

 

 現地へ向かうには輸送ヘリを使うことになった。一時間ほどで降下地点だと言われ、頭の中で地図を開いて、五十鈴は自分が恵まれていることを再確認した。ヘリなしなら四半日掛かるところを、一時間で到着できる。戦中は、撃墜の可能性が高い為にヘリを使うことはほぼ不可能だった。まだ幼い軽巡は、ますます先任艦娘たちへの敬意を膨らませると共に、今から自分たちがその中の一人を相手にして戦わなければならないということを思い出して、気を引き締めた。自分の提督から受け取ることのできた数少ない情報のメモを、服のポケットから取り出して読み直す。

 

 軽巡洋艦「龍田」。配属から七年目になる、中堅どころの艦娘。第四艦隊旗艦。砲雷撃に特段の技はないものの、艦娘らしからぬ戦術運用が特徴的。同じ訓練所を出た姉妹艦「天龍」と共に配属されたものの、彼女は終戦の数年前に戦死。遺品として、天龍の使っていた刀を保持している。龍田を担当した実技教官は、戦争末期の著名な艦娘を多数訓練したことでも有名な人物で、特異な戦術や技術は彼女の薫陶を受けたことによるものと考えられる──五十鈴は溜息を吐いた。つまり相手が何をしてくるか、自分には到底思いつきもしないということだ。そうとなれば、その場その場の判断で切り抜けるしかなくなる。それは、五十鈴が訓練所で避けるべきだとして学んだことだった。

 

 しかし逃げる訳にはいかなかった。もう乗り込んだヘリが飛び立って十分以上経っていたし、五十鈴は自分が何を成し遂げることができるか、確かめたい気持ちに抗えなかった。更に、龍田が第四艦隊所属だったということが、五十鈴に個人的な興味を持たせ始めていた。一人の提督の下で所有することができる艦隊は、通常は四個のみである。その内、第一、第二艦隊は戦闘任務を主眼に置いて運用される。一方で第三、第四艦隊は輸送艦隊の護衛など、後方支援を主な任務として運用される。けれども、それは第三、第四艦隊が第一、第二艦隊に比べて安全だという意味ではなかった。

 

 深海棲艦は人類と同程度の知能を有する。補給線の破壊は、連中の潜水艦の十八番だった。時には水上部隊も、輸送艦隊を狙って前線の警戒線を抜けてきた。それは、精鋭でなければできないことだ。龍田は軽巡の身で、そして僚艦たちは大抵の場合が全員駆逐艦という戦力的ハンディキャップ下で、その精鋭たちを相手にして生き延びてきたのである。五十鈴が貰った情報には、龍田の護衛した輸送任務の成功率までは書かれていなかったが、彼女が今日まで生き残っているということが、似た任務に就いている五十鈴には十分すぎるほど明らかな、相手の有能さの証明になった。

 

 龍田はどう動くだろうかと、五十鈴はそれが無駄に終わる可能性が高いということを知りつつも、考えずにはいられなかった。外に出てくるか、島にこもって迎え撃つか。六対一になる以上、まともに考えれば島の中に引きずり込むのが常道だ。海上では、数の差が陸地よりも如実に現れる。陸には木々があり、丘があり、建物がある。だが海では波以外に敵味方を遮るものは存在しない、と五十鈴は教わったし、これまで彼女が得てきた僅かばかりの経験の中にも、それを否定する事実は存在しなかった。

 

 私物のウェストポーチを探り、龍田がいると思われるラスシュア島近辺の地図を取り出す。五十鈴の警戒艦隊に下された命令は、龍田との接触。それが叶わなければ、ラスシュア島のレーダーサイトの無力化だった。航行・上陸経路を考えながら、五十鈴は彼女の提督の言葉を胸中で繰り返した。「夜陰に乗じて、手早くやれ。朝が近づくほど危険になる」と彼は言っていた。が、五十鈴はその言葉の正しさに疑問を覚えた。軽巡と駆逐艦にとって、夜の暗闇は親しみ深いものだ。夜の中でなら、戦艦だって空母だって狩ってみせる、というのが、軽巡・駆逐艦娘全体の誇りであり、それは五十鈴や彼女の僚艦にとってもその通りだった。でも、そこで敵として想定されていたのは深海棲艦であって、決して五十鈴と同じ軽巡艦娘ではなかったのだ。

 

 昼も夜も、龍田は自分たちより優位に戦える。五十鈴には悲観的な確信があった。それでも、任務を果たした後で撤退することはできると推し量ってもいた。カタログスペック上、警戒艦隊に所属する艦娘は全員が龍田より高速で航行できる。互いの全速を比べると僅か数ノット分の差ではあるが、艤装用の燃料が島から無限に湧いて出てくるのでもなければ、彼女が消費を度外視して全速で追跡してくるようなことはない、と五十鈴は推測した。経験を積んだ艦娘ほど、燃料弾薬の残量には神経質になるものだ。

 

 ヘリが高度を下げたので、もう降下の時間かと思って五十鈴は慌てた。すぐにパイロットから、龍田が乗っ取ったレーダーサイトによる追跡を避ける為に、ラスシュア島との間にある別の島を間に挟むのだと聞かされ、安心したが、そうすると次の心配事が現れた。ラスシュア島の固定レーダーサイトの探知範囲は、おおよそ四百五十キロだという。なら、ヘリの出動は既に知られている。もし待ち伏せられていたら? 龍田は降下地点を予測しているかもしれない。無防備にホバリングしているところを対空火砲でヘリごと落とされれば、何をすることもできずに死んでしまう。そう考えて、五十鈴は震えそうになった。ヘリの赤外線センサーで安全を確認してから降下するとは聞いていたが、それだけで十分なのか、不安に思われて仕方なかった。

 

 突然、横から肩に手を置かれて、五十鈴はこらえていた震えを抑え切れなかった。びくりとした後で、手の持ち主を見て、肩から力を抜く。それは彼女が個人的なパートナーとしても頼りにし、艦隊の二番艦を任せている駆逐艦「海風」だった。驚かされた仕返しに、五十鈴は彼女の薄い青紫色の髪の毛で作られた一本の長いお下げを、優しく引っ張った。彼女はくすぐったがるように身を軽くよじって笑うと、信頼を込めた暖かな声で「きっと大丈夫ですよ、五十鈴さん」と囁いた。五十鈴が彼女を重用する理由の一つがこれだった。百戦錬磨の古強者という訳でもないのに、誰もが海風の声を聞くと心を落ち着かせることができたのだ。五十鈴は以前、海上で思わぬ接敵を体験した時のことを思い出した。

 

 海上警備活動からの帰り道のことだ。時刻は夕暮れ時、珍しく警備中に敵艦隊と交戦した五十鈴たちは疲れ果て、燃料を切らしかけていた。どうにか泊地に帰投するだけの量はあったものの、再度の交戦となれば間違いなく戦闘中に航行不能となる程度の量でしかなかった。心もとなさに泣きたくなりながらも、五十鈴は懸命に指揮を行い、艦隊員たちの足がすくまぬよう気丈に振舞った。けれど、その偽りの姿も敵の艦載機を空に見つけるまでだった。五十鈴はその瞬間、旗艦として確かに一度は心折れたのだ。反射的に対空射撃を命じようとした五十鈴を、咄嗟に押し留めたのが海風だった。彼女は肩を掴み、静かだが有無を言わせぬ鋭い声で五十鈴へと呼びかけ、開きかけたその口を閉じさせた。そうして五十鈴が正気に戻る頃には、敵艦載機は姿を消していた。

 

 その後泊地に戻るまでに、航空攻撃を受けることはなかった。帰還して報告を済ませた後、提督も含めた皆が五十鈴がよくやったことを認めたが、この苦い経験を通して手に入れたもので彼女が最も嬉しかったのは、本当の窮地に陥った時に誰を頼れるかということを、知ることができたという点に尽きた。五十鈴は彼女に頼ること、弱みを見せることを恥とは思わなかった。肩に置かれたままだった彼女の手を握り締め、自分自身の決断が他人の命を左右する恐怖を胸に秘めながら、断固とした口調で命じた。

 

「海風、あんたはヘリに残りなさい」

 

 二番艦が全く驚いた素振りを見せなかったので、かえって五十鈴が面食らったほどだった。気を取り直し、了解の返事を待つが、海風はじっと五十鈴を見つめたまま何も言わなかった。任務を全うすべき旗艦が、危険な任務に親友を帯同させたくないという私情に邪魔をされて、正しくない判断をしたのではないかと疑っていたからだった。五十鈴にもそれは分かった。その嫌疑を晴らす為に、親友同士は視線を暫し交し合った。やがて、海風はにこりと笑みを浮かべた。彼女の旗艦が、その立場にいる者として考えた末にそう自分に命令したのだと、信じられたからだ。

 

 戦友からの信用を勝ち取ったことを感じた五十鈴は、それから他の艦隊員たちにも今の命令を教え、意図を説明した。

 

「海風がいないのは痛いけど、今回の任務は相手を倒して勝つことじゃない。対象と接触して、その上で生き延びることよ。駆逐艦は得意でしょ? 逃げるの」

 

 旗艦の軽口交じりの鼓舞に、若く血気盛んな他の艦隊員たち、四人の駆逐艦娘は笑いながら盛んに朗らかな罵声を飛ばして応えた。酒でも入っていなければとても口には出せないような乱暴な言葉が、次々と五十鈴に投げかけられる。だがそのどれ一つとして、彼女を傷つけることはなかった。それは彼女を奮い立たせた。三つ四つほど言い返しながら、「駆逐艦娘なら、誰にでも期待することができるものが一つあるとすれば」と五十鈴は考えた。それは危地にあって発揮される勇敢さに他ならないだろう。

 

 ヘリのパイロットが、五十鈴たちに降下地点への到着を知らせる。途端に彼女たちの口はぴたりと閉じ、表情は引き締まった。一秒でも早く機外へ飛び出せるよう、やや上体を前に傾けた姿勢を取る。ドア近くに座っていた五十鈴ともう一人の駆逐艦娘は、ロックを解除してドアを開放した。冷たい風が勢いよく吹き込んでくる。五十鈴は目を細め、手を風除けにして夜の海を見下ろす。数キロ先に、月明かりに照らされて島のシルエットが見えた。ヘリの飛行時間やぼんやりとした島の形を合わせて考えて、五十鈴はそれを宇志知(うししる)島だと判断した。そこからラスシュア島までは北に三十キロほどだ。警戒艦隊が全速で向かえば、半時間で着く距離だった。

 

 ホバリング状態を維持したまま、ヘリは高度を下げていく。夜間で海面がよく見えないということもあり、五十鈴はしっかりと安全な高度まで下りてから機外に出るつもりだったが、艦隊員の一人、駆逐艦娘「涼風」が逸った。「さ、行こっかぁ!」と一声あげるや、まだそれなりに高い位置にいたヘリからさっさと飛び降りてしまったのだ。たちまち五十鈴はさっきまでの安心と勇気を忘れ、血の気が引いた。居ても立ってもいられず、涼風の後を追って飛び出す。けれども残りの艦隊員たちには、もっと高度を下げてから出てくるように言い含めることを、彼女は忘れなかった。

 

 瞬間的な浮遊感と、不愉快な落下感で五十鈴は総毛立った。歯を食いしばり、空中で姿勢を崩さないように気を払いつつ、予測できない落着の衝撃に備える。それはすぐに彼女を襲った。思わずがくんと膝を海面につけそうになるが、どうにか体勢を立て直す。それから、涼風の姿を探した。夜の暗さに目は慣れていたが、見つからない。と、ヘリから通信が入った。パイロットは赤外線センサーで海をスキャンして、着水時に体勢を崩してしまった涼風が艤装の重みで溺れかけていることと、その位置を教えてくれた。そのナビゲーションに従って、五十鈴は急いで涼風の下へ向かった。海面下から突き出された腕を見つけ、それを掴み、渾身の力を振り絞って引き上げる。

 

 体が冷えたせいもあって、涼風は顔を真っ青にして、がちがちと歯を鳴らしていた。ちゃんと立ってはいられる様子だったので、五十鈴は一旦意識をパイロットとの通信に移し、礼を言った。通信を切ると、五十鈴はただちに涼風を締め上げに掛かった。

 

「何考えてんのあんたは、勝手なことをして!」

 

 旗艦に小声で怒鳴られて、濡れ鼠になった涼風は、機内での意気軒昂さと打って変わって肩を落とす。その姿を見て、十分に()()()()()ようだし、これ以上言っても別に何の得にもならないな、と五十鈴は怒りをこらえた。最後に「次また勝手したら、私があんたを沈めるからね!」とだけ言いつけておいて、残りの三人を待つ。彼女たちは揃って含み笑いを浮かべつつ、海に降りてきた。しょぼくれた涼風を乱雑に励まそうとする彼女たちに、周囲の警戒を怠らぬよう指示を飛ばしつつ、五十鈴はヘリが高度を再び上げ、西に飛び去っていくのを見送った。

 

 隊列を組み、五十鈴たちが航行を開始する。どう近づこうが、潜水艦でもない限りレーダーに写ることは避けられないと分かっていたので、五十鈴は最初から出せるだけの速力を出すことに決めた。時速六十キロのスピードで、まずは分かりやすい目印であるウシシル島を目指す。涼風や彼女を笑っていた他の艦娘たちも、既にその顔からは表情らしい表情が消え、任務を全うしようとする一人の艦娘の顔になっていた。海の上を五人の艦娘たちが滑る音と、のたうつ波の音が五十鈴の鼓膜をくすぐった。状況が状況でなければ眠気すらもたらすだろうそれに、警戒艦隊旗艦は耳を傾ける。並行して何かが不意に視界へ入ることがないかと、注視する点すら見つからない宵闇の中に目を凝らす。

 

 その中に、これから戦うことになる一人の艦娘が待ち構えているのだ。

 

*   *   *

 

 涼風は艦隊の母親とも言える二番艦、海風がいないのを本当に残念に思った。ずぶ濡れになって、叱責されても、彼女がいたなら何かとても意味のある深い言葉の一つでも掛けてくれて、それで単純なところのある涼風などはすっかり気分をよくすることができただろうからだ。涼風は暗闇を覗き込むのをやめ、足元を見た。黒々とした水が、降り注ぐ月光を万倍にも薄めて映し、彼女の網膜を撫でた。クソ泥水、と涼風は罵った。もちろん、足元の水に何が含まれているか、そして何が含まれていないか涼風は把握していたから、この罵り言葉は正確ではないとも分かっていた。それでも文句の一つでも言わずにはいられなかったのだ。

 

 水を見るのが嫌になって空を仰ぐと、雲を周囲にはべらせた月が、こうこうと輝いていた。それは不気味なほど明るく、見ていて気分が落ち着かないほど黄色かった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。涼風は自分のその感想を面白く感じて、隣を走る相棒「深雪」に伝えたいと思い、「なあほら見ろよ、月が……」まで言ったが、自分の感想は別に面白くないんじゃないか、と考え直した。それで「綺麗だぜ」と続けると、深雪は胡散臭げに涼風を見やってから、溜息を吐いて答えた。

 

「あたしはとても上なんか見てらんないね。いつ何処から襲われるかも分かったもんじゃないってのに、ったく」

 

 深雪のその言葉に涼風は、自分が海面下から現れた龍田に水底へ引きずり込まれる姿を想像した。ぞっとしない想像だったが、そのナンセンスさには笑いどころがあった。肩をすくめ、皮肉っぽく喉を鳴らす。

 

「何でまた提督はあたいらに威力偵察なんかさせんのかねえ。適当にあちこちの艦隊からベテランの軽巡艦娘や駆逐艦娘を引っこ抜いて、臨時任務艦隊(タスクフォース)を作ればよかったのにさ、べらぼうめ」

「あたしが知る訳ないだろ」

 

 にべもない深雪の答えに涼風は黙り込んだが、内心で苛立ちをぶつけるのはやめなかった。ちぇっ、深雪の奴、がちがちに凝り固まりやがって。五十鈴が決めた組み合わせだってのは認めるけどよ、あたいはあんたの相棒なんだぜ? もうちょっと付き合いよくしてくれてもいいじゃんか。けれども、旗艦がさっきから自分たちを見ていたということに気づくと、ああそのせいかと納得して苛立ちを引っ込め、自分の勘違いを笑うまいとして、口角をぴくぴく痙攣させた。

 

 五十鈴から二度目の譴責(けんせき)を食らわないよう、前を向いて警戒を続ける。それは涼風にとって耐えがたいほど退屈な時間だったが、自分のミスが戦友たちの命を脅かす今の状況では、その退屈さに殺されそうだとしても、だらけることはできなかった。それでも思考を僅かばかりに割いて、考え事をする程度の逃避は涼風にもできた。今日という夜のこれは、一体全体何という皮肉だろう、と彼女はまたしても面白みを覚えた。

 

 涼風は沿岸からさほど離れていないところにある町で育った。海が近くとも、当時は海水浴ができるほど平和ではなかったが、代わりに彼女には川遊びという代替手段があったし、秋冬になれば自転車を漕いで、友達と一緒に温水プールを備えた屋内型遊戯施設を訪れることもできた。中学校でクラブを選ぶ時、水泳部以外に入ろうかと迷うこともなかった。彼女は水が好きだった。それが著しいので、母親が心配して何度も言ったほどだった。「プールならいいけど、海に近づいちゃいけないよ。深海棲艦がいるからね、危ないよ」

 

 深海棲艦がいなくたって、頭のおかしい艦娘がいるんじゃやっぱり同じさ、と涼風は今度こそ笑った。その時には五十鈴が涼風に注意を払っていなかったので、深雪はわざとらしい「気でも触れたのかよ」という表情で涼風が何故笑ったのか訊いた。気風のいい青髪の艦娘は、笑い声を殺しながら答えた。

 

「だってさ、艦娘になった時思ったんだよ。『ああ、あたいはその内、海で死ぬんだ。だって戦争なんだから』ってね。でも深海棲艦と講和して、戦争が終わって、平和になって、安心してた。なのに今日のこれだぜ。戦争のロスタイムってか?」

 

 この言葉には深雪も笑った。憂鬱さと純粋なおかしさが入り混じった、複雑な微笑みだった。深雪は微笑を浮かべたまま言った。「なあ、このまんまあたしら二人で反転して帰ろうぜ」「合点だ。頭のイカれた軽巡艦娘なんか放っとこう」涼風はもう、その小さな笑いを隠しもしていなかった。彼女はもっと笑っていたかったが、遠かった島影が近くなってくるのを見て、笑いと笑いの合間に大きく息を吸い込んで心を落ち着かせ、それから少しだけ息を吐き出すようにして最後の一笑いをすると、うんざりしたように呟いた。

 

「やんなるぜ、畜生め」

 

*   *   *

 

 ウシシル島の南島で木々の間に身を潜めて待ち構えていた龍田は、数秒前に自分が下した判断が、これまでの人生で行った中で最も正しいものの一つだったということを確認して、腰が抜けたかのようにその場にへたり込んだ。ほんの少し前まで、龍田はヘリを撃ち落としてやるつもりだった。距離はあったが射線を遮るものはなく、暗視装置付の双眼鏡で位置もはっきり確認できていたのだ。その上でホバリング状態のヘリなら、当てられたに違いなかった。そうしなかったのは、単に偶然ヘリの中に乗り込んでいるのが、艦娘の恰好をしただけの素人同然の連中だと分かったからだった。動悸が落ち着くと、龍田は自分の心の中に強い怒りが沸き上がるのを感じた。薙刀で地を突いて立ち上がると、「あんな子供を送り込んでくるなんて、海軍は何を考えてるの?」と口にした。誰が答える訳でもなかったが、言わずにはいられなかった。

 

 急いで岸壁へと走り、紐で首から下げた双眼鏡で夜の闇の中を見通す。目敏い龍田は、すぐに島へ近づいてくる警戒艦隊の姿を捉えた。僅かに、龍田は焦りを感じた。現在地が知られている? それはないだろう、と考え直して、艦隊員の数を数える。五人しかいない。一人は何処へ行ったのだろうと龍田はいぶかしんだ。定数割れしているだけかもしれないが、そうでないとしたら何かがあるに決まっていた。そして往々にしてこの場合は、何かがあるのが常だった。頭の片隅に定員に対して一人少ないという情報を残しておいて、追われる身の彼女は相手の心配を始めた。何歳だろうか? きっと二十歳にもなってはいまい。

 

 龍田は、今視界の中にいる艦娘たちが戦後組だということについて、全く疑っていなかった。その動きの一つ一つを見れば分かった。きびきびとはしていたが無駄が多く、周囲を見ずに僚艦と無駄話をしている。それを注意しようとする旗艦さえ、前を向くという基本を忘れている。どうしようもない焦燥感に、戦争を生き抜いたベテランの軽巡艦娘はぎりりと歯ぎしりを響かせた。眼下の艦隊には、戦火の中を潜り、敵と自分の血で洗礼されたことのない艦娘ならではの、民間人めいた雰囲気があった。龍田にはどうしても、彼女たちを同じ艦娘だとは思えなかった。女学生の集まりにしか見えなかった。それはつまり、標的として撃つことを、殺すことを彼女に躊躇わせたということでもあった。

 

 だが、放っておけば警戒艦隊はウシシル島を通り過ぎ、ラスシュア島に到着し、龍田と違って躊躇することのない罠に掛かって、死ぬだろう。龍田はそれを、眼前の敵よりもずっと老練な、本物の艦娘を仕留める為に仕掛けたのだ。素人が罠の全てを回避して生き延びることができるとは、どれだけ楽観的になろうとしても、思えなかった。龍田は自分が何を考えていたかに気づいて愕然とした──彼女は何とか力を尽くして、艦娘の恰好をした小さな子供たちを救おうとしていた。あの少女たちは運よく戦争に出なくて済んだのに、今になって戦争を思い知らされそうになっている。海軍が、情報を求めたからだ。よろしい、と龍田は心に呟いて決めた。情報は持ち帰って貰ってもいい。どうせ大したことは分かるまい。しかし今晩に限っては、何処の誰であろうと、殺しだけはなしだ。

 

 拡大された緑色の視界の中で、警戒艦隊が近づいてくる。ヘリのローター音は既に消えているが、戻ってこないとも限らない。無経験な艦娘の相手はどうとでもできる自信があったが、流石の龍田も縦横無尽に戦闘機動を繰り広げるヘリを正面から相手取って、無事でいられるとは考えていなかった。となると、ヘリを落とすか、回避するか、無力化するかだ。落とすのは論外だった。遠くから不意打ちで、無防備な瞬間を狙うのでもなければ、避けられて反撃を受ける。回避は難しい。ヘリは龍田の何倍もの速度があるから、追われれば逃げられない。そういう結論に達したので、龍田は無力化を選んだ。どんな理由であれ、ヘリが動けない状況にしてしまえば何の恐れるべき点も存在し得ない。

 

 問題は、そんな状況をどうやって作り出すか、だった。しかもそれは、誰一人殺さずに成し遂げられなければならないのだ。五十鈴と違って僚艦のいない龍田にとって、それは非常に厄介で困難な要求だったが、実現の目途は立っていた。五十鈴たちの航行方向を確認すると、龍田は踵を返してその場を走り去り、島の内湾へと降りた。双眼鏡の倍率を最低倍率にしたまま構え、音を聞かれる心配のない速度で湾内を断崖に沿って移動する。警戒艦隊の針路が何がしかの理由で変えられることがなければ、彼女たちは南島の西側を通ってラスシュア島に向かう筈だった。

 

 湾からの出口付近まで来たが、無論龍田はそこから出るつもりはなかった。五十鈴が電探を装備していないと確信できる理由がない以上、意味もなく姿を晒すことに意味を見いだせなかったし、龍田としてはできることなら背後から襲いたかった。彼女の経験では、艦娘の戦意を奪う最も単純な方法は、パニックに陥れることだった。龍田は一緒に何度も海へ出た、尊敬できる僚艦たちが恐慌の中で沈んでいくのを、一度ならず見たことがあったのだ。

 

 断崖に走った大きな亀裂を見つけると、彼女は迷わずにそこへ入った。暗視装置の加護があっても洞窟は暗かったが、少なくともここにいれば電探に捉えられるのは避けられた。それにこの洞窟は湾内から外へと通じてもいるのだ。運のいいことに繁殖期の始まりは数か月後だった為、海鳥の大群が洞窟から飛び立って五十鈴たちに位置を知られる、ということもなかった。龍田は洞窟の出口付近に身を潜めると、種々の道具を使って迎え撃つ準備をし、戦闘への興奮で乱れそうになる息を整え、立ったまま壁にぴたりとくっついて五十鈴たちが姿を見せるのを待った。航行音が小さく聞こえていたので、それは間もなくだと思われた。

 

 洞窟の壁に付着していた海水が服の中に染み込んでくるのを感じながら、龍田はぼんやりと昔のことを考えた。まだ彼女が、今相手にしている五十鈴たちと同じような新米艦娘だった時に、やはり新米艦娘だった姉と共にこの洞窟を通ったことがあった。その時の旗艦はもう沈んでしまったが、包容力のある優しい艦娘で、たまには絶景の一つでも見るといい、とわざわざ任務の間に時間を作ってくれたのだった。明るい時間に訪れたので、穴が開いて一部が吹き抜けのようになった天井から差し込む光の筋や、それを反射して()()()()と輝く壁、その浅さの為に透き通った青に見える水面を、新米艦娘たちはすっかり楽しむことができた。龍田はその日のことを思い返すのが好きだった。戦争が終わったら、きっと毎日がこんな日になる、と信じていた頃の思い出を。

 

 しかし、航行音が大きくなったので、龍田はそろそろ夢を忘れるべき時間だと悟った。薙刀を握り、砲撃の準備をして待ち構える。まず旗艦の五十鈴が、先頭で洞窟の出口から二百メートルのところを通過した。その後を追うように涼風や深雪などの僚艦が、間隔を密にして通っていく。私の艦隊であんな真似をしていたら、と龍田は小さく鼻を鳴らした。その日の内に矯正してあげるのに。間隔を開けていなければ、一網打尽にされる確率が飛躍的に上がる。旗艦がきちんと自信を持って指揮を執り、僚艦が自分の取っている針路や指揮官を信頼していれば、何十メートル間隔を開けていようと問題は起こらない筈なのだ。それができていないということは、艦娘それぞれが自分すら心から信頼できていない証に他ならなかった。これなら容易に動揺させられるだろう、と龍田は推測した。

 

 艦隊の後尾を行く二人の駆逐艦娘に狙いを定め、素早く続けざまに砲撃する。龍田の暗視装置越しの視界の中で、五十鈴は最も早く反応し、その驚愕と恐怖の表情をかなり正確に砲声の出所へと向けた。一つは褒められるところが見つかったことに、龍田の頬が軽く緩んだ。だが、狙われた駆逐艦娘二人にしてみれば災難もいいところだった。砲弾は狙い違わず、彼女たちの足を潰したのである。一人はあっという間に海に倒れ込んで溺れ始め、もう一人は片足で痛みと出血に耐えながら、転倒までの絶望的な時間稼ぎに全力を注いでいた。五十鈴の大声が、龍田の耳にまで届く。

 

「深雪、涼風、二人を救助! 済ませ次第私に続いて!」

 

 旗艦は一人で先に追いかけてくるつもりだ、と龍田は直感し、先ほど内心でのみとはいえ褒めた相手に失望しなければならない痛みに、顔をしかめた。旗艦の仕事は手足である艦隊員を動かすことであって、自ら動くことではないというのに、五十鈴は勇み足にもほどがある。それでも龍田は、彼女が経験不足さえ何とかすれば、立派な旗艦になれるだろうとも思った。奇襲の瞬間、彼女は恐れていたのに、即座に指示を出した。恐怖に囚われず、それを跳ねのけたのだ。

 

 恐怖を跳ねのけられること、それは旗艦だけでなく、あらゆる艦娘が有するべき才能だったが、龍田の知る限り大抵の艦娘は、跳ねつけるのではなく心という器に飲み込んでしまうので、その場では囚われることがなくとも、やがては限界を迎えた器からとめどない恐れが溢れ出してしまうのだった。五十鈴の秘めたる才を感じながら、龍田は洞窟の中へ戻ろうとした。その時、強い光が彼女の目を襲った。真っ白に染められた視界に、「探照灯」の一言が龍田の脳裏を過ぎった。自分に注意を向けさせて救助活動で身動きできない僚艦を守りつつ、龍田の位置を探り出した五十鈴に舌を巻きながら、記憶だけを使って洞窟の中を走り抜ける。

 

 暗視装置と双眼鏡に備わった二重の安全装置のお陰で、目を焼かれることにはならなかったが、小さな違和感が残った。舌打ちをして短く笑い、洞窟の壁に遮られて五十鈴の視界から自分の姿が消えたタイミングを見計らって、脇道に入る。五十鈴は頭に血が昇っていたのか、後続を待つのをすっかり忘れて、狭い洞窟の中だというのにかなりの速度を出していたので、危うく脇道に身を隠すのを見られるところだった。龍田はほっと息を吐いて暗視装置付双眼鏡を顔の前から下ろした後、自分の隠れた脇道の前を五十鈴が横切ろうとした瞬間、飛び出して体当たりをした。

 

 当たりにいった龍田すら、衝突の瞬間、意識が明滅するほどの衝撃だった。激突したのもされたのも頑丈な肉体を持つ艦娘でなければ、やわな方の肢体はばらばらになっていただろう。龍田は倒れそうになったものの壁に手を突いて持ち直したが、五十鈴は不意の衝突だったこともあって水面に倒れた。ぶつかった時に彼女の探照灯が壊れたのか、強い光が一度だけ(またた)いた後、辺りが闇に包まれる。こうなると、自分が水に沈みつつあることしか分からない五十鈴は、もがくしかなかった。自分がどちらを向いているのかも、どうすれば溺死を免れるかも分からず、ただ手足を駄々をこねる幼児のように振り動かす。

 

 まだ体がふらついていたが、龍田は暗視装置を付け直し、薙刀を壁の亀裂に差し込んでおくと、五十鈴の後ろから近づき、彼女の脇から片腕を通して体を引き上げた。水を飲み込んでしまったせいで咳き込む五十鈴の背中を、何度か軽く叩いてやる。少し落ち着いたところで、龍田は罠用のワイヤーを使って五十鈴を拘束した。所詮は細い鋼線でしかない以上、ワイヤーなど艦娘の力に掛かれば引きちぎることも不可能ではない。が、そうすれば鋼線は五十鈴の肉に食い込み、引き裂くことになる。その苦痛への恐怖は、龍田が五十鈴を制圧する上で十分な助けとなった。五十鈴は自分が後ろ手に縛られたと認識しても冷静で、暴れなかった。龍田は面倒を掛けず扱いやすい彼女に、場違いな好印象を抱いた。

 

 水を掻き分ける音と機関の駆動音が入り混じった航行音が洞窟の壁に反響して、龍田の耳朶を打つ。彼女は身を翻して薙刀を取ると、顔の前に構えていた双眼鏡から手を離して紐で首に掛かるままにし、五十鈴を背後から抱きしめるようにして盾にした。龍田のその動きで狙いを悟った五十鈴は、どうにかして戒めから逃れようとしたものの、手を縛られた上に薙刀の柄部で首元から腰に掛けて極められていたので、どうしようもなかった。救助を終えたのだろう涼風と深雪が近づいてくる音を聞きながら、龍田は五十鈴の耳元に口を寄せてゆっくりと尋ねる。

 

「ねえ、今日が何の日か知ってる?」

「私の人生最悪の日よ、イカれ女」

 

 真っ暗闇で、拘束され、命の危険さえある中で五十鈴がすかさず返答できたことに、“イカれ女”は今日何度目かになる感心を覚え、ますますこの若き艦娘の卵を死なせたくなくなった。隠すことのできない喜色が、彼女の間延びした「正解」という一言に濃くにじんだ。龍田はもっとこの軽巡艦娘と話してみたいという欲求を抱いたが、涼風と深雪がやってきたので一時中断するしかなかった。二人とも探照灯を装備しており、涼風は龍田の方に直射して視界を制限し、深雪は壁に光を当てて反射させ、自分たちの視野を確保していた。二人の駆逐艦娘は、無言で砲を構えた。発砲まではしなかったが、五十鈴を殺そうとしたり、致命的な隙を見せたなら、撃ってくるに違いない。龍田は、思っていた通りだと考えて微笑んだ。頭はそれなりに回るが、ただ経験が足りない。

 

「砲を捨ててこの場は退くというなら、見逃してあげる」

 

 場の流れをコントロールするべく、龍田は口を開いた。涼風と深雪の目に不信の気配が浮かぶが、彼女は気にしなかった。「洞窟内で発砲したら、どうなるかしらね?」と揺さぶりを掛け、幼い駆逐艦娘たちの心を攻める。二人は隠し事ができない性格らしく、傍目から見ても分かるほど明らかに、顔色を変えた。ごまかすように、深雪が「それはそっちだって同じじゃんか。薙刀だってここじゃ使いづらいだろ」と言い捨てる。その発言は正しかったが、龍田には長年の間に培った技術があったし、それに腰には天龍の刀を提げていたので、深雪の言葉は全く眼前の敵の心を揺るがせなかった。龍田は五十鈴をきつく締め付けながら、次の提案を口にした。

 

「じゃあ、こういうのはどうかしら。私の島に向かってるもう一人だけど、今のまま放っておいたら、罠に掛かって……死んじゃうわよ?」

 

 五十鈴の体が、ぴくりと反応する。やっぱりね、と龍田は彼女に囁いた。深雪たちには単なる鎌掛けだったことは伏せて、最初から見抜いていたという風を装う。

 

「五人だけで行動してたら、一人は別働隊ですって言ってるようなものじゃない。道中で私と遭遇したら、その一人を向かわせるつもりだったんでしょう? 早くやめさせないと、陸の上で轟沈なんて笑えないわぁ」

 

 忍び笑いを漏らしつつ、龍田は薙刀の柄で五十鈴の喉を更に強く締めつけた。ひよっこでも、五十鈴は資質のある艦娘だ。口を自由にさせていれば、何を吹き込んで艦隊員を発奮させるか、分かったものではなかった。狼狽が表情に表れていることに気づきもしない涼風たちの動揺を、龍田はなぶるように煽り立て続ける。涼風が言った。「罠があるってことを伝えりゃ、問題になんかなるもんか」「あらぁ、僚艦の命で賭け事をするつもり?」だが、こうもぴしゃりと言い返されて黙るしかなかった。

 

 最初に砲を捨てたのは深雪だった。後どれだけの時間で海風が島に着くか分からず、彼女が本当に死ぬ恐怖や、それを止めることができる方法があるのに選ばないという罪悪感に、彼女は耐えられなかったのだ。涼風は困惑で「おい!」と声を上げたが、深雪が涙目で「ごめん、涼風、五十鈴。でも、海風を見捨てられねえよ」と言うのを聞くと、諦めたように彼女に(なら)った。龍田はそれを確認してから、初めて余裕のない声で「早く行って」と二人に短く離脱を促した。彼女本人にも、いつ海風が死の島に足を踏み入れるか分からなかったからである。最悪の場合、既に手遅れということすら考えられた。

 

 小さな溜息を吐いて、そこで初めて龍田は五十鈴が自分を見ているということに気づいた。洞窟の天井の穴から差し込む月光が、五十鈴の目に反射してきらめいていた。思わず龍田は彼女の拘束を緩め、虚を突かれて怖気づいたかのように数歩分距離を取る。五十鈴は二度、三度咳をしてから、かすれた声で龍田に呼びかけようとした。けれども「あんた」まで言ったところで、薙刀の石突であごを横殴りに打たれ、意識を失った。


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