真・閣下転生   作:echo21

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展開は遅々としている。
#この話は一部修正されました。




閣下転生 #02 謝罪回。

 パスカルと戯れる幼女が『高町なのは』で、困惑がおさまらない赤髪の男は『新田優(にったゆう)』と名乗った。公園で項垂れるなのはに優が話しかけたのは、なのはを心配してとのこと。正直、意味がわからんのだが──。

 

「いや、エピソードで……。なんでもない」

 

 首を傾げたなのはに優は誤魔化すように首を振ったが、ネミッサが念話で“あやしい”と伝えてくる。完全に同意だ。なにやら『銀髪』や『オッドアイ』とか呟いているのだが、誰の話をしているんですかねぇ。俺は黒髪の巻き毛、瞳は薄い茶色だ。なのはは栗色の髪に黒目だからなぁ。そんな優は赤髪の黒目だよね?

 

「わわっ。舐められたっ」

 

 なのはは楽しそうである。袖なしのワンピースに猫のプリントが可愛らしい。優は浮いていた。長袖の黒シャツにジーパン、左耳にあるシルバーのピアスが目につくのだ。五歳のガキのセンスじゃないよね? あ、そうそう。なのはと優は五歳で、俺のひとつ下になる。俺の服装は半袖の白シャツにサスペンダー、短パンにスニーカーというショタルックだから浮きません。ちなみにスニーカーは宝物だ。勝利の女神印である。

 

「ねぇねぇ。真くん。パスカル可愛いね。パスカルは男の子? 女の子?」

 

「当然だ。パスカルだからな! ……パスカルはメスだから女の子だぞ。優はどうしたんだ?」

 

「それじゃあ、パーちゃんだねっ!」

 

「いや、なんでもないんだ。……それより、あの大人達は?」

 

 白スーツの『葛葉秀雄』は『葛葉探偵事務所』の所長でありチンピラのようなクズだ。隣に立つのは所員の『桜井政弘』といい、『スプーキー』が通り名のハッカーである。どちらも父親の友人ではあるが、タカリ屋でもあるのだ。まあ、そんな紹介はできないので、なるべく簡潔に説明しよう。するとどうだ。『白スーツがクズ』で『隣がハッカー』となってしまった。何かを間違えた気がする。

 

「よくわからないの」

 

「…………なんといえばいい」

 

“どちらもあってるけどね。ただの犯罪者に聞こえるわ。それもまあ、間違いじゃないけど”

 

「だからまあ、あれだ。お菓子をくれる、ちょっと怪しいオッサン達だ。大丈夫だ、問題ない」

 

“問題はあるでしょ? クズノハは三十代目のライドウ、スプーキーはモグリのデビルサマナーなんだから”

 

“それはいわないお約束だ。それよりネミッサ。合図はまだか?”

 

“まだね。三本目に火をつけたわ。待てってことよ”

 

 仕方がないね。会話を続けようじゃないか。明るく笑うなのはを不思議そうにみる優に話をふってみよう。

 

「いやな。なのはが淋しそうにみえたから……。なあ、なのは。何かあったのか?」

 

「知らないひとと話したらダメなの!」

 

「なのは? 俺とパスカルは?」

 

「うん? 可愛いよねっ!」

 

 パスカルの可愛さには勝てなかったようです。項垂れた優の肩を叩いてやろう。

 

「……真から訊いてくれ。ひとりで泣いてるようにみえたんだがな」

 

「お? そうなのか……。なあ、なのは。なんで泣いてたんだ?」

 

「うん? ──あのね。お父さんがケガして。起きなくなったの」

 

 つたない言葉で話してくれた内容をまとめるとだ。喫茶店『翠屋』を経営する高町家の父親が意識不明で入院中であり、家族と居候は大慌て。なのはの父親はボディーガードをしており、その護衛対象が『フィアッセ』という少女だった。父親の大怪我の原因だと思ったフィアッセをなのはは責め、泣いて謝るフィアッセをみて家を飛び出して公園まで走った。それから募る罪悪感で押し潰されそうになり泣いてしまっていた。そんなところか。

 

“いい子じゃない”

 

 ネミッサに同意である。またもや何かを呟いている優はよくわからんが、なのはの頭を撫でてやる。子供はこうされると安心するのだ。俺の実体験だから間違いない。涙目のなのはが『やめてやめて』というが無視する。ちょっと怒りを込めて撫で回してやろう。

 

「なのは。わかってるだろ? ごめんなさいしないといけないな。そのお姉さん。フィアッセさんにさ」

 

「それはっ……。うん。ごめんなさい」

 

「俺にじゃないだろ。なのははフィアッセさんが嫌いなのか? 嫌いならごめんなさいしなくてもいいぞ」

 

「嫌いじゃないの。いつもふんわりしてて温かくて。いつも笑って優しくて。なのはのお姉さんで。……でも。でも。なのはを嫌いになってるかもしれなくて。なのはが悪くて。──それで。それでなのはが悪い子だから。ごめんなさいしても」

 

“泣かしちゃったわね、シン?”

 

“楽しそうにいわない。どうすっかねぇ”

 

 なのはの流した涙を舐めたパスカルを抱き締めている姿はどこか微笑ましい。優の後ずさりする音で気づいた。振り返れば美少女がいる。しかもだ。二人もいるじゃないか。

 

「お姉ちゃん。フィアッセお姉さんも……」

 

「こんなエピソードは……」

 

 なのはのパスカルを抱く力が増しているようにみえた。優はよくわからん。

 

“怯えてるのね。シン?”

 

“わかってる。アホ毛の美少女に文学系美少女だからな。いや、ネミッサも可愛いから心配するなよ。等しく愛でるから”

 

“ちょっと死んでくれない? ちゃんとリカームしてあげるから。……ほら、シン。バカいってないで早くしなさい。空気が死んでるわよ”

 

“了解した。これから悪い空気を駆逐する”

 

 蘇生魔法は勘弁だからな。死ぬってのは死ぬほど痛いのである。マジ勘弁。

 

「……なのは。心配したんだよ?」

 

「お姉ちゃん。なのはが悪いの」

 

「なのはちゃん。私が悪いから……」

 

「なにがどうなってるッ」

 

「はいはい、優。お姉さん達も落ち着け。なのはもだぞ。なのははフィアッセさんとやらにごめんなさいするんだろ? アホ毛のお姉さんがフィアッセさんだとして、そちらの眼鏡のお姉さんは?」

 

「アホ毛? アホ毛って……」

 

「あ、うん。私は高町美由希。なのはのお姉ちゃんです。そういう君はどこの子なのかな?」

 

 ちょっと怒った顔もプリティ。

 

「どもども。俺は間薙真。こっちはパスカル。ほらほら、なのは。ごめんなさいしてこい。フィアッセさんも聴いてあげて」

 

 なのはからパスカルを返してもらい、なのはの背中を軽く押す。戸惑いながらも頷いたなのはを急かすように手を振る俺をみた優が遠い目をしている。優は本当にわからんなあ。

 

「あ。うん。……フィアッセ、お姉さん? 嫌なこといってごめんなさいっ。フィアッセお姉さんのせいじゃないって、わかってるの。でも、お父さんが起きなくて。それで。それで」

 

「なのはちゃん」

 

「フィアッセお姉さんは温かくて優しくて、笑ってるのが大好きなんだけど。なのはが悪いことしたから嫌いになると思って。それで、走って公園にきたらパーちゃんと真くんがいて、なのはがごめんなさいしないと、フィアッセお姉さんが」

 

「なのは……。お姉ちゃんはわかったよ? なのはは悪くない。フィアッセ?」

 

「ごめんね。ごめんね、なのはちゃん」

 

 美少女と幼女が抱き合う姿をみてネミッサに“イイハナシダナー”といえば、“死んでくれる?”といわれて焦った。呪殺魔法はマジ勘弁だ。ネミッサはすぐに殺そうとするから困る。いくらリカームで蘇生できるからといって、修行や実戦でもないのに死ぬのは嫌です。

 

「……それで、君は?」

 

「えっ、えっと。そのぅ。なんというか」

 

 美由希さんと優が話し合っているが、少しずつ距離をとる優は何かを誤魔化している。追及されるとまずいことでもあるんですかね。視線をオッサン達に向ければ頷かれたので、優の手助けも兼ねて美由希さんにひと声かけてから行こう。

 

「あ、うん。わかった。戻ってくるんだよね? 君にも話があるから」

 

「りょーかい、了解。ちゃんと戻ってくるから、ちょっと待ってて」

 

「今のうちに……」

 

「ちょっと? 話は終わってないからね」

 

 言い争う声を背にしてオッサン達のところへ行き、聞いた事情を説明したら葛葉のオッサンがなのはの父親を知っていた。なんでも、裏家業繋がりらしい。

 

「怪しい……」

 

「こっちはオカルト関係。あっちは対人関係だ。少しぐらい被るのさ。……にしても、怪我ねぇ。胡散臭ぇな。リスティなら表の面識があったはずだ。スプーキー」

 

「電話します」

 

「非番をこき使うとか、鬼か」

 

 スプーキーのオッサンが電話をかけたのをみてぼやいてしまった。葛葉のオッサンがニヤついた顔で肩を掴んでくる。まだまだ腕力では勝てない。それなりに痛いからやめてほしい。

 

「なんだ坊主。ただの悪魔使いだと返してほしいのか? お前もお仲間だろ?」

 

「そっちとは事情が違うの。これだからライドウはと返してやる」

 

 小声でやりあっていたら、スプーキーのオッサンから仲裁が入った。詳しい情報はないとのこと。舌打ちする葛葉のオッサンの脛に蹴りをいれてから、チョコレートを奪い取ってなのは達のところへ走る。『おいこらっ、真っ』なんて聞こえないったら、聞こえない。

 

“チョコは忘れてなかったのね。ああ、痛そう。いい気味だわ”

 

“本当に葛葉のオッサンが嫌いだよな、ネミッサは。それより、ちゃんとやったか?”

 

“バッチリよ。キックに合わせてジオをくれてやったわ。少しは痺れたんじゃない?”

 

 ネミッサがいい仕事をしたから褒めておく。あとでチョコレートを分けてやろうと思っていたら、車椅子に乗る金髪の子供と目があった。老婆に車椅子を押されながら近づいてくる。ふと周囲を見渡せば、時が停止している?

 

『間薙真。踏み台をする約束だ』

 

「やっぱり閣下?」

 

『美少女に嫁というんだ。やらなければ勾玉を呑んでもらう』

 

「わかりました、閣下。いってきます!」

 

 車椅子に座る閣下に敬礼をしたら時が戻り、閣下はいなくなっていた。ネミッサの訝しげな呼び声に返さず、なのは達のところへ到着する。深呼吸をして声を張り上げよう。

 

「美由希さん! フィアッセさん!」

 

「えっと、君はどうしたのかな?」

 

「……えっ、えっと? 確か、真くん?」

 

「嫁になってくださいっ!」

 

 どうだ、閣下。いってやったぞ。

 

“空気が死んだわ。ねぇ、シン。ハピルマでも撃たれたの? それともマリンカリン?”

 

 あれ? 閣下が“勾玉の刑”だと念話を飛ばしてきたんだが、何か間違えたの? ここにいる美少女は美由希さんとフィアッセさんだけで、ネミッサは美女だし、なのはは幼女だから──。

 

 




登場人物/作品。
葛葉ライドウ『デビルサマナーシリーズ』
フィアッセ・クリステラ『とらハ』

#02 登場魔法。
女神転生シリーズより。

蘇生魔法『リカーム』
 相手を瀕死状態から回復する。

呪殺魔法『死んでくれる?』
 複数の相手をほぼ100%の確率で即死にする。

電撃魔法『ジオ』
 相手を小威力の電撃で感電させる。

精神魔法『ハピルマ』
 相手を幸福な状態にする。

神経魔法『マリンカリン』
 相手を誘惑、または混乱にする。

#01 登場魔法。
デビルサマナーシリーズより。

魔力魔法『シャッフラー』
 複数の相手をカードの状態にする。

補足。
 状態異常の『CARD』になると火炎系に弱くなり、物理系に耐性がつく。相手を『CARD』にして燃やす、その一連の行動を『キョウジスペシャル』ともいう。

登場道具。
#01 GANP『デビルサマナーシリーズ』
#02 勾玉『真・女神転生Ⅲ』

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