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14件の感想……ありがたや。
デビルサマナー、高町恭也!?
なんでだろう。勝てる気がしない。
臨死体験をした優の混乱をなだめていたら恭也さんに連れられたなのはも合流し、アリスとお友達になったら殺される説明に苦労した。軽く泣きたい。特になのはの説得に時間を取られ、恭也さんがいなければ悪夢でしかなかった。なんとか理解を得られた今は安堵している。
「スティーブンが頼むから親切心で呼びに来たのに……。アリスはどうしてこう、アリスなのしから」
「もうっ。聞いてるのっ、アリス! お家で殺したらメッていったでしょ!」
「家以外ならいいのか……」
「お兄ちゃん。昨日の妖精さんだよ? 幽霊さんもいるの」
アリスは今、ローウェルとピクシーから説教をうけて泣いている。父親から『真の護衛だよ』と譲り受けたピクシーは、葛葉に連なる悪魔だ。あの小さな身体でメギドラオンを連発できる強大な悪魔なのである。さすがのアリスも間薙家最強を競うピクシー、お友達のローウェルには逆らえず逃げ出した。ひと仕事おえたピクシーが俺の肩に乗る。
「お疲れ様。魔石だ」
「疲れた……。ありがとー」
「アリスを探しに行くけど、スティーブンが呼んでたからね? わかってるだろうけど、ちゃんと行くのよ?」
「おう。頼んだわ、ローウェル」
消えるローウェルを見送りながらピクシーを労う俺をじっとみるなのは、苦笑する恭也さんの隣で床に両手をつけて落ち込む優がいる。優のデバイスの『ピアス』はインテリジェントであり、使い魔と共に──名前は『リニス』だそうだ──ミッドチルダ式の魔導師として鍛えていた。優の努力は『悲劇的なエピソードを回避した未来』が目標らしく、魔導師としての力量と自信をアリスに砕かれてしまっていた。
ちなみに。臨死体験でカロンに会った優は『また間薙家か。どんまい』と蹴り返されたらしい。きっと財布をスってる。間薙家の関係者にカロンは冷たいのだ。
「すまないリニス。僕は弱い……」
「マスター……」
優の頭に乗る山猫が使い魔のリニスで、臨死体験で切れた契約のパスに焦ってやって来ていた。俺の母親に従う天使──雑用係──エンジェルに捕獲され、事情を説明されたうえでここにいる。使い魔のパスを再契約したとはいえ、また殺されては堪らないのだろう。優の頭にしがみついて離れない。
「お兄ちゃん。なのはも何か乗せたい……」
「今度な。……すまないが、俺の話を聞いてくれるか。頼みがあるんだ」
「優はさっさと切り替えろよ。……力になれるかはわかりませんが、恭也さんの話を聞きますので。まずは椅子に座って落ち着きませんか? 立ち話ですみそうにありませんし」
「そうだな。少しは落ち着くか。新田くんも席についたらどうだ? なのはもな。──それでだな真くん。頼みがある」
恭也さんの頼みは悪魔使いになる手段の入手であった。なのはの安全を確保するうえで必要な知識だと判断し、恭也さんが修得している剣術を実践する機会も得られる一石二鳥だとか。恭也さんの脳みそは筋肉で出来ているな。渋る俺に剣術指南を対価にする強かさがある恭也さんの頼みは正直にいうと美味しい。マタドールのクソ野郎に殺り返すチャンスにもなる。
「わかりました。高町恭也さん。あなたの依頼は受けます」
「ありがたい。よろしく頼む。……それにしても、仁さんの助言通りだったな」
恭也さんと握手を交わす。恭也さんは先に父親に頼んでいたらしく、ヤタガラス関連で多忙の父親から俺にたらい回しにされていた。その際に俺が受け入れやすいよう、いくつかの助言を貰っていたそうだ。俺が剣の扱いで悩んでいるのを聞いていた恭也さんは実践的な組手を予定しており、美由希さんの参加で釣ろうと思っていたとか。
「ありがとうございます。ぜひ、美由希さんの参加でお願いします」
「才能なら俺よりも上だからな。あまり舐めるとやられるぞ?」
「なにそれ怖い。……まあ、わかりました。ちょいと付き合ってください。ちょうどいいのが来ているので相談しに行きましょう。ほら、優。いい加減に切り替えろ」
「……わかっている」
「それじゃ、向かいますか。おやすみ、相棒。ピクシーはそのままでいいからな」
『OK BUDDY.GOOD NIGHT』
いつものショタスタイルに切り替わる。待たせている中島さんと検証室で合流して事情を説明したらニヤリと笑われた。嫌な笑みだなあ。
「──ふむ。なるほど、なるほど。では、対価をいただこう。……真くんからね」
「うげ。聞きましょう」
優のピアスの改良、恭也さんには簡易COMPの提供、なのはの魔力を偽装処置するためのデバイス等々。諸々の支払いを俺がすることになったわけだが──。
「──しかしだ。年長者でもある俺が支払わないというのはな」
恭也さんが渋るものの、悪魔関連の代金はマッカやマグネタイトが基本であるため、デビルサマナーではない恭也さんには支払えない。そう説得すれば『必ずだ。なのはの分と合わせて必ず返す』と肩を掴まれた。正直、痛かったです。『僕は』とかいった優? 搾り取るから安心してくれ。
「サマリカーム分もな!」
「……そっちもあったか。ミッドチルダのお金なら多少は出せるから僕も。あれ? 財布がない。なんでだ?」
マッカは魔王の側近、ルキフグスが製造しており、悪魔全般が利用している金銭になる。マグネタイトはそもそも外付けの端末で保存するのが基本で──普通のデビルサマナーならCOMP、俺ならデバイス──その貯蓄分を悪魔に捧げるのだ。間違えても、自身の内にあるマグネタイトを削るものではない。それは寿命を削る行為になる。もちろん、何事にも例外はあるが今は触れない。
「──手持ちマッカの半分とレギオンをいただこうかな。ちょうど欲しがっているひとがいてね。悪魔トレードになる」
「また分捕るなあ。……相手はなにを?」
悪魔トレードは第三者を挟んで行われ、所持する悪魔を取引によって入れ換える行為だ。これは安全対策の一環になる。サマナーの実力以上の悪魔を手に入れてしまえば殺されるとわかっていても、偶然を重ねに重ねて入手する場合はある。また、所持していた悪魔が自身よりも成長し過ぎてしまい、手に終えないなどの問題もあるわけだ。だからこそ、安全に手放す手段を求められ、生まれた制度になる。他にも、緊急性の高い、突発的な問題の対処に必要な悪魔を探す手段にも使われている。さて。今回の事情は?
「とあるデビルサマナーが悪魔を三体も手放すそうだよ。妖精のハイピクシー。地霊のカハク。凶鳥のモーショボーだね。主力がいなくなるからレギオンだそうだ。バックベアードにでも出会ったのかな。レベル的に釣り合わないから妖精のナジャを僕からも出そう」
ロリコンが多いなあ。
「出会ったんでしょうねぇ。……わかりました。受けますので、手続きをお願いしても? ところで中島さん。ナジャを持っていたんですね?」
目を逸らした!
「なんでも、レギオンとリャナンシーをトレードするらしいよ。……さてと。任されたよ。それなりに時間はかかるから、一階でお茶でも飲んでいてくれ。二杯も飲めばおわるだろう」
ごまかすのは下手だけど、相変わらず仕事は速いなあ。超人を越えたんじゃなかろうか。
「りょーかい、了解。あ、あと。恭也さんのCOMPに地霊のカハクを、優には妖精のハイピクシーをお願いします。扱いが難しい残り二体は俺が引き受けますので」
「わかったよ。そうなると、あの調整も必要になるね。……大丈夫だ。任せてくれ」
「お任せします。マッカも?」
「ああ。七割いただいておくよ」
くっ。仕返しだな。仕方ないので頷いておく。俺と優のデバイスを渡せば、早速といわんばかりに車椅子を華麗に操作していなくなる。やましいことでもあったんですかねぇ。
「真くん? どうしたの?」
「うん? ピクシー、先導を頼む。一階のリビングだ。なのは。ピクシーを捕まえられるかな?」
「む? やるの!」
「はーい! こっちこっちー」
飛び回るピクシーを追うなのは、を、見守る視線を送る研究員達にひと睨みしてやる。慌てて仕事を再開したのでタメ息を吐いてから恭也さんと優に声をかけた。
「ああ、そうだな。俺達も行こうか。……それにしても、やけに手馴れていたが、先ほどのアリスか? 彼女とも、遊んだりするのか?」
「ええ。退屈になると殺しに来るので」
「僕は間薙家が、幼女が苦手になりそうだよ。そろそろ急がないか? なのはが部屋を出た」
「だな。案内します。こちらへ」
間薙家のリビングは広く、ちょっとした会議すら可能なほどだ。俺達が着いてみれば雑務をこなすエンジェルの傍らで、アリスを抱きかかえるフィアッセさんがいた。俺と優の驚愕を無視するように、フィアッセさんは漆黒の翼を広げて微笑んでいる。
「フィアッセ……」
「恭也さん。あれは、HGS?」
「らしいわ。真の秘密を知ったフィアッセは、隠したくないそうよ。意外と愛されてるのかしら。フィアッセ。あの子の告白を断った君は口出しする?」
「お母様。背後をとるのはやめてほしい」
「フィアッセ。すまない俺は……」
「でしょうね。君は黙ってなさい。さて、真。女の秘密を聞くのよ。逃げたら殺す。もう遊びではすまないわ。真剣に話し合いなさい。自室に連れていってね」
尻を蹴飛ばすのもだ。やめてほしい。悲痛な顔を浮かべる恭也さんを脇に置き、フィアッセさんの前に進む。こう視線が集まるとやりにくいな。
「えっ、と。……フィアッセさん? どんな話でも聞くからさ。いきなりで驚いたけどね。中々の翼をお持ちでらっしゃる」
フィアッセさんが微かに笑い声をあげ、抱いていたアリスを下ろした。
「うん。いきなりでごめんね? みんなには悪いけど。ちょっとだけ、真くんを借りるね? 千明さん。アリスちゃんを」
「ええ、叱っておくわ。頑張りなさい。……まったく。厄介な女ばかり集まるのは仁に似てきたわ。これでも私の息子よ。大概のことは鼻で笑う根性があるの。自分の力量、限界を知ってるし、足りなければ他人を巻き込んで解決するわ。安心して話しなさい」
「はい。はい。……ありがとうございます」
すでに泣きかけているフィアッセさんの手を取り、一階の自室まで連れていく。俺の自室は狭い。仲魔達と寝るためのキングサイズのベッドが大部分を占領しているのだ。部屋の端にある二人掛けのソファとローテーブルが勉強するスペースになる。幸か不幸か。ソファに座るフィアッセさんの隣に腰を下ろせば、互いに顔を合わせずに話せるのだ。どこかゆったりとした時間。フィアッセさんの体温を感じる距離だから、相手にも伝わるのだろう。
「俺の秘密ですか……」
「うん。悪魔になりかけてて、それを望むひと達がいるんだよね? 真くんは望んでなくて、あくまでも人間であり続けるために頑張ってる。千明さんから無理に聞いたの。怒るなら私にね」
「まあ、秘密っていうほど隠してはいないよ。単純に恥ずかしくてね……。閣下。魔王ルシファーが望むのは制御のきく最強の悪魔。かつていた人造のメシアを真似て魔王が産み出した肉体へ、勾玉との相性が良い魂をおさめる。それが新田優。その実験的な計画を嫌った混沌王が対抗馬に産み出したのは間薙真。俺になるわけで」
閣下は優の成長を促す存在として俺を扱い、人修羅は同族として俺達を意識している。人修羅と似た境遇の俺達はいずれ至る場で神を殺すのだろう。その場に立つまでに閣下がみたいのは新しい悪魔であり、人修羅が知りたいのは新たなコトワリ。俺はそう解釈している。
「うん。そう聞いたの。だからね。私の秘密も聞いてほしいと思って。……私のHGSは、コードナンバー『AS-30』で、保有するフィンは漆黒。名称が『ルシファー』なんだ。変な奇遇だよね? まだ不安定な力で、能力を使えば生命力が失われていくんだ。とっても制御が難しくて、いろいろ悩んでたの。そこに真くんがきた。そして私は知ったの。マグネタイトを」
「生命力がマグネタイト?」
「うん。私はそう思ったの。……わ、私はね。真くんを利用したんだ。千明さんに怒られて気づくようなバカな女なんだよ? 真くんの信頼を裏切るような女なんだ。私はひどい女なんだ」
止めどなく流れる涙。フィアッセさんの腰に手を伸ばして引き寄せ、お互いの体温を交わした。
「うん。バカだね。そんなことは気にしなくていい。治療に目処が立つなら役立てよう。幸いにもお母様は政府関係のパイプが太いからね。難病の治療の情報は欲しいはずだ。マグネタイト関連なら専門家に依頼してみよう。どこかで悪魔の血が混入しているかもしれないから調べてもらうんだよ。そこから芋づる式で対処できるかもしれないね。利用するならここまでしないとバカだよ?」
フィアッセさんのありがとうは、泣きじゃくる声でわからない。俺がお礼ならあとでといえば、全力で泣き声をあげて抱き締めてくる。苦笑したままの俺は、フィアッセさんの頭をなで続けた──。
登場人物/作品。
エンジェル『真・女神転生Ⅳ』
マタドール『真・女神転生Ⅲ』
ハイピクシー『真・女神転生Ⅲ』
カハク『真・女神転生Ⅲ』
モーショボー『デビルサマナー』
バックベアード『真・女神転生Ⅰ』
ナジャ『真・女神転生Ⅱ』
リャナンシー『デビルサマナー』
カロン『女神転生シリーズ』
※古くから「GameOver」の演出で出てくる。手持ちマッカの半分を差し出せばセーブポイントからやり直せた。
登場魔法。
万能属性『メギドラオン』
ロマン。複数の相手に特大のダメージを与える。最大級の使い手になるとダメージが「9,999×2」まで逝く。やはりロマン。
『メギドラオンでございます』
当小説ではペルソナを扱わないんだ……。たぶん。
登場道具。
COMP『女神転生シリーズ』
補足説明?
悪魔トレードは『デビルサバイバー』のデビルオークションを参考にしています。デビサバは周回したけど、『デビサバ2』は一周で飽きた……。サバイバーは? サバイバルは? とか思った。