異世界転生モノは読んだことないけど書きます(*´Д`*) 作:雨宮照
異世界……。
それは少年期、または青年期の男性が最も望む就職先。
異世界には、我々には真似をすることが不可能な文明も発達している。
それに、異世界に転生すると、特殊な能力を神から授けられる。
それを使って、異世界を闇に陥れようとする魔王を倒し、異世界に平和をもたらし、英雄になる。
それが、異世界転生。
ここに、1人の青年がいた。
「異世界転生したいなぁ〜。かっこいい技とか使っちゃってさぁ!」
補足しておくが、彼は1人で喋っているわけではない。
スマートフォンをスピーカーモードにして机に置き、友人と話しているのだ。
彼の名前は韮崎ミチヒコ。
後に異世界に転生する者である。
ミチヒコは、一通り電話が終わると、立ち上がり、忘れ物を取りに高校へ向かった。
自転車に乗って軽快に、交差点を突っ切る。
車の間もうまくすり抜け、無事に高校へ辿り着いた。
教室の前まで来ると、彼は足を止めた。
人影だ。ポケ◯ンではない。
それはきっと彼が想いを寄せる女の子、天堂あむだった。
あむは長い黒髪が特徴的な女の子で、透き通るような肌、透き通るような声、透き通るようなパンt……それは透き通っていてはいけない。
痴女と野獣になってしまうな。
実のところ、ミチヒコはあむに常々、想いを打ち明けようと企んでいた。……企んでいたという表現は、悪いことをしているように聞こえてしまうが、そんなことはない。
ミチヒコはこれを、神が与えた絶好のチャンスだと思い、あむに歩み寄った。
「天堂さん……遅くまで学校に残って勉強? 感心だね」
「あ、ミチヒコくん……。勉強って言えるようなものじゃ、ないの。あのね、私、異世界転生について調べていて……」
「えらい! 立派なものだよ! 俺なんか、異世界転生したいしたいって言ってるけど、異世界のこと何も知らない。そういう天堂さんの真面目なとこ、すごく素敵だと思うよ……」
好きな女の子が自分と同じ夢を持っていたことを知り、テンションが鰻登りのミチヒコは、さらに話しかける。
「天堂さんなら、異世界転生できるよ。一緒に冒険とか、出来たらいいね……」
決まった!
ミチヒコは静かにガッツポーズをする。
しかし、
「それは無理! ……です。」
そこまで口調の弱々しかったあむが、急に強めのアクセントで言った。
ミチヒコは、半べそをかいて項垂れている。
かっこ悪い。
しかし、彼女は続けた。
「ミチヒコくんは、異世界を救おうと考えているでしょ……?」
「あ、あぁ。もちろん。」
じゃあ無理ね、と、あむ。
「私は……魔王になりたい。異世界を邪悪に染めて、私の手の中に、収めたい……。そのために、現在の魔王を倒さなければならないの……ごめんね」
帰り道、ミチヒコは考えた。
目的同じじゃん。
最終目標は違っても、魔王を滅ぼしたい気持ちは同じ。
分かり合えるはずだ。
あむはなんで、魔王になりたいんだろう……。
魔王になって、何をしたいんだろう……。
翌日、ミチヒコの朝は早かった。
と、いうか徹夜をしただけである。
妹の姫花が作ったハムエッグを平らげると、流れるようにカバンを手に取り、ダッシュで玄関に向かった。
玄関で靴を履いていると、後ろから誰かに肩を叩かれる感触があった。
このぷにぷにの柔らかい手は……。
妹の姫花である。
「はい、兄さん。忘れものだよ」
微かに頬に触れる唇。
ぷっくりとしたその感触は、とろけてしまいそうで、あまくて、あま〜くて。
一生このままでいいんじゃないかとさえ思えてくる。
「行ってくるよ。ありがとう、ひめ」
「兄さん、学校、がんばってね」
妹は手を振って送り出してくれている。
今日こそは、転生してやる。
昨日徹夜をした理由はこれだ。
ミチヒコは転生する儀式を調べ、実践する計画を企てていた。
計画を確認するため、ブツブツと声に出してみる。
すると背後から、よく聴きなれた少女の声があった。
「みっくん、どうしたの? ぶつぶつ言っちゃって」
「ああ、いや、メグこそどうしたんだよ。今日は友達と一緒じゃないのか?」
「うん。今日はみんな部活の朝練があるみたい」
「あれ? メグは大丈夫なのか? 剣道部も大会近かったろ?」
「あぁ、私はいいの。最近は部活にもあんまり顔出してないから、戦力外通告されちゃった♪」
いや、♪じゃないだろ。
行けよ、部活。
「そうだ、メグ。今日の放課後、俺の家に来れるか?」
「? いい……ケド。どしたの? 急に」
メグは困惑している。なんのこっちゃって感じだ。
だが、聡明な読者の方々には理解して頂けただろう。
え? セクハラにしか見えないって?
ゴホン……そう、これこそが彼の作戦なのだ!
異世界転生をするためには、勇者と、5人の少女達が必要なのだ!
儀式では、勇者を中央に。火の女神を北、水の女神を東北東。
大地の女神を南南東、雷の女神を南南西、風の女神を西北西に置く必要がある。
異世界になるには、それ相応のコミュ力が必要なのだ。
……ぼっちに厳しいのはどの世界も同じなのね。
だがしかし!(某漫画ではない)
そんなことはミチヒコにとって、苦でもなんでも無いのだった。
ミチヒコはアホであるにも関わらず、女子の知り合いが結構いる!
メグは丁度火の女神にぴったりな性格。
妹は風の女神によく似合っている。
また、先日声をかけた、あむもこれには賛同してくれるだろう。
他人が異世界に転生してしまうという迷惑を、これっぽっちも考えていない駄目勇者だった。
さぁ。あと3人。
女神を探すとしよう。
異世界転生がそこに待っている!!