「本編の空気、ガン無視な呼び方だね」
「メタい!?」
「作中で、メタをネタにする君ほどじゃないよ」
「……やりにくいわ、こいつ……」
「で、前書きはこれで終わるのかい?」
「だから、メタいっての!!」
「それで、なにか用なのかい?」
「こいつ……。
ま、いいや。
聞いておきたい事があるんだけど」
「なんだい?」
「魔人は、オレ以外にいるか?」
「いないよ」
SIDE 群雲琢磨
「右腕かぁ……なんという戦闘能力ダウン」
自分達を見失い、キョロキョロとしている魔女を遠目に確認し、オレは溜め息を一つ。
痛覚は遮断しているから、後は<
「たく……ま……?」
呆然と、右腕を失ったオレを見るゆま。
「理解したか?
これが、オレ達の生きていく世界だ。
こういった事が、平然と当然に起き得る世界だ」
仕方がないと言えば、それまでではある。戦闘経験の浅すぎるゆまには、この光景はちょいと刺激的過ぎるかもしれない。
だが、仕方がないから死ぬとか、笑えない事をする気もない。
「これが、オレで良かったな。
お前だったら、頭からパックンチョだぞ」
ゆまの
そう言う意味では、オレの右腕だった事は、決して不幸な事だとも言い切れない。
「さて、どうするか……」
止血を終えたオレは、魔女へと視線を向ける。相変わらず、こちらの位置は把握出来てないらしい。
あの魔女、かなり速い。最初から迎撃体勢ならともかく、それ以外の状態では、どうしても大振りになるゆまでは、相性が良いとは思えない。ゆま自身の経験不足も、それを加速させる。
かといって、オレとの相性も良くはない。弾丸が弾かれた以上、これ以上の使用は無駄。かと言って下手に攻撃をしても、脱皮してしまう。
そうなると、日本刀やナイフで切り裂くのが、有効そうでもあるが……右腕が無い以上、それを試すのも難しいし、通用しなければ喰われて終わり。
あれ? 詰んでね?
「先輩達が気付いていないとも思えない。
なら、到着まで時間を稼ぐのが得策か?」
オレは見滝原の
なら、オレがすべき事は“後に繋げる事”だ。先ほどのゆまじゃないが、バトンを渡せればいい。
「ゆまはここで、先輩達を待ってろ」
言いながら、オレは再び<
「ま、まって」
ゆまの言葉に、オレは首を振る。
「いいか、ゆま。
重要なのは魔女を倒す事以上に“オレ達が生き残る事”だ。
先輩達は、間違いなくここに向かっているだろう。
辿り着いた先輩達を、オレ達の死体が出迎えたんじゃ、意味が無い」
なら、どうするか?
簡単な事だ。どちらかが囮になって、時間を稼げばいい。
では、どちらがなるか?
答えは決まりきってる。
「そして、先輩達が来たとしても“勝てるとは限らない”のが、魔女との戦いだ。
なら、先行しているオレ達に何が出来る?」
判断を誤る。それは仕方がない事。すべての事象に、答えが用意されている訳じゃない。
それを知るのは往々にして、終わってからの事。
では、どう判断するか?
「少しでも、魔女の情報を得て、後に繋ぐ。
なら、戦う者と観察する者に分かれるのが妥当」
<
まあ、やってる事は巴先輩と二人だった時と、対して違いは無い。
「そして、ここが結界内である以上、先輩達がここに辿り着いた時。
無傷である保証も無い。
なら、魔女を相手取るべきは誰だ?
先輩達を、迎えるべきは誰だ?」
オレには、他人“だけ”を対象にした魔法は使えない。
時間停止ですら“自分が動く”事を大前提としている。
そう言う意味では、オレが最も“非協力的”だと言える。
対して、ゆまの本質は違う。オレとは真逆だと言える。
四肢切断を、一瞬で治すほどの強力な治療魔法。
ハンマーと、そこから発生する衝撃波。
ゆまの魔法特性は、おそらくは『守護』だ。
強力な治癒能力と、襲い来る危険を遠ざける為の衝撃波。
守る事に特化していると言っていい。
故に、オレとの相性は最悪だと言える。
自分に特化したオレと、自分以外に特化したゆま。
さて、先輩達が来るのなら、万全の状態で残るべきはどちらか?
「バトンを持ち、渡すのはゆまの役割。
なら、バトンを取られないように立ち回るのが、オレの役割だ」
だったら、オレの治療は後回しにするのが妥当だろう。
オレを治療した結果、先輩達の治療が出来ないのでは意味が無い。
「魔女を観察して、それを伝えるのがゆまの役割。
魔女と戦い、疲弊させるのがオレの役割だ」
そしてオレは、口の端を持ち上げながら言った。
「大好きなキョーコの為に、大嫌いなたくまを利用してみせな」
SIDE 呉キリカ
一仕事終えた私は、遠くからそれを見ていた。
緑の服を着た、白髪の少年。織莉子の言っていた
一緒にいるのは、緑を基本とした、猫を連想させる服装の魔法少女。
『絶対に逃げなさい』
織莉子はそう言っていた。私が彼女の指示を守らない理由は無い。
でも、魔女に右腕を食い千切られる程度の魔人に、なぜ織莉子はあそこまで警戒するのか?
「私の魔法なら、逃げるのは楽。
織莉子の指示がある以上、戦わないのは、うん、当然のこと」
見つかったら、厄介なことにもなる。私の存在から、織莉子まで辿り着かれるのだけは、絶対に避けないといけない。
「見つからない程度に、うん」
私が魔女結界を去るのは、もう少し後になりそうだ。
次回予告
弱肉強食
この星のルール 生命のルール
食物連鎖
生命のルール 生命のレール
魔女と魔法少女
九十五章 天敵