無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「群雲君の魔法講座第一回『炸裂電磁銃』パート1!
 ぱちぱちぱち~」
「……なんか始まったぞ、おい……」
「最初のゲスト(犠牲者)は、佐倉先輩です」
「……突っ込まないぞ」
「まあ、前書きで長々と引っ張っても無意味だし、サクッといきましょう」
「で、なにをするんだよ?」
「群雲版ティロ・フィナーレの説明会。
 いかにして、オレが、オレだけのティロ・フィナーレに至ったかを説明しようかと。
 まずは、オレの扱う電磁砲(Railgun)について」
「あたし、いるか?」
「聞き手は必要よ?
 まあ説明を開始しますが、オレの電磁砲(Railgun)は“魔力を纏わせた弾丸を投げる”のが最初だった」
「投げたのかよ」
「ピッチャーのように、振りかぶって投げてました。
 それでも、通常の射撃より速いあたり、魔法ってすごいよね。
 で、頑張った結果、魔力を纏わせる=準備(チャージ)した弾丸を指で弾く事で、同等の弾速になるまでになりました。
 ある意味、完成したと言えます」
「じゃあ、普通の拳銃いらないんじゃ?」
準備(チャージ)が必要だから、攻撃速度と言う点では、普通に銃を使った方が速かったりする。
 で、ある日、群雲君は考えました」
「なにを?」
「ショットガンで使う散弾を電磁砲(Railgun)で使えば、広範囲がカバー出来るのでは?」
「ふむ……」
「で、試しに準備(チャージ)した結果。
 手元で散弾が電磁化して破裂。
 オレが大惨事」
「……よく生きてたな、おい……」
「魔人だからね。
 流石に自分で自分を蜂の巣にするとは、夢ぐらいでしか考えてなかった」
「そりゃそう……いや、ちょっと待てお前」
「で、頑張って電磁砲(Railgun)のように、魔力を纏わせるのに最適な量を模索した結果」
「結果?」
「魔力を込める+何かしらの衝撃で、炸裂するようになった」
「……それって」
「うん、ぶっちゃけ手榴弾あたりを投げてた方がまし」
「だめじゃねぇかよ」
「で、次回に続きます」
「続けるのかよ、これ!?
 てか、充分なげぇよ!!」


九十七章 それ以外要らない

SIDE 巴マミ

 

 2人のティロ・フィナーレが、魔女を撃ち抜き。

 起きる爆発が、命中を証明し。

 私達の勝利を、確定させる。

 

「流石の威力ね、琢磨く」

 

 振り返った私の視界に。

 

 琢磨君はいなかった。

 ……?

 

 辺りを見回した私は。

 ケーキみたいな壁に、垂直に頭から刺さっている琢磨君を見つけた。

 ……なにしてるの?

 

 作戦が成功し、喜んでいるゆまちゃんと、仕方なく、でも嬉しそうに頭を撫でる佐倉さんを尻目に、私は琢磨君の元へ。

 

「む~! むむぅ~!!」

 

 じたばたともがいている琢磨君の足を掴んで、勢い良く引っ張り出す。

 

「ぶはぁ!!

 いや~、焦った!」

「なにしてるのよ?」

 

 呆れる私に、琢磨君は頬を掻きながら言った。

 

「反動、考えてなかった」

 

 ……ぇー。

 

 

 

 

 

SIDE 群雲琢磨

 

 いや~、びっくりした。引き金引いた瞬間、景色がすげぇ勢いで流れていったぜ。

 要改良だな、これは。

 

「魔女は?」

「倒したわ」

 

 オレの質問に、巴先輩が笑顔で答えてくれる。

 そいつは良かった。これで、まだ生きてますって言われたら、もう逃げるしか選択肢がなくなる。

 

「後は、GS(グリーフシード)を回収して、撤収かな」

「そうね。

 勝利の余韻に浸りたいけれど、結界が晴れたら、そうも言っていられないものね」

 

 巴先輩の手を借りて、立ち上がったオレは。

 

 “とんでもないものを見つけてしまった”

 

 勝利の余韻を吹き飛ばし、頭が強制的に冷やされる。

 

「……どうしたの?」

 

 突然、オレの雰囲気が変わった事に、巴先輩が訝しげに声をかけてくる。

 それに対して、オレは冷静に言葉を返す。

 

「刺激の強いモノがある」

 

 いや、でも、ありえるのか?

 そこにある。ありえないわけじゃない。

 

「!?」

 

 巴先輩も見つけたようだ。息を呑む音がする。

 

[佐倉先輩?]

[念話?

 どうしたんだよ?]

[訳は後で話す。

 ゆまをこちらに近づけるな]

 

 念話を送りながら、オレは“ソレ”に近付く。

 見る。電気信号を、脳が受け取る。それを完全に記憶する。

 

「どう?」

()()()()()な」

 

 オレの後ろで、同じモノを見ている巴先輩の言葉に、振り返る事無く答えながら、オレは“記録”を続ける。

 

 だが。

 

「!?」

 

 結界が晴れる。当然だ、魔女がいなくなれば、結界も無くなる。

 当然のように“ソレ”も、結界と共に消えていく。

 

 そして、オレ達は病院の駐輪場に戻ってきた。

 

「……巴先輩」

 

 オレは、変身を解除して。

 

「いってぇ~!!」

 

 右側からの激痛に蹲った。そうだ、右腕が無いんだった。

 慌てて<電気操作(Electrical Communication)>で痛覚を遮断。

 くそぅ、未変身状態じゃ、完全に消せないでやんの。

 

「だ、大丈夫!?」

 

 慌てる巴先輩と、近付いてくる残りの2人を視界に捕らえながら、オレはそれでも、口の端を持ち上げながら告げた。

 

「勝利の余韻に浸る前に、考えるべき事が出来たみたいだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 呉キリカ

 

 あ~、びっくりした。

 銃を撃った殲滅屍(ウィキッドデリート)が、こっちに飛んでくるとは思わなかった。

 見つかってはいない筈。うん、頭から壁に突っ込んだし。

 でも。

 

「見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)か……。

 織莉子に言っておかないと」

 

 織莉子は、殲滅屍(ウィキッドデリート)を警戒してる。私に逃げろと言うほどに。

 でも、それほど危険な存在なのかな? 魔女に右腕を食い千切られちゃう様な子だよ?

 

「まずは、織莉子に会おう。

 うん、織莉子に会わなきゃ」

 

 織莉子が指示を出してくれれば良い。私はそれを、完璧に、忠実に。

 それでいい。それ以外要らない。

 私の世界に、私と織莉子以外は要らない。

 だから私は、無限に尽くす。美国織莉子に、無限に尽くす。

 それでいい。それ以外要らない。

 

「きっと、織莉子が待ってる。

 うん、会いに行かなきゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 美国織莉子

 

 私は、未来を観る。それが、私の得た力。

 私は、絶望の未来を知る。それが、私の得た力。

 なら、私はどうするの? それが、私の生きる意味。

 

「何度、観ても変わらないわね……」

 

 魔女は、魔法少女の成れの果て。

 ならば、見滝原から始まる滅亡。それを行う魔女が“魔女になる前に”殺す事が出来るなら。

 世界は、最悪を回避出来る。

 

 何度も観た、世界の終焉。始まるのは見滝原。

 そう。

 

 

 

 

 

 “始まるのは、見滝原”

 

 

 

 

 

 終焉を告げる、最悪の魔女。何故、見滝原から始まるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【見滝原で、生まれたから】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なら、私が行うべきは、なに?

 見滝原から、あの魔女が生まれた。あの魔女は、見滝原で生まれた。

 

 

 

 

 

 

 すなわち“見滝原の魔法少女が、あの魔女の原型”なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は未来を観る。それが、私の力。

 

 崩壊する見滝原。瓦礫の山。終末の風景。

 

 

 

 

 

 そこにいるのは、白い悪魔。魔法少女を産む元凶。

 

 そこにいるのは、黒髪の少女。膝を突いて俯く、魔法少女。

 

 そこにいるのは、白髪の少年。終焉で嗤う、独りの魔人。

 

「群雲琢磨……。

 それが、殲滅屍(ウィキッドデリート)の名前……!!」

 

 見滝原の魔法少女が“アレ”である可能性が高い。だから私は、キリカにお願いして“見滝原に存在する魔法少女を狙ってもらう”事にした。

 

 見滝原の魔法少女。

 

 その筆頭こそが、群雲琢磨の現在地。

 

 

 

 

 

 

 見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)

 

 

 

 

 

 

 見滝原で活動する魔女狩りチーム。トップレベルの実力者。人々の為に魔女を狩る者と、共にあるのは現状唯一の魔人。

 

 群雲琢磨の存在だけなら、容易に掴む事が出来た。

 唯一存在する、少女じゃない契約者。

 有名になるように“先導していた”のだから、当然なのだけれど。

 

「自分が、少女(ほか)とは違う事を理解している。

 その上で、その事実を利用してみせる、(したた)かな少年」

 

 そして、私の観た未来。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界の終焉で嗤う、殲滅する屍

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさに“魔法少女を削除する者(ウィキッドデリート)”ね」

 

 世界に終焉を告げるモノ。

 世界の終焉で嗤うモノ。

 

 どちらも認めない。両方を排除する!

 

 そして、私は力を使う。願いで得た能力で、未来を観る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の観た未来で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、殺人を成し遂げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

物語が動き出す 絶望に向けて

物語が動き出す 終焉に向けて

物語が動き出す 閉幕へ向かって




命の終わりが、始まりを告げる

必要なのは、情報の分析 事実の認識 異物の排斥

必要なのは――――――――――












九十八章 正座

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