無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「群雲君の魔法講座第一回『炸裂電磁銃』パート2!
 ぱちぱちぱち~」
「……」
「今回のゲスト(犠牲者)は、ゆまです」
「……罰ゲーム?」
「良くご存知で」
「ぇー」
「まあ、さくさくいきましょう。
 弾丸を使用した電磁砲(Railgun)がある程度形になった群雲君は、ある日、疑問に思いました。
 “銃本体を準備(チャージ)したらどうなるのだろう?”
 思い立ったの祝日! さっそく試してみよう!」
「ゆまでも、なにかがまちがってるってわかるよ」
「オレだからね。
 で、試しました、最初はリボルバー」
「どうなったの?」
電磁砲(Railgun)六連射!」
「おぉ~!」
「……準備(チャージ)に時間が掛かりすぎます。
 具体的には、電磁砲(Railgun)1発分の12倍ぐらい」
「おぉ~?」
「加えて、オレのリボルバーは、構造上弾込めに時間が掛かります。
 詳しくは幕間を読め!」
「メタい……って言えばいいの?」
「それがゲストの役割です。
 で、次に両腋にある自動拳銃(オートマ)で挑戦。
 さて、ゆまちゃんや、オートマチック拳銃の簡単な構造は知ってる」
「知らないよ」
「チッ……詳しくは調べてもらうのが手っ取り早いけど。
 簡単に言うなら、弾倉を装着して、遊底(スライド)を引いて最初の弾薬を薬室(チェンバー)に送り、引き金を引く。
 反動で遊底が引かれて、空になった薬莢を排出。
 元に戻る際に次の弾丸が弾倉から薬室へ。
 以下、弾切れまで繰り返し」
「ふ~ん」
「で、充電した状態で弾倉を装着して、遊底を引いたら」
「引いたら」
「本来、空薬莢が出る所から、全弾電磁砲(Railgun)化して飛んでった。
 まさに、ポポポポ~ン」
「危なくないの?」
「危ないよ。
 それ以上に、呆然としたけど。
 なので、オートマじゃ使えないと判断。
 さて、ここまで来て、群雲琢磨は仮定を仮定する」
「仮定しかしてない」
「水平二連式ショットガンを準備(チャージ)した場合どうなるか?
 多分、銃内部で散弾が電磁砲(Railgun)化して弾ける」
「あぶないよ、ぜったい!?」
「うん、挑戦する勇気は無い」
「……えっと……つまり?」
「銃本体を準備(チャージ)すること自体が、危険だと判断。
 計画は頓挫しました」
「たくま、ばかなの?」
「失敬な! 否定はしないけども!!」
「しないんだ……」
「次回に続く!」
「またっ!?」


九十八章 正座

SIDE 佐倉杏子

 

「腕が治ったよ! やったねゆまちゃん!!」

「うざい!」

「ぱわっ!!」

 

 マミの住むマンションの一室。そんな言い方も成立しない。

 あたしもゆまも琢磨も。ここで生活している。

 でも、あたし達の家なんて言う気になれない。

 

「右腕が治って、良かったわね、琢磨君」

「そうだね!!

 テンション上がったね!!!!

 だから、このまま、ぱ~て~でもしませんか?」

「そこにぃ!!!

 正座ぁぁぁぁ!!!!」

「hai!!!」

 

 やばい、マミがガチでキレてる!?

 

「言いたい事は、色々あるのよ?

 えぇ、数え切れないほど、あるのよ?

 解ってるわよねぇ、たくまくぅ~ん?」

「ゆまとの仲の話ですか?」

「NoNoNo!」

「巴先輩に黙って、夜中に抜け出した事ですか?」

「NoNoNo!」

「も……もしかして……両方ですかぁ~!?」

「YesYesYes!]

 

 ゴメン、ノリが解らない……。

 

「佐倉先輩が、ガチで引いている……!?

 これって、かなりレアな状況じゃ」

「琢磨君はぁ!!

 セイザァァァ!!」

「Yes,Ma'am!」

「いい気味」

「……ゆま……。

 まあ、解らなくもないけど」

「味方がいない事実に、全オレが泣いた!

 オレ、独りだけども!!」

「ゆまちゃんもぉ!!

 正座あぁぁぁぁ!!」

「えええぇぇぇぇ!?」

「いや、日も落ちてる訳だし、少し落ち着けよ、マミ」

「貴方達の仲が険悪なのは知っているわ。

 でも、私達は」

「既に、始まってる!?」

 

 マミがここまで感情的になるのって、本気で珍しい。

 あたしの中のマミは、強くて頼りになる、憧れの先輩。

 あたしの家族の件で、喧嘩別れした後。代わりの相棒を見つけられてたらいいな。そんな風に考えていたけど。

 その立場に、今、立っているのは一人の少年。自分の事しか考えない魔人。

 がっかりした。それは素直な感想。安心した。それも素直な感想。

 

 “こいつがマミと一緒にいていいなら、あたしも?”

 

 もちろん、ゆまの事もある。どちらかと言えば、そちらの理由のほうが大きい。

 でも、マミよりもあたしの考えに近い琢磨が、見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)として、マミと一緒にいる事実。

 あたし以上に、自分の為に生きている琢磨が、マミの相棒である現実。

 

 思ってしまったんだ。戻りたいと。

 考えてしまったんだ。帰りたいと。

 

「そもそも、どうして琢磨君は自分の事しか考えないのっ?

 君の魔法が、どれだけの人を救っているか。

 君の魔法で、私がどれだけ助けられたか。

 理解できない訳じゃないでしょっ!」

「それって、結果論じゃない?

 オレ、自分の為以外に魔法を使った事ないよ?

 自分以外を対象にした魔法って、オレは使えないし」

「口答えしないっ!!」

「理不尽だ!?」

 

 思えば、あたしはいつだって自分の為だった。

 家族が健在の時ですら。自分の都合でマミに押し掛けてた気がする。

 マミと別れて、独りになって。自分の情けなさに閉口したものだ。

 

「ゆまちゃんも、どうして琢磨君と仲良く出来ないのっ?

 私達は、皆で魔女を倒す。

 その為に手を取り合っているんでしょ?」

「でも、たくまはゆまの事、役立たずって言った!」

「だからって、そのままで良い筈がないわ。

 実際、琢磨君はゆまちゃんの事を考えに含めた上で、動いていた。

 でなきゃ、一緒にパトロールをする事が、まずありえない事でしょう?」

「いや、オレ自身気にしてないし、今言う事でもない気が」

「口答えしないっ!!」

「またっ!?」

 

 マミに対する負い目。ゆまに対する責任。

 そんなあたしの心を、琢磨は平気でかき乱す。

 本人に自覚は無いだろう。自分の為に生きる奴が、そこまで考える筈が無い。

 それは、さっきのマミと琢磨の会話が証明してくれてる。

 

「大体、蒼色のラーメンって何なのよっ!?」

「もう、説教の方向がおかしいよね!?」

「蒼色のラーメン……? スープが蒼?」

「麺は水色だったな」

「貴方達はぁ!!

 正座ぁぁぁ!!」

「「はぁい!」」

 

 ……シリアスなあたしに謝れよ、おまえら……。

 

「わけがわからないよ」

「普通にいるんじゃねぇよ、キュゥべえ」

「琢磨に呼ばれたから来たんだけど」

「……こんな状態でも、真面目に考えてるあたり、何者だよ、あいつ……」

「僕らにとっては、琢磨は“異物”だね」

 

 ……異物?

 

「どうして朝ごはんが紅いトーストなのよ!!」

「解ったら改善してるからっ!

 新しい料理に挑戦する度に、色がおかしくなるオレの身にもなってっ!!」

「ゆまは、関係ない「せいざぁぁぁぁ!!」ふえぇぇぇッ!?」

 

 収拾つかないが……はっきりさせるべき事がある。

 

「蒼色ラーメンの味は?」

「ビビンバの味がしました」

「……紅いトーストは?」

「カレーうどんの味でした」

「てめぇはもう、料理をするんじゃねぇぇぇぇ!!」

「ちなみに、青色麺は、し」

「だまれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE キュゥべえ

 

 魔法少女の遺体。魔女結界の中にあった、考えにくい物体。

 琢磨からの念話で呼び出された僕が見たのは。

 説教するマミと、正座する琢磨とゆま。少し離れて眉間をおさえる杏子。

 うん、想定外だね。

 

「足が痺れているかと思った?

 ざんねん! <電気操作(Electrical Communication)>で動けるんです!」

 

 言いながら、電子タバコを片手にベランダに出た琢磨と、肩で息をする魔法少女達。

 

 うん、わけがわからないよ。

 

「わざわざ僕を呼んでまで、何の話なんだい?」

 

 もちろん、僕は琢磨に問いかける。マミ達は息を切らしているし、琢磨との会話が有意義なのは、これまでの実績から理解しているからね。

 

「魔法少女狩り。

 便宜上、そう呼称するが。

 お前が“知らない筈がない”んだよ」

 

 なるほど。とうとう琢磨達も、その存在に気付いたんだね。

 口から煙を吐き出す琢磨と、それを見つめる僕の視線が交錯する。

 

[余計な情報はいらない]

[魔法少女システムの事かい?]

[魔法少女が魔女になる。

 この“最大の絶望情報”は、今、明かすべきではない。

 切り札は、最も効果的な状況で切らないと、効果半減だぜ?]

[その情報を得た上で、今も生きている琢磨が言うなら、そうなんだろうね]

[それに、オレの見た“魔法少女の屍”は“気付いていない者”によるものだったぞ]

 

 ヒトでありながら、システムを理解した上での対話。それが、どれほど貴重な事か、理解してるのかい?

 

「では、過程を仮定していこうか」

 

 僕らにとって“異物”と呼ぶに相応しい少年は、そう言いながらも、口の端を持ち上げていた。  




次回予告

本題 本質 本意

人であるが故に 人であるからこそ

考える 自身の知恵を持って 答えを探す






その知恵こそが、最初の罪と気付かずに――――――――――














九十九章 魔法少女は、魔法少女に

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