無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「群雲君の略! そのさん!!」
「一気に端折ったわね」
「犠牲者は巴先輩、さくさくいくよ!」
「ルビタグですらないの!?」
「結局、愛用する銃弾に適応する弾丸以外を、無駄にしないように。
 そして、通常射撃以上の弾速と貫通力を求めて。
 完成したのが『電磁砲(Railgun)』です」
準備(チャージ)が必要だから、あまり使わないわよね?」
「ぶっちゃけ電光球弾(plasmabullet)の魔力消費を抑える代わりに、実弾を使用しているようなもの」
「一長一短なのね」
「魔女撃破という点においては、巴先輩の『ティロ・フィナーレ』の方が抜群に上」
「だからこそ、佐倉さん達が来るまでは、私が後で琢磨君が前だったのよね」
「でも、佐倉先輩達が来た時に、群雲君は考えた。
 内容は九十六章を参照」
「メタいわね」
「説明が楽なんだもの。
 で、弾丸の準備(チャージ)を試して、銃本体の準備(チャージ)を試して。
 両方同時を試していない事に気付く」
「あら? 琢磨君ならすぐに試してそうだけど」
「銃本体に成功例が無かったのが、原因だね。
 ギリギリでリボルバーだけど、ぶっちゃけ普通に電磁砲(Railgun)を使った方が効率良かったし」
「で、検証して、実践で試したのね」
「……」
「琢磨君?」
「ぶっつけ本番だったり」
「えぇっ!?」
「リボルバーの場合、電磁化した弾丸を、電磁化して撃ち出す。
 オートマの場合、まず薬室まで弾丸がいかない。
 上記二つは、容易に想像出来るんですよ」
「……確かに」
「残るはショットガン。
 ここで、散弾の特徴を思い出す」
「ショットシェルね」
「詳しくは、各自で調べて。
 解りやすく言うなら、弾丸の中に散弾があるって認識でいいよ。
 前に人がいると使えないから、オレはこれまではスラッグ弾の方しか使ってなかったけど」
「ハンドガン以上の大型弾丸、と認識して貰えればいいわ」
「巴先輩のマスケットはまさにこれだね。
 魔力を使って、リボンが展開出来る様になってるけど」
「マスケットや弾丸自体が、リボンで編み出したものだもの、私の場合」
「魔法パネェ!
 で、話を戻して、群雲君の話。
 要は、大きな弾丸の中に、小さな散弾が入ってる。
 で、弾丸を準備(チャージ)したら“弾丸の中の散弾が電磁化”した。
 銃本体を準備(チャージ)しても、同様の効果になる事も、簡単に想定出来る」
「!!」
「気付いたね。
 なら“銃本体と弾丸の両方を準備(チャージ)”したらどうなるか」
「電磁化した散弾を内包する弾丸が、電磁化して射出される!」
「結果が『炸裂電磁銃』です。
 構造上“何かに着弾した瞬間、内包した散弾が弾ける”事になるので“炸裂” 両方を電磁化するので“電磁銃” 組み合わせて『炸裂電磁銃』という名前にしました。
 掛け声は“ティロ・フィナーレ”だけれども」
「なんで、ティロ・フィナーレなの?」
「元々が『巴先輩のティロ・フィナーレを、オレが使うとしたら?』という所から試行錯誤が始まったから」
「なんか……照れるわね」
「加えて“巴先輩のトドメの代わりを、オレが担うとしたら?”という所からでもあるね。
 まあ、反動を考えてなかったせいで、御覧の有様だけどな!」
「……オチをつけないと、納得しないの?」
「笑って終わりたいだけよ?
 以上、群雲君の魔法講座第一回『炸裂電磁銃』編。
 と、言う名の前書きのネタがなくなった作者の悪足掻きでした!」
「最後の最後で、なに言ってるのっ!?」


九十九章 魔法少女は、魔法少女に

SIDE キュゥべえ

 

 マミのリビング。三角のテーブル。一辺にマミ。一辺に杏子とゆま。

 そこから見えるベランダ。そこに繋がる境界線に僕。

 そして、ベランダで電子タバコを咥える琢磨。

 

「オレと巴先輩が見つけたのは、魔法少女の遺体だ」

 

 優先的に言葉を発して、場を仕切るのは琢磨だ。

 情報分析において、琢磨は異常とも言える能力を発揮する。

 それは、自身の魔法による脳の高速化であり。

 それは、自身の性格による感情の排除であり。

 

「重要なのは、それが“魔女結界内”にあった事だ」

「……悪い、一から説明してくれ」

 

 言葉を続けようとする琢磨に、杏子が口を挟む。

 確かに、僕にも詳しい説明が欲しいね。

 

「……眼鏡が無いんだった」

 

 いつものように、右手中指を顔に向けたところで、琢磨が呟いた。

 そのまま、誤魔化す様に電子タバコを咥えて、一息。

 

「では、過程を説明しよう」

 

 全員が琢磨に視線を向ける中、情報の為に感情を排除した魔人が、言葉を紡いでいく。

 

「孵化直前のGS(グリーフシード)を、オレとゆまが見つけた」

「オレ達の至近距離で孵化し、結界が展開された。

 オレ達が居るのは、当然のように最深部だ。

 実際に魔女もそこにいた」

「その後、魔女と戦っているオレ達と先輩達が合流して、魔女を倒した」

「結界が晴れる直前で、オレ達は魔法少女の遺体を発見した。

 以上だ」

 

 なるほど。琢磨が僕を呼んだ理由が解った。

 

「さて、過程を仮定する為の疑問点その壱。

 “魔法少女は誰に殺された?”

 これを、どう仮定する?」

 

 琢磨の質問に、全員が黙り込む。

 いや、ゆまだけは首を傾げているね。成り立ての上に、琢磨に比べて幼い彼女には、この問題は敷居が高いんだろう。

 琢磨が、異常すぎるとも言えるけれど。

 誰も言葉を発しない中、琢磨が仮定を話し出す。

 

「そこで、群雲琢磨は考える。

 結界の中に遺体があった以上、魔法少女は“結界内で殺された可能性が高い”だろうと。

 仮定として“別の場所で殺された魔法少女を、わざわざ結界内に運んだ”のだとすれば。

 それは“魔法少女を殺した犯人”に他ならない。

 そしてそれが“孵化直後の魔女の使い魔である可能性は極めて低い”だろう。

 加えて“普通の人間に魔法少女を殺せるとも考えにくく、しかも結界内に運ぶ”なんて有り得るとも思えない」

 

 そこまで言って、琢磨は電子タバコで一息つく。マミは真剣な表情で琢磨の言葉を待ち。杏子は驚愕の表情で琢磨を見ている。ゆまは若干眠たそうだ。

 

「では“結界内で殺された”と仮定する。

 それが魔女によるものである可能性は皆無だ。

 オレ達が交戦中だったからな。

 では、使い魔によるものだったのか?」

「ありえないわね」

 

 琢磨が過程を仮定していく中、マミが口を挟み、補足して行く。

 

「魔法少女は“鋭利な刃物で切り刻まれた”ようだったわ。

 佐倉さんと最深部に向かう途中、何体か使い魔と交戦したけれど、そんな攻撃方法を持つ使い魔はいなかったはずよ」

「情報ありがとう、巴先輩。

 使い魔によるものだという仮定を排除できる」

 

 使い魔によるものだった場合も、仮定していたようだね。さすが琢磨だ。

 そしておそらく“それを否定する材料”も仮定していたんだろうね。

 前髪を放電させながら、電子タバコを咥え、煙を吐き出す琢磨。

 

「整理完了。

 仮定を続けよう。

 と言っても、結論は解ってるよな?」

 

 真剣な表情。前髪から覗く黒い左目が、全員を見渡した後、琢磨は告げる。

 

「魔女のものではありえない。

 使い魔のものでもありえない。

 なら、魔法少女は誰に殺されたのか?」

「同じ存在だ。

 魔女にも殺されず。

 使い魔にも殺されず。

 その上で“魔女結界内にある遺体”は、可能性を一つに絞る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法少女は、魔法少女に殺された」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 佐倉杏子

 

 琢磨の言葉に、あたしは言葉を失う。

 魔法少女同士の殺し合い自体は、有り得ない事じゃない。

 GS(グリーフシード)を求めて。縄張りを求めて。

 それが有り得る事を、あたしもマミも知っている。

 だが、続けて言った琢磨の言葉は、あたしの考えを大きく上回った。

 

「さて、疑問点その弐。

 “魔法少女は何故、殺された”のか?」

GS(グリーフシード)目的ではないの?」

 

 マミの質問に、琢磨は電子タバコを咥えたまま答える。

 

「オレは、その可能性は“無い”と仮定してる」

「「!?」」

「否定する材料は、いくつかある。

 順番にいこうか」

 

 琢磨が説明を始める。あたし達は、それを黙って聞くしかない。琢磨がどう考えて、過程を仮定しているのか。それを聞かないと、話が進まない。

 

「魔法少女を殺した魔法少女。

 この少女を“加害者”殺されてた魔法少女を“被害者”と仮称するが。

 殺害場所を結界内と仮定した場合。

 “加害者はいつ、被害者を殺したのか?”と言う疑問が出てくる」

「あの結界は、展開と同時にオレとゆまが居た。

 そして、オレ達を追って、先輩達が来た。

 ならば、可能性は二つ。

 先輩達の前か、後か。

 これに関しては、どちらであっても対して違いは無い。

 重要なのは“先客がいた”って事だ」

「被害者も加害者も、先客がいるのを承知で、結界に入ったと考えられる訳だ」

「そうなると、少なくとも加害者の目的は“魔法少女殺害”で、間違いは無い。

 被害者の方は、判断材料がないけどね」

GS(グリーフシード)目的であれば“先客がいる結界は避ける”のが当然だ。

 取り合いになるリスクを考えれば、ね」

「そして“縄張り争い”であるならば、見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)を相手取る事になる。

 よほど、自分の実力に自信が無いと、選ばない行動だ。

 その程度には勇名だし有名の筈。

 そうじゃなかったら、オレはナマモノをそぉい!しなきゃならん」

「わけがわからないよ」

「茶化さないで、話を続けて」

「はいよ。

 縄張り目的であれば、右腕を失っていたオレは、狙うのに最適な状態だったとも言える。

 しかし“オレ達は加害者と遭遇しなかった”という事実が、縄張り目的を否定する。

 残った選択肢はひとつ」

 

 

 

 “被害者を殺す為に、加害者は結界に入り、実行した”

 

 

 

 その言葉を最後に、沈黙が訪れる。

 マミは真剣な表情で考え込み、キュゥべえは相変わらずの無表情。ゆまは……。

 

「眠いか?」

 

 舟を漕いでいた。

 まあ、魔女戦から琢磨の治療、そのままマミの説教じゃ、疲労が溜まって当然か。

 

「夕飯もまだだったわね」

「主に、巴先輩の説教のせいでね」

「追加希望かしら?」

「すいまっせんしたーーーー!!」

 

 正座を通り越して、土下座をする琢磨を尻目に、あたしはゆまを部屋に先導する。

 

[ゆまちゃんが寝た後、会話を再開しましょう]

[そうだな。

 放置していい問題とは思えない]

[じゃ、今のうちに軽いものでも作っておきましょうかね]

 

 ゆまに伝わらないよう、念話で会話をしたあたし達は、それぞれ行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 琢磨の作った夕飯は、紫色のカルボナーラだった。

 何故か、牛丼の味がした。




次回予告

考察は続く 状況を把握する為、続いていく

それぞれが求めるもの それぞれが望むもの

得る為に 護る為に 知る為に




考察は続く いずれ交錯する為に


百章 喜ばしい事

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