「オレに答えられるかは、保障しないぞ?」
「かまわないよ。
あまり期待はしてないからね」
「そうだよな。
ナマモノはそういう奴だよ、知ってたよ」
「キミの魔法は“時間停止”“放電能力”“空間干渉”の三つだ」
「そうだな。
願いを叶えた結果、得た魔法だな」
「僕等には、キミ達の願いも、それによる能力も、干渉する事は出来ない」
「らしいね。
それで?」
「時間と空間。
この二つは密接な関係にあるから、理解出来る。
でも“放電能力”だけが明らかに異質だ」
「うん、聞かれても答えられねぇよ」
「魔法は願いにより左右される。
しかし、放電能力だけは、願いとは別にあるとは思わないかい?」
「わけがわからないよ」
「僕の台詞だよね」
「言われてもなぁ……。
ただオレは、使えるモノは徹底的に使い潰すだけだし」
「せーの」
「「わけがわからないよ」」
SIDE 群雲琢磨
「キョ~コ~!!」
「あぁ、とりあえず治療しような?」
泣きながら、先輩達の元に駆けていくゆまを見ながら思う。
ごめんなさい、正直いっぱいいっぱいでした。
色々な武器を使って立ち回るオレにとって“武器使用不可”は、はっきり言って致命的。
うまい具合に策がはまったから良かったが、正直他に浮かばなかったってのが大多数を占めていた。
先日の魔女戦のようにゆまが回転して、衝撃波を出し続けてきたら、こうはいかなかっただろうねぇ。
……電子タバコ壊れたし。
まあ、ストックはあるのだが。
新しい電子タバコを<
「何本持ってるのよ?」
「百から先は略」
「……取り上げるべきかしら?」
「貴重な修行道具なんで、勘弁して下さい」
「修行道具じゃなかったら、取り上げてるわよ」
「修行道具じゃなかったら、そもそも持ち歩かないよ」
そんな雑談をしながら、ゆまと入れ替わる形でオレと対峙する巴先輩。
「ハンデはいる?」
「今回はいいわ。
ゆまちゃんの手前、私がハンデ戦をしても、効果は薄そうだし」
ふむ……。
まあ、今回の模擬戦はゆまの経験値と“オレの退治方法”の二つがメインだろうしねぇ。
負ける気? 無いよ?
「ゆまの治療完了を待って、開幕といこうか?」
「普段から、そうやって空気を読んでくれると嬉しいのだけど?」
「オレが空気を読めると本気で思ってるなら、まずはそげぶ!」
SIDE 佐倉杏子
「う~……」
手の治療を終えたゆまが、唸りながらクッキーを食べている。
「落ち着いたか?」
その頭を撫でながら、あたしも同じ様にクッキーを口に運ぶ。
「負けちゃった……」
「そうだな」
ゆまの言葉に、あたしは相槌を打つ。ハンデ戦なのに敗北した。その事実はゆまには辛いかもしれない。
「ゆま、弱いね」
「いや、弱いわけじゃないよ」
即座に返す。首を傾げるゆまの頭を撫で続けながら、あたしは言うべき言葉を捜す。
マミさんなら。琢磨なら。どう言って、ゆまを励ますのだろう?
「でも、負けたよ?」
「負けたから弱いって訳じゃない。
そんな事言ったら、あたしだって弱い事になる」
「キョーコは弱くないよ!」
あたしの言葉に反応して、ゆまが大声を上げて立ち上がる。
それに気付いたマミが、心配そうにこちらに視線を送る。琢磨? いつも通り。
「でも、負けたぞ」
「う……」
「負けたあたしを、ゆまは弱くないと言う。
なら、負けたゆまは弱くないと、あたしが言う。
間違ってるか?」
「うぅ……」
返答できないゆまは、再び座る。
マミはこちらを見たまま。どうやら会話が終わるまで、模擬戦を開始しないようだ。
あたしは、再びクッキーを頬張る。
「あたしとゆまは負けた。
それは弱いからじゃない。
琢磨の作戦に、見事に嵌められたからだ」
「オレが悪者みたいだな。
うん、知ってた」
「オマエは黙ってろ」
「理不尽だ!?」
地団駄を踏む琢磨を見て、多少は溜飲が下がる。それを見たゆまも「いい気味」と呟いていた。
「逆に言えば、琢磨の作戦を破っちまえばいい。
強いから勝った訳じゃない。
弱いから負けた訳じゃない。
琢磨が、ほんの少しだけ、あたし達より勝つ為の努力をした。
それが結果さ」
そして、それこそがマミの言った“琢磨の真骨頂”なんだろう。
どんな状況においても。自分の為になる事は何かを、常に模索し続けている。
もちろん、戦闘においては勝つ事こそが自分の為になる。
常に、勝利への道筋を模索する。
後は、それを実行できるだけの実力があるかどうか。
「例え弱くても、作戦次第で強い相手に勝つ事が出来る」
「それだと、オレが弱いみたいじゃん。
否定はしないけど」
「……」
「せめて、黙ってろとか言って!?
無視が一番辛いんだぞ!!」
少しぐらい、意趣返ししてもいいよな?
「まあ、とにかく。
ゆまが自分を弱いと思うなら、強くなればいい。
弱いままでいいなら、そのままでいい。
あたし達は、一緒に居る理由を、強弱で選んだ訳じゃないんだからな」
「! うん!」
あたしの言葉を理解してくれたのか、ゆまは元気良く頷いた。
それを見て、あたしも笑いながらゆまの頭を撫でる。
マミも琢磨も、笑顔を見せていた。
「でもやっぱり、たくちゃんはゆまがたおす!」
それでも望むのは、それなのか……。
思わず苦笑した、あたしとマミ。
「最初にゆまと戦った時、衝撃波で倒れたけどなオレ」
「そーゆー意味じゃない!!」
「うわ、こいつメンドクセ」
「むぅ~!
やっぱ、たくちゃんキライ!!」
頬を膨らませて、そっぽを向くゆま。
その時の、琢磨の眼差しは、とても優しく感じた。
『羨ましくて妬ましい』
以前、琢磨はゆまの事をそう言った。
ゆまの事が羨ましいと。ゆまの事が妬ましいと。
まあ、あたしから見れば、今の二人は“喧嘩するほど仲が良い”状態のような気もするけどな。
「そろそろ、始めましょうか?」
マミの言葉に、琢磨は真剣な表情に切り替わる。
ゆまも、真剣な表情で二人を見る。
「3連戦最終章。
華麗に勝利して、幕といこう」
「阻ませてもらうわよ。
華麗に舞うのは、私の方なんだから」
そして二人は、それぞれの言葉で開戦を宣言する。
「だって私、魔法少女ですもの!」
「
次回予告
巴マミVS群雲琢磨
互いに信を置き 互いに力を磨き
故に、互いの戦いを知る
どちらの方が強いか どちらの方が弱いか
勝敗を決めるのは、そこではない
どうやって、勝ちを手元に収めるか
ただ、その一点が、すべてを決める戦い
百十一章 付け焼刃