それで考えたのが『
「さすが、ナマモノ。
理解が早くて助かる」
「しかし、弾丸を静止させるほどの磁力となると、それこそ超伝導磁石を上回るほどの磁束密度が必要だろう?
予め磁気化していたならともかく、飛来する弾丸を静止させるとなると」
「そう、磁気嵐の中に居るみたいなもの。
思いついたからやってみよう! な感じの初回は、一時期聴覚を失った。
すぐに魔力で修理したけどね」
「相変わらず、自分の肉体に負担を強いる魔法ばかり思いつくね、キミは」
「「わわけけががわわかかららなないいよよ」」
「合わなかったね」
「そういう日もある」
SIDE out
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無論、
それだけではない。
“魔法”でありながらも、妙に“現実的”な制約を有しているのも、群雲の“放電能力”の特徴でもあった。
対するマミは、静かに佇んで、群雲の準備完了を待っていた。
本来、これが“殺し合い”であったなら、相手の大技を待つ必要は無い。
しかし、これは模擬戦。しかも“千歳ゆまの為”という意味合いが強い。
正面から、打ち破ってこそ、意味がある。
巴マミは、そう考えて迎え撃つ事にした。
そして群雲琢磨は、巴マミがそう考えるだろうと過程を仮定していた。
同じく巴マミも、群雲琢磨がそう判断するだろうと予測出来ていた。
「ティロ・フィナーレ対決なんて、考えもしなかったわ」
「そりゃ、オレのティロ・フィナーレは、形になったばかりだしね」
模擬戦中。何気ない普通の会話。
しかし、それこそが打破の鍵。
弾丸の準備が終わり、今度は銃本体の準備に入る群雲。
それに合わせて、マミの横に編み出される、巨大なマスケット銃。
「無駄に大きいよね」
「銃の威力は弾丸の大きさに左右されるものよ。
当然、発射口も大きくないと駄目だし、他の部位も必然的に強度を高めないといけない。
結局、すべてを巨大化させるのが、一番安全なのよ」
「自分の魔法なのに暴発とか、笑えないからか」
準備を終えた二人の銃。後は、弾を発射するだけ。
自然体で立つ群雲。ゆっくりと右手を上げるマミ。
交差する視線。高まる緊張感。観戦中の杏子とゆまも、固唾を呑んで行く末を見守り、自分たちが強くなる為の切っ掛けを探す。
先刻、無限の魔弾のいくつかは、群雲を貫いていた。致命傷は無い。戦闘の継続は可能。
しかし、怪我が治っている訳ではない。傷は傷のまま。
ゆっくりと、紅い雫が群雲の右腕を伝い、右手の中指に溜まっていく。
そして、重力に従い、地面へと落ちる。
それが、合図になった。
「「ティロ」」
群雲が銃口をマミへ向け。マミは右手を群雲に向ける。
「「フィナーレ!!」」
同時に発射された、二つの
爆発。発生する突風に、巻き上がる砂煙。一瞬にして射撃者すら飲み込んでいく。
「っ!?」
「ふぇ!?
砂が痛い!!」
強大な力のぶつかり合いは、観戦者達も影響を及ぼす。
その視界を塞ぎ、戦況がまったくわからなくなる。
慌ててゆまを守るように抱きしめる杏子と、想定していなかった被害にうずくまるゆま。
戦況は動いている。
しばらくして、煙は晴れる。当然の事。
そうすれば、状況を把握できる。だがそれは、当然の事ではない。
杏子とゆまは見た。
煙の中から、最初に確認出来たのは巴マミ。所々怪我しているが、両足でしっかりと立っている。
巨大なマスケット銃は既に無く。しかし、真剣な表情で変わらず正面を見据えていた。
当然、次に確認できるのは群雲琢磨。しかし、状況を把握出来るかは別問題。
現れた群雲琢磨は。
黄色いミノムシになっていた。
「「は?」」
SIDE 巴マミ
琢磨君の
その為、私の射撃と衝突した時点で弾けた。細かい散弾全てを相殺する事は出来なかったわ。
それでも、正面は私の射撃があった為、何発かが掠める程度に留める事はできた。
掠めただけでも、充分痛いわ。流石の
「さて」
煙が晴れて、私はゆっくりと対戦相手に近付く。
首から下が完全に黄色いリボンで包まれた状態。
「……あー……」
身動きが取れない琢磨君は、転がったまま。残念そうに言葉を発する。
「せめて……木にぶら下りたい……」
え? そこ?
「仕方ないわね」
私は琢磨君を包むリボンを一本操作し、近くの木に繋げる。
「お?」
そのまま、引き上げるように琢磨君を引き摺り、丈夫そうな枝にぶら下げた。
「おぉ~!」
ぶら下った琢磨君は、嬉しそうに左右に揺れる。本当に、黄色い蓑虫状態ね。
「いや、なにしてんだよ……」
呆れたように呟き、佐倉さんとゆまちゃんが近付いてきた。
「無意味な行動でもないんだけどね」
微笑みながら、私は琢磨君に向き直る。
「貴方の動きは完全に封じたわ」
「左右に揺れてるけどね」
「茶化さないの」
それでも、解ってる。状況が示す結末。
「流石に、3連勝は無理だったよ」
それは、琢磨君の敗北宣言だった。
「リーダーとして、簡単に負ける訳にはいかないもの」
それに合わせるように、私は勝利宣言を行った。
「さて、反省会といきましょうか」
次回予告
本当に、どうしてこうなった?
百十三章 黄色いミノムシ