無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「電気を全身に纏うのは無理。
 それで考えたのが『電磁障壁(アースチェイン)』なんだね?」
「さすが、ナマモノ。
 理解が早くて助かる」
「しかし、弾丸を静止させるほどの磁力となると、それこそ超伝導磁石を上回るほどの磁束密度が必要だろう?
 予め磁気化していたならともかく、飛来する弾丸を静止させるとなると」
「そう、磁気嵐の中に居るみたいなもの。
 思いついたからやってみよう! な感じの初回は、一時期聴覚を失った。
 すぐに魔力で修理したけどね」
「相変わらず、自分の肉体に負担を強いる魔法ばかり思いつくね、キミは」

「「わわけけががわわかかららなないいよよ」」

「合わなかったね」
「そういう日もある」


百十二章 ティロ・フィナーレ対決

SIDE out

 

 <操作収束(Electrical Overclocking)>発動中。それはすなわち、炸裂電磁銃(ティロ・フィナーレ)の準備が可能である事を意味する。

 無論、充電(チャージ)だけであれば、Lv1でも不可能ではない。相応に時間を有する事になるが。

 それだけではない。炸裂電磁銃(ティロ・フィナーレ)は、弾丸と銃本体の両方を準備(チャージ)しなければ、正常に発動しない。

 

 “魔法”でありながらも、妙に“現実的”な制約を有しているのも、群雲の“放電能力”の特徴でもあった。

 

 対するマミは、静かに佇んで、群雲の準備完了を待っていた。

 本来、これが“殺し合い”であったなら、相手の大技を待つ必要は無い。

 しかし、これは模擬戦。しかも“千歳ゆまの為”という意味合いが強い。

 正面から、打ち破ってこそ、意味がある。

 

 巴マミは、そう考えて迎え撃つ事にした。

 

 そして群雲琢磨は、巴マミがそう考えるだろうと過程を仮定していた。

 

 同じく巴マミも、群雲琢磨がそう判断するだろうと予測出来ていた。

 

「ティロ・フィナーレ対決なんて、考えもしなかったわ」

「そりゃ、オレのティロ・フィナーレは、形になったばかりだしね」

 

 模擬戦中。何気ない普通の会話。

 しかし、それこそが打破の鍵。

 

 弾丸の準備が終わり、今度は銃本体の準備に入る群雲。

 それに合わせて、マミの横に編み出される、巨大なマスケット銃。

 

「無駄に大きいよね」

「銃の威力は弾丸の大きさに左右されるものよ。

 当然、発射口も大きくないと駄目だし、他の部位も必然的に強度を高めないといけない。

 結局、すべてを巨大化させるのが、一番安全なのよ」

「自分の魔法なのに暴発とか、笑えないからか」

 

 準備を終えた二人の銃。後は、弾を発射するだけ。

 自然体で立つ群雲。ゆっくりと右手を上げるマミ。

 交差する視線。高まる緊張感。観戦中の杏子とゆまも、固唾を呑んで行く末を見守り、自分たちが強くなる為の切っ掛けを探す。

 

 先刻、無限の魔弾のいくつかは、群雲を貫いていた。致命傷は無い。戦闘の継続は可能。

 しかし、怪我が治っている訳ではない。傷は傷のまま。

 ゆっくりと、紅い雫が群雲の右腕を伝い、右手の中指に溜まっていく。

 

 そして、重力に従い、地面へと落ちる。

 

 

 

 

 それが、合図になった。

 

「「ティロ」」

 

 群雲が銃口をマミへ向け。マミは右手を群雲に向ける。

 

「「フィナーレ!!」」

 

 同時に発射された、二つの最後の射撃(ティロ・フィナーレ)は、真っ直ぐに相手に向かい、ちょうど中心で衝突する。

 爆発。発生する突風に、巻き上がる砂煙。一瞬にして射撃者すら飲み込んでいく。

 

「っ!?」

「ふぇ!?

 砂が痛い!!」

 

 強大な力のぶつかり合いは、観戦者達も影響を及ぼす。

 その視界を塞ぎ、戦況がまったくわからなくなる。

 慌ててゆまを守るように抱きしめる杏子と、想定していなかった被害にうずくまるゆま。

 

 

 

 戦況は動いている。

 

 

 

 しばらくして、煙は晴れる。当然の事。

 そうすれば、状況を把握できる。だがそれは、当然の事ではない。

 

 杏子とゆまは見た。

 煙の中から、最初に確認出来たのは巴マミ。所々怪我しているが、両足でしっかりと立っている。

 巨大なマスケット銃は既に無く。しかし、真剣な表情で変わらず正面を見据えていた。

 当然、次に確認できるのは群雲琢磨。しかし、状況を把握出来るかは別問題。

 

 現れた群雲琢磨は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄色いミノムシになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「は?」」

 

 

 

 

SIDE 巴マミ

 

 琢磨君の炸裂電磁銃(ティロ・フィナーレ)は“着弾後に弾ける”構造になっている。

 その為、私の射撃と衝突した時点で弾けた。細かい散弾全てを相殺する事は出来なかったわ。

 それでも、正面は私の射撃があった為、何発かが掠める程度に留める事はできた。

 掠めただけでも、充分痛いわ。流石の電磁砲(Railgun)と言った所ね。

 

「さて」

 

 煙が晴れて、私はゆっくりと対戦相手に近付く。

 首から下が完全に黄色いリボンで包まれた状態。

 

「……あー……」

 

 身動きが取れない琢磨君は、転がったまま。残念そうに言葉を発する。

 

「せめて……木にぶら下りたい……」

 

 え? そこ?

 

「仕方ないわね」

 

 私は琢磨君を包むリボンを一本操作し、近くの木に繋げる。

 

「お?」

 

 そのまま、引き上げるように琢磨君を引き摺り、丈夫そうな枝にぶら下げた。

 

「おぉ~!」

 

 ぶら下った琢磨君は、嬉しそうに左右に揺れる。本当に、黄色い蓑虫状態ね。

 

「いや、なにしてんだよ……」

 

 呆れたように呟き、佐倉さんとゆまちゃんが近付いてきた。

 

「無意味な行動でもないんだけどね」

 

 微笑みながら、私は琢磨君に向き直る。

 

「貴方の動きは完全に封じたわ」

「左右に揺れてるけどね」

「茶化さないの」

 

 それでも、解ってる。状況が示す結末。

 

「流石に、3連勝は無理だったよ」

 

 それは、琢磨君の敗北宣言だった。

 

「リーダーとして、簡単に負ける訳にはいかないもの」

 

 それに合わせるように、私は勝利宣言を行った。

 

「さて、反省会といきましょうか」




次回予告

























本当に、どうしてこうなった?














百十三章 黄色いミノムシ

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