「どうしたんだい?」
「見滝原に限らず、魔法少女が存在する」
「僕が契約した少女達だね」
「他の街の魔法少女は、どんな生活をしてるんだ?」
「基本的には、人と同じだね。
もちろん、以前の琢磨のように、住みなれた街を離れ、魔女狩りの旅をする娘もいるけど」
「そして、他人の縄張りに入り、衝突すると。
なら、事前に情報を……。
いや、お前にそれを期待しちゃ駄目か」
「わけがわからないよ」
SIDE 巴マミ
黄色いミノムシな琢磨君はそのまま。私は佐倉さんと反省会を始める。
「えい! えい!」
「痛っ! 痛っ!
オレ、サンドバッグじゃねぇぞ!?」
「たぁーーーー!!」
「ちょ、武器は、おま、いつ変身して、アーッ!!」
鉄棒の大車輪の如く、グルグル回る
「ちょっ、助ける気無し!?」
「罰ゲームという事にしておくわ」
「おま、3連戦1敗で罰ゲームとかそれ、なんて、いじ「たぁーーーー!!」だからハンマーはNoooooo!!」
うん、平常運転ね。
「あたしは、頭が痛いんだが」
「慣れよ」
「……変わったな、マミさん……」
「琢磨君の扱いに慣れた、と言って欲しいわ。
それ以外で、変わった事は……。
独りじゃない分、心に余裕が出来たぐらい、かしらね」
琢磨君は、よくわからない子。それでも、信頼できると信用できる子。ほんと、よくわからない子ね。
紅茶を入れる佐倉さん。ノートを開く私。
「さて、反省会を始めましょう」
SIDE 佐倉杏子
「まずは、琢磨君と佐倉さんの対決ね」
うあ、耳が痛い事に。
「後に続くゆまちゃんの為。
最後に戦う私の為。
極力“琢磨君から仕掛けさせて、その動きを把握する”のが、基本目的だったでしょ?」
さすが、マミ先輩。しっかりと、あたしの狙いを見極めてた。
「そして、琢磨君も気付いていた。
だからこそ、後に繋げる為に“Lv2を使用した時点で決着を着ける策”を用いた。
戦略で言えば、琢磨君が一手、上をいっていた形ね」
自分が負けても、後の二人に繋げれば。あたしのそんな考えを仮定して、過程となる作戦を考えた。実に琢磨らしい。
「ゆまちゃんの為に、佐倉さんが手を抜くと考えていたからこそ、琢磨君は躊躇い無く策を実行できた。
これを見て」
そう言って、マミは開いていたノートをあたしに見せる。そこに書いてあるのは琢磨の項目。
『重要なのは最初の一歩。
いくら速度で上回っていようとも、それが長時間続けば、慣れられてしまう。
緩急が大事。静と動を明確に。
それを常に、最適の形で使用するなら。
目指すべきは“初速=最高速”となる動き方』
「これが、琢磨君の<
あたしは、言葉を失う。自分の為に得た力を、自分の為に全開で使う。これが琢磨の基本理念。
その為に必要なのは“自分が出来る事を正確に把握する事”だと、このページが証明している。
あたしが瞬きをする、その一瞬。それで決着を着けられると判断したのは、この“実績”があったから。
不意に、思い出すのは最初の光景。あたしが最初に見た、独りの魔人。
あたしが見た時、
「強いな、あいつ」
「強い、と言うよりも、
自分に出来る事を正確に把握し、状況から最適な行動を選択する」
確かにそうか。
「だからこそ、策が破られると意外に脆かったりもするわ。
先日の魔女戦で、有効な策が浮かばなかったからこそ“私達を待ち”“ゆまちゃんの策に乗り”“その上で、自分が出来る事を模索した”のだからね」
有効な手があるのなら、わざわざあたしらを待つ事無く、魔女を退治していた。琢磨はそういうやつだ。
「対ゆまちゃんの作戦は驚いたけどね。
正面から、衝撃波を体一つで打ち抜くだなんて、予想してなかったわよ」
確かに、あれは驚いたな。
「理論だけで言えば、単純な事。
後に下げられる以上に、前に進む。
ただ、それだけなのだけれどね」
衝撃波。すなわち“自分を後に押す力”を“それ以上の前に進む力”で相殺、上回る事で間合いを詰めた。
その為に必要なのは“衝撃波が衝突した直後の加速”であり。
不可視である衝撃波が、衝突する瞬間を“予測”する為の情報だった。
だから、琢磨は何度も何度もゆまに突進して行き。
何度も何度も吹き飛ばされた。
「間合いを詰めた時点で、琢磨君の勝利はほぼ確定。
なら、ゆまちゃんの課題はふたつ。
“敵を間合いに入れない立ち回り方”と“近接戦での対処法”ね」
「なにかありそうか?」
「間合いに入れないだけならば、先日の魔女戦で行った方法かしら?」
横回転か。確かにあれなら近づけないな。
……あたしらも含めて。
「接近戦に関しては、数をこなして慣れていくのが一番でしょうね。
ハンマーを用いた立ち回りとなると、残念ながら三人とも専門外だわ」
マミは銃。あたしは槍。琢磨が使う武器にもハンマーは無い。
ゆまが自分で考えて、自分で発展させるのが一番なのか。
「もちろん、補佐をする事はできるけれど……。
自分の戦いやすい動き方は、本人が一番理解出来る事でもあるしね」
マミも同じ意見のようだ。
ハンマーと衝撃波。ある意味、一つの武器で遠近両方に対応可能な分、ポテンシャルで言えばゆまは高い方だろう。
あとは、ゆま自身の成長次第、か。
「そして最後は、私と琢磨君ね」
「ほんと、どうしてああなった?」
うんざりしながら、琢磨の方を見れば。
相変わらずミノムシな琢磨に、ゆまがしがみついて、一緒に左右に揺れていた。
……実は、仲良いだろ、おまえら……。
「琢磨君は、戦闘中でもお構いなしに、会話をするような子だけれど」
同じ様に苦笑した後、マミはあたしに向き直り、真剣に話し出す。
「戦闘中でも、自然体。
もちろん、真剣ではあるのでしょうけどね。
それでも、さも余裕であるかのように、自然に振舞う。
それは、共に戦う者に安心を。
そして、敵対する者に疑心を与えるわ」
確かにそうだ。実際に戦ったからこそ、理解出来る。
右腕を失った状態でも、普段通りに振舞う事で、共に戦うあたしらを落ち着かせ。
対峙した状態でも、普段通りに振舞う事で、あたしを欺き、隙を突いて見せた。
「今回に関しては、その会話があったからこそ、私が一手、上をいけた形でもあるわね」
そして、マミが教えてくれた事は、あたしが考えもしなかった事。
『覚えたての付け焼刃じゃ、こんなもんか』
『そりゃ、オレのティロ・フィナーレは、形になったばかりだしね』
「私は、この二つの言葉から読み取ったのよ。
琢磨君がティロ・フィナーレで、
次回予告
反省会は続く
それは、自身の力を理解する為であり
それは、自身の魔法を理解する為であり
それは、自身に出来る事を把握する為でもある
もちろん、自分だけじゃなく
百十四章 横に立つ