無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

128 / 173
「琢磨の異常な所は」
「うん?」
「挙げたらキリが無いけれど」
「マテや」
「その一つが、魔法の運用方法だよね」
「……<電気操作(Electrical Communication)>関係か?」
「僕らには、想像しえない使い方をしてるからね」
「まあ、魔法という“超常現象”を“現実的に分析”して、発展させたからなぁ」
「ある意味“魔法と科学の融合”ではあるよね」
「本来存在しない“電気”を応用して“磁力の壁を造る”のが電磁障壁(アースチェイン)だしな」
「ふと、思ったんだけれど」
「どした、ナマモノ?」
「これ、次回予告後のTIPSでいいんじゃないかな?」
「メメタァ」


百二十二章 短剣思考

SIDE out

 

 魔女も使い魔もいない。そんな“死んだ”結界の中。

 戦うのは、右目を隠した二人の子供。

 

 一人は、呉キリカ。美国織莉子と共に生きる、黒い魔法少女。

 独りは、群雲琢磨。自分の為に自分を続ける、現状唯一の魔人。

 

「呉先輩の能力。

 いや、これこそが、貴方の“魔法”なのかもしれないが」

 

 少し離れた場所にいる“銃闘士”巴マミ。

 結界内には今、この三人だけが存在する。

 

 しかしっ! 今ッ! この“場”を支配するのは、最も小さき者!!

 

「実に見事で、素晴らしい力だったよ。

 魔法少女を狩り続けられたのも、納得だ」

 

 先の攻防により、大量のナイフが散らばった場所で。その右手に大量のナイフを持つ少年。

 

「だが、ダメだ。

 それじゃあ、()()()()()()()()

 

 余裕を魅せ、口元から白煙を燻らせる少年に対し、黒い魔法少女は油断無く鉤爪を構える。

 

「違和感は、最初からあったのさ」

 

 それすら封殺する、魔人の“普段通り”の佇まい。

 

 それは、味方に位置する者に安心を。

 それは、敵方に位置する者に疑心を。

 

「まあ、違和感があって当然だ。

 魔女も使い魔もいない魔女結界。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 脳を加速させる事による、情報分析。群雲の得意とする力であり、群雲を特異とする魔法である。

 そう、呉キリカは“群雲に情報を与えすぎた”のだ。

 

「本来ならありえない事が起きている。

 それは“ありえない事を起こしているモノがいる”事を意味する」

 

 情報戦で異星物(キュゥべえ)とすら渡り合う少年が、その言葉で場を支配する。

 

「オレはありえない。

 後から乱入したわけだしな。

 巴先輩も無い。

 一般人にとって“毒”でしかない魔女結界を、いたずらに存在させる理由はない。

 さあ、答えはひとつだ」

 

 語る言葉と語らない言葉。その“両方”で、群雲は情報を選定する。

 

「では、ここで一つの疑問。

 “消えるはずの魔女結界を存在させる、呉キリカの魔法とは一体何か?”

 その答えは、先程のナイフ投げが充分な情報を集めてくれたのさ」

 

 その言葉に、キリカは眉を顰める。ただ、ナイフを取り出して投げる。それだけだった筈の行動こそが、決め手となった事実に。

 

「オレの魔法の基本的な使い方は“電気信号をプログラム化”する事にある」

 

 自分が認識出来ないほどの“速度”に対応する為に。

 動きを“プログラム化”する事で“その後の状況を予測”する。

 自分が“どうなろうと”動きが変わる事が無い為、群雲は基本的に“一手先を見据えて行動する”のである。

 

「プログラム化された肉体の動き。

 当然“変化”する事はない。

 ナイフ投げにも、それは適応される」

 

 キリカは首を傾げる。群雲が言わんとする所が見えないからだ。

 しかし“群雲を知る巴マミ”は、群雲と同じ観点から“同じ結論”に達している。

 自身の回復状況と“警戒”を悟られないように、巴マミが言葉を引き継ぐ。

 

「ナイフ投げが“プログラム化された動き”ならば“投げられたナイフの速度も、常に一定”だと言う事よ」

 

 その言葉に、キリカは目を見開く。自分の“魔法”が把握された事を、その言葉で理解する。

 

「何本だろうと、何十本だろうと、何百本だろうと。

 速度が変わるはずが無いのよ、群雲琢磨のナイフ投げは、ね」

「それが、呉先輩の魔法の特性なんだろうな。

 先輩が避けたナイフが“後方で加速する”なんて、本来ならばありえない」

 

 群雲の感じた違和感の正体がこれだ。キリカの魔法の影響下であるからこそ、起こりうる状況。

 それと“魔女結界の異常”を照らし合わせる事で、その“本質”が見える。

 

「「呉キリカの魔法は“対象の速度を落とす”魔法」」

 

 見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)が同時に告げる。相手の力を把握した事を。

 

「呉先輩は、回避する為に、ナイフの速度を落とした」

「回避の終わったナイフに、魔法を使う意味は無い為、結果的にナイフが加速する事になった」

「本来、消滅するはずの結界は」

「消滅するまでの“速度を落としている”からこそ、今も存在している」

「近接戦闘での、立ち回りも」

「射線から逃れるだけの速度も」

 

「「その魔法ひとつで、説明可能」」

 

 二人は追い詰める。魔法少女狩りの犯人。黒い魔法少女を。

 しかし、それであきらめる。呉キリカにその選択肢は存在しない。

 

「私の魔法が解ったからなんだ!

 結界内が私の魔法の影響下だ!」

 

 呉キリカ以外の速度が落ちているのなら、実質“呉キリカが速い”のと同義。

 

「だから、言ったよな!

 お前がどれだけ速く動こうとっ!

 関係ない手段を、この群雲が用いてやるとッ!!」

 

 群雲が声を上げながら、左手の人差し指を伸ばす。

 

「結界内がお前の影響下であったとしても!

 この“空間”は、オレの力が充満している!

 そうさせたのだッ!!」

 

 大量に散らばった無数のナイフが。

 

「速く動こうとも関係ないッ!」

 

 誰の手に触れる事無く。宙に浮かび上がり。

 

「動く事が出来ないようにすればいい!」

 

 その切っ先を呉キリカに向けて。

 

「全方位のナイフ全てが、オレの意のままよッ!!」

 

 戦局を決した。

 

 

 

 

 

「これが『短剣思考《Knife of Liberty》』だッ!!!!」




次回予告

その思考に加護はなく

その思考に容赦はなく

その思考に遠慮はなく












その思考に、慈悲は無し


百二十三章 安心して死ね

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。