無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「会話だけでは、得られないものがあるよね」
「だが、会話しないと得られないものもある」

























「今回は、シンプルだね」
「まあ、それ以外に“言うべき事”は無いってわけだ」
「なるほど」


百二十六章 いつか

SIDE キュゥべえ

 

 琢磨が見滝原で、マミと一緒に行動するようになってから、僕らは深夜のベランダで会話をする事が、半ば日課とすら呼べるようになっている。

 魔法少女システムを理解し、僕らに敵対心を持つでもなく。それすらも当然のように消化した琢磨。

 感情を持つ生物(にんげん)と、意見交換が可能になるなんて、想定してはいなかった。

 そういう意味でも、群雲琢磨という魔人は“異物”と呼べる。

 

「やっぱり、両方と接触してみるのが一番かねぇ」

 

 電子タバコを咥えた琢磨が、のんびりとした口調で呟いた。

 

「ほむらはともかく、織莉子とは殺し合いになるんじゃないかな?」

 

 暁美ほむら。彼女の目的は不明。

 美国織莉子。彼女の目的も不明。

 

「働けや、ナマモノ」

「わけがわからないよ」

 

 同じ観点で状況を見る事が出来る、異なる存在。

 だからこそ、琢磨との意見交換が成立する。

 魔獣になれば、僕らのノルマに貢献し。

 魔人のままでも、充分に役に立ってくれる。

 そういう意味では、とても“都合の良い存在”でもある。

 

「美国先輩が、オレを“敵”としている現状、対立の立場は崩れない。

 暁美先輩は……そもそも目的が解らないから、判断材料が無い」

「ほむらの場合、僕を見ると殺そうとするから、僕から情報を得る事が出来ないよ」

「だからオレが接触してみないと、どうにもならないってのが現状じゃないか?」

 

 マミの話を聞く限り、ほむらは見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)を、良くは思っていない。

 優れた魔法少女が近くにいるという事は“自分に回ってくるGS(グリーフシード)が不足する”可能性を高める。

 だからこそ、魔法少女同士で“縄張り争い”が発生する。

 

「しかし“魔法少女狩り”を重要視していない事から“暁美先輩の目的は、魔法少女とは別の所にある”と見るべきか」

「魔法少女とは別?

 魔法少女なのにかい?」

「魔法少女だからって“魔法少女に関わらなければならない”とは一概には言えない。

 実際オレも、魔女を狩って旅してた最初の頃は、他の魔法少女と接点があった訳じゃないしな」

 

 特定の縄張りを持たない契約者も、当然存在する。

 それはつまり“人としての生活を捨てた生き方”とも言えるだろう。社会から別離した生活になるのだから、当然。

 そういう意味で“両方の生活を経験した”琢磨であれば、その両方を視野に入れて考える事も出来る。

 

「感情の無い僕らと、感情を有する琢磨。

 意見交換の対象としては最適だね」

「そりゃそうだ。

 普通、魔法少女の真実を知ったら、お前らを信用なんて出来んだろ」

「わけがわからないよ」

 

 真実を求めるくせに、いざ真実を知ると激昂する。本当に、感情とは厄介なモノだね。

 

「いつか、オレがお前の敵になる可能性だってあるんだぜ?」

「そうなのかい?」

「可能性は……ゼロではないっ!」

「深夜は静かにするのが常識なんじゃないのかい?」

「うん、正論なんだけど、お前に言われると気ぃ悪いわぁ」

「わけがわからないよ」

 

 織莉子にも困ったものだけど、ほむらにも困ったものだ。

 そして琢磨は、別の方向で困らせる。

 僕らには感情が無い。それを知った上で、ネタと呼ばれる行為に及ぶのだ。

 

「まあ、オレ達の事はそぉい!しといて。

 明確な問題は二つ。

 “美国織莉子”と“暁美ほむら”だ」

「僕らとしては、織莉子の方を優先してもらいたいね。

 魔法少女狩りなんて、非生産的行動は謹んで貰えると助かる」

 

 魔法少女が魔女になる。その感情エネルギーを回収。宇宙延命の為のエネルギーに変換する。

 僕らが地球にいるのは、その為だ。

 魔女になる前に“処理”されては、無駄骨になってしまう。

 

「暁美先輩を説得して、ナマモノを狩らないように……無理か」

「諦めが速いね。

 理由は?」

「想像と妄想と仮定と過程な戯言でもいいか?」

「いつもの事だね。

 それでも、僕らには考え付かない事だったりするし、無駄にはならないよ」

 

 織莉子の方を優先してほしいと言った、次の瞬間にほむらの事か。流石だよ琢磨。

 

「お前を狩るって事から、暁美先輩は魔法少女システム(インキュベーターの事)を理解していると仮定。

 ただ、お前らがウゼェってだけなら、巴先輩への対応は違ったものになるだろう。

 魔法少女自体を快く思っていないなら、魔法少女狩りをしていても不思議じゃないから、容疑者の一人だったんだけど、実際は違った。

 故に“美国先輩との共闘関係”も、オレは違うと仮定する」

「根拠はあるのかい?」

「美国先輩が“魔法少女を増やす行動をとっている事”だ。

 お前に敵意を向けるって事は“魔法少女が魔女になる事が容認出来ないから”に、他ならない。

 オレ? 見ず知らずの魔法少女なんざ、知ったこっちゃないよ」

「最後の一言は聞いてないし、解ってるよ」

「ノリが悪いなぁ、ナマモノ。

 知ってるけど。

 それはともかく、さっきの理由から“暁美先輩と美国先輩が共闘してる”ってのは考えにくい。

 “魔女になる為に魔法少女になる”このシステムに反発するなら“魔法少女を増やす行為”なんて、容認出来るはずが無いからだ」

 

 なるほど。確かに織莉子とほむらが目的を共にしていると考えるには、反論材料が明確だ。

 

「加えて、暁美先輩と美国先輩が共闘していたなら、巴先輩を狙うのが暁美先輩である可能性のほうが高い。

 明確に巴先輩を敵としているなら“協力する振りをして不意打ちした方が、成功率が高い”からだ」

「そういうものなのかい?」

「ここで、オレが唐突にお前を殺そうとしたとして、対応できるか?」

「なるほど」

 

 僕は、琢磨が無駄に殺しをしない事を知っている。僕に敵対していない事も知っている。

 そんな状態での不意打ちに、戦闘能力の無い“交渉用端末機()”が、抗う事は不可能に近いだろう。

 

「美国先輩側の動き。

 “魔法少女を狩りながらも、社会的に注目されていない”のが現状。

 そこを加味すれば“魔女結界の速度低下という、不確実な手段”よりも“限りなく近い所からの不意打ち”の方を選ぶだろう。

 しかし、現実は違った。

 現実を把握している現状は“共闘関係を否定する材料ばかりで、肯定する要素は無い”わけだ」

 

 言いながら、琢磨の表情が変化していく。真剣な表情。それでいて、口の端を持ち上げる。

 

「なるほど、そうか。

 意外な所から、切っ掛けが見つかったな」

 

 どうやら、何かに気付いたようだ。

 

「魔法少女を増やす事。

 魔法少女を狩る事。

 その両方を満たす“条件”がある」

 

 ここで織莉子の方なあたり、流石だよ琢磨。頭の回転を早める事で“情報の処理”の精度が上がっている影響か。

 

「どちらも“真の目的ではない”って事だ」

 

 




次回予告

思いつかない事 思いついた事

想定していた事 想定外の事










あぁ、この夜は











オモイノホカ、ナガイラシイ










百二十七章 デコイ
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