無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「生きていれば、色々な事が起きる」
「まあ、オレの場合は波乱万丈すぎるような気もするけど」
「問題は……終わり方が二択って事ぐらいか?」


百三十一章 私はあの子を知っている

SIDE out

 

「「ごちそうさまでした」」

「はい、おそまつさまでしたっと」

 

 杏子を除いた3人での朝食を終えて。

 マミが指を鳴らすと、下りていた髪が、普段通りにセットされる。

 

「その魔法の使い方は、それはそれで、どうなのさ?」

 

 三角テーブルにある、空の食器を運びながら、群雲が苦笑する。

 

「これぐらい、良いじゃない。

 魔法少女の特権よ」

 

 言いながら、かばんを手に取り、マミは玄関へ。ゆまはそれについて行き、群雲はキッチンで洗い物。

 

「じゃ、いってくるわね」

「いってらっしゃい」

 

 いつもの挨拶。普通なら、当たり前の事。しかし、少女達にとっては一時、当たり前ではなくなっていた事。

 だからこそ、この“当たり前”がいかに愛おしい事なのかを、少女達は理解していた。

 

「あら?」

「まあ?」

 

 玄関を開けたら、そこには沙々がいた。

 

「おはようございます、巴さん」

「おはよう優木さん」

 

 挨拶をした沙々は、マミの後ろで驚いた表情をしているゆまに気が付く。

 

「巴さん、その子は~?」

「知り合いの子よ。

 事情があって、預かってるのよ」

「そですか~」

 

 あらかじめ、準備されていた言葉。

 巴マミ。両親と共に事故に遭い、唯一生き残った少女。天涯孤独。

 千歳ゆま。魔女結界に囚われ、唯一杏子に助けられた少女。天涯孤独。

 未成人の少女達だけの生活。世間一般から逸脱した存在。

 それでも、彼女達は生きていかなければならない。その為に“用意されている情報”だ。

 

「そろそろ行きましょう。

 遅刻する訳にはいかないわ」

「はい~」

 

 沙々が、ゆまに対して笑顔で手を振る中、玄関の扉は閉じられた。

 突然遭遇した、見ず知らずの相手に固まっていたゆまは、気を取り直してリビングに戻る。

 そんなやり取りがあった事等、知る由も無く。

 群雲は、朝食で使用した食器類を、真剣な表情で洗っていた。

 

 変身した上に、眼帯を外した姿で。

 

 ゆまが、群雲の元に行くと、首を傾げて問いかける。

 

「なんで、ういてるの?」

 

 群雲は背が低い。その事実を補う為、群雲は浮いていた。

 

「洗い物の為。

 あと、修行の一環でもあるな」

 

 手を休める事無く、群雲は平然と言ってのける。

 しばらく、不思議そうにその光景を眺めていたゆまは、リビングに戻ってテレビの電源を入れる。

 

「キョーコ、ねぼすけさんだね」

「そうだねぇ」

 

 未だに起きてこない杏子に、ゆまは退屈そうに呟き。

 その原因とも言える群雲は、作業を続ける。

 

「まあ、学校に行く必要が無いんだし、別に良いんじゃないか?」

 

 義務教育を完全に放棄した自分達の事を、棚上に投げ捨てて。

 洗い物を終えた群雲は、変身姿のまま、ゆまの横に座る。

 

「面白いか?」

「よくわかんない」

 

 ニュース番組を見ながらの、会話。

 外交問題がどうだとか、内閣の人事がどうだとか。

 ゆまに、そんな情報が完全に理解出来る筈も無く。

 群雲に、そんな情報は完全に必要の無いもので。

 結局、数分後には子供向けの教育番組に、チャンネルは切り替わっていた。

 

「さて、出かけるかな」

 

 右手の<部位倉庫(Parts Pocket)>から、愛用する白い眼帯を取り出しながら、群雲は立ち上がった。

 

「どこいくの?」

「エロ本を立ち読みに、嘘だけど」

「……たくちゃんのエッチ」

「いや、嘘だからね?」

 

 緑の右目を眼帯で覆い、群雲は平然とはぐらかす。

 

「ゆまはどうする?」

「キョーコといる」

「だろうねぇ」

 

 予想通りの返答に、群雲は微笑むと、変身を解除。

 <部位倉庫(Parts Pocket)>から愛用する黒いコートを取り出して、袖を通す。

 

「昼飯は、冷蔵庫の2段目にあるから、レンジでチンね」

「は~い」

 

 ゆまの返事を背中で受けながら、群雲は玄関に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 暁美ほむら

 

 何度も繰り返していた。それだけ、まどかを救えなかった。

 今度こそは。そう思いながらも、私の手は届かなかった。

 もちろん、諦めるつもりは無い。諦めてしまったら、そこが私の終着点。

 魔女になるか、自らSG(ソウルジェム)を破壊するかの二択。

 

 何度も繰り返していた。だから、今の授業も経験済み。

 この授業で、私が当てられる筈がない。内容は飽きるほどに経験してる。

 何気なく、外を眺めながら。私は思考の海に沈む。

 

 ワルプルギスの夜。最強最悪の魔女。

 

 まどかを救う為には、避けては通れない戦い。

 

 

 

 まどかが契約する前に、ワルプルギスが来訪した時間軸があった。

 崩壊した見滝原で、まどかはキュゥべえに『大好きな見滝原を元に戻して欲しい』と願ってしまった。

 

 

 

 まどかが契約する前に、ワルプルギスを討伐する。

 これが理想だけれど。未だに一度も成功していない。

 最強の魔女を打倒するには、私にはまだ、実力が足りない。

 決定的なのは“ワルプルギスとの戦闘中に、時間停止が使用不可になってしまう事”だ。

 そうなってしまった私は、人間より耐久力が高いだけの存在。

 

 経験した時間軸の大半は、ワルプルギスの“災害”で、まどかが死んでしまう事だった。

 だから私は、ワルプルギスを倒さなければならない。

 

 

 

 他の魔法少女との共闘。最も勝利する可能性が高いだろう状況。

 しかし、一筋縄ではいかないのも、繰り返した現実。

 

 巴マミ。見滝原を縄張りとする魔法少女。

 実は、彼女との共闘が一番難しい。

 

 要因は孵卵器(キュゥべえ)だ。

 まどかを魔法少女にする訳にはいかない。だから私はキュゥべえを殺す。

 しかし、巴マミにとってキュゥべえは“友達”なのだ。

 これでは、仲良くなるなんて無理な話。

 

 “魔法少女の真実”を言うのも躊躇われる。真実を知った“結果”を私は最悪な形で経験してしまったのだから。

 魔法少女だったまどかがいなかったから。私はきっと、あの時に死んでいただろうから。

 

 美樹さやか。まどかの親友。

 私が出会う時、彼女は魔法少女じゃない。

 まどかからキュゥべえを遠ざける事は、必然的に美樹さやかからも遠ざける事に繋がる。

 加えて、なりたての彼女がワルプルギスを打倒出来るほどとは、どうしても思えなかった。

 

 佐倉杏子。巴マミの元相棒。

 活動場所が見滝原じゃないから、接点を持つ事がまず難しい。

 何らかの理由で見滝原に来る事はあるが、全ての時間軸で彼女が来る訳ではない。

 最も、共闘自体は、接触さえ出来れば比較的楽な方。

 彼女の利となる条件……例えば、GS(グリーフシード)の取り分を佐倉杏子よりにすれば、可能だ。

 

 群雲琢磨。

 出会ったのは2回だけ。私が眼鏡を外すようになってからは、一度も出会っていない。

 

 こうして考えれば、やはり佐倉杏子が一番現実的か。

 

 しかし、今回はまた、勝手が違う。違いすぎるのだ。

 

 

 見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)

 

 

 巴マミと群雲琢磨。

 

 最も難解な先輩と、最も難解な後輩。この二人が共闘している時間軸。

 下手をすれば、二人の仲を引き裂きかねない。二人共を敵に回すかもしれない。

 

 

 

 

 思考の途中、窓から外を見ていた私は気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室内を、()から覗き込む存在を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 声を出さなかった私を褒めたいと思う。というか、何しているの?

 鼻先が辛うじて見える程度に顔を覗かせるその子は、逆さまであるが故にその両目が顕わになっている。

 普段は、長い白髪に隠れているだろう、異色の両眼。

 

 そう。私はあの子を知っている。反射的に私は、制服の内側にある空薬莢を握り締める。

 教室を覗き込んでいたその両目が私の姿を捉え、その視線が停止する。

 ……?

 どこか……違和感が…………?

 

[暁美ほむらさん?]

 

 その子からの念話。そう、私はあの子を知っているけれど、あの子からすれば、初対面なのね。

 

[そうよ]

[ちと、話があるんで、時間とれない?

 他の人に見つかると面倒なんで、校舎裏で待っているから]

 

 それだけを告げ、顔が上に引っ込んだ。

 相変わらず、唐突に現れるわね。それをあの子に言っても、いつものように微笑むんでしょうけど。

 話、か。どんな内容かしら? 巴マミとの会話も知っているでしょうから、その上で現れたって事なんでしょうけど。

 

 そういえば、眼鏡をしていなかったわね。

 

 話の内容に対する一抹の不安と、久しぶりに出会えた事の僅かな安堵。

 不可思議な感情に気を引き締めながら、私は時間が流れるのを待った。




次回予告

望むモノを求めて生きる

当然、手に入るとは限らない

それでも、諦められないから



だから、生きる

魔法少女になっても

魔人になってしまっても



人間じゃなくなっても


百三十二章 こうなるなんて思わなかった
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