「どした、ナマモノ?」
「前書き、いるかな?」
「メタいな、おい。
まあ、今更止めるわけにもいかないだろ」
「そんなものか」
「そんなものさ」
「聞いても良いかい?」
「どした、ナマモノ?」
「どうして、サブタイトルと内容がかけ離れてたりするんだろうね?」
「サブタイトルは“本文内から”という縛りプレイ中だからな、イヤン」
「つまり、あえてギャップのありそうなものをチョイスしているのか」
「あるいは、重要な言葉から、だな。
ちなみに、選定基準はその日の気分」
「わけがわからないよ」
「この辺は“今の自分を柱として生きるオレ”にあわせてのものらしいぞ」
「厄介だよね、琢磨も」
「わけがわからないよ」
SIDE out
見滝原郊外に位置する、寂れた教会。
千歳ゆまは一人で、この場所を訪れていた。
ここでの模擬戦。戦った記憶。会話した内容。
それを思い出し、自分に足りないものは何かを探る。
佐倉杏子。巴マミ。群雲琢磨。
三人の先輩は確実に、ゆまの成長を促進させていた。
「み~つけた」
教会を見上げていたゆまの背後からの声に、慌てて振り返る。
その視線の先にいたのは………………呉キリカだった。
呉キリカは魔法少女を狩っていた。
織莉子の指示でターゲットを定め、自身の魔法を最大限に利用して。その殆どを不意打ちで仕留めてきていた。
しかし、先日の銃闘士との戦い。
正面からの勝負において、呉キリカは自分の弱さを目の当たりにする。
織莉子が来てくれなければ、助からなかっただろう。
それではだめだ。それではだめなのだ。
弱いままでは、織莉子に無限に尽くせない。
強く、ならなければ。もっと強く。二度と無様な姿を織莉子に見せない為に。満足いくまで、織莉子と共にいられるように。
だから今回の魔法少女狩りは、正面から行くと決めていた。
「おね~さん、だれ?」
「魔法少女狩り」
ゆまの質問に、キリカは簡潔に答える。その答えにゆまの表情が強張る。
「織莉子の為に。私の為に。
狩られてもらうよ」
「……ゆま、負けないよ!」
強くなりたい。強くならなければ。大切な人の傍にいる為に。
そんな二人の魔法少女が、同時に変身して対峙した。
「ドロレス。ストロベリーカップ。銀世界。プリンセスダイアナ」
「薔薇が好きなの?」
「読書が好きなの。
知識を得ている間、考えている間は“嫌な思い出を片隅に追いやれる”し。
記憶はいつでも、好きな時に取り出せるもんでね」
同時刻。美国邸の庭。設置されたテーブルにある紅茶を飲みながら。
美国織莉子と群雲琢磨の“探り合い”は始まっていた。
「これだけの種類の薔薇。揃えるのは大変だっただろうね」
「お父様の趣味よ」
「なるほど。
群雲のその言葉に、織莉子の表情が驚愕に彩られる。それを無視して、群雲は言葉を続ける。
「その上、ばれそうになったら死に逃げる。
なんで、議員になれたんだろうねぇ?
まあ、真っ当な方法じゃないのは想像に難しくないわけだが」
さも、世間話をするかのような口調と声色で。群雲は死者を貶し、蔑み、冒涜する。
「……どうしてそれを?」
目つきがきつくなった織莉子の怒気を受け流し、群雲は紅茶を飲み干す。
「言ったろ?
読書が好きだって。
当然、それには新聞も含まれているし。
記憶した記録はいつでも取り出せる」
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通常、人間は全ての記憶を意識的に思い出すことは出来ない。
全てを意識的に記憶していたら、脳に掛かる負担は想像に難しくないだろう。
その為、無意識というカテゴリで記憶される事が大半を占める。
街中で擦れ違う全ての人を記憶する事は出来ない。だが、もしかしたら見た事あるかもしれない。なんて現象は無意識に記憶されている事が、無自覚的に呼び起こされた為に起きているという説もある。
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当然、脳自体に負担は掛かるが、それすら魔力で“修理”出来る事を、群雲は知っていた。
美国織莉子。フルネームが解れば、そこから戸籍を<
父親が犯罪者ならば、当然その名前を“無意識の中から、いつ見たのか”を引っ張り出せば、過去の事件に辿り着くのは容易なのである。
「親が親なら、娘も娘。
魔法少女を増やしたり減らしたりと、わけがわからない」
電子タバコを咥え、深呼吸をひとつ。群雲はその言葉で、織莉子の心を削っていく。
「それで、何を言いたいのかしら、
しかし、白い魔法少女がそのままでいるはずもない。
確かに
この少年が“自らを敵とする存在に、容赦するはずも無い”のだ。
しかし、織莉子の心は折れない。折れるはずが無い。
群雲は、織莉子の過去を調べた。だが、織莉子が見据えるのは“未来”なのだ。
揺さぶるだけ無駄。そう判断した群雲が口を開く前に。
織莉子の言葉が紡がれる。
「そういう貴方はどうなの?
自分が唯一の魔人。
“誰よりも特定されやすい契約者”だと知った上で、見滝原の
自分が見滝原にいる事を“宣伝”するかのように。
当然、貴方の目的はそこにはないのでしょうね」
その言葉に答えず、群雲は電子タバコを咥える。
「まるで“本当の目的を隠す為に、解り易い情報を大げさにしている”ようよね?」
群雲琢磨は、自分の為に生きる。
常日頃からそう言っているし、当然キュゥべえも知っている。
キュゥべえから“魔人”の情報を聞き出そうとすると、当然のようにその情報が出てくる。
まるで、
実際に織莉子は、魔人の事を聞いた時に、答えられている。
『自分の為に動く事を信条としている少年だ』と。
自分達の知る情報は、本当の目的を隠す為の
奇しくも、二人の考えは。
立場こそ違えど“一致している”のである。
しかし、織莉子は一歩先を行っている。彼女は未来を知りうるのだ。
終焉の世界で嗤う少年を織っているのである。
絶望の未来を回避しようとする織莉子にとって。
群雲琢磨は、敵でしかありえないのだ。
崩壊した見滝原で哂う存在など。
敵以外には、ありえないのである。
「ふむ……交渉は決裂かな?」
「交わってすら、いなかったわね」
二人は同時に、椅子から立ち上がる。
変身はすでに終えていた。
「排除させてもらうわ」
「では、闘劇をはじめよう」
次回予告
もはや、戦う以外の選択肢は残されていない
善も 悪も 正も 負も
戦いにおいて重要なのは、そんなクダラナイモノなどではない
肉体 精神 魂 意識
重要なのは、その力
百三十五章 実力伯仲