無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「くふふふふ」


百三十八章 怒涛の困難

SIDE out

 

「いや~、死ぬかと思った。

 いや、死んだのかもしれんけど。

 あるいは、生きてないだけなのかもしれんけど」

 

 見滝原の郊外に存在する、教会だった場所。

 そこに向かいながら【殲滅屍(ウィキッドデリート)】は軽い感じで呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は、僅かに遡り――――――――――

 

 美国邸。織莉子が急いで駆けていった後、キュゥべえは群雲の遺体へと近づいた。

 大量の水晶球は、その全てが群雲の頭部へ襲い掛かり。その質量は圧壊させるには充分すぎる威力があった。

 “異物”と呼ぶに相応しい魔人を、死んだ後も有用する為に。回収目的で近づいたキュゥべえが見たのは。

 

 

 

 頭部を修理している最中の群雲だった。

 

 

 

 赤黒い肉が蠢きながら、粘着音を辺りに響かせる。魔法と言う名のファンタジーなんて存在しない、生々しい“修理”だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。

 キミ達の肉体は“魂と連動してはいない”からね」

 

 キュゥべえも。美国織莉子も。見誤っていた。群雲琢磨という少年を。

 この少年が、自らを“敵”としている相手の本拠地に。

 

 素直に“(弱点)”を持って行く筈もないのである。

 

 結晶化された魂。抜け殻となった肉体。通常であれば嫌悪感しかない事実。

 それすらも“自分の為に使い潰す”のが、異物と呼ばれる所以。

 それが群雲琢磨なのである。

 

「流石に、これほど大掛かりな“修理”は初めてだよ」

 

 こともなげに言ってのけ、起き上がった群雲には“右目”が無かった。

 収まっていたのは、義眼。それは“SG(ソウルジェム)の変化した義眼”ではなく、()()の義眼だったのだ。

 

「惜しい物を無くした。

 同じ色の義眼って、めったに無いんだよねぇ」

「それのおかげで、生き延びたのだから良いんじゃないかな?」

「まあね」

 

 白い眼帯を身に着けて、群雲は立ち上がる。変身を解除し、意気揚々と美国邸を去る群雲の右肩に、いつものようにキュゥべえが乗る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「右目に眼帯をして、左半分の世界しかないオレに対する嫌がらせか?」

「わけがわからないよ」

 

 そこが定位置であるかのように、右肩に乗るキュゥべえ。左目しか機能していない群雲にとっては、面倒な事この上ないのだが。そのような事に気を使うなんて、キュゥべえがする筈も無かった。

 

「それにしても、よく織莉子を出し抜けたものだね。

 琢磨には本当に、驚かされるよ」

「出来もしない事を言うなよ。

 しかし、その言い方って事は、やっぱり美国先輩の能力は“未来予知”で間違いはなかったか」

「琢磨も気付いたみたいだね」

「でなきゃ、こうして生きてないさ」

 

 未来予知。その性質の過程と仮定。魔法少女に劣る魔人は、その異常な性質で事実を騙し抜く。

 

「織莉子の未来予知を、どうやって退けたんだい?」

「退けてはいないさ。

 あの状況じゃ、どうにもならなかった。

 だが“未来予知をベースに考えれば、出し抜く事は可能だった”ってだけさ」

 

 群雲琢磨の敗北。それを予知した織莉子。

 

 そこで“群雲琢磨の未来が終わる”のなら“さらにその先を予知したりしない”のではないか?

 つまり“一度死んで()()()”事で“織莉子の未来予知から外れる”事が可能ではないか?

 それが、群雲の狙いだった。

 

 未来予知を的確に使いこなしている。それは群雲との戦い方から、充分に理解出来た。

 だからこそ、群雲はその裏をつく。

 

 使いこなしている。それは即ち“予知する方向を選べる”という事。

 逆を言えば“見ようとしない未来は、見る事はない”という事。

 

 死んだと認識した相手の“未来”を見ようとはしない。美国邸で死んだ群雲の未来を予知しようなんてしない。

 なにかの切っ掛けで、織莉子は再び“殲滅屍が存在している事”に気付くだろう。

 しかし、重要だったのは【今】【あの状況から】【脱却する事】であり。

 群雲は、それを成し得たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ナマモノ」

「なんだい?」

 

 見滝原の郊外に存在する、教会だった場所。

 そこに向かいながら、群雲琢磨はキュゥべえに告げる。

 

「ゆまが呉先輩に殺されたってのは、マジか?」

「マジだよ。

 僕は、それをしっかりと見届けたからね」

 

 電子タバコを咥えて、深呼吸。衝動的にナマモノを殺したくなる気持ちを、群雲は無理矢理押し留める。

 

「一難去って、また一難か」

 

 あるいは、すべてが繋がっているが故の、絶望ラッシュ。

 時間が平等に、一定に流れるが故の、怒涛の困難。

 

「事実に違和感を感じるって事は……きっと“そういうこと”なのか」

「何の話だい?」

 

 煙をふかしながら、群雲はキュゥべえの質問には答えずに、自らの情報をまとめていく。

 事実に違和感がある。すなわち、事実に至る過程を“仮定できない”という事。かつて、佐倉杏子の過去に感じたモノと同質。ならば、疑うべきは前提。間違っているのは“どの前提”なのか?

 群雲琢磨は考える。自分が美国織莉子と戦っていたのと、ほぼ同時期に起きていたであろう戦い。

 

 だが“その戦いが起きている事こそに、違和感を感じる”のである。

 

「なあ、ナマモノ?」

 

 もやもやとしたもの。それを自分の中で枠を作って形にする。その為に必要なのは……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 群雲琢磨

 

 ナマモノと別れて、以前は4人で進んだ道を、独りで進む。

 

 まさか。まさかである。

 

 ゆまが殺されているだなんて、想像の外だった。

 有り得ない。ありえない。アリエナイ。

 それが、起きて良い筈が無いのだ。

 二人の先輩に対する言葉をどうするか。吟味しながら、オレは教会前に辿り着く。

 

 残念ながら、戦闘の跡を読み取るなんて芸当は無理。ただでさえここで模擬戦やってたんだし。

 

 しかしながら、目聡く“証拠”を見つけてしまうあたり、オレって最低だよなぁ。

 ゆまのSG(ソウルジェム)の欠片と思われるモノ。美しき宝石のかけら。真っ先にそれを見つけてしまう辺り、オレって最低やね。知ってるけど。

 

「出来る事なら……もう少し仲良くなりたかったものだがな」

 

 小指の爪より小さな、その欠片を拾い、オレは呟いた。

 

 千歳ゆま。佐倉先輩に救われ、佐倉先輩を想い、たった一度だけの奇跡を、佐倉先輩の為に叶えた少女。

 千歳ゆま。群雲琢磨を嫌い、群雲琢磨を倒そうとし、群雲琢磨に届かなかった、哀れな少女。

 千歳ゆま。巴先輩に懐き、巴先輩に教えを受け、巴先輩に一緒に説教をされた、幼い少女。

 

「千歳ゆま。

 やっぱりお前は『不合格』だよ」

 

 死ぬなよ。何で殺されてるんだよ。オレを倒すんじゃなかったのかよ!!

 オレは、お前に倒されるのを楽しみにしてたんだぞ!!!!

 オレには出来なかった事。誰かの為に願った事。それが、どれだけ羨ましかったと思ってんだよっ!!!!

 

「出来もし無い事を、口走ってんじゃねぇよ」

 

 言いながら、オレは咥えていたタバコを<部位倉庫(Parts Pocket)>へ戻し、手にしていた欠片を躊躇い無く、口に運ぶ。

 

「硬っ!?」

 

 仕方ないので、そのまま飲み込む。うぉっ!? 喉に刺さった!!

 

「げっ、げほっ!?」

 

 痛覚は遮断しているので、痛くはないが、異物感パネェ!?

 そんなにオレが嫌いか、ゆま。うん、知ってるけどね。

 

「あ゛~。

 なにやってんだろうな、オレは」

 

 馬鹿な事してますね。知ってますよ。

 これで、ゆまの治癒能力がオレに宿ったり……ないか。

 仮に、そんな事が出来るのなら、魔法少女狩りまくるぞ、オレ。

 出来ないし、しないけど。

 

「……うん?」

 

 ここに来て、オレはようやく気付いた。ここでゆまが殺されたのなら。

 

【ゆまの抜け殻は】【どこにいった?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教会の扉を開けたオレが見たのは。

 横たわるゆまと、その前に座り込む……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だから、キョーコと一緒に戦うもん!

 ゆまだって、キョーコを守れるもん!!』

 

 死んだら……誰も守れないじゃないかよ…………。

 わかってるのかよ、ゆま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐倉先輩」




次回予告

後悔 後から悔やむ事



どうすれば、この結末を回避出来たのだろう?
どうすれば、幸せな結末を迎えられたのだろう?
どうすれば? どうすれば? どうすれば?






後悔 後から悔やむ事

百三十九章 自棄
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