無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「心はどこに宿る?」
「胸か? 脳か?」
「オレは、こう答えるね」
「魂だと」


百四十二章 オレには見えている

SIDE out

 

 ジリ貧。周りから見ればそう言わざるをえない状況が続いていた。

 幻影を巧みに操り、的確に攻撃する『オフィーリア』に対し、肉体を道具として割り切る事で、疲労すらも切り捨てる群雲。

 どれだけ幻影を斬り捨てても、無意味。

 どれだけ肉体を傷付けても、無意味。

 双方が両方共、ジリ貧だった。

 

 

 

 

 それは、周りから見れば、だろう。

 当人達は、そうは思っていなかった。

 例えるならソレは、意地の張り合い。

 

 貴女はオレのモノだろう? お前はアタシのモノだろ?

 

 そんな、恋人の痴話喧嘩。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 群雲琢磨

 

 刀と鞘を持ちながら。

 オレは、大の字になって倒れていた。

 

 ちっきしょ、キリが無い。

 

 幻影魔法。おそらくは『ロッソ・ファンタズマ』だろう。魔女っても使えるのかよ。むしろ、魔女ったから“再び”使えるようになったのか。

 はっきり言おう。どれが『本体』か解らないんだよ。

 しかも『幻影』でありながらも『実体』を持ってるんだから、性質が悪い。幻だからと無視すれば、後ろからグサリである。オレじゃなかったら死んでるね。

 しかし、まずい。こっちの魔力は無限じゃないんだ。

 全身のバネを用いて飛び起きると、オレは一度、日本刀を鞘に納め、左手の<部位倉庫(Parts Pocket)>へ。

 そしてオレは、右手の平の<部位倉庫(Parts Pocket)>から

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソウルジェムを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初は、ただの思い付きだった。契約者にとって、絶望を産む切っ掛けにもなりうる、魔法少女システム。

 自分の為に生きるオレは当然、このシステムも自分の為に活用しなければならない。

 そんな時の、ふとした思い付きだった。

 

 【SG(ソウルジェム)を<部位倉庫(Parts Pocket)>に収納しとけば、オレ、無敵じゃね?】

 

 問題点、不安点は当然あった。

 

 SG(ソウルジェム)が今現在、どの程度穢れているのか、把握できない事。

 収納した状態で、自分がどれだけ“肉体を操作出来るのか”という事。

 

 なによりも。

 

 <部位倉庫(Parts Pocket)>の特徴にこそ、問題があった。

 

 

 

 “倉庫内の時間が止まっている事”

 “異空間と思われる倉庫内が、コントロール範囲外の可能性”

 

 

 収納した瞬間、意識が途切れてしまったら。オレは二度と目を覚まさないだろう事は、容易に仮定出来るのだ。

 しかし、それを乗り越えられたのなら。

 

 結果として言えば、オレは賭けに勝った。<部位倉庫(Parts Pocket)>にSG(ソウルジェム)を収納した状態でも、オレはオレのままだったのだ。

 

 考えてみれば、当然でもあった。

 オレが、オレだけの為に願い、オレだけの為に叶った結果の、オレだけの為の魔法。

 大前提として、そんなオレの魔法が、オレの為にならないはずがないのだ。

 

 オレは、外的要因で死ぬ事は無くなった。

 美国先輩との戦いで、平然と“死”に向かえた理由がこれだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 右手の上に乗る、オレの魂の結晶。緑の義眼。

 ゆっくりと、その形状が変化する。

 台座付きの宝石へと。

 

 魔法少女と魔人の違いなのか。オレの宝石は卵型ではなく、菱形だ。

 あの孵卵器(ナマモノ)の事だ。

 魔法少女と魔人の名称の違いのように。

 【魔女に成る者】と【魔獣に成る者】の区別として、物質化の際に形状を変えてるんだろう。

 魂を物質化しているのはインキュベーターなんだから、それぐらいやってても不思議じゃない。

 

 知ったこっちゃないがね。

 

 続けて取り出したGS(グリーフシード)SG(ソウルジェム)を浄化し、魔力回復。スッキリ。

 

 用済みとなった“同胞の成れの果て(グリーフシード)”を傍らに放り捨てる。

 魔女に成る前。魔法少女だった頃。どんな希望を持って。どんな絶望に押し潰されたのか。

 知る術がない以上、オレにとっては“生きる為の餌”でしかない。素敵に狂ってますね。知ってますよ。

 

 SG(ソウルジェム)を義眼に戻しながら、オレは再び日本刀を左手に取り出す。

 そこで気付いた。行進していた使い魔の一人が、近づいてきてる。なにさ?

 

 使い魔は、オレに襲い掛かる訳でもなく、オレが投げ捨てたGS(グリーフシード)の前に立ち。

 火を噴いて、GS(グリーフシード)を破壊した。火、噴けるんだ、キミ。

 その際、不自然に首が長くなっていた。伸ばせるんだ、首。

 用事が済んだのか、その使い魔はオレに何かするでもなく、行進する列に戻っていった。オレに対してなにもせんのかい。

 

 なんとなく。オレは眼帯を右手の<部位倉庫(Parts Pocket)>に収納し、入れ替えるように右目()を収めた。

 あるがままの自分で、なんて。そんな不似合いな感傷でもあったのかもしれない。

 久しぶりに“あるべき場所”に収まった“(ソウルジェム)”は。

 久しぶりである事なんて“知ったこっちゃない”って感じで、違和感無く収まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、全ての音が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 過程も仮定もいらない。原因も結果もどうだっていい。ただ、オレには()()()()()

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 オレには見えている。【彼女】が見えている。

 

 居合いの構えをとる。左足を引き、日本刀を腰に添え、右手を柄に。

 基本的に、右目が使い物にならないオレが、逆手居合いを用いる理由がこれ。

 一般的な居合いの構えは、右目が前になるからだ。

 

 しかし、今のオレには見えている。

 

 抜き放とうとする、オレの右手は順手。逆手ではなく、順手。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレには見えている。二体の『幻影』と【彼女】が。

 白い馬に跨り、煌びやかな衣装を着て、長槍を携える【佐倉杏子】が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレには見えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

終焉 それはあまりにも残酷で



終焉 それはあまりにも当然で




終焉 それはあまりにも優しい









終焉 それを告げるは 終の太刀


百四十三章 無風















TIPS 群雲琢磨の勘違い WTMk-Ⅱ2nd

やあやあ、遠からん者は音に聞け、近くば寄ってケーヤクしてよ!!
みんなのドメスティックバイオレンス、キュゥべえだよ!!

前回のつづきを全開でいくからついてきてね? 無理? ならボクとケーヤクすればモーマンタイだよ!! 今ならソウルジェムをギミック付にする特典もつけちゃう❤



<電気操作(Electrical Communication)>が“魔法”ではなく“細胞発電能力”によるものならば
いったい“固有装備”の能力はなんだろう?
そもそも“両手袋と両足ブーツ”が魔道具なのかどうか?

さあ、みんな!! 思い出してみよう!! 無理? ならDVDを購入して、資金を提供してよ!! Blu-rayだと、もっと嬉しいな!!!!

“魔道具の使用は、変身しなくても可能”なんだよ!!

原作アニメで、マミがお菓子の魔女結界内で、ほむほむをリボンで拘束したのを覚えているかい?
あの時、マミは変身してはいなかったよ QEDならぬ、QBEだね!! ボクです!!




では、琢磨の魔道具はなんなのか? それを解き明かすのは当然、琢磨の魔法さ!!
それは、今回の話でも、大活躍だった魔法

そう!! <部位倉庫(Parts Pocket)>だよ!!

以前のように、幕間から抜粋して、要点を【】しよう!! 喜べ!!




Lv.1 部位倉庫<Parts Pocket>

収納技能
体の一部分と異空間をつなぎ、道具を収納する魔法
収納出来る物の大きさに規定はないが、【基本、一箇所にひとつ】
【例外として右の手の平だけは、収納数無限】






はい、おかしい話がだいぶ

例外? 自分の魔法に? 自分の願いが生み出した魔法に? 例外?
さすが、たくちゃんってば、い☆ぶ☆つ★


では、同様の能力を持つ魔法少女を思い出してみよう!! ほむほむぅぅぅ!!

盾の中に、あらゆる物を収納する魔法少女 『収納の盾(スクード・ディ・ストカッジョ)』を持つ魔法少女だね!!

時間と空間は、密接な関係性を持つから、そこに疑問点なんてあるわけないけど

“時間停止”を使用する魔法少女の魔道具は“空間を操作して、道具を収納する”

その点が、たくちゃんにも当てはまるわけさ!!

何故、右手の平だけが、収納数無限なのか? それは『右手袋こそが魔道具』だからって事になるのさ!!

えげつないのは、それが“魔道具の能力ではない”と勘違いしているたくちゃんだよね
『右手での収納が可能なら、左手でも可能じゃね?』
『体の一部を出入り口に、収納出来るんじゃね?』
そんな勘違いが<部位倉庫(Parts Pocket)>を形作ったわけさ

すなわち

右手の平の“収納魔法”は固有装備の能力である
それ以外の“収納魔法”は固有装備の模倣である

<部位倉庫(Parts Pocket)>という“ひとくくり”でありながら、その本質は別
さっすがたくちゃんだ!! そこに痺れたりしない!!



右手の平以外を“別空間をいう名の見えない袋”だとすれば
未変身時の右手の平は“魔道具への出入り口”だから、収納数無限の状況が変わらないってわけさ!!

そうした“空間操作”が、その能力を開花させた それが<一部召還(Parts Gate)>だね
体の一部を出入り口にするのではなく、体の一部を空間から抜き出す
勘違いから、ここまで能力を発展させるんだから、たくちゃんってば


い・ぶ・つ❤















これだけの勘違いを、そのままに発展させる
それこそが、群雲琢磨の魔法特性

重要なのは、本編の群雲琢磨が【勘違いに気付いていない】事だよね

次のTIPSで、群雲琢磨の魔法特性である“無法”を解説するよ
















無法 すなわち















  法  則  を  無  視  す  る  魔  法

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