無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「学校には行かないの?」
「今更、小学校に通っても……ねぇ?」
「……同意を求められても……」
「わけがわk「そぉい!」ぎゅっぷい!?」


十三章 よく解らない子だ

SIDE 群雲琢磨

 

 三人の魔法少女に出会った次の日。

 オレは、一人で行動していた。

 ……そら、そうだ。

 中学に通う三人と、小学校自主中退のオレでは、行動時間が違う。

 ……が、日中はダンボールハウスの人達に混ざって、眠りこけてました。

 魔法少女達の戦いを思い出し、自分に適応出来ないか考察してたら、太陽がこんにちわ(゜∀゜)

 工事中のビルを抜け出し、彷徨っていたら、いつの間にか寝てました。

 ……その内、体壊すな、オレ……。

 

 で、目を覚まして、彷徨っていたら、鹿目先輩と暁美先輩にばったり。

 せっかくなので、行動を共にする事にしました。

 ……あれ? オレ食事してなくね?

 

 

 

 

 

SIDE 鹿目まどか

 

 放課後。

 さやかちゃんと別れて、ほむらちゃんと一緒に街中をパトロール。

 その途中で。

 

「あ」

 

 昨日出会った、年下の魔法少年。

 群雲くんを発見した。

 昨日と同じ、黒いコートに身を包み、眼鏡を右手の中指で押し上げた状態で。

 おもちゃ屋さんの前で佇んでいた。

 ……欲しいおもちゃでもあるのかな?

 おもちゃ屋の前に立っている少年を見れば、そんな感想を抱くのは当然で。

 でも、群雲くんは魔人だ。

 小学校を“あんな所”とか言っちゃうような子だ。

 でも現実、群雲くんはおもちゃ屋の前で、立ち尽くしている。

 そして、わたしは気付いた。

 群雲くんが見ているのは、店頭に並ぶおもちゃじゃなくて。

 店内で買い物をしている、親子だと。

 

 

 

 

 

SIDE 暁美ほむら

 

 群雲くんは、店内の親子を見ていた。

 私たちから見たら、横向きに立っているけど、長めの白髪と眼鏡のせいで、その表情は分からない。

 でも、なんとなく。

 ――――寂しそう。

 そんな、印象を受けた。

 次の瞬間、群雲くんがこちらを向いた。

 歩き出そうとして……目が合った。

 

「……oh」

 

 何故か、流暢な発音の後。

 

「昨日ぶりだね、先輩達」

 

 両手をコートのポケットに入れながら、群雲くんが声を掛けてきた。

 そう言いながらも、眼鏡越しの左目は、こちらを見ていない。

 ……照れてる?

 

「欲しいおもちゃでもあるの?」

 

 近づきながら、鹿目さんが群雲くんに声を掛ける。

 一緒に近づきながら、私は二人の会話を聞く。

 

「いやいや、おもちゃに興味は無いよ」

「でも、おもちゃ屋さんをみてたでしょ?」

「oh、バッチリ見られてた。

 これはもう、死んで詫びるしか」

「なんで!?」

 

 解った事がある。

 群雲くんは……よく解らない子だ。

 

「知ってるか?

 嘘吐きは極道の始まりなんだぜ?」

「違うよ!?

 極道じゃなくて、泥棒だよ!?」

「大丈夫。

 死ぬまで借りてるだけだから」

「なに、その理屈!?

 どの辺りが大丈夫なの!?」

「知ってるか?

 立証されなきゃ、犯罪にはならないんだぜ?」

「黒い!?

 なんか黒いよ、群雲くん!?」

「いや、オレの髪の毛は見事に総白髪なんだけど」

「髪の毛の話をいつ始めたの!?」

「今」

「今!?」

「ところで、鹿目先輩。

 実はオレ、魔人なんだ」

「知ってるよ!?

 昨日話したばかりだよね!?」

「そしてオレ、たけのこ派なんだ」

「チョコの話に飛んだ!?」

「わけがわからないよ」

「こっちの台詞だよ!?」

 

 ……うん、よく解らない。

 ただ、なんとなく。

 照れ隠し、のように見えて。

 

「あれは、8歳の時でした。

 突然、年上のお姉様に服を脱がされて」

「いきなり、何の話!?」

「最終的には、気持ち良くなるからと、いやがるオレを無理やりに……」

「ななななな!?」

「いや~、初めてだと刺激が強いよねぇ~。

 整体マッサージって」

「…………へ?」

「さて、鹿目先輩はナニを想像しましたか?」

「あ……う……」

「今日のメモ。

 鹿目先輩は、意外とスケベである」

「やめて~!」

「じゃあ、エッチで」

「意味一緒だよね!?」

「じゃあ、下品で。」

「なんか、悪いイメージになった!?」

「ちなみにオレは、整体マッサージを受けた事はありません」

「なにもかも、嘘だったの!?」

「失礼な。

 昨日話したじゃないか。

 オレは魔人だって」

「話が戻ってる~!?」

「そして、いじめられっこなんだ」

「そうなの!?

 むしろ今、私がいじめられてない!?」

「そして、たけのこ派なんだ」

「それ、聞いた!」

「知っているのか、雷電!?」

「言ってたよ!?

 そして、雷電って誰!?」

 

 とりあえず、わたわたとしている鹿目さんが可愛い……。

 そして、群雲くんも、よく見ると顔が赤い。

 やっぱり、照れ隠しなんだ。

 ……方法はどうかと思うけど。

 

「西洋剣より、日本刀派です」

「また、話が飛んだ!?」

「でも、拳銃の方が、も~っと好きで~す」

「ゾウさん!?」

「失礼な、魔人だってヴぁ」

「そうじゃなくて!?」

「ライオンより、トラ派です」

「それも、聞いてないよ!?」

「でも、ウーパールーパーの方が、も~っと嫌いで~す」

「嫌いなの!?」

「さて、真面目な話をしようか」

「ここで、切り替えるの!?」

 

 全部にツッコミを入れる鹿目さんも、優しいなぁなんて、場違いな感想を抱く。

 ……むしろ、私が群雲くんの標的にならないか、不安なんだけど……。

 でも、群雲くんの纏う空気が一変した。

 眼鏡を中指で押し上げながら、鋭い視線を私たちに向ける。

 

「今のところ、魔女の気配は感じられない」

「ほんとに、真面目な話なんだね」

「そして、たけのk「それはもういいよ!?」むぅ……」

 

 言葉途中でつっこまれて、少々不服そうな群雲くんは……年相応な感じ。

 でも、多分。

 私よりも……強い。

 

「オレはこのまま、魔女の気配を探して彷徨う……と、言いたいんだけど」

「なにか、あったの?」

「……この街に来たばかりだから、地理がよく解らない」

 

 聞けば、群雲くんは魔女の気配よりも、地理、地形の把握の方を、重点的に彷徨っていたらしい。

 魔女を狩る。

 それに、人生のすべてを費やしている。

 その為に必要な情報を、一人で得ようとしている。

 そんな、印象。

 

「まあ“ストック”はまだあるし、焦る必要もないが」

 

 そう言って、彼は笑う。

 長い白髪と眼鏡で全体が見えないけど。

 彼の口元は笑みを浮かべている。

 

「先輩たちの足を引っ張るのは、笑えない」

 

 その笑顔を、私は。

 

 ――――――――からっぽだと、感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE キュゥべえ

 

 街中を一緒に回っている三人を見つけた。

 

「お前も来たのか、キュゥb……ナマモノ」

「言い直す意味がわからないよ」

 

 群雲琢磨という少年は、はっきり言って異端だ。

 契約をした少年。今も、生きている魔人。

 なにより、その性格が異端だ。

 早期に“堕ちた”なら、回収するエネルギーの足しになる。

 そんな判断から、偶然出会った少年と契約した。

 だが、現実は違う。

 堕ちるどころか、こちらに穢れたGS(グリーフシード)をいくつも渡している。

 魔法少女や魔人のSG(ソウルジェム)は、因果律により、その素質を変える。

 魔人が短命である理由の一つに“SG(ソウルジェム)の許容量の少なさ”が上げられる。

 そう。

 間違いなく、琢磨は魔法少女に比べて“魔力保有量が少ない”んだ。

 それはすなわち“SG(ソウルジェム)の穢れの許容量”を意味する。

 

「ふと、思ったんだが。」

 

 琢磨が、声を上げる。

 

「仮に、魔女を見つけたとして……どうやって連絡する?

 携帯とか持ってないし、そもそも連絡先知らないし」

 

 やはり、わからないのはその性格。

 一人、各地を転々としながら、魔女を狩り続ける。

 GS(グリーフシード)を“取り分”と明言する。

 にもかかわらず、今は“魔女を見つけたらどう連絡するか”を考える。

 ……一人で戦う、とは考えてはいない。

 GS(グリーフシード)が目的なら、まどか達に連絡せず、一人で魔女を討伐して、GS(グリーフシード)を独り占めにすればいい。

 

「キュゥべえを介して、テレパシーで連絡するとか?」

「それが、最適だと思う」

「……え、テレパシーとか使えるん?」

 

 全員が立ち止まり、沈黙。

 

「知らなかったの!?」

「知るわけないジャン!?

 ずっと一人だったんよ、オレ!?」

 

 確かに、琢磨は一人だった。

 テレパシーを送る相手がいなかったのだ。

 

「てーか、ナマモノ!

 そんな便利機能があるなら、なんで教えてくれないんさ!?」

「聞かれなかったからね。

 そもそも、琢磨にはテレパシーを送る相手なんていなかったじゃないか」

「お前がいるだろ、ナマモノ!

 孵化直前のGS(グリーフシード)を見つけた時とか、お前に回収してもらえば、無駄な戦いを減らせるジャン!」

 

 それは、僕達にとっては、あまり意味が無い。

 僕達に必要なエネルギーは“感情”により作られる。

 最も効率がいいと判明しているのが“第二次成長期の少女による、希望から絶望への相転移”だ。

 無論、絶望により誕生した“魔女の卵”は、回収する事でそれなりのエネルギーが得られる。

 そう。

 “それなり”に、だ。

 使い魔が孕んだGS(グリーフシード)から回収できるエネルギーは“魔人”を下回る。

 僕達にとって重要なのは“エネルギーの回収”であり、それは“GS(グリーフシード)の回収”と完全に一致はしないのだ。

 ならば“孵化前のGS(グリーフシード)を回収”するよりも“孵化した魔女と魔法少女が戦う”方が、効率がいいのだ。

 

「ま、いまさらか。」

 

 そう呟き、琢磨は再び歩き出す。

 この、切り替え。

 不条理を、不条理だと認識する前に。

 現実に、絶望を感じる前に。

 琢磨は切り替える。

 もちろん、それでもSG(ソウルジェム)に穢れは溜まる。

 だが、切り替える事で“それ以上の穢れを無理矢理押さえ込む”んだ。

 この性格こそが、琢磨が今も堕ちていない最大の要因。

 “希望から絶望への相転移”を望む僕達にとっては。

 

――――――――――天敵、と呼べるのかもしれない。




次回予告

全ての事象を、完全に説明する事は出来ない

たとえ、過去に起きた、もはや不変の事柄ですら





悲劇にもなるし、喜劇にもなる



それを、どう受け止めるかは、観客の心





十四章 笑ってるんだ

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