無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「考えたんだけれど」
「なんだ、ナマモノ?」
「ここにハジヶえを呼べばいいんじゃないかな?」
「おい、やめろばか」


百四十四章 二人は、もう、いない

SIDE 群雲琢磨

 

 帰ってきたオレ達は、三角のガラステーブルの前に座る。

 一辺に巴先輩。一辺にオレ。もう一辺にいつも座っていた二人は、もう、いない。

 

「そうだわ。

 紅茶、淹れましょうか」

 

 若干震えた声で、巴先輩は立ち上がった。

 それに続く形で、オレも立ち上がる。向かうのはベランダ。

 “流れ”だけは、いつも通りなんだけど、な。

 

 電子タバコを咥えて、いつものように深呼吸。でも、オレの視線の先。三角テーブルには、誰もいない。

 二人は、もう、いないのだ。

 

 しばらく後、いつもより時間が掛かったが、巴先輩が紅茶の準備を終える。

 

「あ……」

 

 当然のように用意された“四人”分。

 

「太るよ?」

 

 茶化すつもりで言った言葉も、巴先輩には届かなかったようだ。一層暗い表情で、()()となった分を片付ける。

 テーブルの前に戻り、オレ達はゆっくりと紅茶を口に運ぶ。

 

「いつもと同じ紅茶のはずなのに……。

 あまり、美味しくないわね」

 

 同感。だが、声に出すのは控えておく。オレにしてみれば、これからが大変だからな。

 

 

 

 

 

 

 【では、闘劇をはじめよう】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE out

 

「琢磨くんは知っていたのね。

 魔法少女が、いずれ魔女に成る事を」

「【知っていた】【そして】【極力黙ってた】」

「何故?」

「【知ったとしても】【なにも変わらないから】【魔法少女が魔女に成る事】【それを】【覆せる訳ではないから】」

 

 魔法少女システム。知っていても。知らなくても。

 事実には、まったく影響しない。

 故に、群雲は黙っていた。誰にも言うつもりはなかった。

 その事実を知る事が“マイナス”にはなっても“プラス”になるとは、考え難かったからだ。

 それを証明するかのように、魔法少女システムを知っていた杏子は、()()()()()()()のだ。

 

「そう……私だけが“蚊帳の外”だったのね」

「それは違うんじゃないかな?」

 

 自虐的なマミの言葉を、いつの間にか現れたキュゥべえが訂正を加える。

 

「マミもまた“魔法少女”だからね。

 完全に無関係とは言えないよ」

 

 無関係であるはずがない。マミもまた魔法少女であり。

 魔女になる結末が、充分に在り得るのだから。

 

「【それはそれ】【これはこれ】【そんな風に割り切れるのは】【オレぐらいだろうね】」

 

 それもまた、群雲琢磨の異常性。擦り切れた精神が現実を【軽い】ものに削ぎ落とす。

 

「……何が目的なの?」

 

 ゆまの死。杏子の魔女化。もはやマミには“信じられるモノ”はない。

 

「宇宙の延命さ」

 

 だから、キュゥべえの“目的”が、あまりにも“遠い”のだ。

 

「魔法少女が魔女になる。

 その際に発生するエネルギーは、エントロピーを凌駕するんだ。

 それを回収し、宇宙の延命にあてる。

 それが“孵卵器”である、僕の役割さ」

 

 だから、キュゥべえの“言葉”が、あまりにも“無為”なのだ。

 

「できるなら、ゆまも“魔女に成ってほしかった”のだけどね」

 

 だから、キュゥべえの“存在”が、あまりにも“非情”なのだ。

 

「誤解をしないで欲しいのだけど」

 

 だから、キュゥべえに銃を向けるのは、あまりにも“当然”だったのだ。

 

「僕は別に、君達を不幸にしようだなんて考えて、動いている訳ではないよ」

「その言葉を……信じられるわけないじゃない!!」

 

 涙を流しながら、小型のマスケットを向けるマミと、決して変わる事のない孵卵器。

 紅茶を飲みながら、魔人はその様子を見届ける。

 

「考えてもみてごらん?

 僕は“希望”を。

 君達の“願いを叶えた存在”だよ?

 不幸にする為ならば、そんな事をする必要がないじゃないか」

 

 人類と孵卵器。その決定的な違いは。

 

「もしも“契約”が不幸を産んだのなら。

 それは僕ではなく、君達“魔法少女”の問題だ。

 願いを叶えた後の事柄まで、僕のせいにしないでほしいな」

 

 孵卵器。インキュベーターが“感情”を持ち得ない事。

 そして。

 

「君達はいつもそうだ。

 魔女……すなわち“魔法少女の犠牲”の上に成り立っている生を考えず、身近な存在の死に心を掻き乱す」

 

 それ故に“心を痛める事”の重要性が理解出来ない事なのだ。

 

「マミは、生きたいと願った。

 僕は、それを叶えた。

 君の願いの上に積み上げられた“同胞”の犠牲を考えてみなよ。

 それに比べれば“仲間”が二人、いなくなったぐらい、大した事じゃないだろう?」

 

 ただでさえ。状況に置いていかれていたマミは。

 孵卵器(インキュベーター)の言葉が、情報を得る為に必要な事であり。

 

 その情報が、マミを追い詰めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………そうね」

 

 手にした銃を置き。マミは俯いて、呟く。

 

「ただ一人、生き残る事しか願えなかった私が、今更なにをって話よね」

「【クチ】【挿ませてもらうぜ】」

 

 それまで黙っていた魔人の【闘劇】がはじまる。

 敵は当然【自分以外(マミも含まれている)】。

 

「【巴先輩が】【何も言えないのなら】【家族が死んでいる事を理解した上で】【自分の為にだけ願った】【オレの立つ瀬がないんだが】」

 

 顔を上げたマミが見るのは、白い眼帯をした白髪の少年。

 

「【勘違いをしちゃいけない】【オレ達は願いを叶えた】【その先にある不幸を】【()()()()()()()()()()()()()()()()】」

「契約をした先の現実を受け入れないのかい?」

「【黙ってろよ】【下等生物】」

 

 孵卵器をもってして。異物と称される存在。

 未来予知をもってして。(しかばね)と称される存在。

 

「【大前提として】【なんで】【現実なんざ】【受け入れなきゃならんのさ】」

 

 契約前(普通の現実)こそが最悪(絶望)であった、子供の戯言。

 

「宇宙の延命とか、知ったこっちゃないんだよ」

 

 ただ、自らの為だけにしか生きられない上で。

 

「良い事がある。

 悪い事がある。

 そんな程度の“当たり前”なんざ、てめぇの契約が無くたって起こりえるんだよ!!」

 

 それでも、愛し合う事が出来た少年の生き様。

 

「勘違いするな、下等生物!!

 人類(オレ)が上!! 孵卵器(オマエ)が下だ!!!!」

 

 張り上げた声が、響き渡る。

 その言葉に込められた“意味”を“理解”したキュゥべえは。

 

「わけがわからないよ」

 

 いつものように、いつもの言葉を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 巴マミ

 

 群雲琢磨。私の知る少年は、私の考えている以上に、色々な事を考えていて。

 群雲琢磨。私の知る少年は、私が思っている以上に、色々な事に思いを馳せて。

 群雲琢磨。私の知る少年は、私が知っている以上に、色々な事を知っていた。

 

 

 

 キュゥべえ(理解不能)に対し、正面から言葉を発する琢磨くんは。

 

 

 

 それでも、やっぱり。私の知る琢磨くんで。

 この子もまた、私を“繋ぎ止めてくれてる”んだと。

 今でも、そう思うの。

 

「僕としては、マミの」

「消えて」

 

 だから、私は告げる。

 キュゥべえ(あなた)がわからないように、私もわからないから。

 

「今は、あなたと話す事なんてない」

 

 私の言葉の後、キュゥべえは何を言うでもなく、その姿を消した。

 残されたのは、私と琢磨くんの二人だけ。

 

「【魔法少女が魔女に成る】【これは変えられない事実】」

 

 冷めてしまった紅茶をそのままに、私は琢磨くんの声を聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【だが】【魔女に成らなければならない】【そんな決まりは無い】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告


はじめた闘劇が、いつ終わるのか


もはや、当人にもわからない






だから、魔人もまた、同じように言うのだ















わけがわからないよ















百四十五章 約束が違う















TIPS 有頂天孵卵器ハジヶえ★ウザス































え? カメラまわってる!?
やあ、みんな!! 今日もケーヤクしてコーカイしてる?
おでんのはんぺんみたいな味がするハジヶえだよ!!

今回の話は、たくマギ作者の独自解釈だよ!!
メタい? ボクにそれを言った所で、何の意味も無いのは知ってるだろう? ウフフ






インキュベーターのメインとするのは宇宙の延命!!
その為に必要なエネルギーの回収!!
そのエネルギーの元となるのが感情!!



さて、たくマギ作者はここで考えた

( ´へ`)<どうやって、このシステムを構築したんだろう?



このシステムを構築する上で、必ず必要となるもの!!

それは、ボクでもなければ、キュゥべえでもない!!
高度なテクノロジーでもなければ、崇高な理論でもない!!!!















そう!!!! 【感情】さ!!!!

宇宙延命の為のエネルギー!! それを得る為の“素材”!!
感情がなければ、そもそもそれを“変換”する事など不可能だ!!!!

たくマギ作者の考察にして、独自解釈にして!!


❤も★う★そ★う❤










インキュベーターは、元々“感情を保有していた”
感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明した際、インキュベーターが“自分達の感情を元にしないはずが無い”


結果“感情を吸い尽くした”


だから、宇宙延命の為に、他の知的生命体を求めて、地球に辿り着いた



有史以前から、人類と接触しているインキュベーターが感情を“理解出来ない”のは“自分達の感情を、宇宙延命の為に使い切ったから”
インキュベーターは、感情の発生した個体を“精神疾患”として処理をする
「無駄に潰されるのは、もったいないじゃないか」とか言っちゃうのがキュゥべえだよ? ボク? ハジヶえだよ!!
無駄にしない為の処理方法が“エネルギーを得る為に、感情を吸い尽くす”のであれば?



これが、たくマギ作者の考察さ!! 孵卵器えげつないね!!
褒めてくれてありがとぉ!!!!








もう、設定解説する際、ボクじゃなきゃ駄目なふいんき(ry)だよね!!
さあみんな!! ボクの活躍が見たいのならケーヤクしよう!!
今なら、ソウルジェムを合体ロボットにする機能もつけちゃうよ!!!!

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