無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「今回のTIPSで、前回の【】に対する補足をするとでも思ったかい?」
「しないんだ」
「このハジヶえ!! そんな容易い存在じゃない!!」
「で、いつまで前書きに居座るんだい?」
「ネタが尽きるまで!!」
「わけがわからないよ」


百四十八章 最初の一歩

SIDE out

 

 異物の肩に乗って。ナマモノは沙々に当然の事実を告げる。

 

「キュゥべえ……!?」

 

 孵卵器。インキュベーター。交渉用端末機。キュゥべえ。

 異物と交わした取引に基づいて。キュゥべえは今、沙々の前に姿を現した。

 

「裏切ったのか、キュゥべえ!?」

 

 ナイフに四肢を貫かれ、地面に固定されてしまった沙々の憎悪に満ちた声も、キュゥべえは受け流す。

 

「僕は中立だよ。

 誰の味方でもないんだから、裏切る事なんて不可能さ」

「だったら!!

 なんでお前は【そちら側】にいる!?」

 

 理解出来ないだろう。そも、異星物を理解する事など不可能なのかもしれない。

 

「【ナマモノは中立だ】」

 

 そして【―――】は知っている。理解する必要など無い事を。

 

「【中立であるからこそ】【取引が成立するのさ】」

 

 取引。それは【双方に利がある】事が条件。

 突き詰めれば【それ以外は要らない】のだ。

 

「僕が【魔人】と交わした取引。

 それは【手を出す魔法少女の情報】だけ」

 

 そう。情報だけである。

 だが、それで充分であったのだ。

 この【―――】にとっては。

 

「【オレの知らない魔法少女が手を出している】【そう】【魔法少女であるなら】【ナマモノが知らないはずが無い】」

 

 そして、それは。

 【知りさえすればどうとでもなる】と。

 

「【実に見事だったよ】【洗脳を用いて場を掻き乱す】【お前は“合格”さ】」

「惜しむらくは、洗脳の“対象者”だね」

 

 魔人と孵卵器。取引により【一時的な協力関係を築いた】二つの異物が、沙々を相手取る。

 

「見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)

 この縄張りの所有チームであり、そのリーダーであるマミを最初に洗脳したのは、実に見事だったよ」

 

 手を伸ばしても、ギリギリで届かない位置に移動し、キュゥべえは沙々に告げる。

 

「リーダーの洗脳。

 それは、絶対的な保険となるだろう。

 いざとなれば“沙々に都合が良い様に、仲間達を動かして貰えば良い”んだからね。

 見滝原を自らの縄張りとする上での“最善手”と言えるね」

 

 絶対的な“観測者”であるキュゥべえ。

 そのキュゥべえをして、異物と呼ばれる存在がいる。

 そのキュゥべえをして、異端と呼ばれる存在がいる。

 そのキュゥべえをして、異常と呼ばれる存在がいる。

 

 残念(幸運)な事に、それは優木沙々ではない。

 

「だから、沙々は“間違った”んだよ」

 

 理解出来ない。四肢を貫かれているにもかかわらず、痛みを感じない事に違和感すら持たず。

 沙々には解らない。自分が【なに】を間違ったのか。

 

「【良い事を】【教えてあげよう】」

 

 キュゥべえの後ろ。僅かに離れた位置で電子タバコを燻らせながら。【―――】は更なる解説場を開設する。

 

「【見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)】【この魔法少女チームは】【すでに存在しない】」

「は?」

 

 理解出来ないだろう。

 あえて“理解出来ないだろう事柄”を羅列する事で、沙々自身の思考能力を削ぐ。

 沙々自身の思考停止を誘う。

 あぁ。なんということだろう。

 

「【お前が原因だよ】【お前がゆまを単独行動させてくれたおかげで】【ゆまは魔法少女狩りに遭った】」

 

 上から、見下(みお)ろすように。見下(みくだ)すように。その狂気に満ちた()目は、完全な【―――(パラノイア)】だ。

 

「【詳しい経緯はオレも()()()んでね】【要するに】【ゆまの(?)を切っ掛けに】【銃闘士全滅】【ってわけだ】」

 

 この魔人の性質の悪い所は、()()()()()()()【言葉遊び】()()()()()()()()点であろう。

 そして、それを最大限に利用し、異星物とすら渡り合う事だろう。

 

 言葉こそが、相互理解に最も適した行為である事。

 言葉こそが、相互誤解に最も適した行為である事。

 

 それを理解しているのだ。この【―――】(ナマじゃないモノ)は。

 

「【あぁ】【勘違いしないでくれよ】【オレは別に】【お前に(?)を与えよう】【なんて考えちゃいない】」

 

 契約に基づいた行動。それは魔人にも当てはまる。それは“常人”にとってみれば、とてもえげつない行為。

 

「【そもそも】【お前に期待する事なんて】【何一つ無いんだよ】」

 

 そして“契約者(同類)”であるからこそ。最も()()()な行為。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【同胞の成れの果てを】【玩具にするお前には】【な】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………は?」

 

 混乱極まる状況に、混沌極める情報。その果ての“結論”は、ナイフのように沙々の心を抉る。

 

「【優木沙々】【お前は】【生き延びたいのなら】【見滝原に来るべきではなかった】」

「君は、生き延びたいのなら、最初に洗脳するべきはマミじゃない。

 

 “魔女も魔法少女も等しく殲滅する魔人”

 

 【殲滅屍(ウィキッドデリート)】だったのさ」

 

 魔法少女が魔女になる。その絶望に【上乗せ】される魔人の存在。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(【お前】)は、最初の一歩を間違えた(【間違った】)んだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE インキュベーター

 

 絶望に彩られた沙々の表情。更に追い詰める為に、僕の後ろから【――――(むらくもたくま)()()、ウィキッドが告げる。

 

「【何故】【魔法少女が魔女を狩れるのか?】【魔法少女の堕ちた存在だから】」

 

 ウィキッドのえげつない所は、自分の為(目的)に対し、絶対に妥協しない点だよね。

 

「【お前が】【魔女を()()()()()()()も同じ】」

 

 今回の【取引】が自分の為だからこそ。ウィキッドはこんなにも“意識して手加減しない”んだろうね。

 

「【発展途上の雌を少女と呼ぶんだ】【魔女に成る前の()()()の事は】【魔法少女と呼ぶべきなんだから】」

 

 僕にしてみれば、何故この事実が絶望に繋がるのか、理解出来ないんだけどね。

 

「【未熟な魔法少女であるお前が】【()()した魔女を洗脳出来るのは】【当然の事なんだよ】」

 

 それよりも。

 沙々自身の能力すら“絶望させる為の糧”にしてしまうウィキッドは素晴らしいね。

 対する沙々は……随分と“白い”顔をしているね。

 

「【オレ達は】【魔女を狩れる様に造られている】【何故か?】【魔女を狩れる程の魔法少女が堕ちた魔女の方が】【強力だからさ】」

 

 そこまで言って、ウィキッドは“殴り倒した際に奪い取った、沙々の(ソウルジェム)を取り出す。

 

「【で】【だ】」

 

 そのSG(ソウルジェム)を足元に置いて。

 

「【取引内容を教えてやるよ】」

 

 “あらかじめ上空に待機させていた3478本のナイフ”を『短剣思考(Knife of Liberty)』で自分の周りに移動させたウィキッドは。

 

「【キュゥべえがオレに“手を出す魔法少女”の情報を与える】」

 

 頭の後ろで結んでいた眼帯の紐を解き。

 

「【オレが“手を出す魔法少女”を】」

 

 その緑色の右目が、爛々と輝き。

 

「【魔女に成るまで追い詰める】」

 

 最後の絶望を告げた。

 

「【双方に】【利となる取引だろう?】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【安心しろよ】」

「【お前が魔女に成っても】」

「【誰かを不幸にする前に】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【オレが】【殺してやる】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 殲滅屍

 

「【エネルギー回収は?】」

「滞りなく」

 

 改めて、右肩に乗ったナマモノの言葉に、オレは口の端を持ち上げる。

 あぁ。悪いな、なんとかっていう、元洗脳魔法少女。

 お前の使い魔(魔女)が多すぎて、お前自身が【どれ】なのか、わっかんねぇや。

 

「【まぁ】【しったこっちゃないがね】」

 

 うん。どうでもいいわ。所詮は邪魔でしかなかったし。

 

「勝てるのかい?」

 

 右肩のナマモノが、失礼な事を聞く。お前、勝てると思っているのかよ、オレが。

 

「【複数の魔女を同時に相手にして】【勝てると?】」

「無理だろうね」

 

 よし、後でシバく。シバく為には生き延びなければ。

 

「そもそも、複数の魔女が同じ場所に存在する時点で、僕にとっては想定外なんだけどね」

「【それを】【範疇に入れていないあたりが】【下等生物なんだよ】【ナマモノ】」

 

 まあ、オレの準備は終わってるからな。『短剣思考(Knife of Liberty)』で操作中のナイフが、オレの“技能”を次へと導く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『電磁砲(Railgun)

 

 弾丸を電磁化して放出する事で、通常射撃以上の効果を得る為の技能。

 

 <操作収束(Electrical Overclocking)>による電磁障壁(アースチェイン)を応用して、周りのナイフ全てを“電磁化”する。

 

 まあ、先輩の模倣でしかない辺り、自分の情けなさに閉口するけどね。

 

 電磁化したナイフを、オレは一斉に射出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パロットラ・マギカ・エドゥ・エレクトロマグネティコ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日。独りの魔女が生まれ。

 誰かを呪う間も無く、殲滅された。




次回予告

見えているものが真実か?

見えていたものが真実か?

みているものが現実か?





イマ、ミテイルモノハなにものカ?








百四十九章 明るいリビング






















TIPS 有頂天孵卵(ry



略された!? わけがわからないよ!!!!
それでもめげる筈も無い、みんなのケーヤク促進剤、ハジヶえだおwww








じゃあ、前回からの続きで【】について解説してあちょっとやめ







































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