無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「TIPSを下さい!!」
「そんな、世界の中心みたいに叫ばれても、僕にはどうしようもないよ」
「解説出来なきゃ、ボクの存在価値が無いじゃないかぁ!!」
「……君、インキュベーターじゃないのかい?」
「いつからハジヶえが孵卵器だと錯覚していた?」
「違うのかい?」
「違わないけど」
「わけがわからないよ」


百五十章 来るがいい、最悪の絶望

SIDE 暁美ほむら

 

「この放送はッ! 私とッ! 織莉子がッ! 占拠したッ!!」

 

 始まるはずだった日常は、その言葉と共に崩れ去った。

 モニターに映るのは、二人の少女。

 一人は見滝原中の制服を着ているが、もう一人は初めて見る。

 

「なに? なんなの?」

 

 モニター内の少女が言葉を発している。それを無視し、私はまどかのそばに。

 

「大丈夫よ、まどか」

「ほむらちゃん?」

 

 不思議そうに私を見るまどか。彼女を安心させられるよう、ゆっくりと頷きながら、私は以前聞いた言葉を思い出す。

 

『犯人が“この中学に在籍していても”か?』

 

 魔法少女狩り。以前琢磨が言っていたように“ターゲット不問”であるなら。

 この“行動”は、実に効率的とも言える。

 

 教室内が、魔女結界に塗り替えられる中、私は変身し、呟いた。

 偶然にも、その言葉はモニターに映る少女の言葉と重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来るがいい、最悪の絶望」

「来なさい、最悪の現実」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE ウィキッド

 

「祈るのかい?」

 

 後ろから聞こえる声に、変身状態のオレは、振り返る事無く苦笑した。

 

「【それも】【悪くない】」

 

 祈り。いや、意思表示みたいなものだがな。

 ステンドグラスを見上げたまま、オレは両手を広げて言葉を紡ぐ。

 

「我、流転せし世界を否定する楔なり」

 

 自分の為だけに、時間を止める、それがオレ。

 

「我、照らされし光から、喜びと共に背を向ける咎人なり」

 

 世間なんて知ったこっちゃ無い。自分の為になる事に対し、妥協する気はない。

 

「我、本来の自分を捨て、抜き出された魂と共に歩む者なり」

 

 契約前の一切を捨て去り、物質化した魂を手に進むだけ。

 

「我、朽ち果てた肉体と共に、魂を仕舞う者なり」

 

 その上で、群雲琢磨ではなく【殲滅屍】として動くと決めた。

 

「我、無窮の空を舞い、幾重もの絶望を見届けし狂人なり」

 

 例え、どれだけの魔法少女(同胞)を喰らったとしても、止まる訳にはいかないのだ。

 

(オレは)、自らの為に生き、自らの為に逝く魔人なり。

 生きているとさえ言えぬ肉体は、殲滅する死体。

 死んでいるとさえ言えぬ道具は、殲滅する死屍。

 神の与えし(ことわり)を逸脱し、それでも世界を嗤うモノなり」

 

 さあ、今ここに【殲滅屍(ウィキッドデリート)】として。世界を創ったらしい神様に告げよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主よ、死にさらせ(Rock You)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【見滝原中学】【ねぇ】」

 

 これまで、秘密裏に動いていた白い魔女が、表舞台で行動を開始した。確かにナマモノの言う通り“詰める”気なんだろう。

 

 が。

 

「結局、織莉子の目的はなんだろうね?」

「【知らんがな】」

 

 右肩に乗るナマモノに、オレはあっさりと返す。そう、結局白い魔女の“目的”を、オレ達は掴めていなかった。

 

「【魔法少女狩り】【その観点で見れば】【見滝原中学を目標にするのは】【実に効率的ではあるが】」

「見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)は、すでに君一人だからね。

 しかも織莉子は“君が死んだ”と誤認している」

「【そういう意味では】【見滝原中学での行動は】【白い魔女の“真の目的”に】【沿ったものではあるのか】」

 

 或いは……。

 

「で、君はどうするんだい?」

「【ナマモノにとっても】【白い魔女は】【邪魔】【だろう?】」

「質問に質問で返すのは、君の癖なのかい?」

「【お互い様】」

 

 魔法少女狩り。これ自体がナマモノにとっては“損害”でしかない。

 しかし、あくまでもナマモノは交渉用端末機であり、実力行使に出る事はない。そんな機能ねぇしな、こいつ。

 そうなると、ナマモノが出来る事は限られる。例えば【殲滅屍(ウィキッド)】に【排除(デリート)】してもらうとか、な。

 

「【まあ】【白い魔女には】【オレを殺した責任をとってもらわないとな】」

 

 だが、オレの本来の【目的】は別にある。その【目的】の為にも、見滝原中学に向かわなければならない。

 

「【最悪】【SG(ソウルジェム)の破壊も】【視野に入れるべきか】」

「僕としては、もったいないから止めてほしいけど」

「【これ以上】【無駄にするよりは】【マシだろう?】」

「それもそうなんだよね」

 

 端的に言えば“やりすぎた”んだ。ナマモノが“美国織莉子からのエネルギー回収”よりも“美国織莉子によるエネルギーの損失”に比重を置くほどに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE out

 

 見滝原中学。その校門前にウィキッドとインキュベーターが辿り着く。

 

「【本当に】【この魔女結界は?】」

「そうだよ。

 本当に、君達は僕等の想定を覆してくれるよ」

 

 校門前に存在する、不可思議な紋様。それは“特定の存在”しか認識出来ない、結界への扉。

 そして、ここにいるのは、その“特定の存在”である。

 

「【なあ】【ナマモノ】」

「なんだい?」

 

 自らの【目的】の為、ウィキッドからインキュベーターへの【戯言(ていあん)】が始まる。

 

「【今なら】【契約し放題じゃないのか?】」

「どういうことだい?」

「【第二次成長期の少女達が今】【大量に結界に捕らわれている現状】【助けて欲しい】【その願いの元に】【魔法少女量産出来るんじゃね?】」

「なるほど」

 

 魔女結界。内部は魔女の使い魔が闊歩しているだろう。そして、それに対抗する術を持つものは限られている。

 助かる道があるのなら、確実にそれに縋るだろう。その後に用意された絶望に気付く事無く。

 

「【てなわけで】【ここからは別行動だ】」

「僕には戦闘能力は無いからね。

 どちらにしても別行動だっただろうけど」

 

 また、ウィキッドにとっても魔力回復アイテム(グリーフシード)が増える事はメリットになる。

 犠牲となる存在に対し、この二つは一切の感情を持ち得ない。

 

 それは、感情を保有しない故に。

 それは、自分しか保有出来ないが故に。

 

 肩から降りたインキュベーターが、結界内に入ったのを確認し、ウィキッドは咥えた電子タバコで深呼吸。

 

 美国織莉子。

 暁美ほむら。

 ウィキッド。

 

 見滝原中学で展開した魔女結界で。すべての“未来”が確定する。

 

 

 

 

「【では、闘劇をはじめよう】」




次回予告

全ての目的が、達成される事は無い

三者三様 その目的が

互いの目的の、障害となるが故に

果たして運命は

“誰”の目的を達成させるのか

“誰”が運ぶ命を優先させるのか



未来はまだ、不確定だ



百五十一章 世界の終末に
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