無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「人類をエネルギー源としてしか見ていない!!」
「僕達の事だね」
「だからこそ、人類の感情による行動を把握しきれない!!」
「僕達には、感情が無いからね」
「それが、ボクたちの欠点でもあるんだぁ!!」
「どういう事だい?」
「非効率なんだよ、キュゥべえ!!
 真に効率を求めるならば、感情を理解する事こそが最重要の筈なのに!!」
「感情による振れ幅を排除すれば、より合理的な判断が出来るんじゃないのかい?」
「わかっていないなぁ!! それでも同胞かぁぁ!!」
「そうだけど?」
「ブレないな、おい」
「インキュベーターだからね」
「ボクもね!!」
「ハジヶえを同胞と分類していいかな?」
「知らん!!」
「話が逸れているね。
 何が言いたいんだい?」
「感情を排除する事と冷静さを保つ事は別。
 そういう話さ」















「後、今回はTIPSが無い!!」
「だからそんなにテンションが高いんだね。
 出番欲しさに」
「ハジケが……ハジケが足りない……!」
「充分じゃないかな?」
「まあ、本編のガチシリアスを完全に無視しているからな!!」
「インキュベーターだからね」


百五十八章 神風

SIDE out

 

 孵化中にトンファーで吹き飛ばされる。しかし、それでも魔女は産まれた。

 目玉の付いたシルクハットに、女性の胴体を3つも繋ぎ合わせた様な、歪な魔女。

 いや、(いびつ)じゃない魔女なんて、いる筈も無いのだが。

 その腕は鉤爪となっており、当然のように“仇”を襲う。

 

「ふっ!」

 

 対し“仇”である群雲は、左手のトンファーを回転、その勢いを利用して鉤爪を弾き、力の向きを変える。

 そして、自らを変えた方向とは逆に移動させる事で回避。

 必要最低限の力と動きで往なしながら、魔女化したキリカを観察し、思考する。

 

(【大丈夫だ】【オレには見えている】)

 

 右手からナイフを一本、逆手持ち。軽くステップを踏む様に、ウィキッドは必要最低限の行動で、確実な回避を可能にしていた。

 戯言で煽る際に【匣】から群雲が顔を出したものの、ウィキッドはその蓋を閉じる。

 仕舞いこまれた群雲に代わり、対峙するのは殲滅屍でなければならないのだ。

 トンファーとナイフで、迫る鉤爪を往なしながら、ウィキッドは思考に沈む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE ウィキッド

 

 むぅ。どうしたものかね。

 せっかくの“ゆまの仇討ち”なんだし、ゆまっぽく行きたいが。

 うん、ないわ、そんな魔法。

 もう、密着ティロフィナって終わらせようかな、一応【対孵卵器用ノルマ】は達成したし。

 ただ、どうも【彼女】を【オレのモノ】にしてから、色々と不可思議な状態ではあるんだよな。

 

 鞘を粉々にするような危険物と化した、愛用していた日本刀は刀身が黒くなったし。

 新しい鞘になったのは異空間。しかも“肉体を介さなければならない”これまでの空間制御とは一線を画している。

 最後に繰り出した『無風』も、多分“Lv3”が関係してるっぽいし。まあ、あの抜刀術は二度と使えないだろうけど。

 自分を理解出来ないなんて、自分の為にならんのよなぁ。

 だからこその『群雲琢磨』と【殲滅屍】なんだけど。

 

 勝敗なんて重要じゃなかった。必要なのは“負けても死なない事”にある。

 <電気操作(Electrical Communication)>を始めとして、徹底的に“速度”に重点を置いた理由はそこにある。

 色々な“武器”を使うのは、自分の魔法に“攻撃力”を求めていなかったからだ。

 

 その“ツケ”がここに来て明確化している。圧倒的な攻撃力不足。

 射程と打撃力を補う為に“トンファー”を使ってみたが、魔女に効いてる気がしない。

 契約により肉体は強化されているが、強化されてようやく“魔女戦へのスタートライン”だ。

 そこから“生き延びる”ようにならなければ、意味がない。

 

 とりあえず、一気に間合いを開く為、隙をみて後方に飛ぶ。

 併せて飛んできた棘っぽいものを、右手からナイフを取り出して投げ、相殺する。

 

 離れた場所で、軽くステップを踏みながら、次々と飛来する棘にナイフ投げで応戦。

 

 ……まずいな、魔女がどんどん速くなっている?

 速度低下はまだ生きているのか、或いは強化されているのか。

 もしかしたら、少しずつ効果が大きくなる類の魔法かもしれない。

 

 長期戦は不利か。<操作収束(Electrical Overclocking)>で渡り合ってはいるが、それにも限界があるだろう。

 

「ばかだな、お前。

 ほら、使いなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE out

 

 その瞬間、魔人の世界だけが他とは違う景色を見せた。

 

 突如、魔人の横の空間が開き、白い柄が姿を見せる。

【横に魔女服の杏子が立ち、日本刀を差し出す】

 

 当然のように、違和感無く、魔人は白い柄を握り。

 

 空間の方から移動し、黒い刀身が姿を現す。

【日本刀を渡し、杏子は満足そうに頷く】

 

 そして、空間が閉じる。

【笑顔で手を振り、杏子の姿が景色に溶け込むように消える】

 

 残されたのは、魔人と、鍔の無い日本刀。

 トンファーを左腰に戻し、魔人はゆっくりと構える。

 

 

 腰を深く落とし、魔女に向かって半身の姿勢をとる。

 黒刀を右手で持ったまま刀身は地面と水平に保ちながら、体の後ろに置いて、先端を魔女に向ける。

 左手を前に突き出して刀にやや重なるような位置へ。

 

 

 これまで、群雲が日本刀を用いていた場合、使用していたのは“抜刀術”である。

 “刀を抜きながら斬る”事で動作を簡略化し、プログラム化しやすくしていた為である。

 その為、全てが“切り払い”だった。

 

 そんな魔人が、辿り着いた形。

 自身の攻撃力を補い、自身の特性を最大限に発揮出来る形。

 

 

 

 【突進しながらの突き】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【群れし雲が、光を遮り、否定する】」

 

 詩を詠うように、紡がれる言葉。

 それを無視するかのように、魔人の全てはたった一回の突きに集約される。

 舞台掌握(Sparking)による磁力すらも利用して。

 

「【吹きし風が、命のサクラを、儚く散らす】」

 

 魔女の攻撃が止んだ訳ではない、飛来する棘が魔人を襲う。

 

 だが、遅かった。

 

 弾ける様に動き出した群雲を、戦いを見守る事しか出来ないほむらには“まったく見えていなかった”のだ。

 それほどまでの加速。一瞬で最高速に達したが故の、認識のズレ。

 

 ()()()()()()()()()()、その一撃に対応するのは難しいだろう。

 

 その一撃は、一撃であるにもかかわらず、魔女の体を上と下で完全に分断した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな、名付けるのならば」

 

 二つに分かたれ、崩れ落ちる魔女を背に、群雲琢磨は右を向く。

 そこにあるのは、再び開いた空間。しかし、群雲にだけは【彼女】が見えている。

 

「黒刀【ムラクモ】と、鞘【サクラ】」

 

 開いた空間に、日本刀を挿す。しかし、群雲にだけは【彼女】に日本刀を渡した事になっている。

 手を離すと、空間が日本刀を飲み込むように吸い込んで消える。しかし、群雲にだけは、日本刀を受け取った【彼女】が、そのまま景色と同化するように消えていくのが、見えている。

 

「そして、真の太刀『神風』ってところか」

 

 群雲琢磨が、自身の“技”に共通して名付けていた風。

 佐倉杏子が、孤独になっても尚、祈りを捧げていた神。

 

 思い付き、実行に移しただけ。真の『神風』はまだ、完成には至っていない……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE ウィキッド

 

 魔女結界が消えていく。白い魔女の遺体も、黒い魔法少女狩りの元肉体も、ふたつになった魔女の体も。

 殲滅されたものが、魔女結界と共に消えていく。

 

 オレは、巴先輩と杏子の“死”には、関わった。

 だが、ゆまだけはそうではなかった。見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)として、それじゃあ自分の為にならない。

 だからこその仇討ち。ただの自己満足ではあるけれど。

 

 ガラス張りの廊下。見滝原中学に戻ったらしい。

 うん、何本かのナイフを回収しそこねた。まあいいや、まだまだあるし。

 右手から電子タバコを取り出して、一服。

 

「ふぅ~……」

 

 口から吐かれた煙に視線を向けながら、オレはタバコを咥えたまま、素早く右腰のリボルバーを取り出す。

 それを回転させながら、器用に左手でハンマーを引き、そのまま振り返りながら銃口を向ける。

 

 その先には、立ち上がってデザートイーグルの銃口をオレに向ける、暁美先輩がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやら、幕引きはまだらしい――――――――――




次回予告

見滝原中学を舞台に


繰り広げられる、最後の演目


それは、次の舞台を約束する




悲痛な覚悟と、ゆずれない願い



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