「相変わらずのメタさだね、ハジヶえ」
「それは、章の数字がキリのいいところで終われないって事さ!!」
「たしかに中途半端すぎるよね」
「そして、今回もTIPSがない!!」
「あ、それは別にどうでもいいかな」
「ナンデェェェェ!?」
SIDE out
魔女結界は解除され、しかし闘劇の幕はまだ下りない。
見滝原中学の廊下。そこで対峙する二人の子供。
一人は、時間遡行者暁美ほむら。
独りは、殲滅屍群雲琢磨。
「【オレには】【暁美先輩と
互いに銃口を向け合う膠着状態の中、電子タバコを咥えた殲滅屍は自然体。完全に
しかし、ほむらは違う。苦悶の表情を浮かべ、ウィキッドを睨みつける。
「【
「関係ないわ……!」
ウィキッドは“目的”を達成した。故にこれ以上の戦闘に意味を持たない。
しかし、ほむらは違う。
「何故、まどかを殺したの!?」
悲痛とも取れるほむらの叫び。それは、二度も絶望へ置いていった“群雲琢磨”に対する疑問。
そして、現状無関係の筈だったまどかを“
「【成り行き】」
それに対しても、やはりウィキッドは自然体のままだ。
「ふざけないで!!」
普段の暁美ほむらを知る人がいたら驚くだろう。それほどまでにほむらは感情を露わにしていた。
しかし、それでもウィキッドは揺るがない。
「どうせ、過去に戻るんだろ?
だったら、どうでもいいじゃないか」
失敗したらやり直す。まるでゲームのような
この
当然だ、これはゲームではない。そんな生易しいものではない。
「【まあ】【一つだけ】【言える事がある】」
クルクルと銃を回転させて手前に引き、顔の高さで静止させるウィキッド。
銃口を外す事による非戦闘の意思。なにより、これまでのやり取りは“時間稼ぎ”にすぎない。
「【鹿目まどかだっけ?】【彼女を護りたいのなら】【傍を離れるべきではなかった】」
殺害した張本人が何を言う? 否、殺害した張本人だからこそ、ウィキッドは言う。
「【魔女結界】【危険しかないような場所で】【彼女の傍を離れた】【それが間違いだ】」
その言葉に、ほむらは引き金を引く。最強のハンドガンと称させる大口径の弾丸は。
「【無駄だ】」
ウィキッドの眼前で静止する。
魔女結界の消失により、効力を失ったその力をウィキッドは即座に準備していた。
それにのみ集中していた為、すでに“たり”ていたのである。
再びリボルバーをクルクル回した後、ウィキッドはそれを右腰に収納する。
「【
そのまま、右手で眼前に留まる銃弾を横に弾く。新たな方向へ力が加えられた弾丸は、そのまま突き進み、ガラスを粉々に粉砕する。
「【気付いているか?】」
ガラスが割れ、その破片が落ちていく音と共に、ウィキッドは言葉を紡ぐ。
「【廊下のど真ん中で】【拳銃なんて物騒極まりない物を向け合う】【ガキが二人いても】」
器用に電子タバコを咥えたまま、ウィキッドは煙を吐き出して続ける。
「【これだけ派手な音を立てて】【ガラスが割れても】」
告げるのは現状の確認。もはや【戯言】ですらない。
「【だれも騒がない】【至って静かなまま】」
その言葉に、ほむらは気付く。気付いてしまう。
「【全滅だ】」
魔女結界。それが解除された場合、元の場所に戻る為の最低にして絶対条件。
それは“生きている事”である。
たとえ“魔女の口づけ”を受けていても、生きてさえいれば。
いないのだ。廊下で対峙する二人以外に。
そして、その事実が証明する。
鹿目まどかの死を。
銃を下ろし、ほむらはその場に膝を着く。戦意の喪失を確認し、ウィキッドはほむらの横を通り過ぎていく。
「……それでも……っ!」
その体制のまま、呟かれた声に、ウィキッドが足を止める。
「それでも私は……!
まどかを殺した貴方を、絶対に許さない!!!」
互いに背を向けたその状況は、まるで“今までとこれから”を示唆しているかのようだ。
そして、それを証明するかのように。
「【知ったこっちゃないな】」
誰かに恨まれようと、誰かを恨もうと。
誰かに憎まれようと、誰かを憎もうと。
魔人は、最後まで魔人を貫くだろう。
それが出来ないのならば、それは存在の否定に繋がってしまう事を、魔人は既に知っていた。
立ち去る際、最後に呟いた群雲の一言は。
「大変だよ。
護るってのは、人の考える以上にな」
実に、単純であるがゆえに、複雑でもあった。
SIDE
校舎を出て、校門を抜け。
オレの前にいるのはナマモノ。
「【首尾はどうよ?】」
「残念ながら」
あらあら。歩みを止めないオレの右肩に乗り、ナマモノとの【情報戦】が開始される。
「【はたらけよナマモノ】」
「まさか、一切聞く耳を持たれないとは思わなかったよ。
せっかくの生存の機会を潰すんだから、人類はやっかいさ」
これに関しては、オレの想定内だった。
突如展開した魔女結界。
そんな“集団パニック状態”で
しかも、その声を聞くことが出来る人物が限られているのだから、その可能性は更に下がる。
それでも、一人か二人は契約者が出来ると思ったが。収穫は零だった、と。
「【残念だったな】」
「まったくだよ」
それに、ナマモノは気付かない。感情を利用するくせに、感情を理解しないから。
「それで、キミは何故“取引を反故にした”んだい?」
「【何の事だ?】」
「織莉子の事さ。
ソウルジェムを極力破壊しない、その取引は有効だった筈だよ?」
きたか。だが甘いな下等生物。
「【極力破壊しない結果だ】【実際黒い魔法少女狩りの方は】【ちゃんと孵化させただろう?】」
「織莉子とどう関係するんだい?」
「【関係しない筈がないだろう?】【言ってしまえば】【杏子とゆまの関係と一緒さ】」
相互関係。だからこその“ウィキッド”だぞ。
「【魔女結界を展開するほどに引っ張られてた呉先輩】【その状況すら利用する美国先輩】」
「何が言いたいんだい?」
「【どちらも“孵化前に自殺する事”だって有り得た】【真の目的がわからない以上】【その目的が達成されれば】【充分に考えられる事だ】【なら相互関係を利用し】【美国先輩を“先に殺害”する事で】【呉先輩の孵化を確実なものにする方が】【エネルギーの回収としては効率的だろう】」
「なるほど。
どちらのエネルギーも回収出来ない可能性がある以上。
片方からを確実にする為に、もう片方を切り捨てたのか」
「【そう言うことだ】【特に美国先輩は】【魔女化する気配がまったく無かったからな】」
「仮にキリカが魔女化しても、織莉子に連鎖する可能性は低かったわけだね」
「【そして呉先輩が魔女化する前に】【真の目的が達成されてしまえば】」
「キリカが魔女になる前に“処理”されるのも、充分にありえたんだね?」
「【相手は“魔法少女狩りすらも隠れ蓑”にするほどだ】【なら“利用されている側”の呉先輩を】【確実に魔女化させた方がいいだろう?】」
戯言全開です。インキュベーターを納得させる為に、嘘と真実ごっちゃまぜ。
効率的な判断の結果であれば。
「そういう事だったのか」
「【そういう事だったのさ】」
意に反していても、ナマモノは受け入れるだろう。感情が無いからこそ、な。
「まったく。
いつもながら、君達人間の感情は厄介なものだね」
「【それについては】【同意するよ】」
見滝原中学集団失踪事件。
一切の前触れ無く起こったこの事件の真相は、決して解明されないだろう。
ただでさえ、異星物が深く関わっているのにもかかわらず。
まともに捜査すらされなかったからだ。
次回予告
それでも、その魔法少女は歩みを止めないだろう
それでも、その魔人は歩みを止めないだろう
ただひとつ この二人が共通していたのは
百六十章 絶望するわけには