無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「ひとつだけ、作者が後悔している事があるよ!!」
「相変わらずのメタさだね、ハジヶえ」
「それは、章の数字がキリのいいところで終われないって事さ!!」
「たしかに中途半端すぎるよね」
「そして、今回もTIPSがない!!」
「あ、それは別にどうでもいいかな」
「ナンデェェェェ!?」


百五十九章 過去に戻るんだろ

SIDE out

 

 魔女結界は解除され、しかし闘劇の幕はまだ下りない。

 見滝原中学の廊下。そこで対峙する二人の子供。

 一人は、時間遡行者暁美ほむら。

 独りは、殲滅屍群雲琢磨。

 

「【オレには】【暁美先輩と()る理由は無いが】」

 

 互いに銃口を向け合う膠着状態の中、電子タバコを咥えた殲滅屍は自然体。完全に【】(住み着いた)形で言葉を紡ぐ。

 しかし、ほむらは違う。苦悶の表情を浮かべ、ウィキッドを睨みつける。

 

「【()るなら】【オレも本気でいくが】【もしも先輩が負けたら?】」

「関係ないわ……!」

 

 ウィキッドは“目的”を達成した。故にこれ以上の戦闘に意味を持たない。

 しかし、ほむらは違う。

 

「何故、まどかを殺したの!?」

 

 悲痛とも取れるほむらの叫び。それは、二度も絶望へ置いていった“群雲琢磨”に対する疑問。

 そして、現状無関係の筈だったまどかを“殲滅屍(ウィキッドデリート)”が殺したという疑問。

 

「【成り行き】」

 

 それに対しても、やはりウィキッドは自然体のままだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であるとも言える、もはや悲劇ですらない擦れ違い。

 

「ふざけないで!!」

 

 普段の暁美ほむらを知る人がいたら驚くだろう。それほどまでにほむらは感情を露わにしていた。

 しかし、それでもウィキッドは揺るがない。

 

「どうせ、過去に戻るんだろ?

 だったら、どうでもいいじゃないか」

 

 失敗したらやり直す。まるでゲームのようなやり直し(つよくてニューゲーム)だ。

 この現実(ゲーム)の非常にして当然の仕様は、圧倒的なマルチシナリオである点。

 当然だ、これはゲームではない。そんな生易しいものではない。

 

「【まあ】【一つだけ】【言える事がある】」

 

 クルクルと銃を回転させて手前に引き、顔の高さで静止させるウィキッド。

 銃口を外す事による非戦闘の意思。なにより、これまでのやり取りは“時間稼ぎ”にすぎない。

 

「【鹿目まどかだっけ?】【彼女を護りたいのなら】【傍を離れるべきではなかった】」

 

 殺害した張本人が何を言う? 否、殺害した張本人だからこそ、ウィキッドは言う。

 

「【魔女結界】【危険しかないような場所で】【彼女の傍を離れた】【それが間違いだ】」

 

 その言葉に、ほむらは引き金を引く。最強のハンドガンと称させる大口径の弾丸は。

 

「【無駄だ】」

 

 ウィキッドの眼前で静止する。

 

 舞台掌握(Sparking)

 

 魔女結界の消失により、効力を失ったその力をウィキッドは即座に準備していた。

 それにのみ集中していた為、すでに“たり”ていたのである。

 再びリボルバーをクルクル回した後、ウィキッドはそれを右腰に収納する。

 

「【電磁障壁(アースチェイン)の前に】【遠距離武器はその意味を失くす】」

 

 そのまま、右手で眼前に留まる銃弾を横に弾く。新たな方向へ力が加えられた弾丸は、そのまま突き進み、ガラスを粉々に粉砕する。

 

「【気付いているか?】」

 

 ガラスが割れ、その破片が落ちていく音と共に、ウィキッドは言葉を紡ぐ。

 

「【廊下のど真ん中で】【拳銃なんて物騒極まりない物を向け合う】【ガキが二人いても】」

 

 器用に電子タバコを咥えたまま、ウィキッドは煙を吐き出して続ける。

 

「【これだけ派手な音を立てて】【ガラスが割れても】」

 

 告げるのは現状の確認。もはや【戯言】ですらない。

 

「【だれも騒がない】【至って静かなまま】」

 

 その言葉に、ほむらは気付く。気付いてしまう。

 

「【全滅だ】」

 

 

 

 魔女結界。それが解除された場合、元の場所に戻る為の最低にして絶対条件。

 それは“生きている事”である。

 たとえ“魔女の口づけ”を受けていても、生きてさえいれば。

 

 いないのだ。廊下で対峙する二人以外に。

 ()()()()()()()()()()のだ。

 そして、その事実が証明する。

 

 

 

 

 

 

 鹿目まどかの死を。

 

 

 

 

 

 

 銃を下ろし、ほむらはその場に膝を着く。戦意の喪失を確認し、ウィキッドはほむらの横を通り過ぎていく。

 

「……それでも……っ!」

 

 その体制のまま、呟かれた声に、ウィキッドが足を止める。

 

「それでも私は……!

 まどかを殺した貴方を、絶対に許さない!!!」

 

 互いに背を向けたその状況は、まるで“今までとこれから”を示唆しているかのようだ。

 そして、それを証明するかのように。

 

「【知ったこっちゃないな】」

 

 誰かに恨まれようと、誰かを恨もうと。

 誰かに憎まれようと、誰かを憎もうと。

 魔人は、最後まで魔人を貫くだろう。

 

 それが出来ないのならば、それは存在の否定に繋がってしまう事を、魔人は既に知っていた。

 

 立ち去る際、最後に呟いた群雲の一言は。

 

「大変だよ。

 護るってのは、人の考える以上にな」

 

 実に、単純であるがゆえに、複雑でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 殲滅屍(ウィキッドデリート)

 

 校舎を出て、校門を抜け。

 オレの前にいるのはナマモノ。

 

「【首尾はどうよ?】」

「残念ながら」

 

 あらあら。歩みを止めないオレの右肩に乗り、ナマモノとの【情報戦】が開始される。

 

「【はたらけよナマモノ】」

「まさか、一切聞く耳を持たれないとは思わなかったよ。

 せっかくの生存の機会を潰すんだから、人類はやっかいさ」

 

 これに関しては、オレの想定内だった。

 突如展開した魔女結界。見た事ない生物(使い魔)がひたすら命を狩る現状。

 そんな“集団パニック状態”で見た事ない生物(インキュベーター)の声に、冷静に耳を傾ける人は稀だろう。

 しかも、その声を聞くことが出来る人物が限られているのだから、その可能性は更に下がる。

 それでも、一人か二人は契約者が出来ると思ったが。収穫は零だった、と。

 

「【残念だったな】」

「まったくだよ」

 

 それに、ナマモノは気付かない。感情を利用するくせに、感情を理解しないから。

 

「それで、キミは何故“取引を反故にした”んだい?」

「【何の事だ?】」

「織莉子の事さ。

 ソウルジェムを極力破壊しない、その取引は有効だった筈だよ?」

 

 きたか。だが甘いな下等生物。

 

「【極力破壊しない結果だ】【実際黒い魔法少女狩りの方は】【ちゃんと孵化させただろう?】」

「織莉子とどう関係するんだい?」

「【関係しない筈がないだろう?】【言ってしまえば】【杏子とゆまの関係と一緒さ】」

 

 相互関係。だからこその“ウィキッド”だぞ。

 

「【魔女結界を展開するほどに引っ張られてた呉先輩】【その状況すら利用する美国先輩】」

「何が言いたいんだい?」

「【どちらも“孵化前に自殺する事”だって有り得た】【真の目的がわからない以上】【その目的が達成されれば】【充分に考えられる事だ】【なら相互関係を利用し】【美国先輩を“先に殺害”する事で】【呉先輩の孵化を確実なものにする方が】【エネルギーの回収としては効率的だろう】」

「なるほど。

 どちらのエネルギーも回収出来ない可能性がある以上。

 片方からを確実にする為に、もう片方を切り捨てたのか」

「【そう言うことだ】【特に美国先輩は】【魔女化する気配がまったく無かったからな】」

「仮にキリカが魔女化しても、織莉子に連鎖する可能性は低かったわけだね」

「【そして呉先輩が魔女化する前に】【真の目的が達成されてしまえば】」

「キリカが魔女になる前に“処理”されるのも、充分にありえたんだね?」

「【相手は“魔法少女狩りすらも隠れ蓑”にするほどだ】【なら“利用されている側”の呉先輩を】【確実に魔女化させた方がいいだろう?】」

 

 戯言全開です。インキュベーターを納得させる為に、嘘と真実ごっちゃまぜ。

 効率的な判断の結果であれば。

 

「そういう事だったのか」

「【そういう事だったのさ】」

 

 意に反していても、ナマモノは受け入れるだろう。感情が無いからこそ、な。

 

「まったく。

 いつもながら、君達人間の感情は厄介なものだね」

「【それについては】【同意するよ】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見滝原中学集団失踪事件。

 一切の前触れ無く起こったこの事件の真相は、決して解明されないだろう。

 ただでさえ、異星物が深く関わっているのにもかかわらず。

 まともに捜査すらされなかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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次回予告

それでも、その魔法少女は歩みを止めないだろう

それでも、その魔人は歩みを止めないだろう



ただひとつ この二人が共通していたのは





百六十章 絶望するわけには

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