無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「あぁ、今回もダメだったよ」
「まぁ、第三幕がハッピーエンドにはならなかっただろうね」
「そんな、哀しい世界での最後の抵抗だ」

「「わけがわからないよ」」


百六十一章 オレに出来る事

SIDE out

 

――――――これはまだ、見滝原中学に展開した、魔女結界での一幕――――――

 

 

 

 鹿目まどかは、最高の魔法少女になる素質を持っている。

 何故、普通の中学生である彼女に、それほどの素質があるのか。それは、インキュベーターにも解らない。

 

 故に、彼女は“異常”だ。

 

 

 暁美ほむらは、インキュベーターの知りえない魔法少女だ。

 別の未来で契約し、平行世界の過去を巡っているのだから“その世界のインキュベーター”の記録には残らない。

 

 故に、彼女は『異端』だ。

 

 

 

 群雲琢磨は、劣化魔法少女である魔人だ。

 にもかかわらず、下手な魔法少女よりも長命である上、有史以前より人類と接触してきたインキュベーターにすら“前例が無い”と言われるほどの不可解な現象の中心点である。

 

 故に、それは【異物】だ。

 

 

 

 

 

 

 キリカの生み出した魔女結界。そこでほむらの結界魔法によって守られていたまどかだが。

 たとえ、何も出来なかったとしても。放っておく事なんて出来ない。

 ほむらの結界魔法を抜け出し、後を追っていた。

 

 鹿目まどかは、最強の魔女になる素質を持っている。

 未来予知でその姿を見た織莉子が、誰も勝てないと絶望するほどの、最悪の魔女に。

 

 しかし、まどかは“まだ契約していない”のである。

 今のまどかは、ただの中学生にすぎない。

 

 故に、使い魔に襲われても、抵抗する術を持たず。

 守ってくれるほむらも、傍に居らず。

 

 

 

 魔女結界の一角で、その生涯を閉じる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 使い魔に襲われ、横たわるまどか。

 その体から流れ出る血液は、まどかを中心に【紅い】水溜りを作る。

 もはや、動く事すら出来なくなったまどかは。

 ただゆっくりと、死の瞬間を待つだけの状態となっていた。

 

 しかし、周りの使い魔は平然と、まどかに止めを刺す為に迫り。

 

 

 

 飛来した弾丸に、的確に撃ち抜かれた。

 

「【まただよ】」

 

 撃ち終わった右手のリボルバーをクルクル回(ガンプレイ)しながら、群雲琢磨(ウィキッドデリート)はうんざりとした感じで呟いた。

 迷った挙句に一度外に出てしまったウィキッド。そのタイムラグが偶然にもまどかとの邂逅に繋がるのだから、世界は優しく出来てはいない。

 

「【うん?】」

 

 倒れたまどかに近づき、ウィキッドは傍らにしゃがみこんで観察。

 まだ、息はある。

 だが、ウィキッドは肉体を道具として割り切る事による“修理”は出来ても、他人を“治療”する魔法は使えない。

 

「【聞こえてないかもしれないが】【既に手遅れだ】【悪いね】」

 

 朦朧とした意識の中、まどかはウィキッドの声に反応し、視線を向ける。

 

「【こういう時に】【オレが出来る事は】」

 

 対し、ウィキッドは右手の銃口をまどかに向け、撃鉄(ハンマー)を下ろす。

 

「【少しでも早く】【楽にしてやる事ぐらいだ】」

 

 そして、引き金に指を掛け……。

 

「……ぁ…………」

 

 引く直前、まどかが口を動かした。

 ギリギリで指を押し留め、ウィキッドが首を傾げる。

 

「【最後に何か】【言いたい事でもあるのか?】」

「……」

 

 懸命に口を動かそうとするまどか。しかし、その体はもはや死の直前。満足に言葉を話す事等、出来るはずも無い。

 

 

 

 

 それでも。

 

「…………ほ………………む……………………」

 

 その言葉にならない言葉を、ウィキッドは聞いた。

 

「【ひょっとして】【暁美先輩か?】」

 

 そこへきて、ウィキッドは思い出す。ほむらに会いに来た際、彼女を呼びに来た生徒がいた。

 その記憶を、その時の身を隠す直前の一瞬の光景を。<電気操作(Electrical Communication)>で脳を操作する事で呼び起こす。

 

「【暁美先輩なら】【大丈夫だろ】」

 

 そして、繰り出されるのは、優しい【戯言】だ。

 

「【きっと】【このおかしな空間も】【すぐに晴れるさ】」

 

 何の根拠も無い。そうなるかどうかは成り行き任せ。そんな【戯言】だ。

 しかし、それを聞いたまどかは僅かに、本当に僅かに微笑んで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞳を、ゆっくりと閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【巴先輩あたりに】【治療魔法でも習っていれば】【見殺しにせずに済んだのかもな】」

 

 それもまた【戯言】だった。

 もしかしたら、助けられる可能性があったのかもしれない。

 しかし、結果として残ったのは、群雲がまどかを【見殺し】にした事実だけ。

 

「【どちらにしても】【殺す以外の選択肢が無かったのなら】【一緒か】」

 

 群雲はゆっくりと立ち上がる。

 自らの肉体からつくり出された【紅い】水溜り。

 その中心で横たわる、鹿目まどかの遺体(見滝原中学の生徒)

 

「【まいったねぇ】」

 

 その遺体の横を、 SAA(リボルバー拳銃)の弾込めを終えて、 クルクル(回ガンプレイ)しながら、群雲琢磨(ウィキッドデリート)は通り過ぎる。

 

「【最近】【近接戦闘ばかりだったから】【銃の腕が落ちてるかと思ったが】【そんな事はなかったぜ!!】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おせぇよ」

「おま、それが行列に並ばせた相手に対して言う台詞!?」

 

 キャンディを咥え、その棒を上下に揺らす相手に対し、電気タバコを咥えて、白い箱を持ってくる。

 二人は当然のように、その手を繋ぎ、指を絡めて歩き出す。

 

「大体さぁ。

 ケーキを買おうって言ったのはそっちじゃん。

 なんでオレが並ぶ事になってんのさ」

「こういうのは、男の子の役目だろ?」

「男女差別だ!

 訴えて勝つよ!」

「どこにだよ」

 

 いつものようなやり取りをしながら、歩き慣れた町並みを歩いていく。

 

「てか、ケーキならマミ先輩が容易に用意してくれるだろ。

 なんで態々、行列の出来る店のを、オレが並ばされ、買わされたのか」

「マミも食べてみたいって言ってたし。

 ゆまも興味があるって言ってたからな」

「だったらそっちが並びなさいな。

 なんでオレが」

「なんであたしが並ばなきゃならないのさ」

「理不尽!」

 

 喧嘩しているわけじゃない。これが二人にとって普通だった。

 

「お前だって、甘いものは好きだろ?」

「嫌いじゃないってだけだよ。

 お互い、好き嫌い無いのは知ってるだろ。

 むしろマミ先輩がケーキ用意してたら、どうするんだよ?」

「お前、食え。

 あたしらは、買ったケーキにするから」

「いや、両方食べなよ」

「太るだろ」

「魔法少女めたぼ☆オナカ」

「夢も希望もないな、それ」

 

 皆で住むマンションに入り、二人は同じ速度で進んで行く。

 

「なあ」

「ん?」

「好きだって言ったら、信じるか?」

「オレは、愛してるよ」

「……バカ」

 

 そして、二人は同時に扉を開けた。

 

「おかえりなさい」

「おかえり~」

 

「「ただいま」」

 

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 ワルプルギスの夜。

 

 魔法少女の間で語り継がれる、伝説の魔女。

 過去に、世界で起きた大災害の一部は、この魔女によるものだとも言われている程。

 

 本気になると、普段逆さまの人型部分がひっくり返り、暴風のようなスピードで飛び回って地表の文明をひっくり返す。

 

 

 

 そして、それは起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて、見滝原と呼ばれていた土地の一角。

 もはや、何も残ってはいないその場所には。

 

 愛する人の魂の果てを、大事に胸に抱えて横たわり。

 幸せそうな表情で眠る。

 

 少年の(しかばね)があった。




次回予告

第三幕 その幕は降りた

次の幕は、本来であれば、語るべきではない物語
見滝原を舞台としない物語

まどかも、ほむらも、マミも、さやかも、当然杏子もいない

だが、主演が魔人であるが故

これは、語るべき物語


「【不合格だよ】【プレイアデス】」


第四幕 人形(ひとかた)泡沫(うたかた)のfourth night

百六十二章 探し物

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