無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「せめて、同じ学校に通えればよかったのだけれど」
「年齢的に無理だと思いますよ」
「てか、オレは今更、小学校に通う気はないってば」
「義務教育否定しちゃって、いいのかな?」


十七章 質素な黒いソフト帽

SIDE 群雲琢磨

 

 あの、公園の夜から二日が過ぎ。

 

 ――――明日、ワルプルギスの夜が来る。

 

 

 

 

 

 ……………………らしいんだけど。

 

「こっちだよ、琢磨くん!」

 

 前方で手を振る鹿目先輩。

 その横には、暁美先輩と巴先輩もいる。

 

 

「今日は、いっぱい遊ぼうね!」

 

 あらいやだ、鹿目先輩の笑顔が眩しい……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっちゃけ、こんな事をしている場合じゃないと思うオレは、間違ってない気がするような感じが、身を包んでいるかのような雰囲気を醸し出してそうな状況になりつつありそうな……」

「長い上に、曖昧ね」

「oh、サラッと流された」

「流石に、群雲くんの扱いに慣れてきたんだと思う」

「巴先輩に続き、暁美先輩までそういう事言うんだ……」

「「まあ、いいけど」」

 

 果ては、鹿目先輩と見事にハモッた。

 むしろ、オレの言葉を見事に当てられた。

 ……オレ、そんなに解り易いのか?

 

「だっていつも、そういう事を言う時って、目を合わしてくれないんだもん」

 

 ……心まで読まれてます。

 

「やはりこれは、重婚可能な国に行k「で、今日の予定なんだけど」……」

 

 ……泣いていい?

 

 

 

 

 

SIDE out かと思ったか? まだ群雲だよ!

 

 

 

 四人が集合する時に、よく使うファミレス。

 そこで、思い思いの飲み物を飲みながら、三人は今日の予定を話し合う。

 ……一人はorzってなってるが。

 オレの事だよ、悪いか?

 

「明日の為に、英気を養おう」

 

 そんな、鹿目先輩の言葉から今日一日は、頭からっぽにして遊ぼうと言う事になった。

 

 さて、想像して欲しい。

 女の子三人に対し、男の子一人。

 しかも、その男の子は最年少の上、女の子と遊んだ経験など皆無。

 確実に、主導権は女の子が持つ事になるだろう。

 

「なんて言うと思ったか?」

 

 最初の目的地は洋服店。

 あれが可愛いとか、あっちが似合いそうとか、会話に花を咲かせる女の子(先輩)達と。

 

「……その通りだよ、こんちきしょう」(´・ω・`)

 

 店の片隅で、手持ち無沙汰な男の子(オレ)

 

「白い髪に黒い服もいいけど、ここはシックに青とかどうかな?」

「それなら、インナーとズボンを青にして、黒のコートでどう?」

「黒コートに、裏地オレンジとかどうでしょう?」

 

 ……しかも、選んでいるのはオレの服だよ。

 着せ替え人形状態確定だよ。

 むしろここ、三軒目だよ、こんちきしょう。

 

「琢磨君は、どれがいいかしら?」

「いや、オレは服に興味はないからって、この台詞も1786回目n「そんな訳ないでしょ」……いやもう、マジ、勘弁してください」

 

 いや、もう、マジ、わけわからん(´・ω・`)

 

 

 

 

 

SIDE 巴マミ

 

 いつも、同じ服装の琢磨君に、似合う服装を選ぶ。

 当の本人は、興味が無いと明言しているけれど、私達は止まらない。

 

 

 

 “異常”な生い立ちの琢磨君に、少しでも“普通”を味わって欲しくて。

 “友達と遊ぶ”事の楽しさを、知って欲しくて。

 ――――少しでも、本当の意味で、笑って欲しくて。

 

 

 

 結局、琢磨君がいつも着ている黒のトレンチコートに合う、質素な黒いソフト帽を購入しただけになったわ。

 

「てか、どうして皆して、スッゲー値段の高いのを選ぼうとするかなぁ、マジで」

 

 言いながら、ソフト帽に手を添えて俯く琢磨君は

 

「………………」

 

 間違いなく、照れてる。

 長い髪に眼鏡。

 それに加えて、帽子。

 ……うん、ますます表情が見えなくなっちゃったわね。

 

「じゃあ、次はゲームセンターに行こう!」

 

 

 

 

 

SIDE 暁美ほむら

 

「「ティロ・フィナーレ!」」

「二人でガンシューティングパーフェクト!?」

 

 最初は、服選び。

 結局、帽子しか買っていないけれど、明らかに群雲くんに付き合わせてしまった感じ。

 だから今度は、男の子が好きそうなイメージのゲームセンターに来た。

 ……うん、巴さんも楽しそうです。

 

 驚きなのは、二人プレイじゃなく、隣り合わせの違うゲームで、同時にパーフェクトな所。

 

「実戦とは違って、新鮮だわ」

「射撃訓練には、いいかもしれないな」

 

 ……遊びに来ているんじゃないの?

 

 

 

 

 

 群雲くんは、ゲームがとても上手だった。

 

「逃げた先にも、得られる物があるってことだな」

 

 そう言って笑う群雲くんに、悲壮の影は無い。

 

「まあ、得た物が役に立つかどうかは、別問題だが」

 

 でも、両手の袋にはUFOキャッチャーで取った、ぬいぐるみが詰められている。

 

「さて、後はこれを売り捌いて活動資金を調達すれば、完璧だ」

「遊びに来たんだよね!?」

 

 物凄く役に立ってる……。

 それが、良いかどうかは、私には解らないけど。

 群雲くんは……。

 

「なんだ。

 欲しいなら、言えばいいのに」

 

 独りで生きる事に、慣れている。

 

「はい、藁人形なめし皮付き」

「なんで、それをチョイスするの!?」

 

 むしろ、何でそれがUFOキャッチャーにあるの!?

 

「釘は、自分で用意してね☆」

「使わないよ!?」

 

 どうして群雲くんは、唐突にボケにはしるんだろう?

 

「貴重な、眼鏡仲間だから」

 

 地の文を読まないで!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 鹿目まどか

 

「……風が出てきたな」

 

 ゲームセンターを出た琢磨くんが、帽子を押さえながら、呟いた。 

 言われて気がついた。

 本当なら、夕日が見えるはずの時間。

 空は、雲に覆われていた。

 

「楽しい時間も、もう終わりか……」

 

 そう言って、空を見上げる琢磨くんに、一切の迷いは見られない。

 よかった……楽しんでくれたみたい。

 

「いやもうオレ、死んでも良いや」

「ダメだよ!?」

 

 だから、どうしてそういう事を言うかなぁ?

 

「今日だけじゃないんだよ。

 私達は友達だもん。

 また、一緒に遊ぼうよ」

 

 私の言葉に、琢磨くんは笑った。

 

 ――――――やっと、本当に笑ってくれた気がした。

 

「解った気がする。

 鹿目先輩には、絶対に勝てないわ、オレ」

「勝ち負けの問題なの!?」

 

 だったら、私のことも、名前で呼んで欲しいんだけど……。

 

「いや、間違いなく勝てない。

 知ってるか?

 ツッコミがいないと、ボケ役は生きられないんだぜ?」

「そういう意味なの!?」

 

 私の言葉に、琢磨くんは満足気に頷く。

 

「勝てないよ、オレは」

 

 そう言う琢磨くんは

 

 

 

 

 

 とても優しい顔をしていた。




次回予告

ハジマルは、最悪の夜
ハジマルは、最後の夜





ハジマルは、最初の夜

十八章 ポーズ決めてくれ

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