無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「そういえば、変身中ってどうなってるのかしら?」
「ごちそうさまです」
「どういう意味!?」


十八章 ポーズ決めてくれ

SIDE 群雲琢磨

 

「……まるで“死の街”だな」

 

ソフト帽を手で押さえながら、オレは一人、誰もいない街を歩く。

 

「本日午前七時。

 突発的異常気象による、避難勧告が発令されました。

 付近にお住まいの――――――――――」

 

 電源の入りっぱなしのラジオから、繰り返し聞こえるキャスターの声。

 それを置き去りにして、オレは歩みを進める。

 

「さて、魔人と魔法少女以外で“アレ”を認識出来ているのは、何人いるのやら」

 

 僅かに顔を上げ、オレは“アレ”を視界に入れる。

 

 

 

 

 

 それは、第一印象のままに言うなら、サーカス団のパレード。

 普通のパレードと違うのは、参加している動物が“普通の人には見えない事”ぐらいか?

 

「避難勧告が出ている街を闊歩している時点で“普通”ではないわね」

 

 いつの間にか、オレの左には巴先輩がいた。

 オレと同じように、決して歩みを止める事無く、パレードを見つめている。

 

「せめてBGMが欲しかったなぁ。

 エレクトロなパレ「それ以上はダメよ」……むぅ」

 

 まあ、オレ達の見ているパレードに、機械的な光はないんだけどね。

 

「むしろ、どうして群雲くんはこの状況で、そういうことが言えるの?」

 

 いつの間にか、オレの右を歩く暁美先輩から、ツッコミが入った。

 

「だって、それがオレの持ちネt「私達の緊張を、解そうとしてるんだよね?」…………」

 

 後から、鹿目先輩の声が聞こえた。

 

「遅刻はいけないなぁ」

「避難所を抜け出すのに、時間が掛かっちゃった。

 でも、遅刻はしてないよ」

 

 たしかに、まだ始まってないな。

 オレ達は四人で、パレードに逆走する。

 

 左から、巴先輩、オレ、鹿目先輩、暁美先輩。

 その順番で、オレ達は真っ直ぐに進む。

 

「そろそろ、開幕かな」

 

 オレの言葉と同時に、全員が立ち止まる。

 

 ………………。

 

 誰も、何も喋らない。

 緊張感が、肌に伝わる。

 

 ――――――――――――――――5

 

「変身!」

 

 巴先輩が、変身する。

 

 ――――――――――――4

 

「変しn「ポーズ決めてくれ、ポーズ」ここで茶化さないでぇ!」

 

 暁美先輩の変身に声を掛けてみた。

 若干涙目の暁美先輩、萌えぇ~。

 

 ――――――2

 

「あ、3が飛んだ」

「確実に、琢磨くんのせいだよね……変身!」

 

 律儀にツッコんでくれる鹿目先輩に惚れる。

 しかし、流石にこれ以上は野暮ってもんだ。

 オレは、ソフト帽を右手の平の<部位倉庫(Parts Pocket)>に入れる。

 

 

 ――1

 

「蒸着!」

「「「違う!!」」」

 

 はい、総ツッコミを頂きました。

 

 髪の毛が僅かに持ち上がり、視界の開けた世界。

 そこでオレは“ワルプルギスの夜”を見つめる。

 

「……やばい」

 

 開口一番、オレは呟いた。

 下半身が歯車になっている、逆さ向きの魔女。

 何がやばいって、魔女のいる位置がやばい。

 

 上空。

 

 浮いてます。

 

 どう考えても。

 

 

 

 ――――射程外です。

 

 

 

「相性、最悪かもしれん」

 

 言いながら、オレは一歩を踏み出す。

 

「なんとかして近づかないと……」

 

 暁美先輩も、使用するのは“時間停止”と“自作の爆弾”だ。

 ……設置しようにも、相手が空にいると……なぁ。

 

「そうなると、アタッカーは私と鹿目さんかしら?」

 

 変身前と同じように、四人で並んで歩きながら、巴先輩は言う。

 

「もしくは、琢磨君と暁美さんの射程内まで、私達が移動するか、ね」

「近づいても、攻撃が通るかわからないぞ?」

「それを言ったら、私やマミさんの攻撃が、通用するかもわからないよ?」

「いや、暁美先輩の爆弾はともかく、オレは刀で斬るか、銃を撃つかぐらいだ。

 電光球弾(plasmabullet)じゃ弾速が遅いし」

「攻撃手段が無い、と?」

「威力だけなら、巴先輩の“ティロ・フィナーレ”程じゃないけど、そこそこ高いとは思うが。

 当たらなければ、意味が無い。

 高火力技じゃないと、通るとは思えない。

 なんたって、相手は最強の魔女らしいしな」

「確かに、時間停止を駆使しても、爆弾が相手に届かないと……」

 

 戦闘前から半分(ふたり)が戦力外とか、笑えねぇ……。

 

「なんとか、奴を地上付近に叩き落さないと、な」

「じゃあ、最初はそれを目標に動くの?」

「いや、攻撃が届く以上、巴先輩と鹿目先輩は攻撃してくれないと。

 このままだったら、普通に街を縦断するぞ、あれ」

 

 むしろ、未だに攻撃してくる気配がない時点で。

 

 ――――――――オレ達、眼中外ってか?

 

「笑えねぇよ、マジで」

 

 

 

 

 ちなみに、さっきから「アハハハハハッッハハハハハッアハハハハハハハハハ!」とか、笑いまくってるワルプルギスの夜がうぜぇ。

 先輩達の声が、聞き取りにくいっつうに。

 

「まあ……こちらに退く気が無い以上、死力を尽くすしかない訳だ」

 

 オレの言葉と同時に、全員が立ち止まり、空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迫るは、最強の魔女。

 

 対するは、三人の魔法少女と、一人の魔人。

 

 

 

 

 

「では、闘劇をはじめよう」 




次回予告

普通じゃない存在と戦うのは、普通じゃない存在
魔女と戦うのは、魔法少女
魔女と戦うのは、魔人

忘れてはいけない
普通じゃなくても
まだ、子供だという事を

十九章 状況は好転しない

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